2026年3月10日火曜日

焼結に使うガスと焼結体品質のまとめ

 MIMの焼結で導入されているガスと、密度と特徴(注意点)をまとめておきます。


【珈琲ブレイ句】導入ガスに期待する効果は、ステンレス鋼であればCr蒸発を抑えるための圧力制御になります。この時、Ar+H2が一番密度が高くなったという報告1)があります。H₂ガスは、酸化物還元(MO + H2 → M + H2O)、粒界拡散促進効果(ネッキング増加、高密度化)が期待できますが、表面の脱炭に注意が必要です。N₂ ガスは、安価で使いやすいですが、炭窒化物形成や固溶(N2 → 2N)作用があるので、客先スペックとのすり合わせが必要、逆に窒化物生成や固溶強化を利用する新しい方法も提案できるかもしれません。

1)Effect of Sintering Temperature and Atmosphere on Corrosion Behavior of MIM 316L Stainless Steel (2011)

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2026年3月8日日曜日

【MIM指南書(増補・セルフ)】Cr量の低下 P138

  【MIM指南書(増補・セルフ)】P138 「Cr量の低下」章へ、下記文章を追加します。印刷してP138とP139の間に貼り付けてください。


使用するガスは、アルゴンガスの他に水素ガスを使う方法がある。メリットは、水素の還元能力に加え、水素原子は小さいので金属の結晶格子内に固溶されるか、焼結体表面から系外へ放出されポアとしての残存が少なく焼結密度が高くなる可能性がある。デメリットは、CrMo鋼等では表面が脱炭し疲労強度が低下する場合がある。また、水素は可燃性ガスのため、炉外排気路に燃焼装置を取り付け完全燃焼させる必要がある。

また、窒素ガスを使う場合の注意点として、窒素ガスは不活性として扱われるが、焼結の高温域(1000℃以上)では多くの金属に対して「反応性ガス」あるいは「合金元素」として振る舞う。17-4PHを純窒素下 1,350°C 前後で焼結した場合、表面に窒化物(Cr2N)が形成され、耐食性が低下した事例がある。また、機械的特性も変化する。メリットは、窒素分子が原子状に解離し結晶格子内に固溶されるか、焼結体表面から系外へ放出されるため原子の大きなアルゴンよりポアとしての残存が少なく焼結密度が相対的に高くなる可能性がある。

また、アルゴン、窒素と水素の混合ガスも使われており、不燃性混合ガスとして「97%Ar+3%H2、96%N2+4%H2」などが使われている。


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2026年3月4日水曜日

製法が異なるSKD11粉末による二峰分布配合の効果

 古い論文ですが共有化します。アトマイズ製法が異なるガスアトマイズ粉末と水アトマイズ粉末を二峰分布配合した研究開発です。

開発の目的:焼結が難しい工具鋼SKD11の品質(寸法、分散、溶け、崩れ、密度、硬度)に対するロバスト性能を向上させることでフルチャージ焼結を実現させる。

《粉末》  水アトマイズ2種とガスアトマイズ1種の配合比研究

《結果》

《結論》
 水アトマイズ粉末の平均粒径をガスアトマイズ粉末よりも小さく設定し、両者の配合比を50:50~75:25とした二峰分布混合粉末を用いることで、焼結温度のバラツキに左右されにくい安定した品質の合金工具鋼(SKD11)を得ることに成功した。

 ポイント:圧力制御のガスを流すためタイトボックス内の温度バラツキは±10℃程度あります。図4の赤丸の配合であれば、この炉内温度の誤差幅20℃であっても、密度誤差幅が0.15g/cm3に収まっています。高炭素の工具鋼であっても高密度で溶けも発生しないフルチャージ生産が可能になりました。

引用論文:”Development of sintered SKD11 compacts with High Robust performance by Metal Injection Molding” Shoji Hachiga, Yoshihiro Shiina
特開2004年052051 金属焼結体の製造方法及び金属焼結体

【珈琲ブレイ句】一般的に「二峰分布(バイモーダル)配合」の採用は、寸法精度や焼結密度の改善に寄与します。
 本研究の真髄は、「二峰分布配合の効果」だけでなく、さらに「焼結特性の異なる粉末の組み合わせ」にあります。ガスアトマイズ粉末と水アトマイズ粉末では、焼結過程におけるネック形成や原子拡散のタイミング・速度、および液相温度が異なります。この焼結特性の異なる2種材を複合させることで、焼結プロセスにおいていわば「アクセルとブレーキ」を同時にコントロールする状態を作り出し、焼結品質の分散を最小化することに成功しました。これにより、かつて課題であった「フルチャージ時のSKD11の溶け」という致命的なトラブルの解消に成功しました。また寸法精度も±0.22%になりました。 付け加えると、一次脱脂は溶媒脱脂等による完璧な炭素コントロールが必要です。