2022年2月27日日曜日

なぜFreeFormは、MIM設備を加えたのか

 最近、Metal AM(BJTとFDM)を使った新鋭部品メーカーであるFreeFORM Technologies社(以下FFT社)が、新たにMIM生産設備(射出成形機等)を増設した。その理由を妄想する。

FFT社のビジネスターゲットは3つ ①製品開発初期段階の試作品 ②生産数の少ないレア製品、短ライフサイクル品 ③低開発予算、金型初期投資困難な案件

FFT社のビジネスコンセプト・ワード 『即納』『クイックレスポンス』『1個から試作が可能』『オンデマンド印刷』『客先在庫ゼロ』『MPIF-35のMIM品質』『初期投資ゼロ』

FFT社が遭遇した新たな課題 「数量が多くなったとき、量産化したときにお客様が消える。リピートがなくなる」

FFT社の対策 MIM設備を自社に導入して、MIMメーカーへ鞍替えする顧客の流出を阻止し受注を継続させる。

【珈琲ブレイ句】Free FORM Technologies社がMIM設備を導入した理由がこの妄想通りであれば、MIMメーカーがMetalAM(MIM-Like AM)を始める方が、相対的にパワーがありますよね。金型で形成できる部品であれば、生産量が月1000個を超えると、コストと品質でMIMに軍配があがるということを示唆しているのです。

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2022年2月22日火曜日

割れcracking

 MIM指南書「金属粉末射出成形ガイドブック」5章 5.1 膨れ・割れ・破裂 P159の空きスペースに下記内容を手書きで追記願います。


【原因】の3項として

3 フィードストック、成形体の不均質性(poor-homogereity)による焼結体の割れ

【対策】の7項として

7 混錬条件の見直し。混錬時間を伸ばす、温度を上げる、ニーダ回転を上げる等。加圧式ニーダにする。二軸スクリュー押し出し機のものに焼結体クラック不良が報告されている、再混錬で解消。

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2022年2月21日月曜日

MIM用簡易金型のつくり方

 MIMの優れているところは、金型キャビティ形状を正確に転写し、精密に同じものを大量に製造できるところである。しかし、欠点は、その裏返し「金型が必要」であることである。したがって、MIMの試作品を1個つくるためにも金型は必要である。対策としてMIMの四角いブロックを用意して削り出す方法が思いつくが、これは技術的に不可能である。なぜなら、大きなブロックをMIMで不良なく形成できないためである。そこで、試作のための簡易金型を造る方法を2つ紹介する。方法1:アルミ合金を高速NC加工機で簡易型を削り出す。キャビティ部分をカセット式にする、ブランクのブロック材も事前に準備できる。簡単なスライドは置子で形成できる。方法2:3Dプリンターで樹脂型を造る。こちらもカセット式にする。

【珈琲ブレイ句】方法1は、実際に活用していました。2万回転仕様のMCで削り出せば、切削面の表面粗さも良好、冷却水の穴も明けることができました。アルミ合金型によるMIM成形は数百~千個成形可能です。金型の熱伝導率もよく、試作の製造条件をそのまま量産へ展開できるメリットもあります。 方法2は、CASTEM社とSWANY社の共同出願で特許(出願2015)になっています。SWANY社のデジタルモールド(R)を基本にして、冷却用の流路を形成させるものです。MIMの試作で実際に活用されています。 

デジタルモールド(R)SWANY社の商標、Stratasys J850を使い3D造形した樹脂型。材質は2液混合デジタルABS(光硬化樹脂で熱可塑化しないことが重要)。表面粗さが必要な場合は、キャビティ面のNC加工を追加できるそうです。

アルミ製試作金型:手動式射出成形INARIを販売しているORIJINALMIND社で12万円から簡易金型の購入が可能。MIM試作とセットなら、CASTEM社だと同じ価格+αでMIMの試作が(たぶん)可能です、JUKIAIZU社も同じ価格×2.5で試作金型からMIMまで短納期で対応中(のはず)です。

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2022年2月19日土曜日

勝手にMetal AM分類を増やしてみた

 ASTM F2793-12A standardのAM工法分類は、8種類に増えたばかりだが、AMは日進月歩の進化を続けている。まったく新しい技術や、既存技術の複合などユニークなものが出現している。金属材料を対象とするMetal AMの分類を勝手に増やしてみた。


【珈琲ブレイ句】材料噴射では、液体ナノ金属粉末を使ったものがあるのでMetal AMの分類に入ります。金属箔を使ったシート積層もMetal AMの仲間です。さらに、液槽光重合も、金属ペースト床を使った上面光源式で実用化されているので仲間に入れました。いろいろ集めると、なんとなんと11種類になりました。私の守備範囲はMIMとその仲間達なので、『Metal AM分類、Direct、Indirect』の項目を付けて識別できるようにしました。MIMの仲間達は、Indirect(sinter based AM)の方です。

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2022年2月17日木曜日

Mold Jet という新しいMIM Like AM技術

 まったく新しいMIM Like AM技術がある。大変ユニークなアイデアだ。それは、ドイツのMIMplusという会社で使われている「Mold Jet」である。これは、AM分類ASTM F2793-12A の最新規格8種類に入っていない。誰が発明したのかわからないが.全く新しいお洒落な技術である(Tritone社)。


