2018年1月23日火曜日

理想的なMIM用金属粉末とは

理想的なMIM用金属粉末の必要な機能は2つ
①焼結密度が真密度に近いこと(理想は相対密度100%)*1
②焼結密度を最大化する焼結温度範囲(焼結機能窓)が広いこと*2

安価な粉末(平均粒径が大きく、タップ密度も小さい)で作ったMIMは高精度になることがあります。上記②の焼結温度範囲が広いので、「炉内温度ばらつき」があっても「焼結密度のばらつき」が少ないので寸法精度が高くなるという理屈です。しかし、その焼結密度が低い欠点があります。上記①がいまいち。これでも問題ない製品であればOKですが・・・・

①と②を両立させる材料開発が望まれます。

「焼結密度の平均値が高く炉内温度ばらつきの影響を受けない頑健な金属粉末」が必要です。品質工学で言うところの「ロバスト性能が高い」金属粉末になります。

これを知るには「焼結温度-焼結密度」のグラフを見る必要があります。

*1    ATMIXの超高密度MIMは相対密度99.5%(SUS630、SUS420J2)を発表しています。反対に、多孔質を作るMIMもあります。
*2 「焼結機能窓」の
 温度範囲は密度が一定になる温度からサチレートし、高温側のリミットまでの範囲。高温側のリミット特性としては、オーバーヒートの限界温度があり、結晶粒が肥大化する限界、炭化物が肥大化する限界などで個別に判断する。

2018年1月21日日曜日

MIMメーカーの4M

4Mは「Method」「Material」「Machine」「Man」です
(過去の投稿と重複しますが)
まとめると・・

Method製法(樹脂材含む)
Parmatec法(米)溶媒脱脂 (国内1社)
Witec法(米)加熱脱脂 (国内最多)
BASF法(独)硝酸・触媒脱脂(欧州、中国に多い)
AMAX法(米)溶媒脱脂(国内1社)
VI法(米)真空・加熱脱脂(国内1社)

Material(金属粉末)
水アトマイズ粉末(エプソンアトミックス、日本アトマイズ、三菱製鋼、神戸製鋼など)
ガスアトマイズ粉末(BASF、カーペンターなど)
カルボニル(鉄粉、ニッケル粉)(BASF、中国など)

さらに
粒度分布、平均粒径、タップ密度、形状 で
精度と焼結密度が大きく変わります
MIM製品からその粉末性状までわからないのですが一番重要です

Machine(成形機、脱脂装置、とくに焼結炉)
バッチ式真空焼結炉
バッチ式真空脱脂・焼結炉
連続炉
脱バインダー、還元反応、低蒸気圧金属の圧力コントロールなど
焼結炉の管理項目は多い 
とくに伝熱3要素を考えるとどの方式がベストなのか・・

Man(技術者、技能者)
技術伝承ができているか
小さな会社だと「個人」に依存しているところがあるようです

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2018年1月18日木曜日

国内MIMメーカー上位15社

国内MIMメーカー一覧表(更新2022/03/23) 
◆外販をしない内製MIM事業所は除いています
◆表の並びは、北から南順です


社名変更:
2023/1/4 日立メタルプレシジョン→プロテリアルプレシジョン

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2018年1月11日木曜日

MIMメーカーには得意不得意がある

「小さなものが得意」「大きなものが得意」「大量生産が得意」「多品種少量が得意」などMIMメーカーによって得意不得意がありますので1社だけでなくセカンドオピニオンは必要です。この違いはその会社の4Mによる訳ですが私の私見を紹介します。

「小さなものが得意」
成形機が25~40トンクラス以下、成形取り出し自動化志向、連続式MIM焼結炉
「大きなものが得意」
成形機が50~120トンクラス、成形取り出しは人力、溶剤脱脂、バッチ式真空焼結炉、内部検査装置(X線)
「大量生産が得意」
小さなものが得意で、多数個取の金型もいとわない、工程能力を高める品質管理能力が高い
「多品種少量が得意」
小回りの利く技術営業、自社に金型工場を持つ、段取り改善に積極的

良くも悪くも各メーカーは独自差別化路線で発展しています。
自分が作りたいMIM製品にマッチングするメーカーがあるはずです。

【補足】
小さいもの=0.1g~10g程度です。蛇足ですがさらに小さいMIMを狙っている「μMIM」をやっている太盛工業は0.01gクラスです、ここまでくると使用する粉末や成形機は別世界のものになります。
大きなもの=私が知る範囲では360g、また遠心力が掛かる羽を造っているところもあります。

2018年1月8日月曜日

MIM材料選定のポイント

一般的な機能部品のおすすめ材料を紹介します 


【錆びない部品を作りたい】
おすすめ:SUS316L
理由:医療用にも使うオーステナイトステンレスの最高峰。MIM粉末コストはSUS304とほぼ同じなのでこちらを使おう。ただしメーカーによっては技術的にC<0.03%を実現できないところがある(SUS316LLLow Carbon 炭素が少ないことで錆に強い) 


