2021年9月30日木曜日

特開2021-139035 正式公開 2021年9月~

特許庁にて公開が開始されました。パートナー募集中。

パウダーベッドの高嵩密度を目指し粉体流動性を改善させる固体潤滑剤であるメラミンシアヌレート微細粉末を少し金属粉末に添加するアイデアです。固体潤滑剤のメラミンシアヌレートは、加熱脱脂中に液体にならず昇華し窒素ガスになって抜けていきます。さらに残渣にならないところが凄いところです。

関連BLOG


2021年9月23日木曜日

MIM-Tiの規格JPMA S01(2014)を掘り下げる

◆国内唯一のMIM規格である JPMA日本粉末冶金が発行するJPMA S01(2014)にTiの規格が追加されている。成分規格が同じであるが2種類あり、「高延性品」と「高強度品」である。それぞれ引張強度TSと伸びEは、TS=500MPa,E=10%およびTS=600MPa、E=3%である。◆同じ化学成分規格は、Ti残、C<0.2%、O<0.3%、その他<1.0%である。この化学成分の微妙な違いで高延性品と高強度品の差が生まれるということである。結構大雑把(最大公約数的)な規格である。

【珈琲ブレイ句】いろいろな情報を紐解いて考察してみます。引張強度を高くする(伸びを小さくする)代表的な成分は、炭素C、酸素O、および鉄Feです。ここでTiのMIM規格ASTM F2989をみると3種類のMIM規格共通して炭素<0.08であり、JPMA規格(C<0.2)では合格でも、C0.08以上~0.2未満のものはASTMでは不合格です。なので、引張強度をコントロールする成分は酸素Oと鉄Feになります。ただ、鉄はともかく酸素を管理するのは相当難しいと思われます。還元だと水素で抜くか?CO還元は期待できないので、やはり酸素が無い環境で焼結するため高真空油拡散ポンプは必要です。ちなみにロストワックス精密鋳造のTiの規格ASTM F1108ではC<0.02ですから、本来炭素はゼロにしたいのです。やはり、チタンMIM化のハードルは高し!。でも、ハイスペックのインプラントではなく普通の軽量化(比強度)が目的の部品であればC<0.2のJPMA規格は重宝する、と考えた方がよさそうです。ちなみに下記ISOもJPMAと微妙に違いますが大雑把です。

比較:ISO 22068 MIM Ti-400 はTS=500MPa、E=5%、Ti残、C<0.2%、O<0.4%、窒素N<0.1%


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2021年9月21日火曜日

真空ポンプは水分が苦手

 古いデータを見つけたのでグラフ化した。油回転ポンプに水分が混ざると真空排気能力が著しく低下するのがわかる。MR200バージンの時は最高真空まで10分で到達するが、水分1000ppmの混入では60分も時間が掛かる。さらに2倍の水分2000ppm混入で90分になり、10倍の10000ppmでは最高真空度に達しないことがわかる。


【珈琲ブレイ句】MR200を使っても水分が混入すると真空度が上がらなくなり、始動切替開始が30分くらい遅れてきたら油を交換していました。気休めですが日常管理としては焼結炉扉の開放禁止も行いました。しかし、MIM脱脂焼結ではトラップしきれないワックスもRPに混入していきます、やはり恒久対策は、水分とワックスを除去できるアメロイドのクリーナーを設置するのがベストだと思います。RP2台にクリーナー1台を接続し隔日で切り替えて稼働していました。

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2021年9月18日土曜日

特許先行公開 特願2021-148967 粉末積層造形法

 出願番号通知が来たので、特許内容を先行で開示します。既存5種類のMIM-Like AMのどれにも該当しないアイデアです。みんな知ってる「砂絵」の応用です。名付けて「リバーシブルBJT法」。パートナー募集中。

【発明の名称】粉末積層造形法

【技術分野】 【0001】バインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形方法

【背景技術】【0002】 粉末焼結を前提とする付加製造技術において、バインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形法には次の5種類がある。材料押出法(Material Extrusion)、液槽光重合法(Vat Photo Polymerisation)、スクリーン印刷光重合法(Screen Pring)、バインダーコートされた粉末を使った融解積層法(Cold Metal Fusion / Powder Bed Fusion)、バインダー噴射法(Binder Jetting)。これらすべての積層造形物(Green)は、脱脂および焼結を行い焼結体が造られる。

