2026年10月1日木曜日

マイクロMIM(μ-MIM)の粉末はナノサイズが有利

微細な金属粉末を使用することは、マイクロMIM(μ-MIM)において重要な寸法精度や表面特性を改善するための有力な方法です。これは、微細な金属粉末は、焼結温度を低下させるこができるので、結晶粒の成長を抑制できるからです。MIMプロセスにナノ粒子を適用する特徴をまとめると・・・

利点は、①低温焼結における相対密度の向上 ②焼結温度の低下 ③焼結体の結晶粒径の微細化 ④硬度の向上 ⑤表面特性の改善 などが挙げられます。 

一方、課題は、①フィードストックの粘度上昇 ②酸化 ③凝集が存在しやすいなどがあります。


【珈琲ブレイ句】結晶粒径が小さいことによる効果、「摩耗深さ」の事例を共有しておきます。

ナノ粉末は焼結温度650℃で相対密度が96%になり結晶粒径が0.97μmと微細なので、摩耗深さは約2.1μmと僅かです。一方、マイクロMIMで主流の粒径3μmの粉末では、焼結温度1100℃で、摩耗深さは3倍の約6.2μmになっています。

ナノ粉末の世界は今までのMIMの常識とは違う世界です。焼結温度が600℃代であることも覚えておきます。ナノ粉末は凄い!!

《補足)》このブログで「マイクロMIM」に限定したのは、ナノ粉末のコストが高価(おそらく1kgあたり数十万円)だからです。


参考文献:Advantages and Limitations of Using Nano Sized Powders for Powder  Injection Molding Process: A Review Javad Rajabia, Norhamidi Muhamada, Abu Bakar Sulong a, Abdolali Fayyaza, Azizah Wahia aDepartment of Mechanical and Materials Engineering, Faculty of Engineering and Built Environment, Universiti Kebangsaan Malaysia, 43600 Bangi, Selangor, Malaysia, 59 (2012) 137–140 | www.jurnalteknologi.utm.my | eISSN 2180–3722 | ISSN 0127–9696 


2026年9月15日火曜日

歯科矯正用シングルブラケット製造におけるMIMの多因子最適化

 歯科用矯正ブラケットのMIM成形において、Moldflowシミュレーションと応答表面法(RSM)を組み合わせ、体積収縮や未充填欠陥を最小化する金型温度・溶融温度・射出速度・ゲート位置を最適化した事例を共有します。

"Multi-factor optimization on metal injection molding in orthodontic single brackets manufacturing"   The International Journal of Advanced Manufacturing Technology (2026年)

始めに、Moldflowシミュレーションと応答曲面法(RSM)を組み合わせ、単一の歯科矯正用ブラケット製造における金型温度、溶融樹脂温度、流速、射出位置といったMIM成形工程の主要パラメータの最適化を行っています。

さらに、中心複合計画法(Central Composite Design, CCD)を用いて、溶融温度、射出速度を連続量として扱い、応答の形を連続的な曲面としてモデル化して最適値を見つけています。

【MIMフィードストック】

Moldflow Synergy 2018の材料ライブラリより。JKMB-MIM-1グレードのステンレス粉末原料、バインダー:38.5vol%、溶融密度:4.8922g/cm3、固体密度 5.1824g/cm3

【因子と水準】

溶融温度: 100、125,150,175,200℃

金型温度: 10、15,20,25,30℃

射出速度: 20,60,100,140,180 cm3/s

ゲート位置:  ボトムゲート、サイドゲート


図3.歯科用矯正ブラケットのゲート (a)サイドゲート (b)ボトムゲート

【最適値(特性値:収縮率が小さい、充填率が高い)】
溶融温度:137.89℃、金型温度:25℃、射出速度:127.56cm3/s、ゲート:ボトムゲート
【確認実験】予測値とシミュレーション値の差:3%未満

【珈琲ブレイ句】
 歯科用矯正ブラケットはサイドゲートで製造したことがありますが、この研究ではボトムゲートが良いという結論です。ボトムゲートにするにはホットランナー金型になりますね。

 大変勉強になるすばらしい研究論文ですが、3つ気になるところがあるのでメモしておきます。
①金型温度の水準が低すぎないでしょうか? 
②確認実験を「実物の成形体」でも行っているのか?
③ホットランナーでボトムゲートにした時のエジェクターの配置が気になります。この小さな部品で実現させるには、相当な「金型方案設計技術」が必要です。
 




2026年8月23日日曜日

AIによる成形条件自動調整システムにおけるベイズ最適化

㈱MAZINが、東京都立産業技術研究センターの公募型共同研究(2020年)で行った「AIによる成形条件自動調整システム」について共有化しておきます。これは、ベイズ最適化とAIを使った最適成形条件探索方法の開発です。

《概要》良品成形(熟練者による条件)と同じ品質になるように、ベイズ最適化とAIを使って成形条件を自動調整するシステム。

金型内部の圧力データを活用した動的ベイズ学習モデルによる状態推定を行うことで不具合原因の究明を効率化する「金型内部状態推定方法の開発」。

《効果》非熟練者への技能伝承が十分に行われていない現場であっても、成形条件の設定時間(段取り時間)を短縮することができる。また、金型内部状態推定方法を適用することにより、不具合原因の究明を効率化させることができる。


【珈琲ブレイ句】このシステムは、熟練者により設定された条件によって得られた金型内の圧力波形を基準とします。新たに、別の人が成形段取りを繰り返すと、AIが自動的に学習して調整条件を見つけてくれます。この新たな最適条件で生産を始めればOKというわけです。人だけでなく、成形機が変わっても同じ品質の成形体が得られるというものです。

これにより、熟練者がいなくとも、4Mが少し異なっても、瞬時に成形条件をチューニングしてくれるという素晴らしい開発です。

ただ、気になるところがあります。初期値(基準値)を用意する必要があり、量産後の段取り時間短縮・リードタイム短縮が目的ということです。 それは、量産前、試作段階の条件出しは対象としていません。熟練者に頼らない条件出しの最適化が望まれます。

これを解決するのが、品質工学(タグチメソッド)パラメータ設計ですね。試作研究段階で、ロバスト性の高い最適条件を設計できます。

さらに、その先には、Taguchi-Bayesian Optimization(タグチ・ベイズ最適化)の世界が待っています。

情報元:株式会社MAZIN「動的ベイズ学習モデルによる射出成形機のloT化」~射出成形の日々の条件調整でお困りの方へ~

関連BLOG: タグチメソッド・パラメータ最適化とベイズ最適化の比較

関連BLOG: タグチメソッド・パラメータ最適化とベイズ最適化②

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