2019年12月31日火曜日

MIMフィードストックの再生材について考える

再生材とは、スプール、ランナをもう一度使うリユース材料のことである。この再生材を発生させないホットランナーがあるが、ほとんどのMIMメーカーは再生材を使っている。その問題と注意点をまとめる。
《問題1》流動特性がバージン材の特性から変化する(粘度が下がる方向)。そのため成形条件を調整する必要がある。その理由:加熱冷却の温度履歴による分子鎖切断、高い圧力・可塑化スクリュウ等による剪断による低分子量化
《問題2》再生材を使った成形品は、焼結寸法が大きくなる。その理由:低分子ワックス等の蒸発揮散により実質バインダー量が少なくなり収縮率が小さくなる。

どうすればよいのか
①再生材とバージン材を配合して量産に使う。その配合比は、その会社の金型方案設計に依存する。粉砕混合あるいは再混練混合。
②ホットランナーにして、再生材を造らない、不良成形体も捨てる。
③再生を繰り返してもバージン材と同じ品質が再現される材料を開発する。

【珈琲ブレイ句】
こんな特許を見つけた、『目的:バージン材、再生材であっても流動性に変質の少ないMIM用原料コンパウンドを得る(特開平8-104903川崎製鉄株式会社)』つぎの方法を使うと再生材の粘度がバージン材と変わらない。その方法は、『混錬した後に、温度を下げ粘度を10000poise以上で10分以上混錬する。』 理屈は「再生材から抽出した粉末はバージン材から抽出した粉末に比較してタップ密度が高くなっていることがわかった。しかもこの変化は定量的にもコンパウンドと粘度変化の主原因と考えるものであった。」とある。


2019年12月25日水曜日

究極の高精度MIMのための課題を考えた

高精度MIMの目指すべき理想機能を明確化して日々研鑽することは重要である。下の3つの課題を克服できた時、究極の高精度MIMが完成する。

課題1.フィードストックが限界粉末量(最小バインダ量)であること
課題2.臨界粉末量のとき粉末(球体)は点接触するが、射出成形できる最低限の界面活性被膜(ナノ被膜、ナノ粉末)を有し、
課題3.この被膜は脱脂中(900℃まで)に揮散し球体粉末を完全に金属接触させることができる。それ以降粉末のネッキング・焼結へと移行させる。

これらができたとき、収縮率は最小化し精度は最大化する。バインダーの種類に依存しない。

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2019年12月22日日曜日

SS系バインダーの話し

 私がSS系バインダーと呼んでいるものは加熱一次脱脂工程を省略してMIM用真空脱脂焼結炉(SHIMADZU炉)を使い「1工程」で「一次二次脱脂・焼結できるフィードストック・バインダー」のことである。つまりこの「1工程」が「SS:シングルステップ」の語源である。この呼び名は、1997年代に仲間内で使っていたが、後日、登録商標出願されており、正式には「シングルステップシステム®」*1とのことである。こちらは「POM系樹脂バインダー」と同義である*2。
 一方この流れとは別に、SS系バインダーが存在する。それは、第一セラモのフィードストックである。ほぼ同年に特許出願されており、POMを使わない独創的なものである*3。請求項の最大の売りは「自社合成した複合アクリル系樹脂」を採用したところ。さすが製薬会社の流れをくむ会社だけあって化学技術力がある。 このように「SS系バインダー」はPOM系樹脂バインダーだけではない。 どちらも使ったことがあるが、品質では甲乙つけがたく、どちらにも長所短所がある。

*1 IHIの商標でしたが、2023年5月に確認するとフリーになっていました。
*2 POMを90%使っているBASF法は土俵が違う別物です。
*3 現在は、脱脂変形低減目的で少し?POMが入っている特許も持っている。

《おしらせ》
勝手ながらSS系バインダーの呼び名を次の様に(勝手に)改名します。2020/06/24
三段階順次加熱脱脂法(Three-step sequential thermal debinding)
略名:3-STD法

2019年12月19日木曜日

バインダー量と射出成形性を体感する

 手動式の射出成形機INARIで試験片を成形している。やはり体で感じることは良いことだと実感する。

 最初の失敗は全く成形できないことだった。原因のひとつは限界粉末量(Critical Solid Lording) を追求するあまりバインダー量を絞ったため、全体重を掛けて射出しても金型ランナー部でショートした。不本意であるがバインダー量を増やしていき、40vol%まで増やさないと手動で射出成形できない、残念無念だ。でも、腕から伝わる材料が流れる感覚は貴重な体験である。(限界粉末量は諦めていません)

 来年は、MFRメルトフローレイトで粘度を測定する。構成は、島津製万能試験機に手作り治具(200Vヒーター内蔵)を置いて、「なんちゃってMFR」を試行する予定である。いつものようにいろいろ失敗すると思われるが・・楽しみである。

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2019年12月18日水曜日

POM系樹脂バインダーを作ると目が痛くなる

今大学で、POMを使ってMIMフィードストックを作っている。POM君の困ったところが2つある。それは、PPやPEと比較して溶けづらいところ。もう一つは、溶けたときに多少ガスが発生する。このガスは「ホルムアルデヒド」なので目が痛くなる。大量に吸い込むと危険だ。ただこれは、溶解温度が少し高いのと、少量短時間の実験なので局所排気設備を準備していないという程度の悩みである。それにしてもこの超高流動性POMのガス臭は異常だ。
《追伸メモ》POMにおいて、必ず上記悪臭が発生するものではないようだ、190℃の混錬でPOM単体では悪臭は発生しなかった。さらに高温側で発生するのか、他の材料、樹脂との反応で発生するのか・・検証は続く・・(2020/05) 
悪臭の原因がわかりました。温度がPOMの熱分温度の上限を超えたため。設定温度は200℃にしていても、熱電対とヒーターが離れているため、ヒーター近傍が高温になったと考えられます。余熱時間を十分確保することで発生を抑えることができました。2020/06/24