【発明が解決しようとする課題】【0003】これら5種類の造形法は、すべて粉末を利用しているため粉体流動の影響を受ける。融解積層法やバインダー噴射法は粉末床に一層分の粉末を敷き詰めるが微細粉末になるほど比表面積が大きくなるため粒子間摩擦が増加し粉体流動性が著しく低下する。そのため必要にして十分な嵩密度を確保することができない。実用的には粉末径は数十マイクロメート以上の粗い粉末が必要で微細造形に限界があるという課題がある。その課題を解決すために流動性の高いバインダーと粉末を混合し流動性を向上させた材料を使用したものが材料押出法、液槽光重合法、スクリーン印刷光重合法である。しかし、材料押出法はノズル径に寸法が支配され数百マイクロメートルと大きく微細造形に限界がある。また、液槽光重合法の材料は粘度が低い泥状材のため粉末の沈殿分離が課題である。さらに、スクリーン印刷光重合法はスクリーン厚さに寸法が支配されるため一層の積層厚さは数百マイクロメートルと大きい課題がある。

【0004】本発明は、上記5種類すべての課題を解決するバインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形の方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】【0005】本発明は、先にバインダーを一層分噴射し、直後に粉末の塊をバインダー印刷面に加圧接触させ、バインダーと粉末の濡れを伴う毛細管現象により浸漬させ一体化させる。次に遊離している余分な粉末を分離させ、バインダーと一体化した粉末だけを残した後に、残留しているバインダーを硬化させる。この工程を繰り返して三次元積層造形を行う。得られた積層造形物(Green)を、脱脂および焼結することで焼結体が得られる。粉末は、金属粉末やセラミック粉末あるいはその混合粉末を対象とする。

【発明の効果】【0006】 1回の積層で利用する粉末は、一回分の粉末を塊として扱うので粉末流動を全く考慮する必要がない、したがって粉末流動が著しく悪い微細な粉末、例えばナノ粉末も使用できる。また、泥状材を使用しないので粉末とバインダーの分離という概念が無い。さらに、一層の厚さはバインダージェットから噴射される一滴量だけに依存するため、微細寸法を自由に形成させることができる。また、一度使用した粉末は回収し何度も再利用することができる。

【図面の簡単な説明】【0007】 インクジェット印刷工程と粉末をインクジェット部位に浸漬させる工程と遊離粉末を除去する工程と最後の光照射による硬化工程の全工程が順次進み初層が形成された段階の三次元積層付加製造装置の模式図(図1)である。

【実施例】【0008】 4ステージを有する90度回転割出駆動の回転式プラットフォーム1は、一工程ごとに90度回転する。その際、回転物が干渉しないように開閉シャッター3が回転と同期して開閉する。第一工程において、プラットフォームのステージ上に、XYZ軸をCNC制御駆動するプリントヘッド2により、一層分の形状を光硬化バインダーでジェット印刷する。第二工程において微細粉末の塊7-1を落下させ加圧や振動を印加させて粉末を印刷されたバインダーに浸漬させる。第三工程で遊離粉末7-2を落下させるとともに粉末吸引回収ノズル4にて吸引回収し、粉末と一体化した印刷されたバインダー6-3だけを残す。第四工程において光を照射し粉末と一体化した印刷されたバインダーを光重合により固化させた後、バインダー周辺に残留した微少遊離粉末をエアーブロー8で除去する。この工程を繰り返すことで三次元積層造形物を造る。

【0009】 使用するバインダーは光硬化バインダーだけでなく熱溶融バインダーや熱硬化バインダーでもよく、4工程の光照射の代わりに熱溶融バインダーの硬化には冷却伝熱、熱硬化バインダーの硬化には加熱伝熱を利用する。

