2021年8月29日日曜日

なぜ「AMからようこそMIMへ」のセットなのか

 ◆MIM-Like AM(焼結を前提とする金属粉末利用付加製造)とMIMは素形材製法としてセットであると考えている。この2つの製法には長所短所があり、セットで考えれば金属製素形材製法として最強だと考えているからである。◆AMの最大の長所は『AMは金型不要で超短納期の試作品を造形できる』。一方短所は『AMの品質と価格・納期のパラドクス』がある。AMは積層原理から表面粗度はレイヤー厚さで決まる。表面粗度を上げるためには、レイヤー厚さを小さくする必要がある。その結果、積層時間がレイヤー厚さの逆数に比例して大きくなる。さらに積層体1個当たりのイニシャルコストも高くなる。また、積層原理より最小レイヤー厚さは、粉末粒子5粒は必要で、造形傾斜部分の表面粗度はRmax35μm(Ra9)が限界*1である。◆MIMの短所は金型が必要なこと。長所は、粉末の径に関係なく30~60秒で射出成形を完了できる。表面粗度はRmax8μm(Ra2)が普通にでる。金型を鏡面仕上げにすればRmax4~6μmも可能である。工程間仕掛を無くせば、MIM量産品は最短3日間で出荷できる。

《まとめ》試作はMIM-Like AMで行い、機能試験を繰り返し製品仕様が固まる終盤に、MIMの金型製作に着手すれば、垂直立ち上げは可能である。AMからようこそMIMへ。2つはお互い相棒であり、このセットは最強である。

*1 レイヤー最小厚さ=粉末5粒=10μm×5粒=50μm、 45°斜面の表面粗度(Rmax)=レイヤー最小厚さ÷√2≒35μm≒Ra9


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ぷらすとす5月号「Metal AMとMIMの共存共栄の時代」5頁 



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2021年8月25日水曜日

将来MIM-Like AMは家電になる

 数万円の3Dプリンターが市場にあふれている。もうすぐ家電になることは明白だ。そして、続いて、あるいは並行して金属粉末を使った3Dプリンターが家電になる。

試しに、銅と亜鉛粉末の混合で作った成形体を家庭用電子レンジと専用窯を使って脱脂焼結してみた。酸化を無視すれば一応焼結体は完成する。*1 銅亜鉛合金ではなく銀粉末を使えば、宝飾品も造れる。さらに低融点合金粉末を使った3Dプリンターで実用性の高い家庭用品を自作できるだろう。

家庭用プリンターのように、まずは家庭内で普及し、本物(美術品レベルの印刷物)が欲しくなったらプロに依頼する。この流れのように「家庭用AMから、プロのAMへ、そしてMIMへようこそ」------この扉はすでに開かれている。*2

*1危険なので真似しないでください。

*2すでに、 FFF方式の積層体を、脱脂焼結するサービスは海外で存在する。

【珈琲ブレイ句】◆家庭用電子レンジを使った脱脂焼結実験では、七宝焼き用の窯(マイクロ波キルン)を使いました。500W-5分で840℃に昇温できます。また、調子に乗って最高出力で試すと750W-10分で1281℃を確認できました。しかし、窯の耐熱強度が低く焼結体の接地面が欠損しました。また、窯の遮熱力も低く、漏れた伝熱でレンジの回転皿が破損しました。◆注意:これは窯が悪いのではなく、私の無謀な使い方が悪いのです。繰り返しになりますが、くれぐれも危険なので真似しないでください。◆もう少し温度の低い合金を選べば実用化できそうだという感覚が得られたことが最大の成果です。◆イメージは、CASTEMさんが発売している、低融点合金を使った「インスタント鋳造キット」だったのですが、この電子レンジ焼結実験はあきらめ、終了させました。でも、このようなキットが登場すれば、博士ちゃん達が大喜びで集まってくれるはずです。誰か発売しないかな「だれでもMIM-Like AMキット」 。


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2021年8月21日土曜日

MIM-Like AM とMIMの表面粗度

 焼結を前提とする金属粉末利用付加製造である「MIM-Like AM」の表面粗度を比較する。AMはZ軸側面の表面粗度*1である。AMと比較するMIMは表面粗度に方向性はなく金型転写面のAs-sinteredである。

MEX:Ra12 、BJT:Ra8 、VPP:Ra4 、MIM:Ra1.5~2

MEX:溶融積層、Material Extrusion (FFF,FDM)、BJT:バインダージェット、Binder Jetting、VPP:バット光重合、Vat Photopolymerisation