2019年12月17日火曜日

PP-PE系樹脂バインダーはPOM系樹脂バインダーに劣るのか

ネット上にこんな文章があった。「PP-PE系樹脂バインダーは、変形や残炭の問題が起こりやすく、POM系樹脂バインダーに変更するとこの問題が解決する。」この文章を読んで直感的に違うだろうと感じたので「私見」を共有化しておく。

《変形問題》
確かにPOMの方がPPPEより脱脂中の熱変形は少ないので正解である。ただし、フィードストックに含有するバインダー量が多いとその差は顕著であるが、限りなくバインダー量を最少化(CSL設計)すると差は僅かになり、その効果の寄与率の差は無視できる。

《残渣問題》
 大気中300℃で40時間加熱したときPOMの残渣(炭化物)は8%に対して、PP91%、PE100%ある*1)。POMの燃焼性は抜群によい。しかし、MIMの比較環境は大気ではない。二次脱脂工程のN2パーシャル環境での比較になる。
 MIM加熱脱脂を想定した比較結果は次の通りである*2)。窒素フロー20ml/min,昇 温速度5/minでの熱分解温度-TGカーブより
POM: 減量率≒0.17(%/s) Weight loss100% 熱分解温度≒330
PP : 減量率≒0.15(%/s) Weight loss100% 熱分解温度≒420
PE: 減量率≒0.22(%/s) Weight loss100% 熱分解温度≒460
すべての樹脂で残渣は無い。 熱分解する速度(減量率=TG最大傾斜)が一番良いのはPEPOM、PPの順になる。POMは大気中の燃焼性は抜群であるが、N2雰囲気ではPOMの熱分解はPEに劣っている。
ここで注目すべきことは、熱分解温度がPOMは低いので、例えばPOMPPを組み合わせれば、段階的熱分解を実現できる。これがPOM系樹脂バインダーのメリットである。・・と説明していただければ納得できる。

*1)プラスチックの300℃における炭化過程に関する研究 藤沢健 長野県工技センター研報 No.10p.M1-M5 (2015)
*2)加熱脱脂 および溶媒脱脂 を考慮したMIM用バインの検討 伊藤芳典ら 「粉体お よび粉末冶金」第49巻 第6号 

【珈琲ブレイ句】
PP-PE系樹脂バインダーは、変形や残炭の問題が起こりやすい」のはたぶん加熱脱脂の世界での比較だと思われます。つまり前者が大気加熱脱脂+二次脱脂・焼結、後者が3STD法(SS系)の一次二次連続加熱脱脂・焼結(真空炉)の場合の比較です。一方、一次脱脂で溶媒脱脂をして、適切に二次脱脂(加熱)すればPP-PE系でも炭素は残りません。残るとすれば排気系のトラブルか、処理重量が過剰のいずれかで、設備管理、工程管理の問題です。


2019年12月13日金曜日

MIM用バインダーが1種類にできない理由

溶媒脱脂と加熱脱脂両方に使えるバインダー(静岡県浜松工業技術センター:伊藤、針幸、佐藤)が2002年に発表されている。実は、この発表以外の実用化されている加熱脱脂バインダーは溶媒脱脂ができるものがほとんどである。一部の例外を除いて。

その例外とは、例えばPOMを主体とするSS系加熱脱脂バインダーである。なぜかというと、「POMは溶媒に膨潤する」から。小さいものは誤魔化せるが、肉厚大物になると溶媒膨潤で割れが発生する。こんな経験がある、依頼実験でPOMが50%以上の成形体をノルマルヘキサン溶媒脱脂したところ地割れが発生しパラパラと一部が崩れた。


MIM指南書 第3章 MIMフィードストックの開発

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2019年12月12日木曜日

なぜ溶媒脱脂をリスペクトしているのか

【珈琲ブレイ句】どっぷりと加熱脱脂の量産も経験しましたが、やはり溶媒脱脂の方が好きです。理由は、「溶媒脱脂には飽和点があるから」です。

例えば、異なる二人から部屋の掃除を依頼されたとします。一人は「塵ひとつ無いように掃除してくださいね」といわれ、もう一人は「ゴミや埃を20%だけ残すように掃除してくださいね」と頼まれたら、どちらの仕事が楽でしょうか?

