【問題】MIMの変形を考えた場合、金属粉末は、球形が良いのか、異形の方が良いのか。
「形状を保持するためには異形の方が変形が少ない」と主張する方がいる。
なぜかと問うと、石積効果(お城の石積の石は丸いと崩れる)のためだ。
しかし 私の考えは違う。
「確かに異形の方が石積効果はある」*1
しかし「球形の方が総合力で勝つ」だ。*2
その理由は
①球形の方が比表面積が小さい(最小)
②粉末のタッピング密度を高くできる
③その結果バインダ量を最小化できる
④その結果 収縮率を最小化できる
⑤形状の保持は粉末間のネッキングを最大化させる
表面還元、微細粉末配合
【まとめ】
コンパウンドの「成形性をよくすること」と「変形を小さくすること」は反比例の関係にある。最大公約数では「球形、小径、高TD」が良い。機械的強度も考えればこの選択は間違いない。
*1 粒子間摩擦力σ=C/(δD^2) C:定数 δ:粒子間距離 D粒子径 不定形粉はCが球形粉より大きい 具体的数値わかりません
*2 古い論文にこんなものがあった 【金属粉末射出成形の動向 中村秀樹 鉄と鋼 第76年(1990) 第5号 P662】抜粋 「MIM用の原料粉末としては、焼結性からは高充てん密度が得られ、微粒で不規則形状の比表面積が大きい粉末が要求され、一方成形性からはむしろ逆の傾向の粉末が望まれる。最大公約数的には微粒の球状粉末がもっとも適している。」 2018/09/31追記
工程別に考えてみる
【成形工程】
成形品の部位別成形密度の差(密度が低い方向に曲がる)
・成形速度、圧力など 金型表面あらさ ガス逃げの有無
成形品の内部空隙残存
【脱脂】
重力による変形
・加熱による軟化強度(骨材の種類 POM,PP,PE・・・)
【焼結】
重力による変形
・金属粉末形状、金属密度(バインダ%)、粒径、表面酸化物
収縮摩擦変形
・収縮率(バインダ%)、セラミック表面あらさ
・熱伝導(輻射、伝熱、ガス対流)
【二次加工】
熱処理変形(変態、残留応力)
加工熱による変形
加工抵抗による変形
クランプ変形
MIMの溶媒(溶剤)脱脂法を考えてみる
①どんな溶媒があるのか
・ヘキサン
・ヘプタン
・塩化メチレン
・パークロエチレン
②どのように溶かすのか
・溶剤に浸漬する
・気相させて蒸し器の中で溶かし出す
③汚染される溶剤の管理
・汚れるまで循環し定期的に交換
・汚れたものは排出し新液と置換
④汚染溶剤の再生をどうするか
・専門業者へ委託
・蒸留再生させる
⑤安全問題からの選択
引火性、毒性
⑥使用しているバインダーの溶解性、溶解能力問題
⑦使用しているバインダーの膨潤問題(副作用)
⑧溶剤条件の最適化(1)
特性値:溶解量 因子:溶剤種類、抽出方法、温度、時間
⑨溶剤条件の最適化(2)
特性値:脱脂体変形量 因子:溶剤種類、抽出方法、温度、時間
⑩そもそもバインダの内訳をどうするか
結合材、滑材、可塑剤
いろいろ変数があるので大変ですね
0.マトリックス表で だいたいの方向性を決める
1.一因子の精密実験で特性値の効果傾向と因子の巾を把握
2.多因子の直行配列実験(田口メソッド)で最適化
《日曜MIM知るINDEX》
溶媒脱脂は嫌われているのか
【MIMでよく使う金型材料】
①プリハードン鋼:大同特殊鋼 材質硬度NAK80 HRC38
②SKD11相当:大同特殊鋼 品種PD613 焼入れ焼き戻し硬度HRC60
③SUS系:ウッディホルム 品種 STAVAX 焼入れ焼き戻し硬度 HRC52
【金型寿命向上策としての表面処理】
①窒化処理 (変形はほとんど無い)
②ニフグリップ(耐摩耗性と滑り性、カジリ防止に効果あり)
③金型磨き ヤマシタワークス・エアロラップ(日本スピードショア)◆微細形状でも磨け、離形性改善効果あり◆
警告!(商品を推奨するものではありません、効果を保障するものでもありません)
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