2024年4月21日日曜日

MIMの還元反応はCOだけなのか?

 【珈琲ブレイク】「焼結密度100%のMIM焼結体はつくれるか」で取り上げたように、不完全緻密化の要因のひとつがCOガスの残留でした。でもガスはCOだけじゃなくてCO2の可能性もあるのではないかと思い、実際に量産品*1を測定しみました。結果は「CO反応として計算した値」とほぼ一致します。計算とは、「ミルシートのCとO」と「焼結体のCとO」の関係からCOガスとして抜けた量を確認するもので、CとOの1モル反応なのでΔOを分子量比1.33で割ってCから引き算*2します。ただし、この結果は完璧に溶媒脱脂と二次脱脂を行っているとき*1(脱脂不足による残留炭素の増加が無いとき)の話です。

*1 溶媒脱脂→N2脱バインダー→真空中還元反応→Ar圧力制御中の焼結

*2 MIM指南書 粉末射出成形ガイドブック P65

《参考》BASFのCIP-CC粉末を水素雰囲気で焼結したときに発生するガスに関する論文がありましたので、その結論だけメモっておきます。水素雰囲気なので還元ガスにH2Oやメタンが登場しています。高温域の還元反応はCOでありCO2は登場していません。

「温度域:生成ガス:反応」の順番です。「200-300℃:CO2:吸着ガス離脱」、「250-520℃:H2O、炭化水素:バインダー分解・還元」、「420-700℃:CH4:メタン化」、「910-1200℃:H2O、CO:還元反応」

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2024年4月13日土曜日

焼結密度100%のMIM焼結体はつくれるか

相対密度100%の焼結体を実現させた秀逸な論文がある。不完全緻密化の仮説を検証で明らかにしている。「相対密度が100%になれない仮説」と「2つの検証実験」を簡潔にまとめておく。カーボニル鉄粉CIPを使った研究論文。

《相対密度が100%になれない仮説》CとOの還元反応で生成するCOガスが気泡として残るから。

《検証1》COガスの素である「C」を初めから少ない粉末を使う。実験ではCが0.00059%のCIPで1400℃焼結体の相対密度が100%になっている。

《検証2》COガスの素である「O」がCと反応するより早く別の酸化物をつくらせる目的で微量の「活性金属」を添加する。実験では、Al,Nb,Ti,Vを各4%添加することで各4種類の相対密度が100%になっている。

 【珈琲ブレイク】焼結密度100%を徹底的に追及したこの研究に脱帽です。CIPは水素還元処理した低炭素の粉末を使えということでしょう。ふたつめの活性金属を添加するアイデアだと結晶粒径がさらに小さくなるというオマケまで付いています。とくにNb添加材は強度も最強になるように感じます。CIP基とする調合合金のSCM鋼やSNCM鋼などの高密度・高強度化へ展開できそうですね。

文献:林宏爾、林台煥 ”射出成形用カーボニル鉄微粉の真空中焼結における不完全緻密化とその原因” 日本金属学会誌 第54巻 第2号(1990)224-230      (D1825)

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2024年4月3日水曜日

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2024年6月24日(月)  10:30~16:30  

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