この例では、前者が溶媒脱脂、後者が加熱脱脂による一次脱脂工程に相当します。

飽和とは「saturation」で、現場の言葉では「サチル」ということです。溶媒脱脂では、溶媒に溶けるバインダーが完全に溶け切る時間が飽和点になり、この点以降どれだけ時間を掛けても脱脂重量は下がりません。製品の最大肉厚に相当する脱脂時間以上にすれば正確に脱脂率を管理することができるのです。

ちなみにBASF法にも飽和点があります、POMしか硝酸に反応しないためです。こちらも品質管理は容易ですね。

第4.3.1 1次脱脂の種類と長所短所
図4.18 自己蒸留機能付き湧出溶媒脱脂装置概念図

2019年12月10日火曜日

溶媒脱脂は嫌われているのか

私は溶媒脱脂肯定派のひとりである。その理由? それは品質がたいへん良いから、特に焼結体の最終化学成分のコントロールがきる脱脂法の一番手、金メダルだと考えているからである。化学成分が保証できないと望む機械的性質は得られない「名ばかり金属*1」になってしまう。ハイスペックMIMを目指すなら溶媒脱脂が必須であろう。(補足:BASF法も良い、ハイスペック向き。)

国内ではどうも溶媒は嫌われ者のようだ。新規に溶媒脱脂は行わないと決めたMIMメーカーに出会ったり、AM3Dプリンターの溶媒脱脂装置も導入の足かせになっているような話を聞く。

もし国内から「ノルマルヘキサンによる溶媒脱脂がなくなったらどうなるか」

ノルマルヘキサンによる溶媒脱脂がなくなったら→《サラダオイルがなくなる》

サラダオイルはノルマルヘキサン溶媒脱脂で造られている。食品企業に学べば問題解決は簡単ではないのか。

*1 名ばかり金属: JIS規格の粉末を使ったMIMだが、MIM焼結体の化学成分がJIS規格から外れているもの。バインダーが残留して炭素になったり、酸化・還元で酸素と炭素が変動したり、ある種の金属Crなどが蒸発減少したり、触媒脱脂でCoが減少するなど。

【珈琲ブレイ句】
解決のキーワードは「密閉」「蒸留再生」ですね。
水を使った脱脂に変更する。ただし、非鉄向き、錆に注意。


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2019年12月9日月曜日

島津MIM用脱脂焼結炉を少し掘り下げる

島津産機システムズのMIM用脱脂焼結炉をなぜリスペクトしているのか。

それは「炉体内部を汚染しないように工夫されている」から。

焼結体を入れる箱を「タイトボックス」と呼んでいる。直訳すると「密閉された箱」。脱バインダーのガス類を密閉し炉外へ排気することを意味している。N2やArは炉内に入ると、断熱材→タイトボックス→ワックストラップ→真空ポンプというルートを通る。決して逆流させない設計思想*1 だ。

量産で困るのが、炉内のコンタミ汚染、特に断熱材の汚染は深刻である。

炉内コンタミが多いと次のような現象が発生する。焼結体表面が灰色や白色になる。この着色がアルミナセッターの蒸発物の場合、昇華コーティングであり、除去が大変になる。

*1 特許明細書の要約:真空脱脂焼結炉が、脱脂時にタイトボックスの外部に微量のガスを導入しつつタイトボックス内部から排気することにより減圧雰囲気とし、脱脂後、先の脱脂時にタイトボックスから漏出したバインダを炉体内部の低い位置から排気もしくは排液することにより炉体内の脱ガスを行なうため、脱脂時には処理物を迅速に処理でき、脱脂後にはタイトボックス内部のクリーンな雰囲気を優先的に確保した上で炉体内部に残存するバインダを液相または気相の状態で外部に排出できる。


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2019年11月22日金曜日

MIMバインダーのネガティブな事象

MIMバインダーのネガティブな事象。それは安全面の課題を克服する必要がある。 どのMIMバインダーも問題を抱えている。まとめてみた。

【溶媒脱脂】
課題:引火性溶剤の安全管理が必要。引火しない溶媒の廃液・再処理問題。
対策:装置の密閉化、局所排気、防爆仕様、安全管理者による教育・管理。沸点が低い溶媒であれば自家製装置で蒸留再生ができる。

【加熱脱脂、触媒脱脂】
課題:脱脂で揮散するバインダーガスの安全管理。特にPOM分解ガスはホルムアルデヒドである。
対策:排気ガスの完全燃焼。

《珈琲ブレイ句》
他に水脱脂バインダーがあります。これであれば上記問題がかなり低減されます。とにかく水なので安全です。しかし完璧ではなく少し問題があります。それは「廃液処理」。そのまま下水に流せません。それから水なので「錆びる粉末」には相性があいません。でもクリーンなイメージの研究事例では、チタン合金に広く使われています。いずれにしてもこれらのネガティブ事象は、技術でポジティブ変換できます。そして必ず実施して管理を維持すればなんら問題にならないのです。課題を知り適切な対応をすること。


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MIMバインダーを復習して感じたこと

今まで当たり前のように親しく付き合ってきたMIMバインダーの面々。改めてその性格や生い立ちを調べてみた。ついでに世の中に発表されている多数のMIMバインダーシステムと比較してみた。

すごいと感心したことふたつ。
「元祖MIMバインダーはよくできている」「新しいMIMバインダーの着眼点がすばらしい」

「元祖MIMバインダーはよくできている」
3つの機能を明確に配合している。成形体の強度を保つ「結合剤(熱可塑性樹脂)」「ポリマーを柔らかくする可塑剤」「成形性を高める滑剤」そして、それらの絶妙な配合比。

「新しいMIMバインダーの着眼点がすばらしい」2つ
・やはり「BASF法」ポリマーだけで構成するは発想が吹っ飛んでいる。
POMの熱分解性に着眼して一次脱脂工程を省略した「SS系」。

《珈琲ブレイ句》 実は元祖君には、秘密の鼻薬が微量加えられています。これは樹脂の劣化を防止するためです。目的を考えると二つ、「製造中のフィードストック劣化防止」と「リターン材利用による粘度劣化防止」だと考えています。一方BASFでは、想像ですが、ポリマーを共重合等させて、可塑剤や滑剤を不要とする樹脂に変化させていると思われます。名目の「POM+PE」だけでは、再現できないと思われます。


