《前書き》
技術コンサルタントとして現場を観察していると、ネガティブで深刻な問題に気づくことがあります。たとえば、「技術のブラックボックス化」や、「勘と経験」に依存した場当たり的な対応への回帰です。コンサルタントの役割は、こうしたリスクを可視化し、背景や原因を整理したうえで、改善策を提案することだと考えています。しかし実際には、提案が十分に受け入れられず、大きな改善につながらないケースも少なくありません。その背景には、現場側の「変化に対する不安」や、「外部からの指摘に対する心理的な抵抗感」があるように感じています。強く指摘すれば関係性を損なうので、現実には難しいバランスが求められます。
【珈琲ブレイ句】
前日のブログでも書きましたが、寸法のチューニング目的で焼結温度を下げる対策などもネガティブな事例です。ここで、もうひとつネガティブな事例を紹介しておきます。
『MIMの脱脂焼結工程で、焼結体にテンパーカラーによる表面変色がついたため、対策として、アルゴン圧力コントロール下での焼結が完了したのち、炉内冷却前に、アルゴン(窒素)を封入して外気圧より炉内の圧力を高くする。その結果テンパーカラーが無くなった。さらに、この条件が標準になっていた。』
現場は「炉内を陽圧(大気圧より高く)にすれば、外気の巻き込み(酸素の侵入)が防げて変色(酸化)を抑えられる」という近視眼的な「対策」です。ここには大きな3つの問題があります。
1. 冶金学的な問題
変色の「真因」の追究が不十分である。
テンパーカラー(酸化被膜による変色)が発生したということは、炉内の高温域、あるいは冷却の特定フェーズにおいて、許容値以上の酸素(または水分)が存在していたことを意味します。その根本原因としては、炉体や配管・バルブからの微小なリーク(外気流入)、アルゴンや窒素ガスの純度不足、あるいはガス導入経路での大気巻き込み等が考えられます。しかし、現在の現場での対応は「(大気が)入ってくるからガス圧を上げて押し返す」という対症療法(応急処置)に留まっています。
2. 設備保全管理の問題
リークの根本原因を特定し、恒久対策を迅速に講じる設備管理体制(システム)が機能していない。
3. プロセス管理(再現性)の欠如
「焼結完了の段階でアルゴンを封入する」という個別のオペレーションが、一時的な応急対策であればやむを得ませんが、現場の裁量に依存したプロセス管理では、長期的な品質の再現性に懸念が残ります。この運用が仮に社内標準として定着しているのであれば、品質管理・QCDを組織的に統制すべき技術部門の「技術統治(技術ガバナンス)」が脆弱である可能性を示唆しています。
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