2026年5月30日土曜日

技術コンサルタントがネガティブに感じた事例④ 「チェックバルブが無い!」

 《前書き》

 技術コンサルタントとして現場を観察していると、ネガティブで深刻な問題に気づくことがあります。たとえば、「技術のブラックボックス化」や、「勘と経験」に依存した場当たり的な対応への回帰です。コンサルタントの役割は、こうしたリスクを可視化し、背景や原因を整理したうえで、改善策を提案することだと考えています。

 しかし実際には、提案が十分に受け入れられず、大きな改善につながらないケースも少なくありません。その背景には、現場側の「変化に対する不安」や、「外部からの指摘に対する抵抗感」があるように感じています。強く指摘すれば関係性を損なうので、現実には難しいバランスが求められます。


【珈琲ブレイ句】

 技術コンサルタントがネガティブに感じた事例の4回目です。すでに改善・対策が完了していると思いますので、過去の事例として共有化しておきます。

《驚いたこと》ある工場で、何年も射出成形機(インライン式)の分解掃除をしていないというので、スクリューを外すようにお願いしました。思っていた通り材料が炭化して付着していました。この炭化物が脱落して成形体に混入する可能性があると説明しました。

さらに驚いたことがありました。それは「チェックバルブ(逆止リング)が付いていない」のです。作業者に聞くと初めから付いていないと言われました。工場すべての射出成形機(インライン式)からチェックバルブが取り外されていたのです。

チェックバルブが無かったら材料が逆流して精密な射出成形ができません。バリを出さない、精密な成形品を目指す成形条件の最適化ができないことを意味していました。

対策は、チェックバルブを戻すこと。発注の際、逆止リングの外径寸法をMIM用に指定すること。∵シリンダとのクリアランスを少し大きくして、射出成形時のロック事故を防止します。

チェックバルブを付けなくて良いのなら、高機能で高価な射出成形機ではなくて、プランジャ式の安価な油圧式成形機を使えばよいのではないでしょうか。プランジャ式射出成形機でも、金型温度高め、保圧を十分にとれば、試験片として十分なグリーン体を確保することができます。(ただし、バリは出ます。)


関連BLOG:成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」

関連BLOG:なぜm-MIM射出成形機はバリが出ないのか


2026年5月29日金曜日

技術コンサルタントがネガティブに感じた事例③「銀色の処理棚」

 【珈琲ブレイ句】技術コンサルタントがネガティブに感じた事例の3回目です。現役時代、情報交換を目的に、あるMIM製造工場を見学したときの光景です。なお、この会社はすでに社内MIM製造から撤退されているため過去の思い出として共有します。

《状況》扉が開かれた焼結炉の中を観ると、金属製の棚が使われていました。棚板も金属です。しかし、前後工程をよく見ると黒色の棚板も混在していました。

《驚いたこと》金属製と思った棚や棚板はすべて黒鉛(グラファイト)製でした。

このMIM工場は、17-4PHステンレスが主流なので、焼結中にCrが蒸発して黒鉛材に付着する、一種のPVD蒸着が発生していると思いました。しかし、これほど奇麗な銀色の黒鉛部材を見せられると何も言えませんでした。

《対策》Cr等の蒸気圧の高い原子を含む金属材料の焼結では、炉内の真空度を下げる分圧制御をおこないます。MIM指南書P138

関連BLOG:【MIM指南書(増補・セルフ)】Cr量の低下 P138

関連BLOG:【MIM指南書(増補・セルフ)】蒸気圧曲線の改定


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【MIM技術伝道士HP】

2026年5月28日木曜日

技術コンサルタントがネガティブに感じた事例②「塩化メチレン沸騰脱脂」

《前書き》

 技術コンサルタントとして現場を観察していると、ネガティブで深刻な問題に気づくことがあります。たとえば、「技術のブラックボックス化」や、「勘と経験」に依存した場当たり的な対応への回帰です。コンサルタントの役割は、こうしたリスクを可視化し、背景や原因を整理したうえで、改善策を提案することだと考えています。

 しかし実際には、提案が十分に受け入れられず、大きな改善につながらないケースも少なくありません。その背景には、現場側の「変化に対する不安」や、「外部からの指摘に対する抵抗感」があるように感じています。強く指摘すれば関係性を損なうので、現実には難しいバランスが求められます。


【珈琲ブレイ句】

技術コンサルタントがネガティブに感じた事例の2回目です。すでに改善・対策が完了していると思いますので、過去の事例として共有化しておきます。

《状況》溶媒脱脂として塩化メチレンを使用している。処理槽は上部が解放されており(処理槽には開閉蓋はあるが常時閉ではない)、天井から強制排気のフードが下がっている。ヒーターによる加熱温度は塩化メチレンの沸点(39℃)を超えているので、処理槽内の塩化メチレンはグツグツと沸騰対流している。

《技術的問題》①対流により小さい部品が移動し接触する。②ブラウン体の表面から金属粉末が脱落し処理槽の底に粉末が体積している。③沸騰した塩化メチレンは処理槽上部の冷却区間で液化回収される構造であるが、処理槽の開放面積が相対的に大きく100%回収できない。

対策案としては、処理時間より品質向上を優先させ、処理温度を下げ沸騰を抑える。

《環境・人体への毒性リスク》処理槽上部から蒸発した塩化メチレンは、強制排気フードにて外部へ排出される構造である。しかし、装置上面とフードまで1m程度の開放空間があるため気化した塩化メチレンがすべて排気されない可能性が高い(距離の二乗に反比例して排気能力は低下する)。本来、塩化メチレン(気体)は空気より重いので、排気は床からも行うべきである。

対策案としては、労働基準監督署や産業保健総合支援センターの専門機関に現状を相談し、早急なリスクアセスメントと設備投資を進める必要がある。

過去に、印刷工場や金属加工工場で塩化メチレンを用いた洗浄作業を行っていた作業員が、胆管がんを相次いで発症し、死亡する重大な労働災害が発生している。

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