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2019年11月16日土曜日

3DプリンターEX-ONE(小田原)を見学した

その工場は小田原の海岸が見渡せる高台にあり、たいへん奇麗な工場(展示)であった。小型機Innoventが3台、HIPER製3D用焼結炉1台。Innoventの1台は出荷調整中とのこと。

高級な金属溶融積層装置(Arcamなど)は航空機や医療などをターゲットにしているが、このEX-ONEは違う。

『鍋釜スプーンを作る』がキャッチコピーである。 
すごいです。

国内大企業の研究開発部門に導入されている。MIMメーカーも導入を検討しているようである。見学当日の午前中にはMIM屋の社長さんが来られていたそうだ。

最後にこの会社のよいところ
『3Dプリンターだけを販売してくれる』ところ
だからMIMメーカーに敷居が低い。MIMメーカーが導入すれば、お客様もついてくる。キャッシュレス化PAYPAY戦略に似ている。カード端末不要で敷居が低い、さらにサービス先行逃げ切り独占化。

2019年11月12日火曜日

MIMが溶ける融点降下

炭素量が多い鋼のMIMは量産焼結工程で溶けることがある。

その原因のひとつに、炭素量が増えることによる融点降下がある。
炭素は融点を下げる力が強く、0.1wt%増えると融点が6.5℃下がる。注1)

炭素が増える原因は、バインダーが炭素として焼結体に残るためである。 バインダーが残る原因は、脱バインダー不足。 脱バインダー不足の原因は、排気系能力低下あるいは、処理量を多くしたため等である。

SUS440Cの炭素規格は、0.95~1.20wt%であるので、上限と下限では融点が17℃も違うのである。高炭素鋼のMIMの製造が難しいのは、このカーボンコントロールが難しいからである。

注1)C<1.7wt%のとき。母材炭素量が多いと、さらに融点降下が大きくなる。例えば、母材Cが4.1wt%を超えるものでは、0.1wt%のC増加で融点は10℃降下する。

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2019年11月9日土曜日

手動射出成型機INARIでMIM成形をする

 大学で小さい手動射出成型機を購入した。数百グラムの粉末でMIM成形体をつくるためである。 メカトロニクス組立キットを企画提供している『ORIJINALMIND CO. JP』のものである。自分で製作するより安いので先生に提案したら即購入することになった。

【組立】ダウンロードしたマニュアルを観ながら組み立てる。ブランク品の組み立てではないので、3時間掛かる。

【成形トライ】MIMの混錬物小片を入れて射出成形。結果はショートショットで失敗。ゲートまで材料が届かず固化停止。無謀にも温度を250℃まで上げる。これが逆効果、全くピストンが動かなくなる。 原因:フィードストックが熱劣化し流動性がなくなった。また、金型温度が低い。

【予備実験】シリンダーに粉末だけを入れて熱電対を仕込み昇温実験を行った。170℃まで20分間掛かることが判明する。

【成形再トライ】フィードストックを粉砕機に掛け粉末化。金型を熱風ヒーター(220℃)で加熱して射出成形を試みる。 金型温度70℃でキャビティに材料が流れる。さらに過熱し金型温度110℃でフル充填ができた。温度を下げていき90℃まで下げられた。

【気づき・まとめ】
・手動式なので射出圧が低い。レバレッジが約8倍なので、ピストン圧は160kg程度しか出せない(Φ20)。
・したがって射出速度が低い。「せん断速度が速いと粘度が下がり、逆に遅いと粘度が高くなる」というMIMフィードストックの性質を体感できる。できるだけ射出速度を上げるため、全体重を掛けて押し下げてみると、確かににゅるにゅるっと」早く成形できる。
・固化による流動性低下を遅らせるために金型温度を90℃まで上げることでMIM材料は成形できる。
・機械加工のボール盤で穴明け作業を行うと材料の性質がわかる。同じように手動式の成形機を使うと、理論を体で理解することができた。擬塑性物質の粘性を体感できる教材が「手動射出成型機INARI」だった。

【追伸2020/03/28】
本格的なバインダーに変えたら、射出成形が難しくなりました。実験用WAX系からポリマー主体の量産バインダーに変更し成形したら、試験片にウエルドが残り、脱脂・焼結で曲がりが発生。手動式成形機の限界を感じています。高圧力・高速度で射出(高剪断)して、動粘度を下げたいのですが、手動では限界があるのです。全体重を掛けたらレバークランク軸が折れました!!(焼入れボルトに交換)。 不本意ながら成形品のハンドリング強度が許す範囲でバインダーのポリマー配合を減らすことにしました。・・・・
【追伸2020/07/11】
バインダー40VOL% まで 成形180℃ 金型温度110℃ ゲート面積2倍 で、保圧が効いて成形品質良くなりました。 金型冷却が大変ですが・・・致し方ない。

2019年11月6日水曜日

市販のMIMバインダーを混錬して驚いたこと

混錬実験には、比較のため市販のMIMバインダーも使っている。その中で、ある1種の市販バインダーの混錬トルク挙動にはびっくりした。それは、臨界粉末量を超えたところで、混錬トルクが直線的に低下していくのである。

