2024年5月20日月曜日

Tritone Dominant の工程を図解した

金属ペーストを使った付加製造AMの3Dプリンターである『Tritone Dominant』の工程を図解した。

 【珈琲ブレイ句】積層で使われている技術は2つ。1レイヤの型を形成させるBJT技術とその型に金属ペーストを塗布するシルクスクリーン印刷技術です。凄いと感じたこと4つ。①工程が同時並行で進行するのでマシンタイムが最少化されている。②ペーストであれば微細粉末が使えるので焼結体の品質が高い。SUS316Lで相対密度99%、引張強度591MPa、伸び60%との報告がある。③1レイヤーごとに画像処理で検査を行い欠陥がある場合はミーリングで除去して積層をやり直す。④金属ペーストはボトルに入れられて供給されるので活性金属でも安全。ただし沈殿防止のため使用前にボトルを回転させる必要がある。

近年、この装置を米国のMIM屋さんが導入しました。MIM相当の焼結密度と機械的性質を武器にMIMの代替品として、あるいは、MIM金型仕様決定までの開発研究用の試作品として提案営業を行っています。

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2024年5月19日日曜日

MIM屋がMIM-Like AMを使っている事例

米国のMIM屋『Alpha Sintered Metals 1967(現在APG:Alpha Precision Group)』 がMIM-Like AMを導入している。その事例から読み解いた戦略、戦術、技術方針、提案営業などを列挙する。

●MIM-Like AMは、DesktopMetalのMEX(Studio)とBJT(Shop)を使用し後工程を経験豊富なMIM技術で対応する。ソフトはLive Sinter、焼結変形の問題にも対応。

●3D プリンティングを、顧客向けのソリューションの完全なポートフォリオの一部として提供する。

●市場で専門知識を浸透させるための教育活動にも時間を掛け、それが多くのデザイン会社が使用するツールになると確信している。

●金属 3D プリンティングの市場を成長させるための 3 つの戦術。①MIMの金型製作前に製品の形状をMIM-Like AM品で何回もテストさせ最終製品仕様を決定させる「エンジニアの遊び場」を提供する。②MIM初品生産納期(2か月間)の間に、社内でMIM-Like AM品による先行試作を実施し焼結などの問題を顕在化させ事前に対策する。③生産量が少ない案件は始めからMIM化ではなくMIM-Like AMで受注1個からでも対応し、お客様を魅了させ、製造業ビジネスのパイプをさらに太くする。

●MEX(Studio System)からBJT( Shop System)へデータを展開することでスループット(Throughput:単位時間あたりに処理できるデータ量)を最大化する。

●設計者は設計の最適化を望んでいる。設計者にとって量産 MIM の設計品質を検証するための架け橋としてMIM-Like AMの活用を提案する。

●初品納期短縮化。試作品あるいは初品の納期目標を 2 週間以内とし、場合によっては最短 5 日で対応する。

●最新MIM-Like AM積層装置(Tritone Dominant:ペースト方式)を増設した。高生産性、高品質化をめざす継続的研鑽。


【珈琲ブレイク】APG社は、私がイメージするビジネスモデルを具現化しています。ビジョンが素晴らしい。信念を感じる会社です。


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2024年5月16日木曜日

Ti64を積層するBJT防爆装置が凄い件

 【珈琲ブレイ句】Metal AM材料でニーズの多い材料はアルミとチタンだそうです。それを受けてDesktop Metalは、Ti64を積層する高速BJTを市場発表しました。一番びっくりするのは外観です。その外観は「まるで無菌アイソレータ」です。それは活性金属の微粉末を取り扱うための安全性を考えた防爆対策の結果です。積層装置全体がケースで覆われており、内部に不活性ガスを充満し外気(酸素)と隔離しています。ただ作業が無菌アイソレータと同様に装置前面に接続されたゴム手袋を通して行う必要があり、ちょっと大変そうです。しかし、この徹底的な安全対策には脱帽です。

PS.活性金属の微粉末を使用する競業BJTメーカーにも衝撃が走っているのではないでしょうか。ユーザーに対してどのような方式で安全を保障するのか。「安全はすべてに優先する」世の中、商品戦略(装置あるいは粉末の安全化)の練り直しが行われるかもしれませんね。

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2024年5月15日水曜日

MIM-Like AMとMIMとの共進化時代

【珈琲ブレイ句】 MIM(Metal Injection Molding)技術は成熟期の完成された技術です。そこに新しい技術が登場します。MIM品質の再現とさらに大きな形状自由度を有するAM技術です。具体的には ”MIM-Like AM(Sinterbased Matal AM)” です。成熟技術のMIMと新技術のMIM-Like AMを足し算だけでなく掛け算で活用していけばさらに国内MIM市場は大きくなるはずです。