Mold Jet法は、型をワックス樹脂を使って3Dプリントしながら、金属粉末ペーストをそのキャビティ部位に充填していくというものである。


   図: MIMplus Technologies GmbH & Co. KG より

【珈琲ブレイ句】このMold Jetのユニークなところは、「サポートが型であるところ」です。その場で自己形成させた1レーヤー分の樹脂型に金属ペーストを充填させ、加熱でペーストを乾燥・固化させていきます。積層完了後に、次工程で化学的に樹脂型を除去し、残ったグリーン体を、焼結炉に入れて脱脂・焼結するものです。1レイヤーごとのペースト造形は、スクリーン印刷技術、樹脂型造形は、材料噴射技術で、二つの積層技術のハイブリッドです。

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2022年2月16日水曜日

MEX用材料コストの現状と未来を考える

 BASFが先陣を切って一般販売し、Metal AM市場に風穴をあけた革新的なFFF(MEX)用フィラメント。Ultrafuse®316Lの値段が公開されている。国内購入価格は、¥72,600(3Kg)税込 である。キロ単価にすると24,200円である。

金属フィラメントは、BASFの類似品が登場し始めているので、価格も下がっていくと思われる。さらに、MIMフィードストックをそのまま積層するFPFが材料コストだけに注目すれば一番低価格で造ることができる。なぜなら、長いフィラメントを製造し巻線に仕上げるのに相当な費用が掛かるためである。

【珈琲ブレイ句】BASFフィラメントを使うと、10gの製品は材料費だけで242円になります。MIMの営業も経験した者として判断すると、価格だけでMIM品と勝負することは絶望的です。しかし、MEX応援団のひとりとして、MEXの勝ち筋を考えてみます。MEXの付加価値、差別化技術は何か。それは、少なくとも3つあります。ひとつは、生産数が少なければ、金型償却費を考えなくてよいのでMEXに勝算があります。つぎに短納期で供給できる。MIMは金型だけで数週間必要。3つめは、MIMでは形成できない形状であればMEXの独壇場です。「MEX独り勝ちのブルーオーシャン市場」は確実にあることは明白ですね。もうひとつ付け加えると、模型マニアやセミプロにとって一番使いやすいMetal AMは、断トツでFFFだと思います。

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2022年2月14日月曜日

BASFが低合金鋼でMAからPAにシフトした理由

 BASFが、自社のフィードストック(触媒脱脂)で、MAシステム(マスターアロイ+CIPカルボニル鉄粉)から、PAシステム(WA合金粉末)へ軸足を移した理由がわかった。理由は3つ。

理由1 水アトマイズ粉末の価格が相対的に安くなった。技術開発で品質も球状粉末、高タップ密度へ進化している。

理由2 機械的性質が、PAシステムの方が良い。引張強度で35MPa高い。材質8620(SNCM220相当、as sintered)

理由3 MAシステムは、混合した粉末の分散性の確保が完ぺきではない。また、ニッケルの塊(Nickel-islands)が発生する。

                            参考文献: PIM international 2021 Vol.15 No.2 P85 

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【珈琲ブレイ句】MAシステムにも当然メリットがあります。それは、自由な合金設計ができる。CIPが微細なので低温で焼結できる、また、流動性を確保した時のバインダー量を減らすことができる(収縮率が小さい)。一方、PAシステムにも欠点があります。表面粗度が悪いRa1(MA:Ra0.7)、同じ流動性を確保した時のバインダー量が少し多い、酸素量が多い、焼結温度が高い1380℃(MA:1250℃)。

MA:Master-alloy(GA)+CIP  PA:Pre-alloy(WA合金粉末)

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2022年2月10日木曜日

Metal AMとMIM共存共栄の時代

 MIM-Like AMからMIMへ

 世界的な3Dプリンターのブームにより,安価な3Dプリンターが登場し,個人でも入手できる時代になった.そして要求される材料は樹脂から金属に移行することは自然な流れであろう.

 近年,MIM-Like AMの材料押出法(MEX)であれば数十万円で入手することも可能である.積層造形体を受託し脱脂焼結するeコマースビジネスも米国では始まっている.品質を問わなければ脱脂焼結炉も数十万円で購入できる.

 AMのブームに乗り,MIM-Like AMが認知され,製品メーカーの研究開発部門等で研究用に導入が進めば金属粉末冶金への認知のハードルは低くなる.その先には,高精度で高表面粗度,安定した機械的性質をもつMIMへ要求がシフトアップしていくであろう.また,MIMメーカー自身がMIM-Like AMを導入した,新しいビジネスモデルが米国,独国,印国*1ですでに始まっている.

 MIMは,AMのブームにより再評価され,MIM-Like AMとともに相互補完し共存共栄の関係を築きながらさらに発展していくことが期待できる.
(ぷらすとす2022年5月予定より抜粋)

*1 米国:Parmatech+HP(BJ)、独国:BASF、印国:INDO-MIM+DesktopMetal(BJ)