混錬は、剪断の繰り返しであるので高分子の鎖が切れることはあるが、観ている短時間(分単位でわかる程)で、直線的に混錬トルクが減少していくのである。この原因はなんであろうか・・。

《仮説》
それは『PPのラジカル連鎖反応による粘度の劣化』だ。たぶん。
これが原因であれば、この連鎖反応の対策は、「発生を止める一次酸化防止剤」あるいは「成長の連鎖を止める二次酸化防止剤」を添加すること。(あくまでも仮説で、検証していません)

とはいっても、初めから粘度低下が少ないPPは、樹脂メーカーが用意しているはずなので専門家へ相談して購入すべし。高分子の選定基準は、分子量の違いだけではないようだ。

2019年11月4日月曜日

自分でMIMフィードストックをつくる

まず、座右の書「ジャーマン先生の本」で復習する。
Injection Molding of Metals and Ceramics   M. German (著), Animesh Bose (著)
本書では、フィードストックは専門メーカーから購入すれば問題ないとしながら、もしつくるならこうあるべきと指標が述べられている。

フィードストックの品質を決める5つの因子
①粉体特性(形状、D50、タップ密度) 
②バインダー組成(脱脂法、射出成形性、脱脂変形)
③粉体とバインダー比(臨界粉末量、寸法精度、収縮率) 
④混合方法(温度、時間、剪断、溶融順番、プレ溶融) 
⑤ペレット化技術(ペレット形状、粉砕粉)

要求される出力特性は2つ
①高い射出成形性
②高い寸法精度
この2つの特性を実現させる手段は、相反する作用として働く。
したがって両立させるバランス追求が肝になる。非線形の最適化問題。

先生の本には次のようにある。
『成形性を向上させるために低分子ポリマーを使用し粘度を下げる。 また、高タップ密度の粉末を使い、粉末中の空隙や空孔を存在させないために、すべての粒子間空間をバインダーで満たす必要がある(臨界粉末量)。 多量のバインダーはフィードストックの粘度を下げるので成形は容易になるが、逆に脱脂での変形が大きくなる。したがって脱脂中の形状を保持し変形をさせない条件は、十分な粒子間相互の接触を確実にすることである。そのためには、粉末とバインダーの比率の最適化が必要である。これが射出成形を成功させるための要である。』 

2019年10月30日水曜日

隆盛を極めるMIMメーカーから学ぶべきこと

国内で今、隆盛を極めるMIMメーカーがある。
この会社と斜陽の会社と比較しながら、その違いはなにかを考えてみた。

①MIM製法(バインダシステム)の更新をしている。
 斜陽会社:MIMを立ち上げた経験者の力が強く、従来法に執着する。技術ノウハウを社内でオープンにしない傾向。新しいMIM製法に更新できない。 現場の意見が強すぎて、成形できない、経験が無いのでできないという風潮がある。
 隆盛会社:今のMIM技術を俯瞰し、会社に最適な工法に集約し、更新していく。ビジョンを示し、現場のベクトルを揃える。

②絶えず新しい粉末へ更新していく。
 斜陽会社:金属粉末を変更しない。密度が向上できても収縮率が変わるから採用しない。MIMは管理技術が重要だからと工程変更から逃げる。現状維持が一番大事である。
 隆盛会社:現状維持は当たり前品質。最新技術を採用するための研究・技術開発を継続する。収縮率が変わっても機械的品質や精度を重視する。金型の伸び尺は二次要因(結果)である。

③新しい応用技術を取り入れる。技術伝承。
 斜陽会社:現状維持。個人のノウハウ。技術者退職、設備老朽化。
 隆盛会社:改善・改革志向。常に新しい技術を研究・量産化し、会社に技術を残す。技術マニュアル化、社内勉強会、技術伝承・継承に積極的。

2019年10月24日木曜日

もしもMIMフィードストックメーカーだったら

もしも自分がMIMフィードストックメーカーだったら、どうやって成長すべきか空想してみた。(無責任シリーズ第2弾)

5F分析
【自分:フィードストックメーカー】
MIM工法は何か、溶媒、加熱、触媒
お客様はMIMメーカー、既存、新規開拓
【売り手:材料】
金属粉末メーカーが継続的に開発しているか
QCDでトップか
安定供給できるか(特に、カルボニル粉)
【買い手:お客様】
《既存のMIMメーカー》
撤退・統廃合  国内市場年5%増
MIMフィードストックの自社生産へ切り替えで、お得意様減少
《新規》
自社製品のMIM内製化ニーズがある
プラスチック成形メーカーのMIM新規参入
金属3DプリンターのMIMへの転用(MIM試作から量産へ)
【競合:新規参入MIMフィードストックメーカー】
米国RYER:加熱、溶媒、触媒すべてを揃えるAMAZON戦略
BASF:素人への販売体制、教育センター・試作から量産へ
中国のフィードストック(SS系、触媒)
国内:M社、F社、D社、A社(加熱、SS系、バインダーでの販売)
【競合する代替工法】
MIM用粉末を使用した、3D金属プリンター

まとめ(戦術・戦略)
もしも自分がMIMフィードストックメーカーだったら
・MIM脱脂(国内市場)は、溶媒、加熱に絞る。その技術データを磨く。
・「ここに頼めば大丈夫」ワンテーブル営業、ワンストップ体制。
 材料だけでなく、金型からMIM製造一式すべてのサービス提供。
 MIM業界の「保険の窓口」をめざす。
・素人への販売を考える。MIM事業所の新生を助ける。
 新規が増えなければ市場は増えない。
・新生MIM事業所への設備導入~ノウハウを総合的に提供する。
・金属3Dプリンターを相棒にする。

