2021年3月30日火曜日

20年生産可能なMIM製品はなにか

2019年ジャーマン先生の報告の中に20年生産が可能なMIM製品(CIM含む)のリストがある。(可能性が高いものから低いもの順)一番は航空宇宙、次が医療歯科、次に産業用機器の順番である。

1.航空宇宙(コア、インレット、ノズル、リンケージ) 2.医療/歯科(手術器具、ブラケット) 3.産業用(ポンプ、ハウジング、継手、ロック) 4.銃(トリガー、ガード、スピンドル) 5.自動車(ターボチャージャー、ロッカーアーム) 6.コンピューター(ヒンジ、コネクター、ヒートシンク) 7.通信(携帯電話のヒンジ、バイブレーター) 8.民生品(矢じり、カバン金物、ロゴ) 9.ジュエリー(時計、指輪、カフリンクス)

【珈琲ブレイク】匠志向の日本国内MIMメーカーは、この上位品目分野を目指した方がよいと思います。実はすでにその方向に進んでいて国内市場の45%は産業用と医療機器で占めているのです。でもジャーマン先生一押しの航空宇宙分野はまだ未開拓分野です。I社とかM社が本気になって業界を先導してもらいたいものです。蛇足:間違ってもスマホ部品に手をだしたらダメですね。量は莫大ですがモデルチェンジの頻度が高い、規格品のスマホのコネクタMIM部品でも、今後無くなる可能性があります。それは、データ送信だけでなく充電も無線になっちゃうので。

《日曜MIM知るINDEX》


2021年3月22日月曜日

バインダージェット3Dプリンター用アルミニウム粉末

 Desk Top Metalのバインダージェットによる3D積層装置専用の「6061アルミ粉末」が発表された。機械的性質は、鍛造6061と同等で伸びも10%を叩き出しているそうだ。アルミの焼結は難しい。なぜAMで成功したのか。その鍵は4つであることが読み解ける。1)粉末粒子にコーティングしている。 2)粉末と焼結助剤を混合させている。3)バインダーにナノの超微細粉末を配合している。 4)あるいは 鉛、スズ、マグネシウムを配合する。具体的に何をコーティングしているのか、焼結助剤は何か、焼結助剤が鉛、スズ、マグネシウムのことなのかは不明。

なるほど関連ブログはこちらで復習できる・・・

1)粉末粒子にコーティング(リコーさんの) 2&4)焼結助剤にマグネシウムでアルミナ層破壊還元 3)ナノ粉末と三峰分布配合の効果


【珈琲ブレイ句】コーティングの目的は、発火防止の安全性向上かもしれません、リコーさん方式ですね。この粉末はDesktop Metal社とUniformity Labs社の独占コラボ開発なので、一般MIM用に粉末だけの購入は当分できないと思われます。 話しは変わりますが、金属の市場要求の4位がアルミだそうです。このブログの閲覧数でも3番目が「アルミのMIMは存在しないのか?」です。このアルミ粉末や夢のアルミ・スカンジウムAl-Sc粉末に関して継続して情報収集し紹介していきます。


《日曜MIM知るINDEX》



2021年3月17日水曜日

ASTM F42 付加製造AMの7分類を考察する

 ASTM F42 では、Additive Manufacturing(付加製造)の技術を7つに分類している。技術分類層別表で復習する。さらに、MIM粉末を利用した3Dプリンターはどの技術分野なのか、再確認する。

     誤記訂正:正)FDM:Fused Deposition Modeling

【珈琲ブレイ句】MIM用微細金属粉末を利用する3Dプリンター技術は3つであることを再認識することができました。個人的には②のLMMが高密度のマイクロ造形物ができるように感じています。なぜかというと微細粉末を液体に浮遊させた状態で積層できるので、「粉体の流動性」で有利ではないか、さらに、すべてナノ粉末を利用することができるのは②のLMMだけだと考えるからです。本当のマイクロ寸法の積層造形ができるような気がします。


LMM関連投稿はこちらへ YouTubeも観られます


《日曜MIM知るINDEX》



2021年3月13日土曜日

FDM方式で大量生産できる金属粉末「AMCELL」

 バインダージェット方式の金属粉末AM装置では、「多層造形」により大量生産を目指す装置が登場している。一個当たりのコストがMIM相当だとするものもある。しかしFDM方式は単品造形が主流であった。ところが最近、FDM方式(FFF,MEX)で大量に造形する装置が登場している。

その装置は「AMCELL」である。スペインのメーカーTriditive社が開発したものでBASFのフィラメントUltrafuse316LXを使用し24時間稼働を実現させることがコンセプトで月産1万個を狙っている。下記YouTubeで観ることができる。


【珈琲ブレイ句】FDM積層品を高速・高精度で造形するために、なんと「パラレルリンク方式のロボットアームが採用されています!!」それも8台が黙々と造形しています。寡黙でカッコイイ!! 予備の材料は装置内に最大各10Kg装備して24時間連続で造形できるようです。金属フィラメントだけでなく樹脂(PA12、ABS等)の造形もできる仕様です。金属フィラメントと樹脂フィラメントそれぞれのプラットフォーム温度を個別に管理できるのでしょう。 FDM押しとしてはFDMに頑張ってもらいたい・応援しています。

YouTube AMXELL

《日曜MIM知るINDEX》



2021年3月12日金曜日

無料でMPIF標準35をダウンロードしてみた

2023/7に確認したら終了していました

MIMの材料標準である「MPIF Standard 35-MIM」の最新2018版を無料でダウンロードすることができました。書籍を国内で購入すると1万円超えなので、たいへんありがたいことです手順は次の通りです。

①MIMAのHP(下リンク)を開く(MIMAはMPIFの業界団体のひとつ)

MIMAの無料ダウンロードページ 2023/7に確認したら終了していました

②メーリングリストに登録するため、「個人情報」を入力(日本語と英語を併記してみました) MPIFからのマーケティングメール受信希望にチェックを入れて送信

③登録した自分のメールアドレスに、MIMA事務局からメールが届く(法人ではなく個人事務所でも返信が来ました!)