MIM-Like AMとMIMとの共進化時代。それが現在です。この関係をSカーブで図式化してみました。


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2024年5月12日日曜日

AM用粉末とMIM用粉末の粒径について

付加製造AMが取り扱う材質は、樹脂、セラミック、金属である。このブログはMIMなので、金属AMとMIMに使う粉末についてまとめておく。

MIM用粉末は球形で微細なほど高密度・高強度に有利で、一般的に平均10μm程度のものが使われている。マイクロMIMでは3μm程度のものが使われている。高タップ密度も重要。

一方、金属AMは大きく2分野に分かれる。それはMIM-Like AM(Sinterbased Matal AM)とDEDである。前者はMIM用粉末の使用を目指している。後者は数倍大きな粉末(50~80μm程度)を使用している。粉末は流動性を重視するため球形を理想とし粉末の流動性を悪化させる微細粉末を取り除いているものもある。


 【珈琲ブレイク】MIMと同様にMIM-Like AMは微細粉末が有利です。しかし(それ故に)MIM-Like AMでは粉末床を使うものは粉末の流動性の課題から微細粉末の使用に限界があると感じています。その問題を解決できるアイデアのひとつが「ペーストにする」です。ペースト状材料を光硬化させるものや、ペースト状フィードストックをMEXで利用する画期的な新工法も登場してきました。さらに通常のMEX装置であればMIMと全く同じ微細粉末を使った市販フィードストック(フィラメント、ペレット、スティック)を使うことも可能です。

『やっぱりMIM屋はペースト積層方式かMEX方式がいいんじゃないかと個人的に思っています。3D積層体(グリーン体)だけ造ったら、後工程の脱脂・焼結は超ベテランなので周回遅れでもすぐにMetalAMのトップ集団に追い付くと思うのです・・。すでに国内のMIMメーカー2社が始めていますね。絶賛応援中!!』

話をもどして・・一方、なぜDEDでは大きな粉末が使われるのでしょうか? その理由を3つ考えてみました。①大きな粉末にすれば粉末床の流動性問題を解消できる。②粉末を溶かすエネルギー(レーザー、電子ビーム)のスポット径が数十~数百μmと大きいので粉末が微細である必要がない。③粉末製造(アトマイズ)では、大きい粉末の方が収率が高いので相対的に安価。

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2024年5月2日木曜日

ウエルドライン

《MIM指南書増補セルフ》

MIM指南書  5.7 ウエルドライン P165の「現象」に下記内容を手書きで追記願います。

「あるいは、X線検査で発見される線状内部欠陥」


【珈琲ブレイ句】ウエルドラインの「現象」欄に外観検査で発見できない内部欠陥のことを書き忘れていました。むしろ大問題になるのは内部欠陥の方です。強度が必要な機能部品を市場で破損させ大問題になったことがあります。すぐに初期流動期間へ戻して、成形体と焼結体両方の全数X線検査を行い流出を防止しました。さらに成形体の温間CIPで不良率を低減させました。最終的にこのウエルドは流動界面であると仮説をたて金型方案の改善*1と成形条件の最適化で完治させることができました。「MIM品質の80%は成形工程で決まる」と確信した出来事でした。

*1 MIM指南書金属粉末射出成形ガイドブックP165【対策】-5項

2024年4月21日日曜日

MIMの還元反応はCOだけなのか?

 【珈琲ブレイク】「焼結密度100%のMIM焼結体はつくれるか」で取り上げたように、不完全緻密化の要因のひとつがCOガスの残留でした。でもガスはCOだけじゃなくてCO2の可能性もあるのではないかと思い、実際に量産品*1を測定しみました。結果は「CO反応として計算した値」とほぼ一致します。計算とは、「ミルシートのCとO」と「焼結体のCとO」の関係からCOガスとして抜けた量を確認するもので、CとOの1モル反応なのでΔOを分子量比1.33で割ってCから引き算*2します。ただし、この結果は完璧に溶媒脱脂と二次脱脂を行っているとき*1(脱脂不足による残留炭素の増加が無いとき)の話です。

*1 溶媒脱脂→N2脱バインダー→真空中還元反応→Ar圧力制御中の焼結

*2 MIM指南書 粉末射出成形ガイドブック P65

《参考》BASFのCIP-CC粉末を水素雰囲気で焼結したときに発生するガスに関する論文がありましたので、その結論だけメモっておきます。水素雰囲気なので還元ガスにH2Oやメタンが登場しています。高温域の還元反応はCOでありCO2は登場していません。

「温度域:生成ガス:反応」の順番です。「200-300℃:CO2:吸着ガス離脱」、「250-520℃:H2O、炭化水素:バインダー分解・還元」、「420-700℃:CH4:メタン化」、「910-1200℃:H2O、CO:還元反応」

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