2019年6月14日金曜日

米国のフィードストックメーカーがすごい

米国のフィードストックメーカーR社がすごい。
なにがすごいかというと、その種類と品数。

すべての脱脂法に対応するバインダーと金属材種を揃えている。

アマゾン方式を彷彿とさせる
その物量で世界の他社・弱小フィードストックメーカーを駆逐する戦略でしょうか・・・・

対応する脱脂法グループは3つ
①水脱脂
②触媒脱脂(BASF系)
③溶媒・加熱・超臨界脱脂

統計:品数を観ると
①107種類(14%)
②237種類(32%)
③408種類(54%)
やはり、歴史のある③溶媒脱脂、加熱脱脂の品数が多いです。

材種をざーっと眺めての気づき・・・・
・水脱脂の材種に、超合金INCO718やTi6Al4Vなどが散見される。化学成分規格が厳しいものに採用されるようだ。
・触媒脱脂にヘビーメタルがない。WC-CoのCoが硝酸と反応するためと推察します。
・同じ材種でもバインダー量を調整したものがいくつもあり、金型収縮率に合わせた客先要求に対応しているようです。靴に足を合わせるのはたいへんですね。でもここまで種類があると自分の足にあった品はありそうです。在庫1種200万円として全752種だと15憶円の品揃えになります、あっぱれ!! 『RYER』

2019年6月11日火曜日

BASFのすごいところ

BASF法(Catalysis)がすごいのは脱脂能力がピカイチなのです。

触媒反応でPOMを表面から分解していくので、
脱脂速度が ほぼ一定 2mm/H である*1*2ところ。

他の脱脂(溶媒、加熱)は、肉厚の二乗に比例して脱脂時間が長くなります。

BASFの長所はほかにもあり
・ほぼポリマーだけのバインダーなので脱脂変形が少ない
・大きなものができる
・バインダーを完全にバーンアウトできるので残渣成分がない

欠点は、
・ポリマー主体のバインダーなので成形が難しい。
 恐怖の金型温度100℃超え (ロボットハンドリングなら恐怖ではない)
・硝酸、シュウ酸がある特定の金属を腐食させる恐れがある。
   これらの溶液は腐食液として使われている
・リターン回数が極端に少ない。

完璧なMIMバインダーシステムはないのです。人間と同じです。


*1  Injection Molding of Metals and Ceramics by Randall M.German & Animesh Bose  P197
*2「発煙硝酸で金属(Fe,FeNi)の場合、脱バインダ速度は1~3mm/H ただし、FeCoは反応が頭打ちになる、Coが硝酸と反応するため」 粉末と射出成形技術1996 BASF 村山 P71

2019年6月10日月曜日

「脱脂酸化」とはどんなものなのか 

ジャーマン先生の本 脱脂一覧表にある「Oxidation酸化」が気になったので少し調査した。

脱脂で酸化させるとは、その目的と効果は?

銅のMIMでいくつか論文を見つけた。
《まとめ》
・真空中で酸化させずに脱脂したものは還元雰囲気焼結で全く焼結が進行しない 
・それは、水素と酸素が反応し「H2O」ガスが発生して密度が向上しない
・また、炭素が多いと銅は焼結が進行しない。
・そこで 脱脂酸化(大気中)で「炭素を減らす」C+O→CO反応(C+2O→CO2の可能性もある)
・その時のポイント、脱脂酸化温度を300~400℃にすると、酸化銅が針状になる(CuO whisker) 200℃から酸化し500℃で酸化銅は針状から平たんになる
・この「針状酸化銅が焼結の起点となる」ので
・焼結密度が90%を超える(D50=10μm 焼結温度1000℃ 還元雰囲気中で焼結)

《感想》
 銅のMIMは製造が大変です。炭素を減らすために酸化させて、焼結前に酸素を還元で除去する。ポイントは酸化銅を針状にすること。
 インフラとしては 大気脱脂、水素還元焼結炉が必要だということですね。 焼結温度も低いし専用炉の方がよいかも・・・鋼粉末が混入すると厄介なので製造現場も別管理になるのでしょうか・・・・・・
 エプソンアトミックスでは無酸化銅に匹敵する純銅MIMを売り出しています。確かに「当社独自のMIM焼結技術により含有酸素量をコントロール」と書いてあります。独自技術って?