2019年10月22日火曜日

MIMと変成形加工

MIM単体で高精度化は必要である。しかし、限界がある。それ以上の要求精度には「工法の複合化」が必要である。
二次的複合加工としての「変成形加工」について考える。具体的には、「閉塞鍛造」「プレス加工」「サイジング、コイニング」「転造」などである。

いくつかMIM展開例を紹介する。

閉塞鍛造:正確に計量された材料を金型に入れ閉塞状態で鍛造する。MIMは、たいへん正確に計量された材料であるので、最終工程にて金型でサイジングすることは、究極の閉塞鍛造である。射出成形での金型転写(一次転写)だけで最終製品寸法を保証する「オープンループ制御」には限界がある。この方法は、二次転写でループをクローズドさせる方法である。

プレス加工:板金加工における板材の曲げ加工やシェービング加工。密度が100%ではないMIMは、スプリングバックが無視できるほど小さい。そのため平面プレスで平面度0.05が簡単に出せる。また、除去加工に分類されるかもしれないが、打ち抜きやシェービング加工もできる。

転造:MIMへの応用例としては、外径ネジ転造、切くずがでない溝無タップ加工、外径軸へのスパロール加工(スギノマシン)では、表面粗さが0.8Sになり精度もIT8~9級に管理できる(SUS316L)。

寸法公差と削り代

MIMは、ネットシェープ(net shape)ではない。
MIMは、最終製品寸法に非常に近いニアネットシェープ(near net shape)である。MIM精度向上は継続すべき重要なテーマであるが、現在のMIM精度は、IT10等級レベルである。

それ以上の製品要求精度(嵌合はめあい等)を実現するためには、二次加工が必要である。例えば「変成形加工」「除去加工」などである。

そこで問題になるのは、加工する程度(量)をいくつにするかである。
それは、「転造代、プレス代」「加工代、削り代」などである。

今回は、削り代について考える。JIS-B-0403 鋳造品の一般公差方式及び削り代 の考え方は次の式である。


基準寸法(素材寸法)=仕上がり寸法+RMA+CT/2



仕上がり寸法:製品完成寸法
RMA:要求する削り代(たぶんRequired Machining Allowance)
CT:公差巾

ちなみに、上記JISのロストワックス精密鋳造におけるRMA(等級A)は次の通りである。
最大寸法     RMA(等級A)
  40以下       0.1
40~63以下       0.1
63~100以下     0.2
100~160以下      0.2

MIMは鋳造品の様な抜け勾配が不要なのでRMAは小さくてよいはずだ。どのような設計標準にするかは各社に任せたい。JISにMIM用のRMAは無い。注意:RMAは、小さい方がよいが、発想として偏らず、捨てリブや捨てフランジなど積極的に大きな加工代(部位)を設ける柔軟さが望まれる。

◆MIM公差MTと削り代RMAの参考提案を「MIM指南書 金属粉末射出成形ガイドブック、P41 表2.5」に載せました。2020/11/1

2019年10月11日金曜日

実験用MIM脱脂焼結炉を造るための設計書

◆終了しました◆
『実験用MIM脱脂焼結炉を造るための設計書』   絶賛公開中!
実験用管状焼結炉を改造してMIM脱脂焼結炉にした図面です。
下記へメールいただければ転送返信します。
【無料相談】のお気軽相談窓口へメール MIMを体験してみよう。  成形材料の購入先は紹介いたします。 始めは、溶媒脱脂が失敗しないのでお勧めです。 簡易的溶媒脱脂装置の作り方も説明します。

2019年10月9日水曜日

MIM不良に「巣」はあるのか

現役時代、この質問を受けたらこう答えていた。『発生原理は異なりますが、巣のような不良は発生します。」

本当は「MIMには巣は発生しない」。でもお客様のイメージしている「巣」とは内部不良全体を指していることは明白である。

「巣」は鋳造の言葉で「Shrinkage」である。直訳すると「収縮」である。凝固収縮に相当する体積を補給(押し湯)できなくなった時に発生する。内部にできれば「内ひけ、ひけ巣」表面にできれば「外ひけ、ホットスポット、表面ひけ巣」形状が空洞であれば「Shrinkage cavity」と呼ばれたりする。現場ではガス欠陥、カミモノ欠陥も「巣」と呼ぶ。内部欠陥はとりあえず「巣」と呼ばれる。 さらに、健全度レベルで評価される「マイクロシュリンケージ」や「スポンジ状組織」も「巣」である。

MIMの内部欠陥を考えてみる。
・成形肉厚部に発生する成形収縮欠陥(内部に空洞ができる)
・低密度焼結不良(密度が規格に入らない)
・成形工程での空気の巻き込み(丸い空洞、空隙)
・ウエルドや流動すべり面が起因の空隙
・バインダー残りによるガス残存空隙
・還元ガスの残存(丸い空隙)
お客様は原因がなんであろうと「内部不良(巣)」が心配なのである。

2019年10月8日火曜日

MIM不良「膨らみ」を考える

MIM入門講座で質問の多いMIM不良「膨らみ」について考えてみる。

【現象】餅が膨らむように、MIM焼結体の表面に凸上の膨らみが発生する。また表面皮が剥離する。小さな水泡が表面に発生する。

【原因】餅で考えてみる。餅が膨らむ原理は2つの合わせ技である。ひとつは、餅の中の水分が、気体(水蒸気)になり体積が増大する(体積膨張)。ふたつは、餅に粘性があり、気密性が高いため気体が外部に逃げられず、餅の表皮を膨らませる。

