2019年7月24日水曜日

「金属粉末を乾燥するとタップ密度が上がる」から感じたこと

袋から取り出す粉末は取り扱いやすいのに
真空乾燥(200℃)すると微細粉末が舞い上がるほど「サラサラ・パラパラ」になる。この結果、流動性が高まり、付着力が低下しタップ密度が向上する。

粉体工学は、「粉体に働く力は二つである」と説明する。
①重力
②付着力

そして、粒径が約10μmを境に、10μmより大きければ重力
小さければ付着力が支配する世界になるそうだ。

MIM粉末の粒径はこの10μm近傍なので取り扱いが難しいようだ。

さらに 付着力は3種類あり、その複合で作用するとのことだ。
①ファンデルワールスの力(分子間力)
②静電気の力
③液架橋力(水分)

金属粉末だと②の静電気は逃げるように感じる、③の液架橋力は真空乾燥すると舞い上がることに関係しているようだ。①は粒子間に働く相互作用で引力のようなものであろうが、金属の密度が大きので重力が有意になる範囲(境)が、数μm小さい方にシフトするかもしれない。

MIM粉末は奥が深い・・・・
「砂糖」でこんな説明がある。上白糖はしっとりでスプーンに付着しやすい、グラニュー糖はさらさらしている。この理由:上白糖は約200μmの結晶、グラニュー糖はその3~5倍の大きさの結晶、原料のショ糖は吸湿性があるが、比表面積の大きな上白糖の方が吸湿されやすい。(粉の本 山本ら B&Tブックス 日刊工業新聞社¥1400)

2019年7月17日水曜日

金属粉末3D積層装置(金属3Dプリンター)の精度向上について考える

MIMと関係ないが、3D金属プリンターはMIMの相棒である。
その相棒の精度を向上させる方法を考えてみる(妄想)。
ここで考える装置は
「バインダージェット方式、パウダーベットを有するタイプ」に絞る。

問題提起:
なぜZ方向(積層高さ)の精度が悪いのか

仮説:パウダーベットに敷く金属粉末の見掛け密度が小さいため、
バインダーが数%であっても粉末間の距離が離れている。脱脂・焼結過程で粉末が重力で移動するため変形する。

◆「雷おこし」を「おにぎり」にする必要がある。◆

対策:パウダーベットに敷く金属粉末の見掛け密度を最大化させる。臨界タッピング密度が目標値である。

具体策: 粉体の見掛け密度を向上させる方法は3つ
 ①圧力を掛ける(例:ラバー容器を使ったCIP)
 ②タッピングする(例:タッピング密度測定器)
 ③振動を与える

【珈琲ブレイ句】
①を志向していると思われるローラー加圧は現存する。
ただ圧力はどのくらいかけられるのか?
ローラーだと線接触なので課題があるかも・・・
面接触にした方がよい。スキー板の様な・・・
②パウダーベット全体をタッピングする方法はあるかも。
課題は、重量が数十Kgになろう。振動音発生、タクトタイムが伸びる。
③パウダーベット全体を振動させる(超音波、衝撃波、固有振動共振法)。
振動体でパウダー表面を一層づつ圧縮する。課題は、やはり音か。

相棒、金属3Dプリンター。さらなる高精度化を期待する。
2019/07/17

粉末の流動性と焼結精度

仮説: 
粉末のタップ密度が高く・流動性が高い方が、バインダ量を減らせるので、収縮率を最小化でき焼結精度が最大化できる。 しかし、逆に保形能力が低くなるので脱脂工程とネッキング前工程で粉末が流動し変形が発生する。

粉体の流動性は、MIM焼結精度に対して「両刃の剣」として作用する。


精度を縦軸に、流動性を横軸にすると
上凸の非線形が成り立てば、その頂上の流動性が最適解である。

探検が始まる。

2019年7月16日火曜日

タッピング密度測定②

自作のタッピング測定装置はこんな仕様だ

・25mlメスシリンダー(この選択は失敗。もっと大きい方が良い*1)
・メスシリンダーを保持する治具(アルミ製)を作る。上部に把持用軸あり。
・ボール盤のチャックにセットする。宙吊状態。
・治具底面に当たる凸部品をセットして、下死点までの距離10mmにセットする。
・ボール盤のハンドルを手動で回して、治具ごと下降させ凸部品に当てる。
 スピードは120BPMで、トントンする。音と振動が響き渡る。

