2026年2月7日土曜日

なぜm-MIM射出成形機はバリが出ないのか

 Sodickの「m-MIM射出成形機」はバリが出ないと公言しています。その理由をまとめておきます。結論から先に書いています。


《バリが出ないという理由》

 m-MIM射出成形機は、プリプラ式だから

 プリプラ式:射出量=スプルー+ランナ+成形体+バラツキΔ微小

 インライン式:射出量=スプルー+ランナ+成形体+バラツキΔ有(=バリ)


《なぜプリプラ式は、正確な量をバラツキなく射出成形できるの?》

 インライン式の3点セット(逆止リング)がないから



  プリプラ式(下図)Sodickは逆止弁の機能を前後可動スクリュー先端で行っており、逆流防止機構が徹底している。



《インライン式の3点セットが劣るところとは》

 計量工程と射出工程で逆止リングが動き、成形材料の逆流を完全に防げないという構造上の課題があるから。

 そして、この逆止リングとスペーサーが摩耗して、逆流が多くなっていくから。


【珈琲ブレイ句】決してインライン方式を否定するものではありません。プラスチック成形ではインライン方式の射出成形機が90%以上で主流です。プラスチックは成形性が良く、材料自体の圧縮性が高いため、3点セットの欠点(逆流のバラツキ)も大きな問題にはなりません。

一方、MIMフィードストックは60〜70vol%が金属粉末であり、プラスチックに比べて圧縮しにくいため、射出量のバラツキを材料側で吸収できません。特に小さなMIM品の場合には、その傾向が顕著です。

主流であるインライン式射出成形機の欠点を最小化する3つの方法

①成形品の大きさに合わせた射出成形機を使う

 小さい部品には、小型の成形機(大きさに合わせた相対的な精度を考える)

②逆止リングの外径設計の最適化

 成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」

③3点セットの寿命管理(ショット数管理で逆止リングとスペーサーを交換する)

【老婆心】無いとは思いますが、「逆止リングとスペーサーを外して成形する」ことは「底に穴の空いた計量カップで料理をする」ことと同義です。当然論外ですね。

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2026年1月28日水曜日

高粉末充填率の課題(その2)

 前回のBLOGで「高粉末充填率(バインダー最少化)にすれば、MIM品質(転写性、密度、強度)は向上します。」と書きました。この意味を二つの図で説明します。

①バインダー量には最適値があり多くても少なくても精度が向上しないことがわかっています。下図の散布図では、バインダー量が40Vol%近傍に最適値があるという結果になっています。この散布図はクリティカルローディング値が35Vol%程度の粉末の事例だと推察しています。

②高粉末充填率(バインダー最少化)の前提条件として「高タップ密度」がセットです。
もし、高タップ密度の粉末を用意出来たら、下図の様に逆放物線は左下にシフトしていくと考えています。その推定図を添付しておきます。

課題1:どうやって高タップ密度の粉末を作るのか。
課題2:低バインダー量になるほど射出成形が難しくなる。その打開策は何か。

この課題のヒントは、このBLOGのどこかに書いてあります。

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2026年1月27日火曜日

高粉末充填率の課題

 高粉末充填率(バインダー最少化)にすれば、MIM品質(転写性、密度、強度)は向上します。しかし、大きな課題があります。それは「成形が難しくなる」ことです。バインダー量が少なくなればフロー値Qは小さくなり成形欠陥が多くなることがわかっています。図8


この論文からの学びは2つ。成形不良を低減させるには、高粉末充填率(バインダー最少化)になるほど、①金型温度を上げ、②保圧を高くすること。

文献:「金属粉末射出成形(MIM)における成形欠陥におよぼす成形条件,バ インダ添加量,バインダおよび粉末特性の影響」三浦 立、遠 藤 保夫、斑 目 広和、高 森 清次、「粉体および粉末冶金」第42巻 第3号 1995年3月


【珈琲ブレイ句】30年前、粉末充填量は45 vol%程度が一般的でしたが、今や72 vol%を実現できる段階に到達しており、まさにブレイクスルーと言える進化を遂げています。粉末の製造や配合技術はもちろん、それらを支えるバインダーの着実な進化が、この飛躍の不可欠な要素であったことは言うまでもありません。

MIMフィードストックが究極にまで高まった今、次なる焦点が射出成形における転写性の技術開発(成形条件のパラメータ設計)であることは、論を待ちません。

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