2026年6月4日木曜日

技術コンサルタントがネガティブに感じた事例⑤ 「非垂直統合のデメリット」

 【珈琲ブレイ句】技術コンサルタントがネガティブに感じた事例の5回目です。あるMIMメーカーで行ったMIM講習会の質疑応答で感じたことを共有します。良い悪いの話ではなく個人的な感想です。

《状況》

その会社は、金型から社内製造している樹脂成形の一流専門メーカーです。新設された「MIM製造課」の成形工程は、高い技術力と実績を持つ既存の「成形課」へ委託される形で進んでいました。

《質疑の内容》

成形課の担当者から「MIMフィードストックの成形性が非常に悪い。何とか改善できないのか?」という質問を受けました。

樹脂成形で確固たる技術と実績を築いてきた彼らからすれば、当然の疑問です。MIM製品の品質は成形体の出来栄えで決まるため、この体制には社内的に多くの課題が潜んでいると感じました。しかし、私はあえてこう回答しました。「その通りです。MIMの成形は(樹脂に比べて)格段に難しいのです」

《私見》

ここに、MIMの初工程から出荷までを単一の組織(MIM製造部など)で一貫して管理しない場合に発生する、部門間対立(セクショナリズム)を感じ取りました。工程が分断されると、どうしても品質に対する責任の所在が曖昧になってしまいます。

特に高精度MIMを目指す場合、CSL(臨界粉末充填量)の限界付近を攻める必要があるため、射出成形は驚異的に難しくなります。樹脂成形では不良とされる「ジェッティング」が、MIMでは必ず発生するためです。こうした無理難題に対して、悲観せずポジティブに挑戦できる技術者が活躍できるような、組織環境の構築が不可欠であると強く感じた出来事でした。


《おまけ》

EV自動車のテスラが凄いのは、テスラ1社で、企画、開発設計、製造宣伝、販売、充電ステーションのインフラ整備まで、すべての垂直統合を責任をもって行っていることです

一流のMIMメーカーを観ると、やはり「垂直統合型製造」を行っています。世界で見るとインドMIMがそうでしょう、粉末製造も始めています。 国内では、粉末製造は無理だとしても、MIMフィードストック製造から始める垂直統合型MIM製造が理想ではないかと感じています。


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2026年5月30日土曜日

技術コンサルタントがネガティブに感じた事例④ 「チェックバルブが無い!」

 《前書き》

 技術コンサルタントとして現場を観察していると、ネガティブで深刻な問題に気づくことがあります。たとえば、「技術のブラックボックス化」や、「勘と経験」に依存した場当たり的な対応への回帰です。コンサルタントの役割は、こうしたリスクを可視化し、背景や原因を整理したうえで、改善策を提案することだと考えています。

 しかし実際には、提案が十分に受け入れられず、大きな改善につながらないケースも少なくありません。その背景には、現場側の「変化に対する不安」や、「外部からの指摘に対する抵抗感」があるように感じています。強く指摘すれば関係性を損なうので、現実には難しいバランスが求められます。


【珈琲ブレイ句】

 技術コンサルタントがネガティブに感じた事例の4回目です。すでに改善・対策が完了していると思いますので、過去の事例として共有化しておきます。

《驚いたこと》ある工場で、何年も射出成形機(インライン式)の分解掃除をしていないというので、スクリューを外すようにお願いしました。思っていた通り材料が炭化して付着していました。この炭化物が脱落して成形体に混入する可能性があると説明しました。

さらに驚いたことがありました。それは「チェックバルブ(逆止リング)が付いていない」のです。作業者に聞くと初めから付いていないと言われました。工場すべての射出成形機(インライン式)からチェックバルブが取り外されていたのです。

チェックバルブが無かったら材料が逆流して精密な射出成形ができません。バリを出さない、精密な成形品を目指す成形条件の最適化ができないことを意味していました。

対策は、チェックバルブを戻すこと。『発注の際、逆止リングの外径寸法をMIM用に指定すること。理由:シリンダとのクリアランスを少し大きくして、射出成形時のロック事故を防止します。』

チェックバルブを付けなくて良いのなら、高機能で高価な射出成形機ではなくて、プランジャ式の安価な油圧式成形機を使えばよいのではないでしょうか。プランジャ式射出成形機でも、金型温度高め、保圧を十分にとれば、試験片として十分なグリーン体を確保することができます。(ただし、バリは出ます。)

高価な射出成形機を最大限に活かして、MIMの成形品質を徹底的に追求し、さらなる高みを目指すべきだと強く思いました。


関連BLOG:成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」

関連BLOG:なぜm-MIM射出成形機はバリが出ないのか

2026年5月29日金曜日

技術コンサルタントがネガティブに感じた事例③「銀色の処理棚」

 【珈琲ブレイ句】技術コンサルタントがネガティブに感じた事例の3回目です。現役時代、情報交換を目的に、あるMIM製造工場を見学したときの光景です。なお、この会社はすでに社内MIM製造から撤退されているため過去の思い出として共有します。

《状況》扉が開かれた焼結炉の中を観ると、金属製の棚が使われていました。棚板も金属です。しかし、前後工程をよく見ると黒色の棚板も混在していました。

《驚いたこと》金属製と思った棚や棚板はすべて黒鉛(グラファイト)製でした。

このMIM工場は、17-4PHステンレスが主流なので、焼結中にCrが蒸発して黒鉛材に付着する、一種のPVD蒸着が発生していると思いました。しかし、これほど奇麗な銀色の黒鉛部材を見せられると何も言えませんでした。

《対策》Cr等の蒸気圧の高い原子を含む金属材料の焼結では、炉内の真空度を下げる分圧制御をおこないます。MIM指南書P138

関連BLOG:【MIM指南書(増補・セルフ)】Cr量の低下 P138

関連BLOG:【MIM指南書(増補・セルフ)】蒸気圧曲線の改定


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