2026年2月13日金曜日

田口メソッドを用いた金属射出成形プロセスのパラメータ最適化

 比較的新しいMIMの実験計画法の事例を共有化します。

《表題》田口メソッドを用いた金属射出成形プロセスのパラメータ最適化

《実験仕様》

制御因子:4因子(射出温度A、金型温度B、射出圧力C、流量DTable

直行表L81

特性値:2つ(成形体欠陥Table2、成形体密度)

バインダー:PEG,PMMA,SA

粉末、粉末量:水アトマイズSUS316L62Vol

《結果》

成形欠陥に対する最適条件は、射出温度:150℃、金型温度:70℃、射出圧力:550bar、流量:15cm³/sA1B2C0D1

成形密度に対する最適条件は、射出温度:160℃、金型温度:70℃、射出圧力:650bar、流量:10cm³/sA2B2C1D0

 文献:「Parametric Optimization of Metal Injection Moulding Process Using Taguchi Method」Tan Koon Tatt, Norhamidi Muhamad, Che Hassan Che Haron, Abu Bakar Sulong, INTERNATIONAL JOURNAL OF INTEGRATED ENGINEERING VOL. 12 NO. 4 (2020) 210-219

【珈琲ブレイ句】この事例はL81という巨大な直交表を使い、4つの因子のすべての交互作用を研究している意欲的な実験です。成形体の欠陥と密度を特性値として、各々の最適条件を示しています。ただし、交互作用をプーリングできないものもあり、結局どうすればよいのか迷う結果になっています。ひとつだけわかるのは、金型温度は高い方が良いということです。

 残念なのは、表題に「 Using Taguchi Method」とありますが、この事例は実験計画法とタグチメソッド(品質工学)の区別がなく混在していることです。MIMの製造現場では、実用的で再現性のあるベストな条件(現場の最適条件)が必要なのです。つまりタグチメソッド(品質工学)L18が推奨されます。

さらに「はてな?」なのは、成形体の欠陥の重み付け(表2)です。この欠陥の重みの技術的根拠が知りたいところです。 いずれにしても、たいへん勉強になる論文です。

D2179

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2026年2月7日土曜日

なぜm-MIM射出成形機はバリが出ないのか

 Sodickの「m-MIM射出成形機」はバリが出ないと公言しています。その理由をまとめておきます。結論から先に書いています。

《バリが出ない理由》

 m-MIM射出成形機は、プリプラ式で、射出量が正確だから。

 プリプラ式:射出量=スプルー+ランナ+成形体+バラツキΔ微小

 インライン式:射出量=スプルー+ランナ+成形体+バラツキΔ有

 バラツキΔ=バリ


《なぜプリプラ式は、正確な量をバラツキなく射出成形できるの?》

プリプラ式は、スクリューと射出シリンダが独立していて、インライン式の3点セット(逆止リング)が無いため正確に射出成形ができる。 



プリプラ式(下図)での逆流防止には逆止弁を使いますが、Sodickでは逆止弁の機能を前後可動スクリュー先端で行っており、さらに逆流防止機能を向上させている。



《インライン式3点セットの特徴》

「計量工程」と「射出工程」で「逆止リングが少し移動する」ため、成形材料の逆流を完全に防げないという構造上の特徴があり、さらに、成形を続けると逆止リングとスペーサーが摩耗して、逆流が多くなっていくという管理課題もある。


【珈琲ブレイ句】決してインライン式を否定するものではありません。プラスチック成形ではインライン方式の射出成形機が90%以上で主流です。プラスチックは成形性が良く、材料自体の圧縮性が高いため、3点セットの特徴(逆流のバラツキ)も大きな問題にはなりません。

一方、MIMフィードストックは60〜70vol%が金属粉末であり、プラスチックに比べて圧縮しにくいため、射出量のバラツキを材料側で吸収できません。特に小さなMIM品の場合には、その傾向が顕著です。

 関連BLOG:MIMフィードストックにバラス効果はあるのか?


《主流であるインライン式射出成形機の欠点を最小化する3つの方法》

①成形品の大きさに合わせた射出成形機を使う

 小さい部品には、小型の成形機(大きさに合わて相対的精度上げる)

 関連BLOG:なぜマイクロMIMは専用の小型射出成形機を使うのか

②逆止リングの外径寸法設計の最適化

 関連BLOG:成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」

 関連BLOG:プリプラ方式の射出成形機が改善された

③3点セットの寿命管理(ショット数管理で逆止リングとスペーサーを交換する)


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2026年1月28日水曜日

高粉末充填率の課題(その2)

 前回のBLOGで「高粉末充填率(バインダー最少化)にすれば、MIM品質(転写性、密度、強度)は向上します。」と書きました。この意味を二つの図で説明します。

①バインダー量には最適値があり多くても少なくても精度が向上しないことがわかっています。下図の散布図では、バインダー量が40Vol%近傍に最適値があるという結果になっています。この散布図はクリティカルローディング値が35Vol%程度の粉末の事例だと推察しています。

②高粉末充填率(バインダー最少化)の前提条件として「高タップ密度」がセットです。
もし、高タップ密度の粉末を用意出来たら、下図の様に逆放物線は左下にシフトしていくと考えています。その推定図を添付しておきます。

課題1:どうやって高タップ密度の粉末を作るのか。
課題2:低バインダー量になるほど射出成形が難しくなる。その打開策は何か。

この課題のヒントは、このBLOGのどこかに書いてあります。

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