【浸炭焼入れ焼もどしをして機構部品を作りたい】
おすすめ:SCM415SNCM415JMOLD
理由:昔はFEN材を使っていましたが、近年水アトマイズ製SCM415や調合粉末JMOLD2など機械的強度が良い材料が登場 

【全焼入れ焼もどしをして機構部品を作りたい】
おすすめ:SCM440SNCM439JMOLD3JMOLD4 (硬度HRC50~55
理由:昔はFEN材を使っていましたが、近年水アトマイズ製SCM440や調合粉末JMOLD4など機械的強度が良い材料が登場 


【錆びに強くて焼入れ焼きもどしをする機構部品を作りたい】追加2018/1/16
おすすめ:SUS420J2 
理由:防錆を重視しで、摺動・回転するところの摩耗が心配なときに使われます。医療用のはさみ等。 


【摺動部品を作りたい】
おすすめ:SUS440CSUS440C-SH(気孔5μm)、SKD11
理由:SUS440C=ベアリングによる転がり摩耗(フレイク摩耗)に強い SKD11=高温になるところ、フレッティング摩耗に強い 


【ばね性がある部品を作りたい】
おすすめ:SUS630
理由:H900処理すると完全にばねになります。欠点はサイジングが効かないので製品設計はMIM焼結変形を考慮すること 


【刃物を作りたい】
おすすめ:SKH51JHSS
理由:ハイス(高速度鋼)は今でも刃物用の部品にはベスト 





2018年1月7日日曜日

要求公差:MIMができること二次加工に頼ること

要求公差に対して「MIMができること」「二次加工に頼ること」
そのだいたいの目安です
IT11等級より低い:MIMの素材公差そのまま
IT9~10:サイジング仕上げ
IT7~IT9:機械加工

オスねじはMIMで形成できる(ただし精度を期待しないこ、PL部を面で逃がす)
メスねじは機械加工・タップ加工(技術的には形成可能ですが金型が高価)

平面度:最大長さ×0.6% (サイジングで1桁下%の公差は可能)
最小肉厚:0.8mm(ただし部分的であれば0.3mm可能)

サイジングとは:サイジング用金型で焼結体をプレスして金型形状を転写させること。MIM材は、ほとんどスプリングバックしないのでサイジングによる転写性が大変良いです。しかし、SUS630はスプリングバックが大きいのでサイジングが難しく要注意です。

2018年1月6日土曜日

MIM製品設計の心得

MIM製品の品質を向上させるためには、その製品形状をMIM向きにすることが重要です。その心得をいくつか紹介します。
①相対的に肉厚のある部分にゲートを配置する(指向性固化、保圧を利かせる為)
②極端に肉厚な部分はできるだけ無くす(対策:肉盗みを付ける)
③内Rを付ける(割れ防止)
④焼結姿勢を考慮する(平面に置ける形状が理想。捨てリブや捨てフランジを付ける)
⑤変形しづらい形状にする(例:クランク形状にリブ・梁を設ける)
⑥パーティングライン(PL:型割れ線)の配慮(例:円筒のPL部に面を形成させる)

形状がどうしても平面に置けない場合、つぎの手を打っていきます
①製品形状に合った専用のセラミックセッターを用意する(かなり高価になります)
②汎用のセラミックセッターを組み合わせて変形を最小にする(手作業が増える)
③その他の特殊な対策を取る
いずれにしてもコストが高くなります

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2018年1月5日金曜日

MIMの公差はどのくらい

MIMの一般公差は、寸法の±0.5% 程度だと考えています。しかし、メーカーによっては寸法の±0.3%としているところもあります。また、最終工程でサイジングをして必要寸法だけをさらに高精度に管理することも行われています。各社カタログの精度の定義が違うのではないかと感じることがあります。それは、「ロット間の精度」と「ロット内の精度」の混在です。焼結1ロット内の精度が±0.3%であっても、次のロットで平均がズレて数ロット合わせると結果として±0.5%になりうるということです。

MIMの公差の構造は主要因で表すと次のようになります。
(MIMの公差:MIMの精度に基づいて決めた管理幅、狭義では精度のこと)

MIMの公差=①金型寸法のカタヨリ+②金属粉末ロットのバラツキ+③成形重量バラツキ+④焼結炉内バラツキ+⑤焼結変形』

【ポイント・課題】

①金型の出来栄え 公差の10分の1が理想(実際は5分の1) 
②粉末メーカーの問題(これがMIMメーカーでコントロールできない)
③成形重量を電子天秤で管理する (標準成形条件)
④焼結炉の性能に左右される
⑤製品設計問題(変形しないような設計・工夫が望まれる)
 焼結条件問題(変形防止セッター、伝熱3要素)