④この「登録ありがとうメール」に記載されている「ダウンロードリンク」をクリック

⑤電子版PDFのMPIF Standard 35-MIMをダウンロードする


《日曜MIM知るINDEX》



対数正規勾配パラメーターSwを勉強する

「対数正規勾配パラメーター」とは、 粉末粒度分布を表すパラメータで「LOG-NORMAL SLOPE PARAMETER」のことである。(注意:私訳なので日本語でググっても出てこない。)ジャーマン先生の本でも紹介されているパラメータである。この値でMIMフィードストックの流動性が評価できる。Swは粉末の粒度分布の巾が狭いか広いかを表しており、Swが大きいと尖った分布、Swが小さいとすそ野が広い分布を表す。使用している粉末のSw値が小さい方が成形性が良い。その定義は次式である。

Sw=2.56/(LOG10(D90/D10))

(事例)90%<10μm(Sw4.7)の粉末と90%<22μm(Sw3.5)の粉末で高粉末充填量領域では明らかに流動性に差が出ている。どちらも同じ65VOL%のフィードストックの比較で、射出圧力が前者は約80MPa、後者が約62MPaである。(Sandvik社の論文、バインダーは触媒脱脂POM系)

【珈琲ブレイ句】Swは粉末スペック選定のひとつの基準になりますね。上の論文では次のことも示唆しています。それは「バインダーをジャブジャブ入れているときは差は無い」ということ。臨界粉末量を狙った高精度MIMフィードストック開発じゃなければSwを気にしなくていいのです。

話しが変わりますが「2.56」はどこから出てきたのか考えたところ、昔習った統計学の知識で解決できました。それは、正規分布の80%の範囲である±1.28σ=2.56σです。図解するとこんな感じです。Swは累計線のほぼ直線部分の傾き(b/a)です。a=LogD90-LogD10=Log(D90/D10)、b=2.56、(α=1)

これは「粉末分布が正規分布である」ことを前提にしているので二峰分布や三峰分布には多少使いづらいかもしれません。 

《日曜MIM知るINDEX》


2021年3月10日水曜日

MIMにおけるHIPとCIPの活用法をまとめる

 HIPとは「Hot Isostatic Pressing:熱間等方圧加圧」で、高温不活性ガスで部品を加圧するもの。一方、CIPは「Cold Isostatic Pressing熱間等方圧加圧」は冷たい水(液体)で部品を加圧するものである。MIMの世界でどのように活用されているのかをまとめる。 

HIP』焼結体に対して行う。内部不良(ウエルド等)を消す。密度を上げる。微細組織のまま密度を100%に上げ、結果として機械的性質を向上させる。高密閉性が必要な部品や航空機部品などのハイスペック部品に利用されている。 

CIP』成形体(脱脂体+ラバーコート)に対して行う。内部不良(ウエルド等)を消し(密着させて)焼結で拡散結合させ一体化させる、内部不良対策に利用されている。 

 

【珈琲ブレイ句】HIPは例えばチタン合金の強度向上策として、結晶が成長する前(ラメラ組織に成長する前)の低焼結温度でブランク品を完了させ、密度不足品をHIPで補うという合わせ技で最高品質を造り出す実施事例があります。HIPの処理温度(約900℃)は焼結温度(1100~1350℃)より低いので結晶を成長させずに密度をほぼ100%にすることができるのです。一方CIPMIMへの展開実績は、たぶんほとんどないと思います。(私は実施していましたが・・)実はCIPMIMではなくAMでの活用が増えるような気がしています。なぜかというと、AMの積層体の密度が甘いためです。なぜかというとFDM積層造形(成形)に「保圧」という概念が欠落しているためです。また、バインダージェット方式では粉末嵩密度を向上させる機構が弱い(タップ密度と比較して)ためです。


《日曜MIM知るINDEX》

2021年3月2日火曜日

金属粉末利用FDM-3Dプリンターまとめ

MIMの姉妹技術である金属粉末利用FDM-3Dプリンターをまとめる。BASFから市販のFDM装置で積層できる巻線フィラメントが登場。材料と装置のバンドル販売のMetalX、DesktopMetalに加え、MIMペレットそのものを積層する装置が登場している。


【珈琲ブレイ句】「FFF」と「FDM」は何が違うのかを調べていたら上のような系統図ができあがりました。材料が巻線か鉛筆状か、MIMペレットかで技術的に層別できることがわかります。それぞれ長所短所があり、巻線にするためには弾力が必要で、そのためには「バインダーを多めにして」「バインダーの曲げ弾性率をさげる」必要があり二次加熱脱脂での変形が多い欠点が推測されます。その点、鉛筆状とMIMペレットを利用する方が材料を最適化(粉末量最大化・高精度化)できる可能性があります。また、フィラメント溶融積層は、材料押出機構が簡単で安価な装置、小さなものが得意、市販機も使え入門に最適です。ペレット溶融積層の材料押出機構はかなり複雑で高価な装置ですが、メカ的に高精度な押出が期待できることと、大物を高速で積層できる利点がありそうです。

国内の優秀な工作機械メーカーであれば、小型射出成形機とXYZテーブルを組み合わせれば、高精度な3Dプリンターが実現できると思うのですが・・・Made in JAPAN を期待しています。


《日曜MIM知るINDEX》