2026年7月10日金曜日

粉末冶金分野におけるガスアプリケーション

MIM製造だけでなく、粉末冶金・アプリケーション全体で使われているガスの機能と特徴についてまとめたので共有します。

【各ガスの機能と特徴】

アルゴン(Argon

 機能 最も不活性な雰囲気を必要とするプロセスで使用される 。チタン、ニッケル、コバルト合金などの先進材料は、高温下で酸素や窒素と非常に反応しやすくなる 。アルゴンを使用することで、インクルージョン欠陥などの原因となる有害な金属酸化物や窒素化合物の形成を完全に防ぐことができる。

 特徴 窒素とさえ反応(窒化)してしまうチタン(Ti)やアルミニウム(Al)などの活性金属・難焼結性材料の処理に不可欠である。

窒素(N2

 機能 経済性に優れた準不活性ガス。

 特徴 多くの鉄鋼系材料やステンレス鋼などの処理において、酸化防止の保護雰囲気やパージガス、冷却ガスとして広く一般的に使用される(ただし、高温で窒化が問題になる材料には回避が必要)。

水素(H2

 機能 強力な還元性ガス。

 特徴 金属表面の微細な酸化皮膜を除去(還元)し、粉末同士の拡散・焼結を促進する。また、熱伝導率が高いため、炉内の均熱性向上や急速冷却にも寄与する。


【珈琲ブレイ句】機能とコストのバランスで選ばれていることがわかります。アルゴンはオールマイティですが、窒素で問題ないときは、価格の安い窒素を使う。 還元するものは水素という使い分けですね。

コストの概略値を調べました。アルゴンは窒素の6~8倍も高価なんですね。

3種類の相対的な価格は次の通りです。

  窒素 (1) < 水素 (3~4) < アルゴン(6~8)

 アルゴンと窒素は、実質無料の空気をマイナス196℃程度まで冷却して液体にし、成分ごとの沸点の違いを利用して分離する深冷分離法で作られています。 

 アルゴンが高価なのは、空気中にわずか約1%しか含まれない希少なガスのためです。一方、窒素は空気中に約80%含まれています。

 水素は、水の電気分解で作ると思っていましたが、工業的には、天然ガス(メタンCH4)や石油などの化石燃料に高温の水蒸気を反応させる水蒸気改質法で作られているそうです。

 

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2026年7月4日土曜日

BASF法の不良と対策のまとめ 

 BASF法Catamold®の不良と対策をまとめました。

Ⅰ.触媒脱脂工程における不良と対策

触媒脱脂特有の不具合は、「酸(硝酸)の濃度・供給量」「処理温度」「炉内のガス循環」のバランスが崩れたときに発生する。

A.クラック(ひび割れ)・割れ

《原因》凝縮水の発生: 炉内のキャリアガス(窒素)流量が不足すると、分解ガスや微量の水分が炉内で凝縮し、成形体に付着して局所的な応力集中や化学的アタックを引き起こす。

《対策》窒素ガスによるパージ流量を増やし、分解ガスを速やかに炉外へ排出(排気燃焼)させる。

B.変形・ダレ(スランプ変形)

《原因》炉内温度のオーバーシュート: 触媒脱脂の適正温度は通常110℃〜120℃ですが、これがPOMの融点(約160℃〜170℃)に近づく、あるいは局所的なホットスポットがあると、バインダーが軟化・溶融して自重で変形する。

《対策》炉内の温度均一性(バリデーション)を定期的に確認し、温度管理を徹底する。自重による変形を防ぐため、オーバーハング部や複雑形状部には専用のセッター等でバックアップを行う。

C.脱脂残りおよびそれに起因する脱脂割れ

《原因》①炉内のガス循環不良: 炉内にワークを過密に詰め込んだり、ガスの流れが遮られたりすると、硝酸蒸気が行き渡らない箇所(未脱脂部)が生じる。②肉厚部の拡散限界: 肉厚品の場合、中心部まで酸が拡散するのに時間がかかるため、表面が先に脱脂され、内部が未脱脂のまま次の熱脱脂・焼結工程に回ると、残ったバインダーが一気にガス化して製品を破裂させる。

《対策》①炉内のワーク配置(チャージング)に適度な空間を空け、気流を均一にする。②肉厚品に対しては、脱脂時間を単純延長するか、あらかじめ設計段階で「リブ化」や「肉盗み」を設け、均一な肉厚にする。

Ⅱ.成形工程に起因する不良



【珈琲ブレイ句】BASF法Catamold®の不良についてまとめましたが、最も重要なのは成形工程における品質の確保であり、これは溶媒脱脂法や加熱脱脂法と共通する基本管理項目です。

    『MIMの品質は、成形工程で80%決まる。』 私の経験則です

 良質な成形体があれば、BASFの優れた脱脂技術は、相対的に生産性の面で有利かもしれません。その理由は、何といっても『表面からPOMを直接ガス化(解重合分解)させる』ところです。表面から一定の速度で分解が進行するため、処理時間は肉厚に比例するのみであり、加熱脱脂法と比較すると短時間での処理が可能です。

脱脂率の定量管理(重量測定)と排気・安全管理を適切に行えば完璧です。



2026年7月2日木曜日

ベッディング(敷粉)の隠れた危険を考える

ベッディング(Bedding)とは、粉末のベッドを作る技術。 敷粉、離型材、焼結防止材、溶着防止材。

《使用する目的》焼結時の自由な収縮を助け、セッターとMIMの摩擦抵抗を減らして焼結変形を防止する。また、溶着防止、拡散接合防止のために使用する。

《方法》①セラミックスプレーを使用する。 例えば、セラコートスプレー(アルミナ99%)。 ②セラミックビーズを使ってスラリーを自作する。例えば、東ソー・ジルコニアビーズTZ-B 30をPVA3wt%溶液に溶かし、塗布後乾燥させる。実験であればスティック糊を塗って粉を掛ける。

《効果》①収縮変形の際に、MIMとセッターの間でボールベアリングのような役割をして、摩擦による焼結体の変形を防止する。②金属同士の拡散接合を阻止する。変形アシスト追従駒法のセラミックコーティングとして使用する。MIM指南書 P30 図2.14

《隠れた危険》①塗布したセラミックの微細粉末が炉内を浮遊して、炉内の断熱材等を汚染する。②トラップされないセラミック微細粉末が、ロータリー真空ポンプやメカニカルブースター真空ポンプに流入して、摺動部分や回転軸のクリアランスの摩滅材として働きポンプの機能を低下させる。

《対策》①日常対策としては、セラミックや黒鉛製の防波堤、防風林等の囲いの中に脱脂体を並べ、ガス流の影響を受けない環境で焼結する。 ②定期的な真空系の設備保全の実施。 


【珈琲ブレイク】 ベッディング(敷粉)に使用する微細セラミック粉末は微量なので、炉内浮遊は深刻に考えなくてもよいかもしれませんが、長期間稼働の危険予知としてまとめておきました。

一方、アルミナ粉末を大量に使用されている場合は、粉末浮遊対策を考慮した方が無難です。


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