2026年2月24日火曜日

PIM専用POMコポリマーFF520は何が凄いのか

 一般的にPOMのコポリマー(ジュラコン)は、ホモ(デルリン)より成形性は良いのですが、PPやHDPEと比較すると相対的に成形性が良くありません。しかし、PIM専用のFF520はその流動性の課題を解決しています。さらに、グリーン体強度とのバランスも考えて開発されていることがわかります。流動性と靭性の散布図を描いてみました。


【珈琲ブレイ句】PIMバインダーとして使用するPOMは、成形を容易にするために粘度は可能な限り低くしMFRを高め、焼結前の成形品の損傷を防ぐために靭性(シャルピー衝撃強度)は可能な限り高くする必要があります。FF520は、MIM結合材で使われるPPやHDPEより靭性と流動性が高いのです。

 POMの一次脱脂は触媒脱脂が主流ですが、カタログでは加熱脱脂(500℃,5℃/min,N2,残渣ゼロ)も可能と書いてあります。(注意:加熱脱脂では、実際のPIM脱脂焼結品での検証は必要だと感じています。)BASF系の触媒脱脂用MIMフィードストックであれば、どんどん展開できますね。

◆開発のポイントを推察する◆

①ギリギリまで低分子化:低分子にすれば流動性は向上します。一方強度は低下するので、PPとHDPEを目標ターゲットにして低分子量成分をギリギリまで増やしている。

②分子量分布のナロー化:さらに、全体の分子量分布をシャープ(ナロー)に制御することで、高い流動性を確保しつつ、強度を支える「絡み合い」に必要な最低限の分子鎖を維持している。  

③ホルムアルデヒド対策:流動性が高いので低温で混錬し熱の影響を最小化する。酸化防止剤で安定化させるが、高せん断による局所的高温部で発生するホルムアルデヒドは、捕捉剤(ホルムアルデヒド・スカベンジャー)で化学的に吸着させる。

推察が間違っていたらごめんなさい。

それにしても旭化成ケミカルズの開発力は凄いです!! 頑張れ日本!!

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2026年2月13日金曜日

田口メソッドを用いた金属射出成形プロセスのパラメータ最適化

近年のMIMに関するタグチメソッドの事例を共有します。

《表題》田口メソッドを用いた金属射出成形プロセスのパラメータ最適化

《実験仕様》

制御因子:4因子(射出温度A、金型温度B、射出圧力C、流量DTable

直交表 L81

特性値:2つ(成形体欠陥Table2、成形体密度)

バインダー:PEG,PMMA,SA

粉末、粉末量:水アトマイズSUS316L62Vol

《結果》

成形欠陥に対する最適条件は、射出温度:150℃、金型温度:70℃、射出圧力:550bar、流量:15cm³/sA1B2C0D1

成形密度に対する最適条件は、射出温度:160℃、金型温度:70℃、射出圧力:650bar、流量:10cm³/sA2B2C1D0

 文献:「Parametric Optimization of Metal Injection Moulding Process Using Taguchi Method」Tan Koon Tatt, Norhamidi Muhamad, Che Hassan Che Haron, Abu Bakar Sulong, INTERNATIONAL JOURNAL OF INTEGRATED ENGINEERING VOL. 12 NO. 4 (2020) 210-219

【珈琲ブレイ句】この事例はL81という巨大な直交表を使い、4つの因子のすべての交互作用を研究している意欲的な実験です。成形体の欠陥と密度を特性値として、各々の最適条件を示しています。 交互作用の影響を考慮して選んだと思われますが最適値の選定には疑問があり、私ならA3(射出温度160℃、B3(金型温度70℃)を選びます。

 興味深いのは、特性値とする成形体欠陥の重み付け「Score(表2)」です。この欠陥の重みの技術的根拠が知りたいところです。 

 また、表題に「 Using Taguchi Method」とありますが、この事例は実験計画法とタグチメソッド(品質工学)が混在しています(海外論文に多い傾向)。品質工学では交互作用の研究は行いません。 MIMの製造現場では、実用的で再現性のあるベターな最適条件が必要なので、タグチメソッド(品質工学)で開発された混合系直交表L18が広く使われています。

 いずれにしても、すばらしい論文で、たいへん勉強になりました。

関連BLOG:品質工学と実験計画法の違い

D2179

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2026年2月7日土曜日

なぜm-MIM射出成形機はバリが出ないのか

 Sodickの「m-MIM射出成形機」はバリが出ないと公言しています。その理由をまとめておきます。結論から先に書いています。

《バリが出ない理由》

 m-MIM射出成形機は、プリプラ式で、射出量が正確だから。

 プリプラ式:射出量=スプルー+ランナ+成形体+バラツキΔ微小

 インライン式:射出量=スプルー+ランナ+成形体+バラツキΔ有

 バラツキΔ=バリ


《なぜプリプラ式は、正確な量をバラツキなく射出成形できるの?》

プリプラ式は、スクリューと射出シリンダが独立していて、インライン式の3点セット(逆止リング)が無いため正確に射出成形ができる。 



プリプラ式(下図)での逆流防止には逆止弁を使いますが、Sodickでは逆止弁の機能を前後可動スクリュー先端で行っており、さらに逆流防止機能を向上させている。



《インライン式3点セットの特徴》

「計量工程」と「射出工程」で「逆止リングが少し移動する」ため、成形材料の逆流を完全に防げないという構造上の特徴があり、さらに、成形を続けると逆止リングとスペーサーが摩耗して、逆流が多くなっていくという管理課題もある。


【珈琲ブレイ句】決してインライン式を否定するものではありません。プラスチック成形ではインライン式の射出成形機が90%以上で主流です。プラスチックは成形性が良く、材料自体の圧縮性が高いため、3点セットの特徴(逆流のバラツキ)も大きな問題にはなりません。

一方、MIMフィードストックは60〜70vol%が金属粉末であり、プラスチックに比べて圧縮しにくいため、射出量のバラツキを材料側で吸収できません。特に小さなMIM品の場合には、その傾向が顕著です。

 関連BLOG:MIMフィードストックにバラス効果はあるのか?


《主流であるインライン式射出成形機の欠点を最小化する3つの方法》

①成形品の大きさに合わせた射出成形機を使う

 小さい部品には、小型の成形機(大きさに合わて相対的精度上げる)

 関連BLOG:なぜマイクロMIMは専用の小型射出成形機を使うのか

②逆止リングの外径寸法設計の最適化

 関連BLOG:成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」

 関連BLOG:プリプラ方式の射出成形機が改善された

③3点セットの寿命管理(ショット数管理で逆止リングとスペーサーを交換する)


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