2023年5月17日水曜日

バインダージェットVS溶媒ジェットプリンター

 【珈琲ブレイ句】MIM-Like AMの仲間であるバインダージェットプリンターと溶媒ジェットプリンターについて妄想します。

バインダージェットプリンター(BJT:Binder Jetting)金属粉末にバインダーを吹き付けて積層造形する。

溶媒ジェットプリンター(融解積層法:Cold Metal Fusion , Solbent Jetting)バインダーコーティングされた金属粉末に溶媒を吹き付け融解再架橋させて積層造形する。

『ジェッティング問題』《課題》ノズルが詰まる。《対策》積層開始前や中間でノズルの溶媒洗浄を行う。画像や印字で詰まったノズルを認識。複数のノズルが詰まったノズルを相互に補う制御。《でも!》溶媒ジェットならノズルは詰まらない。毎回洗浄しているようなもの。

『粉体流動性問題』《課題》粉末が微細になればなるほど流動性が低下する。そのため粉末床に一層分の粉末を均質に敷き詰めるのが悩みの種。《対策》粉末径を大きめ(15~30μm)にする。しかし、焼結密度が上がらなくなる。微細粉末(5μm)を混ぜれば焼結密度は向上するが、敷き詰め不良が問題になる。

『バインダー残渣問題』《課題》どうもBJT用バインダー開発は造形工程の品質(ノズル詰まり、グリーン強度)に力点が置かれているように感じる。加熱脱脂・焼結体に炭素として残留するものがある。《対策》総合品質の最適化を目指して開発する。(都立大と国内メーカーで共同研究開発してますね。)

『おまけ』バインダーコーティング金属粉末はどうやって造るのでしょうか? たぶん、凝集との熱い闘いがあるだろうと想像されます。それなら、逆手にとって微細粉末を混ぜた「おにぎり粉末」にすれば、径を大きくできるし、おにぎりは転がりやすいと昔話が教えているので粉体流動性が向上するかも(無責任な発想)?? 

とにかく問題・課題がわかれば技術的に解決できるのです。MIM-Like AMの将来は明るい。 個人的には溶媒ジェットプリンター(融解積層法:Cold Metal Fusion , Solbent Jetting)を直感的に好きです。日本のRさんがすばらしい機械を開発しています。がんばれ日本。

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2023年5月13日土曜日

SS法がシングルステップで脱脂焼結できる秘密とは?

 【珈琲ブレイク句】なぜSS法(3STD法)はシングルステップで脱脂焼結できるのか?という質問に答えます。その前に、技術的には(現実的・経済的に採用されませんが)、ほとんどの加熱脱脂系MIMフィードストックは時間をものすごく掛ければ、シングルステップは可能です。SS法は何が違うのかというと「一日24時間以内で脱脂焼結ができる」ところです。小さいものなら12時間脱脂焼結も可能なので1電源2炉の脱脂焼結炉も試行される程でした。

特許はすでに失効しているので問題ないと思いますので、その秘密をひとことで言うと・・・

SS法の秘密は「ジッパー分解をする樹脂を多く配合させているところ」です。ちなみにPPやPEはランダム分解です。ジッパー分解はその名前のように「ジッパーを開くように」はやく熱分解する特徴があるのです。

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2023年5月12日金曜日

SS法の商標について

 【珈琲ブレイ句】SS法とは、「Single Step System*1」の短縮造語です。このシステムは優れた日本人による発明です。一次脱脂工程を省略するため島津脱脂焼結炉を使うことで、1工程(Single Step)で脱脂焼結することができる特許技術です。ほんとうに革命でした。その後、別の国内フィードストックメーカーから類似システムが登場します。どちらも量産で採用しましたが、品質では甲乙つけがたいくらい優秀です。(でも、炭素が少し残りやすいので、材質や形状・肉厚を注意することが必要です。単価も重要ですね。)

実はこの成功には影の立役者がいます。それは島津脱脂焼結炉です。SS法開発の伴走者です。多量のバインダーをロータリーポンプ前で捕獲するワックストラップ設計と、炉体を汚さないタイトボックスと排気ルート設計に磨きを掛けてきたのです。これは、新製品のMIM-Like AM用小型脱脂焼結炉にも展開されていますので、MIM-Like AMだけでなくMIMも一工程で脱脂焼結できる能力をもっています。

