成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」について掘下げる。
①材料(物性値のばらつき、配合剤等の混合率のばらつき、製造ロット品質のばらつき、温度・湿度管理の差異によるばらつき、成形時の熱履歴の差異による分子量のばらつき
②金型(成形サイクル内での金型温度の時間的ばらつき、金型内の部位による金型温度の空間的ばらつき、複数キャビティにおける設計製造上のばらつき)
③-1射出成形機(可塑化・計量工程における均温化のばらつき)
(1)供給熱エネルギーのばらつき(圧力のばらつき、温度のばらつき、体積のばらつき、分子量(熱履歴)のばらつき)
(2)樹脂の噛込み不良(突発的に計量動作不能に陥る状態
(3)ソリッドベッドのブレークアップ現象 (固相の連続体が可塑化途中で分断することに起因する液相温度分布のばらつき)
③-2射出成形機(射出工程における体積のばらつき)
(1)計量工程終了から射出工程開始までの間の体積ばらつき
(2)射出工程開始直後の体積ばらつき
インライン式の射出成形機では,逆流防止機構の構造的な課題から射出時に微少量の樹脂逆流が発生し,射出工程の計量不安定因子となる。
【珈琲ブレイ句】ファナックのロボマシン研究開発統括本部長の高次聡さん(Takatsugi, Satoshi)の東大博士論文「射出成形機における計量不安定現象の可視化解析と安定化技術の開発」からの引用です。
個人的に注目したのは、逆止弁(チェックバルブ)からの逆流問題のひとつである、シリンダー(バレル)と逆止弁外径との隙間と逆流量の関係を解明した実験です(図7.12)。隙間を3水準作った実験で、直径差Φ400μmになると、逆流量の指標である”スクリュトルク時間積分値”が急激に大きくなっていることがわかります(分散も大きくなっています)。この指標を使えば、逆流量の安定性を監視することができ,逆流弁の交換時期の予測が可能になるという内容です。
この論文の中には、逆止弁は常に予備を用意するように!など、細かい指導まであり、ほんとうにありがたい教科書です。流石!日本のロボットと工作機械のトップリーダーFANUCですね。
PS. MIMの射出成形の場合は、成形材料に多量の金属粉末が入っているので隙間を大きくしないとシリンダーロックが発生します。それでも隙間は大きくてもΦ400μm程度にしたいですね。隙間が大きすぎると成形品の重量バラツキが大きくなってしまうということを、ここで学べたのですから。
MIMの成形品質を徹底的に向上させたいと考えている技術者の参考になればうれしいです。