 早朝、実験棟でトントンしていると、徹夜明けの学生さんがのぞきに来た。
迷惑であろう。だがやめません。

【気づき】
・粉末を乾燥させた方がよい。
・粉末はお菓子つくりの「粉ふり」を使って雪の様に降らせること
 これによって、つぎの特性値を知ることができる。
  「かさ密度」 「流動性」  「付着力」

*1 およそ100g程度だとばらつき多し、せめて300gの粉末を計りたかった(反省)鉄系粉末基準で。→100ml容器(約200g粉末)に変更した結果、満足できる値が得れました。20190815

2019年7月11日木曜日

相対密度を考える

MIMの密度を表現するものさしは3つある。

①比重 (単位なし)
②密度 (g/cm3)
③相対密度 (%)

「比重」は水との比較値で単位が無い。水の密度は温度で変化するが、ほぼ1なので、「密度」とほぼ同じである。
「密度」実際に測定される値である。一般的にはアルキメデス法で正確に測定される。
「相対密度」は、密度を真密度で割ったものである。

◆相対密度には注意を要す◆
なぜかというと
相対密度の計算に使っている「真密度」が、ひとつではないからである。
そして計算の真密度が小さくなれば、相対密度は大きくなる。

例えば SUS316L の真密度は 7.86、7.88, 7.89 ‥‥etc (g/cm3)

【珈琲ブレイ句】
 相対密度98%!!すごいと思ってよく見ると、分母の真密度が小さかったということがありました。これは基準とする真密度が異なるためです。例えば手元にある溶性材の
密度を基準にする場合などです。
そこで真密度が異なる理由を2つ考えてみました。
①「合金だから」。元素ごとに固有の密度があり、合金の規格成分範囲内でカタヨルからです。規格の範囲内で、軽い元素が多く、重い元素が少なければ密度は小さくなります。
②熱処理をして構造が変わると体積が変わるので、当然密度も変わります。
 今では、真密度として、JISに記載の「基本重量」なるものを使っていますが、単位は密度だけど少し大きいような気もするので、できるだけ相対密度は使わず、測定した密度そのものを使うように心がけています。

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2019年7月10日水曜日

タッピング密度測定は奥が深い

バインダー量を設計するためには、その粉末のタッピング密度を知る必要がある。各粉末メーカーから報告されるタップ密度(以下TD)は、各社各様の測定機械で測定するの測定条件が統一されていない。そこで「同じものさし」で評価することを始めた。

方法は「手作りタッピング装置で測る」である。駆動は手動であるがタッピング500回くらいなら5分間もあれば測定は完了する。

そこで気が付いたこと・・・
①測定する粉末量mが多いほどTDは大きくなる。(でも上限がある、ヤンセンの式)
②一番驚いたのは、古い在庫粉末を「真空加熱乾燥200℃」したら、TDが大幅に向上した。
③タッピング高さHが大きいとTDは大きくなる。

タッピングは位置エネルギーなので mgH に比例すると思われる。
①と③の実感と一致する。

結論:
臨界粉末量を設計するときは、メーカー発表のTDだけでなく、別の統一したものさしで検証し技術を標準化したほうがよい。
在庫品は、管理が悪いと吸湿している可能性があるので真空乾燥させてから、TD測定する方がよい。

《珈琲ぶれい句》
200℃にした理由は「適当」である。H2O(水分)を蒸発させるだけでなく、水素も除去できるかな?という程度の理由である。
 乾燥前後の重量減を測定した結果:重量減=0.0009% 予想以上に微量でした。それでも粉体性状(粉体流動性)は大きく改善されるのです。