先々月?都立大学に導入されたので、今度見させてもらいにいく予定です。

*1 Single Step Systemは登録商標なので、拙著MIM指南書では三段階順次加熱脱脂法(Three-step sequential thermal debinding)略名:3-STD法 と記載しています。・・・しかし現在登録商標は抹消されているようです。

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2023年5月8日月曜日

MIM-like AMとは

 【珈琲ブレイ句】いまさらですが・・「MIM-like AM」とは、「MIMのようなMetal AM」とういう概念の"私が勝手に作った造語”です。”MIMと同様に積層体(green)を脱脂・焼結する技術”ということで、わかりやすい造語だと思うのですがいかかでしょうか? ぷらすとす(日本塑性加工学会)の解説論文に「MIM-like AM」を使わせていただきました。一般的な語彙になるといいなと思っています。

海外の論文を観るとこの概念は次のように表現されています。大分類は「Indirect」で中分類(MIM-like AMの分類レベル)として「Sinterbased Metal AM」あるいは「Multi-step process Metal AM」になります。さらに具体的小分類としては5種類あり(2023年現在、今後増える可能性あり)下記になります。

材料押出法(Material Extrusion)

バインダー噴射法(Binder Jetting)

液相光重合法(Vat Photo Polymerisation)

スクリーン印刷光重合法(Screen Printing)

融解積層法(Cold Metal Fusion , Solbent Jetting)


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2023年5月5日金曜日

なぜ日本製の水アトマイズ粉末は優れているのか(その2)

日本製水アトマイズ粉末が優れているところを、項目を足してもう一度メモっておく。

・球状&極少サテライト粉末

・微細粉末の収率向上による低価格化(マイクロ~普通MIM用粉末)

・高タップ密度粉末(粒度分布の裾野巾管理、多峰分布配合技術)

・高焼結密度粉末(高タップ密度&最大径カット)

・高ロバスト性粉末(焼結温度バラツキに影響を受けない、ピン止め)

【珈琲ブレイ句】昔は「水アトマイズ粉末=異形粉末」という扱いでしたが、日本の技術がその常識をひっくり返しました。推測ですがアトマイズ水ジェットに富山県に本社を置く世界に誇るS社製超高圧水ジェットポンプを使っていると思います。特許級技術としては、タンデッシュから落下させる溶湯形状の改善および溶湯温度の最適化管理、アトマイズさせる水ジェットの頂角と旋回角の最適パラメータ設計による粉末品質(形状、径、凝集)の向上と収率の向上(コストダウン)を実現させています。地味ですが日本の技術力は凄いのです。(注意:上記5項目を1社がすべてカバーしているという事ではなく個性がありますので目的別に会社を選びましょう。)

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2023年5月4日木曜日

高タップ密度とバインダー量

 大同特殊鋼㈱の技術資料に「タップ密度とバインダー量の表」があったのでグラフ化した。高タップ密度になれば、MIMフィードストックを構成するバインダー量を少なくすることができることを示している。バインダー量が少ないということは、粉末同士の距離が短く、粉末同士の接触点が多いと言う事なので、脱脂中及び焼結中のスランプ変形が少ない。さらに、焼結収集率も小さくなるので焼結寸法精度が向上することである。

【珈琲ブレイ句】このバインダー量はCSLから求めたものと推察しますが、現在では最小バインダー量をさらに少なくする方向で技術開発されていますのでこの数字をそのまま展開しない方がよいでしょう。また、この技術資料に掲載されているSTD,HTD,UFD粉末の顕微鏡写真に、たいへん驚くこと(興味深いこと)を見つけました。それは一番タップ密度が高いUFDには、50μm程度の大きな粉末(おにぎり形状)が含まれていることです。ジェット頂角を小さくして故意に粒度分布の裾野を広げている感じがします。だから、(たぶん焼結密度が上がらないので)別に高焼結密度粉末HSDを用意していると感じました。オールマイティな粉末を造るのは難しいと言うことです。

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