ひとつ【せん断速度依存性】せん断速度を上げると粘度がさがる。つまり、射出速度を上げると流動性がよくなる。
ふたつ【温度依存性】温度を上げると粘度がさがる。つまり、射出温度を上げると流動性がよくなる。
この性質を利用して成形の充填性を上げることができる。
手動の成形機を使って実験をしていると体感できる。「射出速度が遅いと成形品質が悪い感じ」の正体を、実際のデータを観察して考えてみた。
そのデータとは、「CAPILLARY FLOW」キャピラリーレオメータのデータである。普通の出力は、両対数グラフで描かれるので、こんなグラフになる。
せん断速度が大きくなると、直線的に粘度が下がっている。奇麗な直線関係が素敵である、しかし、これは対数の世界の話しである。
ここで、対数変換を戻し真数でグラフを描き直してみると、イメージが大きく変わる。
このグラフから直観的にわかること。
①ゆったり・ゆっくり射出成形するときは、驚異的に粘度が高い。
②せん断速度が500まで上がると粘度は急激に低下し、
③1000を超えれば、粘度はほぼ飽和する。
いかに手動成形機によるMIMの成形が難しいか納得できる。
④低速域では、温度を上げると粘度を下げることができる余裕があるが、高速域では、粘度がかなり下がっているので、実質(現場的には)温度を上げても流動性が改善されない(高せん断速度域では、温度依存性の寄与率は小さい)。
せん断速度1000(1/sec)が、実際どのくらいの射出速度になるのか?Φ2mmのノズルでΔyを半径と仮定できるのであれば、速度Vは、(V=Δy×せん断速度)である。(計算省略)
結果:せん断速度1000(1/sec)は、Φ2mmのノズル内で『射出速度は31.4cm^3/sec』である。 速っ!
手動射出成形機では、射出温度を高め、金型温度を上げることが成形品質向上には有利にはたらく。