 MIMの場合も同じ原理である。原因のひとつめの水分に相当するものは二つ。①-1バインダー(高分子樹脂)の気体化による体積膨張 ①-2還元反応ガス(C+O→CO)による体積膨張 原因のふたつめに相当するのが、表面の焼結による緻密化(閉気孔化)

【対策】
 脱バインダーを完全に行う。還元反応を完全に行う。どちらも対策は同じ、排気系能力の確保(設備保全)、処理時間を延ばす、処理量を減らす。表面が緻密化(閉気孔化)する前に、内部で発生するガスを逃がせば膨らまない。蛇足:セッター面からガスが逃げないために密閉状態(セッターで蓋をされた状態)の内部凹部に膨れが発生することもある。これはセッター面をディンプルにしたり通気性を発現させるアイデアで解決できる。
 《追加2020/05/31》一次脱脂が不足していると、二次脱脂が遅れ、それにより膨れが発生することも付け加えておく。

【製品設計対策】
 安全設計として、「肉厚部位を減らし・肉盗みを設ける」と「膨れ不良は完治できる」。こんなスマート設計された図面を観ると元気がもらえる。

2019年9月29日日曜日

驚き粉末を少し掘り下げた

前報の驚いた粉末を深堀する。
理想的な粉末の定義10のいくつかと比較してみる。

①0.5~20μm、D50=4~8μm であること。
 <20μm 98.9% D50=6.05μm  
②非常に狭い粒度分布で 比表面積Cw=2(単位がわからん)
 非常に狭い粒度分布  比表面積Cs=1.2(m2/cm3)
③理論上50%を超えるタップ密度
 56% (真密度7.98g/cm3として)

このA社のSUS316L粉末は、かなり理想に近いことがわかる。
水アトマイズでここまで来るとは「あっ晴れ!!」

臨界粉末量を測定して驚いたこと

大学の先生と、臨界粉末量の測定を始めた。
臨界粉末量「Critical Solids Loading」の定義は「粒子が外圧なしでできるだけ密に充填され、粒子間の全空間がバインダ―で充填される組成である状態」の金属粉末量である。
最初の実験で衝撃的なことがわかった
A社の最新水アトマイズ粉末(D50=6μm)の臨界粉末量を、ラボプラストミルを使った混錬トルク法で調べた結果、私の予想を大きく裏切ってくれた(良い方向に)。
私の予想(推定値)より臨界粉末量が10%も多い結果となった。あまりにも予測から乖離しているので確認実験を行なった。結果は再現した、この粉末の実力で間違いない、凄い。
測定に使用したバインダをステアリン酸単体としたので実際のバインダではないが、もしこの組成でMIMフィードストックを製作し、成形できれば「収縮率最少化」が実現でき確実に焼結精度は向上する。


2019年9月25日水曜日

タッピング測定とヤンセンの式

【タッピング測定を行って得た失敗】
MIM粉末のタッピング密度を向上させる目的で、容器に入れた粉末の上面に重りを載せてタッピングしたが結果が変らなかった。なぜか?


【理論から考える】
「ヤンセンの式」サイロの設計に使われている古典理論。
理論①「サイロの底の圧力は、高さに比例せず、ある高さ以上になると圧力は増えない。」理論②壁との摩擦力が大きく関係する 理論③水平方向に大きな圧力が発生する。

理論式は難しいので図やグラフを載せる。
水は深さ(高さ)hが高くなると鉛直圧力は直線的に増加するが、粉体は比例しない。
粉体の密度は底面で高く、上面では低い状態。密度が傾斜している。
(参考:構造計画研究所・設計者向けCAE/解析 情報Webサイト)

【どうすれば良いのか】
①タッピング容器は、同じ体積なら直径を大きく、高さを低くし、単位体積当たりの側面摩擦力(摩擦が作用する面積)を小さくするべし。

さらに、プラスティック製の容器を使うと、一回の測定で容器内面が「曇りガラス」の様になるので、
②容器内面の摩擦係数は少ない方がよい(表面あらさは小さい方がよい)。また、硬質なものを選ぶべし。 もし金属で作るなら、調質をして内面を鏡面にする。

2019年9月24日火曜日

「テンパーカラー」は「MIM設備保全の警告信号」

高温の鋼は空気中で酸化し綺麗な色の酸化被膜を作ります。これをテンパーカラーと言います。第一鉱業のHP「熱処理用語の解説」で、貴重な色見本があったので入手しました。(元ネタは日立金属のカタログからの引用とのことです。)

MIM製品もこのような色が付くことがあります。発生原因はふたつ。
① 焼結完了後、炉冷200℃まで待てず、途中で空気を入れて扉を開けたとき。
② 真空焼結炉がリークしていて空気が侵入したとき。こちらは早くリークを修繕しないと炉内カーボン部品が摩滅して、穴開きチーズのようにスカスカになります。カーボンヒーターも同様の被害を受けるので、温度管理も不安定になります。

テンパーカラーは設備保全を促す警告信号です。


  

2019年9月18日水曜日

アトミックスのアトマイズ技術を掘り下げる

今では、トップを独走する感のあるアトミックスの水アトマイズ粉末。
自ら語る「世界をリードするアトミックス独自の技術」とはどんなものなのか。特許明細書を調べてみた。