図は省略・・ 

◆日本国パートナー募集中◆



2021年9月15日水曜日

焼結機能窓(焼結限界温度範囲)を最大化する粉末配合とは

《前回のブログの補足》高炭素鋼MIMの焼結で、老朽化した炉内温度バラツキの大きい真空脱脂焼結炉でもフルチャージできる粉末配合材開発の舞台裏を少し公開する。開発の狙いは次の2つである。

◆ガスアトマイズ(GA)粉末は、水アトマイズ(WA)粉末と比較して、焼結温度の上昇により焼結密度が高くなる速度(傾斜)が大きく、臨界焼結密度は高い。しかし、焼結機能窓は狭いので、炉内高温部では溶けやデンドライトが発生する。一方、WA粉末は、表面酸素量が多いため密度上昇速度は遅く、臨界焼結密度はGA粉より劣るが、焼結機能窓は広い。 《1》粉末配合法とは、GAにWAを配合させたハイブリッドである。車で例えると、アクセルのGAとブレーキのWAを同時に掛けながら運転するイメージである。臨界焼結密度は、GAとWAの中間になり、焼結機能窓を炉内温度バラツキ範囲より大きくすることができた。 《2》二峰分布でCSLの最大化を狙った。収縮率を最小化する。GA(標準)にWA(微細)を適量配合することでタップ密度を向上させる。数μmのWA(青森県のメーカー)を採用した。粒子間の接触点の増加による摩擦力の増加、粒子間距離を短くすることで収縮率を最小化させた。結果、焼結体の精度がIT等級で2ランク向上した。

関連ブログ「なぜ工具鋼はMIMで造るのが難しいのか」

◆注意◆低炭素鋼ではGA-WA粉末配合法の効果はほとんどなく、SUS630では配合ではなくGAだけを標準材にしました。

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2021年9月11日土曜日

なぜ工具鋼はMIMで造るのが難しいのか

 ◆MIM入門の材料はSUS316Lである。コスパが優れた国産の球状微細水アトマイズ粉末(D50=10μm、TD>4)を使えば、高品質のMIMを造ることができる。◆しかし、工具鋼(SKD11、SKH51等)にチャレンジすると問題が発生することが多い。一番の問題は、寸法精度(バラツキ)の低下、次に、溶け、デンドライト化、炭化物の巨大化等がある。◆なぜか? 一番の原因は、炭素量が多いからである。炭素量の少ない鋼は、固相線の下で焼結(固相焼結)ができる。一方、上記の工具鋼は固相線を越え液相線の下の相*1で焼結することになり、そこでは液相も混在するため、固相焼結の様に拡散が支配する「ゆっくりな世界」が崩れるためである。それをコントロールするために必要な技術は3つ。①精密な温度制御ができるMIM用真空バッチ焼結炉が必要。②溶媒脱脂や触媒脱脂により完全にバインダーを除去させ残留炭素を極少化させる。③還元反応を管理できるMIM用真空バッチ焼結炉が必要。

【珈琲ブレイ句】手前みそになりますが、昔々、SUS440C、SKD11、SKH51で、炉内温度の影響を受けない(ロバスト性能が高い)混合粉末法*2 *3を開発しました。焼結機能窓(焼結限界温度範囲)を最大化する粉末配合により、量産でフルバッチ焼結ができました(溶媒脱脂+真空脱脂焼結)。少し材料費が高くなりますが、精度が高く不良も減少するので、損失関数(品質とコストのバランス)で評価し量産材料として採用することができました。ちなみに特許化していないので、Freeです!参考になれば幸いです。

*1 Super-Solidus Liquid Phase (SSLP)

*2 特開2004-052051 、論文:Development of Sintered SKD11 compacts with High Robust performance by Metal Injection Molding": J. Jpn. Soc. Powder Powder Metallurgy, 52(2005)717-721.

