2022年4月20日水曜日

MIM Like AMのすばらしいLMMを復習する

 MIMメーカーの太盛工業さんが昨年導入したLMM方式のIncus社HAMMER LAB35について、技術情報を押さえておく。

方式:LMM(Lithography-based Metal Manufacturing)リソグラフによる積層、紫外線硬化

INCUS設立:2019年9月(2015年セラミックで開発成功、金属専門の会社として設立)

光投稿寸法・解像度:2560×1600ピクセル、解像度35μmピクセル

造形プラットフォーム寸法:L89.6×W56×H120mm

積層ピッチ:10~100μm

造形速度他:10mm/H(ピッチ25μm)、未硬化材料を除去する時間de-cake time 15分 de-cake材は100%再生可能

金属粉末:平均8μmまでのMIMグレード金属粉末が可能。SUS316L / 304L / 630 / 410L / 420J2 / Ti / Ti6Al4V / Cu / 洋白

粉末量:55~60VOL%

収縮率:16~20%(伸び尺1.19~1.25)

表面粗さ:Ra5(粉末径に依存する)

【珈琲ブレイク】Lithography方式の3Dプリンターは安価でホビーにも使えるものです。しかし、金属粉末を積層するのがかなり困難でした。セラミックでは成功しても金属で難しいことから推測される理由のひとつは、金属の密度が大きいことです。それを克服したINCUSのすばらしい発明は、「引上げ」ではなく「引下げ(投影機が上についている)」で積層していくところです。これにより密度の大きな材料を積層していくことが可能になりました。さらに、積層材料をペースト状*1にするため、粉末単体の粉体流動の課題を克服できます。その結果、粉体流動性の悪いMIMグレード粉末を使うことができるのです。だからBJTより微細な造形が可能です。さらに、造形プラットフォーム全体がサポートになるため造形中のグリーン変形もないのです。少し気になるのは紫外線硬化樹脂の残渣問題ですが、脱脂焼結技術で解決できるのかなと思っています。Meal AMとMIMの共存共栄の時代、MIMメーカーを新技術で先導する太盛工業さんによるLMMを使った公開事例を期待しています。

*1:ペーストの成分はわかりませんが、紫外線硬化樹脂と低融点の界面活性剤類が含まれている可能性があり、ペースト状態では流動性が高いと推察されます。

《過去の関連BLOG》

粉末冶金AMの第三の柱「LMM」が凄い

日本のMIM屋さんがAMマシンを売り出す

2022年4月16日土曜日

BJTとLWおよびMIMの三つ巴を考える

 金属素形材造形の製造技術であるBJT(バインダージェット)とLW(ロストワックス)およびMIM(金属粉末射出成形)の特徴をまとめ、その使い方を考える。

《寸法精度》MIM(±0.5%) > LW(±1%) > BJT (±1~2%)

《表面粗さ》MIM(Ra0.15~2Ra) > LW(Ra3~6 ) > BJT(Ra8~12)

《初品納期》BJT(3~10D)> MIM(1~2M)> LW(2~3M)

《リピート納期》BJT(3~10D)> MIM(1~2W)> LW(3~4W)

《材料技術》LW(すべての鋼種) > MIM(30~40種) > BJT (10種未満)

《設計の自由度》BJT(ほぼすべての3D形状)> MIM(犠牲中子要)> LW(犠牲中子要、微細中空不可)

《製造できる大きさ》LW(10g~数10Kg) > MIM(μMIM~300g) > BJT (10~500g、50gがベスト?)

【珈琲ブレイ句】どの素形材にもそれぞれの特徴やメリットがありますね。ケースバイケースで最良の素形材を選択するのが開発設計者の腕の見せ所です。蛇足ですが・・・LWではAM技術でワックスモデルを造る方法は、古くから実施されているので、初品納期は金型納期が無い部分で2W以内で出荷できる可能性があります。同様に近年登場したMIMの成形型をAM樹脂で造る技術を使えば1か月短くなります。また、LWは航空エンジン等の翼部品だと表面粗さはMIM相当だし、真空鋳造やシングルクリスタル鋳造も行われています。一方、MIMやBJTの粉末冶金は高合金や複合材を造る自由度は溶解・凝固の伴うLWより高いメリットがあります。多様性の時代がおもしろい。

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2022年4月12日火曜日

MIMお試しセットPETTYの販売をやめました

 誰でも簡単に、溶媒脱脂MIMフィードストックの試作ができるように、材料を小分けにしたMIMお試しセット(PETTY)を販売していましたが、販売を終了させました。

【珈琲ブレイ句】すべて国産の材料で設計した溶媒脱脂用MIM材料セットでしたが、販売終了にいたる理由はいくつかあります。ひとつは、MIM専門の商社様に、代理販売を打診したのですが断られたこと。一方、国内のMIMフィードストックメーカー様からサンプルをいただいたこと。結果、MIMを体験するなら、「粉」より「成形材料」からスタートする方が敷居が低いと実感したためです。プラスチック成形メーカーであれば、市販のMIMフィードストックを購入して自社で成形すれば、20~30万円程度で脱脂・焼結まで体験できます。 問合せは 弊所HPの無料相談係まで 

