2020年6月28日日曜日

射出速度と粘度 キャピラリーフローを復習する

可塑化したMIMフィードストックは、ニュートン流体ではなく、擬塑性流体なので二つの特徴がある。

ひとつ【せん断速度依存性】せん断速度を上げると粘度がさがる。つまり、射出速度を上げると流動性がよくなる。

ふたつ【温度依存性】温度を上げると粘度がさがる。つまり、射出温度を上げると流動性がよくなる。
この性質を利用して成形の充填性を上げることができる。

手動の成形機を使って実験をしていると体感できる。「射出速度が遅いと成形品質が悪い感じ」の正体を、実際のデータを観察して考えてみた。

そのデータとは、「CAPILLARY FLOW」キャピラリーレオメータのデータである。普通の出力は、両対数グラフで描かれるので、こんなグラフになる。
せん断速度が大きくなると、直線的に粘度が下がっている。奇麗な直線関係が素敵である、しかし、これは対数の世界の話しである。

ここで、対数変換を戻し真数でグラフを描き直してみると、イメージが大きく変わる。
このグラフから直観的にわかること。
①ゆったり・ゆっくり射出成形するときは、驚異的に粘度が高い。
②せん断速度が500まで上がると粘度は急激に低下し、
③1000を超えれば、粘度はほぼ飽和する。
いかに手動成形機によるMIMの成形が難しいか納得できる。
④低速域では、温度を上げると粘度を下げることができる余裕があるが、高速域では、粘度がかなり下がっているので、実質(現場的には)温度を上げても流動性が改善されない(高せん断速度域では、温度依存性の寄与率は小さい)。

せん断速度1000(1/sec)が、実際どのくらいの射出速度になるのか?Φ2mmのノズルでΔyを半径と仮定できるのであれば、速度Vは、(V=Δy×せん断速度)である。(計算省略)
結果:せん断速度1000(1/sec)は、Φ2mmのノズル内で『射出速度は31.4cm^3/sec』である。 速っ!

手動射出成形機では、射出温度を高め、金型温度を上げることが成形品質向上には有利にはたらく。





2020年6月18日木曜日

AM3Dプリンターの世界市場


「AMの市場規模?」先日質問をいただいた。MIMじゃないので答えられなかった。そこで少しネット情報を調べてみた。いろんなデータで散布図を描くと、年15%程度の急成長市場であることがわかった。


2019年のかなり信頼性の高い?情報より、実績100110億ドルの国別順位は、1位ドイツ12.8億ドル、アメリカ12.3億ドル、中国10.5億ドルと続き、日本は7位の3.5億ドルで「3.5%」である。さらに他の機関予測から、2020年予測値の構成比率を読み取ると、AM全体に占める業態比率がわかる。それは、サービス40%、「ハード35%」、材料18%、ソフト7%である。

それでは「来年2021年度の、AMの国内焼結炉市場規模を妄想してみよう。

 2021年度の散布図値を読み取り、上記の推定値を掛け合わせると、2021年度の国内AM関連のハード市場が推定できる。それは、2億ドル(国内のAMハード200億円)である。 しかし、統計はAM装置(工法)の全体であるので、樹脂の積層(粉体、光硬化、フィラメント積層)、金属粉末溶融積層(電子ビーム、レーザー)さらに、MIM粉末の積層(溶融、バインダージェット)のすべてを含んでいる数字である。 ここからが、どんぶり推定になるが・・・・
AMからようこそMIMへ」に関係する部分だけを抜き取り・・・
MIM粉末積層のハードが30%として、その内訳(プリンター、脱脂、焼結)の焼結炉を50%と仮定すると次の値が出てくる。

《妄想の結果》
2021年度の、AMに関連する焼結炉の国内市場予測は30億円。
注意:推定×推定×どんぶり推定×どんぶり推定なので信頼性は低い。


【珈琲ブレイ句】
 焼結炉は、AMに飽きたころMIMに展開していただくためにも、機能のバージョンアップができるようになるといいですね。ポイントは二つ。高真空度化オプション(油拡散ポンプ)と、バインダー・ワックストラップの強化です。
 AMAZONで3万円の3Dプリンターも売られている。3Dプリンターが一般家庭へ導入されていけば、心のハードルも下がる。次は、品質の良い工業用3Dプリンターへとつながっていく。

 『AMからようこそMIMへ』 
 新技術の波が、くるぶしまで満ちてきている。







2020年6月10日水曜日

金属粉末3Dプリンターが作れる材質は凄い?

手元の溶融積層金属3Dプリンターのカタログのマテリアル欄には、今後のリリース予定の各種材料が記載されている。「チタン合金Ti6AL4V、アルミニウム6061,7075、インコネル625*1」素晴らしい。発表が待たれる。

【珈琲ブレイ句】
AM製のアルミの試作ニーズが多いのは感じています。このブログでも「アルミのMIMは存在しないのか」が閲覧数3位です。ニーズはあれど、アルミを製造してくれるMIMメーカーはあるかな? 試作なら石膏型を使った鋳造品の方がいいし、量産はADCになるのだから初めから同じ金属(ADC)で試作品を作った方がいいと思ってしまいます。それから、活性金属のチタンを含有する合金は、たしか高真空じゃないと「良いもの」はできなかったと思います。ロータリーポンプでは真空度が二桁低い・・・。
*1 インコネル625 Ti、Alの規格は0.4%未満なので、量が少ないから、あるいは、初めから少なくすれば(規格上ゼロでも可)、低真空でも焼結できるということですね・・


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2020年6月8日月曜日

真空ポンプは油が命

実験用焼結炉の真空度が上がらなくなったので ロータリーポンプ(RP)のオイル(200cc)を全交換してみた。 オイル:ULVAC-SMR100RP:FULL-TEC FTVE-215 
【結果】 最高到達真空度 到達時間 
交換前   -98.6KPa   23 
交換後   -99.6KPa   11 
 真空計がゲージ圧なので分かりづらいが、絶対真空は-101.3KPaなのでかなり高真空になった。それも短時間で!!


【珈琲ブレイ句】 真空度が低下する原因は主に、水分です。量産機ではオイル交換も費用的に馬鹿にならないので、アメロイドのオイルクリーナをRPに接続して不純物と水分を除去していました。投資効果は良く、2年程度で償却できたと記憶しています。年間50万円の効果(新油購入費減、廃油処理費減、年数回のメンテナンス費用増)。この清浄装置1台を2台のRPに接続し、日替わりで切り替えて使っていました。 現場での注意点としては、焼結炉の扉を開けっぱなしにしないこと。中の乾燥空気と外気が入れ替わらないうちに閉めることが重要です。休日で炉を使わないときは軽く真空排気しておく優しさが必要です。


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2020年6月5日金曜日

POMとPEが一緒だと溶かしやすい

金属であれば、合金にすると融点が下がるが、プラスチック樹脂には融点降下はない。わかっているがやってみた。

事前にPOMPEペレット(重量比50:50+酸化防止剤少々)を混ぜ同時に混錬機に投入した。結果、POM単品より溶けやすかった。PEの融点が低いので、呼び水の働きをしてくれたようだ。 柔らかくなってきたら、粉末を少し投入する。しばらくして、ワックス、脂肪酸類を、粉末と交互に、添加していき混錬する。今回は、異臭が発生しない。

【まとめ】
POMPEの相性抜群 同時混錬良好
・異臭が発生しなかった、変化点はSAの有無、ペレット乾燥の有無(未検証)。
・混錬温度180~200℃ 1時間
POM,PE 乾燥80℃ 30分間


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