*3 素形材誌の関連記事

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2021年9月9日木曜日

なぜ混合粉末はバインダージェットAMに使えないのか

 ◆バインダージェット方式の3Dプリンターには、合金粉末が使われている。一方、MIMでは、合金粉末と混合粉末*1 の両方使っている。◆ではなぜ、バインダージェットでは合金粉末だけなのか? 推定する理由は2つ。◆①、多種の粉末を混ぜ合わせたときに、均等性が維持できないためである。混合粉末をミキシングで完璧に均等にしても、その混合粉体を流動させると均等性が崩れる(偏る)ためである。なぜ偏るのか。日常のもので例えると、「ゴマ塩」を使っていると容器の上方にゴマが集まるのと同じ理屈である。密度と粉末の大きさにより相対的浮力差が発生するからである。これをコントロールするのは技術的に可能であるが実用的に難しい。◆②、カルボニル鉄粉CIPは微細粉末なのでそもそも粉体流動性が悪い。そのため粉末床に、かさ密度の高いレイヤーを敷くことが技術的に難しい。◆一方、バインダーで粉末を混錬した材料を使うタイプのMIM-Like AMであれば、これらの現象は大幅に改善できる。ただしバインダーが多く、粘度が低い場合は攪拌が必要になる。

*1 例えば、カルボニル鉄粉CIPを基材として、粒度の異なるNiやCrを添加した混合粉末、マスターアロイをCIPで希釈するもの(平均径:CIPは5μm程度、マスターアロイは10μm程度)等。

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2021年9月5日日曜日

MIM焼結体の炭素減少はCOなのかCO2なのか

 MIM焼結中において、還元反応により粉末の初期炭素量は減少する。それはCO反応なのか、CO2反応なのか。ある論文にデータ(溶媒脱脂、窒素雰囲気中で焼結)を見つけたので、両方で焼結後の炭素量を推定してみた。(前提条件:初期酸素量はすべて還元反応で消費される。)

【結果】は下記表の通り・・・・論文ではCO2反応として説明し、推定値が大きく外れているT15は例外としている。一方、CO反応の推定値ではT15はかなり近い値になっている、また例外なく全てのデータに相関があるように読める


【珈琲ブレイ句】この論文がCO2反応で説明していることに違和感を覚えたため、自分でCO反応の計算をしたものです。私の経験ではCO反応が支配的で量産品とよく一致していました。上の実験データで残念なのは「焼結体の酸素量が不明」なところです。「還元反応に使われた実酸素量が計算できないので、この推定値は正確ではありません。また、溶媒脱脂を行っているので、残留炭素は極少のはずですが、焼結炉内の炭素系コンタミとバインダー由来の微量炭素が焼結体に存在している可能性があります(例えば△C=0.05くらい)。さらに、なぜ、T15だけ全体傾向から乖離しているのか仮説をひとつ・・・・「溶媒脱脂品ブラウンパーツを長時間が室内に置いていた。そのため錆びが発生し、原料粉末より酸素量が増加した。」なぜなら、炭素が多いと錆びやすくなるし、ブラウンパーツはスポンジ構造体なので、さらに錆びやすいため。

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2021年9月4日土曜日

失敗から生まれたアイデア(特許)MIM-Like AM

【珈琲ブレイク】 ◆将来MIM-Like AMは家電になる。◆そう考えて電子レンジとマイクロ波キルンを使った脱脂焼結実験を行い大失敗しました。◆でも逆転の発想で面白いアイデアが浮かびました。さっそく特許を書いて、昨日出願しました。発明の名称は「自己焼結性を有する金属粉末付加製造用材料」*1です。◆原理はすでに商品化されているマイクロ波キルンや魚焼きグリルパンと同じです。技術分野を付加製造に絞り新規性を担保させています。手段は、マイクロ波自己発熱粉末を、3D積層体に混ぜて安価な家庭用電子レンジで自己脱脂焼結させるアイデアです。◆焼結体は自己発熱粉末(セラミック粉末)と金属との複合組織(サーメット)になりますが、それなりに用途があると思っています。目的は、家庭でもMIM-Like AMが使えること。

*1 金属の固体はマイクロは反射するのですが、粉末にすると焼結が可能になり、超硬や工具鋼等でマイクロ波焼結が実用化されているようです。上記特許は、自己発熱粉末を入れることで焼結のトリガーとして働かせ短時間に昇温させることを狙っています。ちなみに超硬のWC粉末は自己発熱粉末です。


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