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〇レシピ販売開始 2023〇 PETTY(溶媒脱脂バインダー)の「レシピ(文字情報)」だけ販売します。費用はシャトルレポートの20倍です。レシピ:バインダー仕様、国内メーカー、配合比、MIMフィードストック製造事例(SUS316L、高精度フィードストック製造のためのQC工程表)すべて国産原料にしています。シャトルレポート費用

R社の触媒脱脂用フィードストックからの妄想

 米国Ryer社の700種を超えるMIMフィードストックの中に、BASF法相当のものがある。カタログでは金型温度60℃と一般MIMフィードストックの金型温度の上限レベルで、オリジナル90~100℃より低くく、温調に水(湯)が使える。なにが違うのか

・・ここから妄想・・・・使用しているPOMが違う。超流動性POMを使用している。そのため射出温度を下げることができる。さらに流動性が高いので金型温度も下げることができる。

【珈琲ブレイ句】国内樹脂メーカー(A社)のPOMに驚異的な超流動性POMが存在するので、相当材を使って改良開発した可能性があるな~と妄想しました。某大学での実験アシスタント時代、このPOMを使って混錬をしたことがありますが、高流動に感動した実感はありませんでした。しかし今思えば誤認だったのです。なぜなら、その混錬は通常のMIMフィードストックの仲間だったので、潤滑剤を多量に入れたのです。そのためPOMの超流動性が目立たなかったマスキング効果があったのです。つまり、POMが約90%を占める触媒脱脂系であれば話は別です。これがRyer社の改善のネタだった可能性があるのです。よかったらどなたか、この妄想をお試しあれ。

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2022年4月10日日曜日

BJTとMIMの境界線

近年、MIMのトップ集団に仲間入りしたIndo-MIM社が、2019年にBJT*1を導入している。その実績から、BJTとMIMの境界線について論文*2を発表している。私は「MIMとMetal AMの共存共栄の時代*3」を発表するタイミングだったので興味深く読むことができた。概要を以下に箇条書きする。*1:DeskTopMetalとExOne *2:PIM Vol-16-No-1 P61-68 *3:日本塑性加工学会誌・ぶらすとす 2022 Vol.5 No.053 20(280)

《論文概要》

・境界線は50gで、50gより大きなものはMIMよりBJTの方にコストメリットがある。

・BJTの材料(316L,17-4PH,M2,4140)は少ないが近年増える。

・BJTの機械的特性はMIM規格(MPIF-35)を満たしている。

・粉末除去はやはり大変だが、自動化設備開発を依頼しているのですぐに解決する。

・MIM用微細粉末に少し粗い粉末を添加して、流動性を高めているが、焼結中の形状保持に難がある。

・BJT精度は±2%、MIM精度は±0.5%。表面粗さは、BJTが4-6Raで、MIMはRa1.5とMIMに及ばないが、機械加工とのセットで考えている。ハイブリッドオプション戦略。逆に機械加工屋からのコラボニーズも今後期待できる。

・BJTのメリットは、レーザービームPBF-LBより30-70倍速い造形速度。金型不要で設計の自由度が高い。リードタイムは最短2日で、通常10日でサンプルを提供できる。

【珈琲ブレイ句】自称「新しもの好き」のIndo-MIMには優秀な技術者がいるだけでなく、行動が速いところがイイですね。Indo-MIMのBJT展開の実体験からの論文なので説得力があり、とても貴重な情報です。ただ、ひとつ疑問なのは、BJTとMIMの境界線が50gというところです(理論計算の比較にすぎないと但し書きがありますが・・・)。焼結炉のキャパシティは共通なので、金型償却費用の差か、BJTはバインダーが少量なので脱脂工程費用の差でしょうか。あるいは、BJT粉末は少し粗い部分を使うので粉末単価の差かもしれません。私の推測・個人的意見では、重量が大きくなっても、金型で形成できる形状であれば、BJTよりMIMの方が、生産数が1000を超えれば、コストは安価になると思っています。コストに差が出るのは重量ではなく、生産数量の方が高度に有意です。 最後に気になること。Indo-MIMはMEXを導入していない可能性があるので、ここが後攻で挽回するための入り口かもしれませんね。機械加工とのハイブリッド戦略というならばMEXの方が、よりMIMに近くてイイと思うのですが・・私だけでしょうか?

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2022年4月6日水曜日

MIM入門の古本プレゼント企画(その2)

【終了しました】

前回好評だったので、古本の在庫をMIMに興味がある方にお譲りします。今回冊数を増やして5冊にしました。

内容:MIM入門から、最新Metal AMとの共存共栄ビジネスモデルまで。

MIM布教活動で教科書として使用した古本「MIM入門講座」を先着5名様にプレゼントします。申し込みは HP【業務内容】《お気軽相談窓口》へ

期間:2022/04/06~2022/5/31 

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