出願2002年
①タンデッシュから落下する溶湯をガス流で分裂させる②その液滴を高圧水をノズルから噴射し作った水の逆円錐にぶつける第二分裂③直下の圧力を上げ水蒸気を液化させる。
【ポイント】水アトマイズされる前に、第一分裂で液滴になるので球状化でき、収率も上がる。また、アトマイズ直下の圧力を上げることで(水の蒸気圧の関係で)水蒸気を水に変え、粉末の酸化を低く抑えることができる。

水アトマイズの前に、液滴化する方法は、以前紹介したガスアトマイズを第一分裂に使う方法と目的は同じだ。ガスアトマイズと水アトマイズのハイブリッド。

出願2011年2月8日
タンデッシュの下にもう一つタンデッシュを設ける。この下のタンデッシュの壁部内に誘導加熱コイルを内蔵させる。
【ポイント】溶湯の温度を正確に管理できるので大気からの酸素侵入を最少化できる。また、溶湯は磁界で対流撹拌されるので金属粉末組成が安定する。 311後、再稼働した粉末工場を見学させていただいた。大きな四角いタンデッシュに電極のようなものが付いていた。たぶん、これですね。

出願2013年
第一分裂の改良版:タンデッシュの下に筒を設け、筒の下端面には複数の穴がある。その穴を通る溶湯が丸い液滴となる。

特許明細内容が量産技術に展開されている保証はない。しかし、このように技術開発を継続していることに「世界をリードする独自技術」を自負する根拠がある。

過去の技術(特許時効)は展開されている可能性はある。例えば、高圧旋回水ジェットによる球状化(発明者:福田金属、菊川)。

ウォータージェットのスギノマシンのHPに水アトマイズの解説が載っている。水圧は高い方が微細化、球状化できるので。この本家技術とのコラボもおこなっているかも?

2019年9月14日土曜日

だれでもMIM化時代のお試しセット

・溶媒脱脂用バインダーセット、PETTYの販売は終了しました

2019年9月13日金曜日

粉塵爆発について学んだあらたな3つのこと

先日の粉末冶金講習会(PMMIMの二部構成)で、PMの先生から学んだ。

①自分で燃焼テストを行って判断することができるらしい
 小型ガス炎着火試験(30°に傾ける)で、10秒以内に着火しなければ、普通倉庫での保管ができる。
②粉塵爆発しやすい金属
 危ないグループ順:「ZrMgAlZn」「TiSiFe
③一番危険な発火源は、「集塵機」で、特に、その「バグフィルター(bag filter)」で発火する。爆発が起こると爆風が配管をとおり、連鎖爆発が発生する。

MIM工場を想定すると、一番危険なのは、やはり「混錬工程」である。

設備管理、日常点検が重要。「安全がすべてに優先する」◆


日本粉体工業技術協会規格APS002-1991『粉じん爆発性試験方法』

2019年9月3日火曜日

理想的なMIM粉末の10の定義

ジャーマン先生の本から学ぶ。理想的なMIM粉末が具備すべき10の特徴は表3.1のとおり。

《表3.1誤記訂正》誤:比表面積Sw 正:正規分布勾配パラメータSw

【本文和訳抜粋】このリストは、いくつかの粉末および粉末特性の組み合わせの研究に基づいた複合的結果で、多くの場合、要件は矛盾している。球形粒子は成形が容易で、固形物の充填量が多いことが好まれるが、不定形粒子は脱バインダーのゆがみを軽減する。したがって、PIMパウダーを選択するにはバランスが必要である。Ref:  Injection Molding of Metals and Ceramics by R.M.German & A.Bose (1997) P57

【珈琲ブレイ句】
この表が1997年に発表されていることに驚きを覚えます。当時はカルボニル粉とガスアトマイズ粉末が選ばれていたことが想像できます。その15年後に、日本の水アトマイズ粉末メーカーの技術開発により、不定形の水アトマイズ粉末は理想的な粉末へと改善されていきます。さらに研鑽は継続され、いまでは、収率を上げ低価格量産品を造りまた、微細側に粒度分布をシフトさせ収率を上げ、サテライトも無く、安価な粉末ができるようになっています。日本の技術力が頼もしい限りです。

2019年9月1日日曜日

MIMハンドブックを買ってみた

今年2019年の7月に、MIMハンドブックが出版されています。
タイトルは、Handbook of Metal Injection Molding / Second Edition  /  Edited by Donald F. Heaney

 来年自主出版する本と、タイトルがほぼ同じなので、敵陣視察のため購入しました。

《内容》
頁数636 25章 著者36人の編集本、読み応えがある。すべて英語。
始めに、ジャーマン先生が登場し、知らない先生達の中、三浦先生が25頁執筆されています。もう一人の日本人、近大の西藪先生はマイクロポーラスを担当されています。

【自主出版本の編集方針】
 自主出版本の狙いが、上記の本と被らないので安心しました。
 自主出版本の編集方針は・・・・・・
 ・体験から得たノウハウ(KnowHow)と理論(KnowWhy)の融合で構成する。 
 ・MIM不良対策とMIM製品設計に軸足を置く。
 ・具体的な、生々しい材料開発、製造条件と不良原因との書内リンク構造。
「MIM金属粉末射出成形指南書 Handbook of Metal Powder Injection Molding for Engineer」2020年11月01日 出版予定!! 出版されました。Amazonで購入できます。