2026年10月15日木曜日

超合金のゲルキャストを学ぶ

 粉末:ニッケル基超合金(Ni-362-3、Praxair社製)325メッシュ

ゲル形成成分:MAM(メタクリルアミド)とNVP(N-ビニルピロリドン)を50/50の比率で混合。に架橋剤としてMBAM (N,N'-Methylenebisacrylamide) を添加

サスペンション(懸濁液):MAM:NVP:MBAM:水=8.57:8.57:2.86:20 (wt%)

Actual Solid Loading「実体積比率」:55.5VOL%

注型・固化:サスペンションにAPSと触媒を添加して樹脂型へ流し込みむ。55℃×30分で固化。APS(過硫酸アンモニウム / Ammonium Persulfate): 重合開始剤、TEMED(テトラメチルエチレンジアミン / Tetramethylethylenediamine): 促進剤(触媒・活性化剤)

加熱脱脂:室温~600℃×13H+600℃×1H+~室温×約3H

仮焼結:タングステン発熱体炉、Ar-4% H2 雰囲気、室温〜900°C×3H+900℃×1H+900~995℃×0.5H+995℃×1H+~室温×約3H

焼結密度:約90%

参考文献:Gelcasting of superalloy powders(Oak Ridge National Laboratory  )FEB 05 1996

【珈琲ブレイ句】金属粉末を使うGCゲルキャスティング(Gelcasting)は、MIMメーカーとしてマスターすべき工法のひとつではないかと考えています。 粉末冶金により樹脂型が用意出来て生産量が数点の試作品に対応することができます。特に寸法が大きなものが得意です。

GCは、密度の軽いセラミックで実用化されていますが、密度が高く粒度の大きな金属粉末で採用されている事例はあまりありません。

この論文では、密度の大きな超合金によるGCです。サスペンションの粘度を高めにして浮力を稼いでいます。

研究における焼結は、995℃で終わらせていますが、炉の最高温度による制限でしょうか?本焼結であれば1300℃まで上げる必要がありそうです。

また、論文では粉末量60VOL%とありますが、これはNominalSolid Loadingで、粉体の密度を8.908g/cm3で計算すると、Actual Solid Loading「実体積比率」は55.5VOL%になります。

N2253

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2026年10月10日土曜日

MIMへのガラスビーズは射出圧力に注意が必要

 【珈琲ブレイ句】焼結でMIMの表面に着いたコンタミを除去する目的でガラスビーズ・ショットブラスト(ホーニング)を掛けるときには射出圧の上げすぎに注意が必要です。

 SUS316LのMIMに対してガラスビーズ#220を投射した実験を共有しておきます。射出圧力が5kg/cm2のときは、表面あらさの劣化が時間と共に増加していきます。一方、低圧3Kg/cm2に下げるとRmax8μmで一定になっていることがわかります。


関連BLOG: MIMのガラスビーズによる表面あらさについて


2026年10月8日木曜日

金属射出成形プロセスにおける焼結接合法の研究

 2026年のロールス・ロイス・イノベーション賞を受賞した『金属射出成形プロセスにおける焼結接合法の研究』を共有します。

焼結接合法とは、一度の成形で実現できない複雑な形状を作るために、別々に成形したMIM部品を焼結接合で一体化させる技術です。この研究は、接合面へのペーストの有無、ペーストの種類を変数として各種の強度試験を行い比較しています。

《材質》Inconel 713 Low Carbon

《接合法》溶媒(アセトン)による脱脂体の2部品を接着剤ペーストで接着。焼結で一体化

《評価項目》引張試験、低サイクル疲労試験、クリープ試験

《接着剤ペースト》3種類

ペーストA 溶剤に溶解させた、当該システム固有のポリマー

ペーストB 溶剤に溶解させたポリマー

ペーストC ペーストBに、当該システム固有の充填材フィラーを添加したもの

比較として、ペーストを使わない接合部品と一体部品(未結合の基線材料)で行われた

《結果》

引張試験:一体部品とフィラー入りのペーストCが最も良好で同等

クリープ試験:一体部品とペーストBおよびCが同等

疲労試験:ペーストBが最も優れる、一体部品の代表値と最小値の間

参考文献:“A Study on a Method of Sinter Joining in the Metal Injection Moulding Process ” Ralf Mikael, Dr. Enrico Daenicke, Dr. Thomas Hartwig , Manuscript refereed by Mr Maetzig Marko (ARBURG GmbH + Co KG, Germany) , Euro PM2024 - Session 50: Ferrous Materials - Stainless Steel, European Powder Metallurgy Association (EPMA)  


【珈琲ブレイ句】ペーストの詳細が不明なのが残念です。フィラーとは何でしょうか? PMMAのサブミクロン粒子かな??

 焼結体の炭素量が不明なのも残念です。Low Cabonの規格(0.03 wt% 〜 0.07 wt%)に入れるのはかなり難しいはずです。二次加熱脱脂・焼結条件も不明です。炉はElnik-MIM3000なので部圧制御の水素環境下で脱炭焼結(C+2H2→CH4)を行っている可能性があります。

 ロールス・ロイスの社内賞を受賞した論文ということなので、自動車部品で、多部品一体化のニーズがあるということですね。 スーパーアロイのInconel 713 LCを使うターゲット部品を3つ想像しました。 

①可変ノズルターボの可変ベーン・リンク部品 ②エキゾーストバルブ部品 ③ウェイストゲートバルブ部品   

 たいへん勉強になる論文でした。課題は、接合部分のズレ・ペーストのはみ出し、完全密着一体化(HIP)、接合部の機械加工が必要か? などいろいろ考えられます。

補足:MIMの2部品一体化は、かなり古い研究テーマです。日本では、1999年に発表された三浦先生の「新しいMIM接合プロセスの開発とその応用」で学ぶことができます。