2019年6月6日木曜日

MIMフィードストックにバラス効果はあるのか?

バラス効果とは、ダイ(金型ゲート)から押し出された成形材料(フィードストック)の断面積Dmaxが、ダイの断面積D0より大きくなること。ダイスウエルとも呼ばれている。
ダイスウエル=Dmax÷D0

普通のプラスチック・射出成形でPP樹脂のダイスウエルは1.5~2.0に膨れる
(230℃、剪断速度10^3~10^4 1/S)

私の結論「MIMフィードストックのバラス効果は、ほとんど無い」
ダイスウエルは0.9~1.1

だから、成形が難しいのである。ジェッティングが発生するから。

むしろ理想的なMIMフィードストックはダイスウエル=1であるべきだとも考えている。 
◇もし ダイスウエルが1より大きいとすれば、それはバインダーがジャブジャブ入っているということになる◇バインダーを最少化できる臨界粉末量(Critical Solids Loading)のフィードストックであれば、ダイスウエルは1になることが理想であろう。しかし、成形が難しくなる、当然です。逆にバインダージャブジャブは、成形が容易であるが、収縮率が大きくなり最終焼結精度が悪くなると推察できる。

【珈琲ブレイ句】
バラス効果はなぜ起こるのか。それは高分子融液が粘弾性体であるからです。細い管内を通過するときには「圧縮」された状態にあり、開放空間に出た直後に弾性が解放され膨らむのです。バインダーだけならバラス効果は発生します。でも、金属粉末が多いと粘弾性体体積が相対的に小さくなりバラス効果も小さくなっていきます。そして粉末がクリティカル(最大)のとき(金属粉末同士が接触した状態)、粘弾性体に圧縮する力は伝わらなくなると考えています
 《実験検証してみました(2020/04/21)》
「ダイスウエル」  「粉末」    「バインダー/VOL%」
  0.99   PF10F SUS316L   自作POM系/35VOL%
  1.05   PF10F SUS316L   市販POM系-O/41VOL%
  1.20   PF10F SUS316L   市販POM系-A/40VOL% 
市販POM系-Aは、結構膨らんでいますね?弾性の大きな樹脂が配合されているようです。ちなみに掃除用発泡パージ剤のダイスウエルは、2.08でした。


2019年6月2日日曜日

各脱脂法の原理と長所短所

ジャーマン先生の本よりPIMの脱脂一覧表を和訳しました。
パーマテック法、ウイテック法、BASF法だけでなく、VI法や同和炉の特許?と思われる記述もあります。 最下の「酸化」がこの表に入っているのが面白いところです、酸化はCIMだけかと思いきや金属粉PIMでもあるようなことが書いてあり、「低安定性の金属」とは何でしょうか?銅のMIMで酸化が重要だと聞いたことがあります。でも、一般的に脱脂で金属粉末を酸化させるとカーボンコントロールが面倒になる傾向があると思っています・・・ところで・・・ 上表は20年前の本からですが、現在この内容を超越する画期的新技術は登場していないですね。 会社のビジョンと脱脂法の長所短所を比較し、どの脱脂法にするのか決めることになります。 『オールマイティーな脱脂法は無い』のです。残念ながら・・・

【珈琲ブレイ句】
MIMの元祖パーマテックのオリジナル製造仕様では、脱脂は3工程です。
それは 表の言葉を借りれば・・・
第一脱脂:溶媒蒸気凝縮脱脂 変形させないようにやさしく脱脂
第二脱脂:溶媒浸漬脱脂   徹底的に脱脂する(骨材となる高分子樹脂を残して)
第三脱脂:浸透熱制御脱脂  真空焼結炉の中でガスを流して高分子樹脂を熱分解し放出
『徹底的に焼結前にバインダーを抜く』
『カーボンコントロールに残留バインダーは使わない』のです。大賛成!! 
ただ、脱脂3工程は過剰品質かも、今の技術では2工程でイイですよね。

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