2026年7月14日火曜日

産業用CTスキャンで何ができるのか?のその先を考える

 【珈琲ブレイ句】株式会社キャステムからCTスキャン受託サービスの案内メールが来たので、産業用CTスキャンで何ができるのか?のその先を考えてみました。

すでに行われている可能性がありますが、メールには記載が無かった「内部欠陥を許容するデジタルツイン技術」について共有しておきます。

MIM製品では、検査で内部欠陥を極限まで排除するために製品設計や成形条件を最適化することが基本です。しかし、金属3Dプリンター(Sinter-based Metal AM)による造形物において、欠陥のない完璧な製品を作ることは技術・コスト的に極めて困難です。

そこで注目されているのが、『欠陥を前提としたデジタルツイン技術』です。従来は微細なボイドの検出だけで廃棄されていた部品を、産業用CTスキャンで得た「個体ごとのボイド位置や形状」を含むCAEモデルをそのままインポートします。そのまま=双子(ツイン)。

そして、「この欠陥であれば実使用時の応力集中は許容値内であり、製品強度に問題ない」とデジタル空間でシミュレーションして合否判定を行う技術です。。

高価な一品一様の部品を無駄にせずQCDを最適化するこの手法は、自動車や航空宇宙業界で実用化が始まっているようです。

さらにCTスキャンのその先として、静止状態だけでなく熱や圧力などの負荷、時間経過による内部挙動を捉える「4D3D+時間)」技術も登場しており、CAEを補完するリアルタイム測定への広がりが期待されています。


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2026年7月13日月曜日

熱履歴センサーTempTABを掘り下げる

熱処理炉の温度を測定する熱履歴センサーとして「TempTAB Orton社」があります。焼結後の寸法を測定することで、焼結温度を測る物差しです。

MIM焼結での採用実績があるというので調べてみました。

MIMの代表的な焼結温度である 1,250℃〜1,400℃ の 「TempTAB 650」 によるデータは次の通りです。条件は、大気雰囲気、昇温5℃/min" 、ピーク温度保持時間120分の標準マスターデータの一例です。センサーの製造ロット毎に専用換算表が付属しています。

ここで、MIMの焼結条件(Ar,N2,H2など)に変えた場合の換算表は、Orton社から提供されません。この大気雰囲気のデータを補正して使います。その補正量(ズレ量)を次の通りです。



N2窒素雰囲気は、大気雰囲気の換算表がそのまま使えて、アルゴン雰囲気では2℃、水素100%雰囲気では16℃の補正が必要であることがわかります。

但し注意が必要です。TempTABが受ける熱履歴によって、焼結寸法は変化します。ピーク温度までの上昇速度、ピーク温度、ピーク温度保持時間、ガス対流、熱輻射、熱伝導を十分考慮する必要があります。したがって、1325℃におけるズレ量を、そのまま単純に基本換算表全体のシフトに使うことに疑問が残ります。


【珈琲ブレイ句】昔、熱履歴センサーの「リファサーモ」を使って、MIM焼結条件における特性を調べたことがあります。予想通り、付属の換算表はそのまま使えませんでした。また、単純な一次関数ではありませんでした。

関連BLOG: リファサーモはMIMに使えるか?

《提案》実際にMIM焼結で熱履歴センサーを使う場合は、信頼性が確保された焼結炉を使って実験データを集め、散布図から多項式を求めることをお勧めします。最高温度保持時間、導入ガス流量を標示因子として現状のMIM焼結条件に合わせる必要があります。


《ことば》ここでは、「熱履歴センサー」という語彙を使いました。MIM指南書P152では「相対温度計」を使っています。これは、管理図に使うことを目的として、焼結ロット毎の温度の変化を相対的に把握するための温度計という意味です。また、熱履歴センサーというのは、Process Temperature Indicatorの意訳です。 MIM指南書P153 図4.35に Qサーモによる管理図を使った改善例を載せています。

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2026年7月10日金曜日

粉末冶金分野におけるガスアプリケーション

MIM製造だけでなく、粉末冶金・アプリケーション全体で使われているガスの機能と特徴についてまとめたので共有します。

【各ガスの機能と特徴】

アルゴン(Argon

 機能 最も不活性な雰囲気を必要とするプロセスで使用される 。チタン、ニッケル、コバルト合金などの先進材料は、高温下で酸素や窒素と非常に反応しやすくなる 。アルゴンを使用することで、インクルージョン欠陥などの原因となる有害な金属酸化物や窒素化合物の形成を完全に防ぐことができる。

 特徴 窒素とさえ反応(窒化)してしまうチタン(Ti)やアルミニウム(Al)などの活性金属・難焼結性材料の処理に不可欠である。


窒素(N2

 機能 経済性に優れた準不活性ガス。

 特徴 多くの鉄鋼系材料やステンレス鋼などの処理において、酸化防止の保護雰囲気やパージガス、冷却ガスとして広く一般的に使用される(ただし、高温で窒化が問題になる材料には回避が必要)。


水素(H2

 機能 強力な還元性ガス。

 特徴 金属表面の微細な酸化皮膜を除去(還元)し、粉末同士の拡散・焼結を促進する。また、熱伝導率が高いため、炉内の均熱性向上や急速冷却にも寄与する。


【珈琲ブレイ句】機能とコストのバランスで選ばれていることがわかります。アルゴンはオールマイティですが、窒素でも問題が無いときは価格の安い窒素を使う。 焼結後の急速冷却が必要な時は、熱伝導率が大きい窒素を使う。還元が必要な時は水素を使うという使い分けですね。

コストの概略値を調べました。アルゴンは窒素の6~8倍も高価です。

3種類の相対的な価格は次の通りです。

  窒素 (1) < 水素 (3~4) < アルゴン(6~8)

 アルゴンと窒素は、実質無料の空気をマイナス196℃程度まで冷却して液体にし、成分ごとの沸点の違いを利用して分離する深冷分離法で作られています。 

 アルゴンが高価なのは、空気中にわずか約1%しか含まれない希少なガスのためです。一方、窒素は空気中に約80%含まれています。

 水素は、水の電気分解で作ると思っていましたが、工業的には、天然ガス(メタンCH4)や石油などの化石燃料に高温の水蒸気を反応させる水蒸気改質法で作られているそうです。

 

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