【珈琲ブレイ句】◆溶融積層MEXは安価で手軽に使えるので一番敷居が低い入門機ですが、表面粗度はMIMより6倍悪い結果が玉に瑕です。◆BJTは表面粗度が良くなりますが、それでもMIMより4倍悪いことがわかります。どちらも、機能部位へ機械加工を追加すれば問題なく試作評価試験や製品化か可能です。◆一番表面粗度が良いのはVPPでRa4μmです。MIMに肉薄しています。◆これらの表面粗度は何によって決まるるのか?それはは、MEXではノズル径に支配される、BJTは粉体流動に支配される(微細粉末が苦手)のに対して、VPPは微細粉末をバインダーで希釈し流動性が高めている。また、積層レイヤーは機械的精度で決まり、微細粉末の径に合わせて1μm単位で制御できるためだと推察しています。

*1 2軸積層面(側面)のこと。残念ながら、3軸積層面の表面粗度は、レイヤー厚の階段状になるため表面粗度は著しく悪くなる。


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2021年8月16日月曜日

脱脂システム「酸化」について

 ジャーマン先生の本にある「脱脂法の分類表」内の「酸化」について疑問だらけで未消化だったが、偶然、海外論文に少し具体的な説明を発見したので備忘録として下記に要点をまとめる。

◆ワックスベース系のフィードストック ◆循環空気炉で100200°Cの温度にゆっくりと加熱する ◆この温度は、主鎖ポリマーの融解温度よりも低い。金属粉末の酸化は最大60時間継続され、バインダーの40%を除去する。◆酸化された金属は粒子間結合が強くなるので脱脂体の取り扱いができる。◆二次脱脂は、不活性または還元性雰囲気(水素、窒素、またはアルゴン)で予備焼結温度に加熱して、残りのバインダーを熱分解する。◆酸化物は、最終的な焼結の前に水素還元によって除去する必要がある。

【珈琲ブレイ句】脱脂体(ブラウン体)の強度を確保するために酸化させるとも読み取れます。 酸化物を水素で還元させる必要があるのが大変ですね。このレポートでは本脱脂を「the classic debinding cycle」と明記していますので古典的な脱脂法なのです。黎明期のウイテック法ですね。

関連ブログ: 「ジャーマン先生の脱脂の種類と長所短所


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2021年8月12日木曜日

なぜMIM-Like AMはMIMの機械的性質を超えられないのか

 なぜMIM-Like AMはMIMの機械的性質を超えられないのか

その答えは ◆粉末床を利用するAMでは、粉末の嵩密度に限界があるから。嵩密度が低ければ粒子間距離が広くなる。粒子間距離が広ければ収縮率が大きくなり拡散収縮で粒子の移動も起こり精度が落ち、内部欠陥も残りやすい。また、◆溶融積層方式などのAMでは、MIMのフィードストックに近い材料を使っているので粉末量を多くすることができる。しかし、「積層技術由来の技術的要因」でバインダー量を多くする必要がでてくる。バインダーもMIMより軟化させる方向で設計される。一方、◆MIMは「積層技術由来の技術的要因」に囚われることなく、技術的に独立して「臨界粉末量CSL(Critical Solid Lording)」を目指すフィードストックの設計ができる。バインダーの組成も自由だ、結合剤のみで構成されたものも実在する(成形に技術が必要ですが)。また、成形も独立して最適化が可能で、高圧射出成形で「保圧」をかけて内部欠陥の無いGreenを造ることができるからである。

【珈琲ブレイ句】しかしMIM-Like AMも頑張っているのです。最近の報告では、Ti6Al4VのFDM方式の焼結体(HIPの有無不明?)で、引張強度845MPa、伸び17%を達成しています。参考:JPMA S01規格、引張強度=800MPa、伸び=5%

注意:Arcamの積層体はMIMやLWより高い機械的性質がありますが、これは「焼結」ではなく、高真空中の電子ビームによる「溶解」だからでMIM-Like AMの粉末拡散技術とは別世界のダイレクト積層技術です。粉末1個づつ溶かして速攻で冷却固化させる感じで、勝手に名付ければ「マイクロ鋳造積層体」というところでしょうか。金属AMの最高峰、凄い技術です。


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2021年8月11日水曜日

全く新しい方式のAM付加製造装置の特許を出願しました

 AM付加製造は、本業のMIMとは直接関係ないのですが「AMからようこそMIMへ」を提唱しながらMIM布教活動をしている関係上、AM-3Dプリンターの調査も広く浅く行っています。するとなんということでしょう。現状存在する5種類のMIM-Like AMに共通する課題に気づき、さらにそれを解決できるまったく新しいアイデアを思いつきました。自分で特許明細書を書き上げ14,000円の特許印紙を貼って出願完了しました。

この発明は「粉末流動の影響をまったく受けない微細粉末利用MIM-Like AM製造法」です。どちらかというとマイクロAMで優位性が発揮できます。ご興味がある企業様は、下記HPに記載のアドレスへお問合せください。がんばれ日本!!パートナー募集中。

MIM技術伝道士のHP

特許先行公開2021/09/18 特願2021-148967 粉末積層造形法 

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