2019年2月26日火曜日

MIMが粉末冶金であるメリット(その2)

MIMが粉末冶金であるメリットをまとめておきます。
当然デメリットもあります。

【メリット】
・鋳造では作れない高融点材料を作れる(with 焼結助剤)
・鍛造では作れない塑性変形しない材料を作れる
・機械加工が困難な難削材を作れる
・一般PM(圧粉焼結品)の欠点である、密度ばらつきを減らし
 高密度な三次元形状部品を作れる
・多孔質材料を作れる

【デメリット】
・粉末を作るのにコストが掛かる
・バインダーを大量に入れているので焼結体の収縮率が大きい
 そのため精度が高くない(ロストワックス精密鋳造よりは高い)
・内部欠陥(気孔、残留ウエルド・空隙)を完治させる高い技術力が必要

2019年2月24日日曜日

MIMの材料には2種類+α

MIMの材料には2種類ある。

合金粉末を使う方法(初めから目的の材料成分になっている粉末)
混合粉末を使う方法(目的の成分になるように多種粉末を調合する)
さらに②+α の方法がありました。

それは「MA+CIP」法 つゆの素を水で薄める方法
MA=マスターアロイ(合金粉末)《つゆの素に相当》
CIP=カルボニル鉄粉《水に相当》

この製法のメリットは何か考えてみる・・・
・安くなるのか・・・ならない(水アトマイズの合金粉の方が安い)
・納期面で有利になるのか・・・ならない
・品質面で有利なのか・・・可能性あり
 たとえば CIP粉末は微細なので、MAとCIPの混合でタップ密度を高くできる
タップ密度が高ければ バインダ量を最小化でき 収縮率最小化で高精度化できる
 さらに 焼結温度を低温化できれば、炉内温度バラツキの影響を受けづらくなり
焼結密度の分散が最小化でき寸法精度向上、さらにオーバーヒートによる組織劣化が無くなり、機械的強度も高くできる可能性がある。

《補足》
品質工学の損失関数では、品質はコストの関数*1です。
したがって この「MA+CIP」は多少粉末コストが高くても、品質が高ければ、総コストは安くなることは十分考えられます。
 精密さが高ければ、損失コストは小さくなる
*1 損失関数とは 損失コスト=k(y-m)^2   
 m:目標値 y-m:目標値からのズレ k:定数

MIMには「粉末冶金であることのメリット」がある

水に溶かせる塩の量には限界がある、水1リットルで塩約360gまで
沸騰させると塩約400gが溶ける。でも冷ますと塩が結晶(40g分)になる。
同様に、金属を「溶かして合金を作る」ときも「偏析」「凝固粒界」など合金成分がそのまま均等に溶けて固まってくれない。

でも粉末冶金であれば、粉末を計画通り調合し拡散焼結させれば合金が創れる。
MIMは粉末冶金であるので、その合金設計の自由度はたいへん大きい。

MIMの材料には2種類ある。
合金粉末を使う方法(初めから目的の材料成分になっている粉末)
混合粉末を使う方法(目的の成分になるように多種粉末を調合する)

MIMは粉末冶金なのだから「常識破りの合金」が創れる。

《日曜MIM知るINDEX》




2019年2月15日金曜日

最新MIM材利用AMの3D積層装置


20192月現在】
MIMと共存共栄が期待されるAM技術の金属3D積層装置をまとめる。
条件は、MIMと同じレベルの金属粉末を使い「脱脂・焼結」を行う3D積層装置。

《方式1》パウダーベッド&バインダージェット
Digital Metal (ヘガネス社)
ExOne-Sand Printing Process
HP Metal Jet (ヒューレットパッカード社とパーマテック社のコラボ)

《方式2》MIMフィードストックを積層する
The Metal X (巻き線フィラメント)山形大学が国内先行導入中・・
Desktop Metal (棒状フィラメント)
AIM3D(ペレットを使う)
Ultrafuse316LX (BASF社の巻き線フィラメントのみ提供するビジネス)

ずいぶんAMの選択肢が増えてきました。
これらのMIM材の3D積層装置で試作を行い、量産はMIMで。
AMからようこそMIMへ」が新ビジネスモデルですね。

『ことば』
フィードストック:金属粉末(パウダー)とバインダーを混錬・造粒したもの
フィラメント:3D積層装置に使う材料で線状・棒状のもの
ペレット:成形機に入れる粒状成形材料(フィードストックの造粒物)

2019年2月9日土曜日

ガスと水のハイブリッド・アトマイズ法を掘り下げる

ドイツのUSD Powder社が開発したアトマイズ製法技術。
(近年中国で生産されているものはたぶんこの技術?)
商標名「iPowder」 コストパフォーマンスが高い。

《構造》タンデッシュ>フィルター>ガスアトマイズ>水アトマイズ
 と直列に配置されている。
《原理》フィルターを通った溶湯が、ガスアトマイズ(5MPa)され比較的粗い液滴となり、完全凝固する前に、下の水アトマイズ(70~120MPa)の逆円錐・高圧水流壁に激突し微細粉末が形成される。
水アトマイズの水圧の調整で、2種類のタップ密度品を作っている。
《品質》たとえばiPowder316L(6) D50=6-7μm TD=4.6-4.7g/cc
iPowder316L(D) D50=8-9μm TD=4.5-4.6g/cc
酸素量=2000-3000ppm (普通の水アトマイズは4000-5000ppm)
客先要求により 500-800ppmにできる。
形状は球状であるためタップ密度(TD)が高い。
なぜ2種類のTDかというと、POM系はTDを高く、WAX系はTDが低いそうな。成形流動性の関係だと推察される。
《収率》50%~78.9%(水圧120MPa)

《感想》このハイブリッド装置の開発コンセプトは安価なMIM粉末を作ること。確かに、収率が78%あれば安価になる。すごいです。
 一方、エプソンアトミックス社の最新水アトマイズ装置もかなり収率が高くなっているはずです(数値は分かりません)。原理はタンデッシュが特殊で円錐に溶湯を広げ、「水逆円錐の中腹」に溶湯を激突させるところが特徴だったと思います。なんとなくこのハイブリッドの微細化・高収率化が似ている。
 
《なぜハイブリッドにするのか考えた》
メリット:ガスだけで微細化、高収率化できないため。注記1)
水はガスと比較して「質量があり」「高圧・高速化でき」「熱容量が大きい」ため微細化できる。ただ欠点は水(H2O)を使っているので粉末が酸化される。でもある程度ガスアトマイズしておけば水アトマイズでの酸化を軽減できる。
デメリット:アトマイズ化するエネルギーコストがガスと水の両方掛かること。収率が高いので問題ない。のかもしれませんが・・・

注記1)SANDVIKのアトマイズ粉末には、D50=3.5μmの微細粉(SUS316L、14-4PH)がある。

2019年2月2日土曜日

AM(付加製造)とRPについて

十年前、3D積層装置でモデルを作ることは「RP」と呼んでいた。
これは「Rapid Prototyping」「早く試作品を作る」こと。

ところが、米国を中心に「試作品だけでなく量産品ができる機械を創れ!!」となり
名前を「Additive Manufacturing 」とすることになった。
「Additive」は「付加する」だから、機械加工の「除去加工」が対意の語源だろう?
つまり機械加工のように切り粉を出さないで材料を付け加えて造形する製造法である。

でも日本ではまだ AMよりRPの方が理解してもらえる。
日本は時間差攻撃得意だから・・・納得。