2026年7月4日土曜日

BASF法の不良と対策のまとめ 

 BASF法Catamold®の不良と対策をまとめました。

Ⅰ.触媒脱脂工程における不良と対策

触媒脱脂特有の不具合は、「酸(硝酸)の濃度・供給量」「処理温度」「炉内のガス循環」のバランスが崩れたときに発生する。

A.クラック(ひび割れ)・割れ

《原因》凝縮水の発生: 炉内のキャリアガス(窒素)流量が不足すると、分解ガスや微量の水分が炉内で凝縮し、成形体に付着して局所的な応力集中や化学的アタックを引き起こす。

《対策》窒素ガスによるパージ流量を増やし、分解ガスを速やかに炉外へ排出(排気燃焼)させる。

B.変形・ダレ(スランプ変形)

《原因》炉内温度のオーバーシュート: 触媒脱脂の適正温度は通常110℃〜120℃ですが、これがPOMの融点(約160℃〜170℃)に近づく、あるいは局所的なホットスポットがあると、バインダーが軟化・溶融して自重で変形する。

《対策》炉内の温度均一性(バリデーション)を定期的に確認し、温度管理を徹底する。自重による変形を防ぐため、オーバーハング部や複雑形状部には専用のセッター等でバックアップを行う。

C.脱脂残りおよびそれに起因する脱脂割れ

《原因》①炉内のガス循環不良: 炉内にワークを過密に詰め込んだり、ガスの流れが遮られたりすると、硝酸蒸気が行き渡らない箇所(未脱脂部)が生じる。②肉厚部の拡散限界: 肉厚品の場合、中心部まで酸が拡散するのに時間がかかるため、表面が先に脱脂され、内部が未脱脂のまま次の熱脱脂・焼結工程に回ると、残ったバインダーが一気にガス化して製品を破裂させる。

《対策》①炉内のワーク配置(チャージング)に適度な空間を空け、気流を均一にする。②肉厚品に対しては、脱脂時間を単純延長するか、あらかじめ設計段階で「リブ化」や「肉盗み」を設け、均一な肉厚にする。

Ⅱ.成形工程に起因する不良



【珈琲ブレイ句】BASF法Catamold®の不良についてまとめましたが、最も重要なのは成形工程における品質の確保であり、これは溶媒脱脂法や加熱脱脂法と共通する基本管理項目です。

 良質な成形体があれば、BASFの優れている脱脂技術は相対的に生産性の面で有利かもしれません。その理由は、何といっても「表面からPOMを直接ガス化(解重合分解)させる」ところです。適切な触媒脱脂装置の最適条件下では、加熱脱脂のように「内部が先にガス化する膨れ不良」は発生しません。また、他の脱脂法が体積に依存して時間を要するのに対し、本法は表面からの進行であるため、脱脂時間は肉厚に比例して進行するところです。

脱脂率の定量管理(重量測定)と排気・安全管理を適切に行えば完璧です。



2026年7月2日木曜日

ベッディング(敷粉)の隠れた危険を考える

ベッディング(Bedding)とは、粉末のベッドを作る技術。 敷粉、離型材、焼結防止材、溶着防止材。

《使用する目的》焼結時の自由な収縮を助け、セッターとMIMの摩擦抵抗を減らして焼結変形を防止する。

《方法》①セラミックスプレーを使用する。 例えば、セラコートスプレー(アルミナ99%)。 ②セラミックビーズを使ってスラリーを自作する。例えば、東ソー・ジルコニアビーズTZ-B 30をPVA3wt%溶液に溶かし、塗布後乾燥させる。実験であればスティック糊を塗って粉を掛ける。

《効果》①収縮変形の際に、MIMとセッターの間でボールベアリングのような役割をして、摩擦による焼結体の変形を防止する。②金属同士の拡散接合を阻止する。変形アシスト追従駒法のセラミックコーティングとして使用する。MIM指南書 P30 図2.14

《隠れた危険》①塗布したセラミックの微細粉末が炉内を浮遊して、炉内の断熱材等を汚染する。②トラップされないセラミック微細粉末が、ロータリー真空ポンプやメカニカルブースター真空ポンプに流入して、摺動部分や回転軸のクリアランスの摩滅材として働きポンプの機能を低下させる。

《対策》①日常対策としては、セラミックや黒鉛製の防波堤、防風林等の囲いの中に脱脂体を並べ、ガス流の影響を受けない環境で焼結する。 ②定期的な真空系の設備保全の実施。 


【珈琲ブレイク】 ベッディング(敷粉)に使用する微細セラミック粉末は微量なので、炉内浮遊は深刻に考えなくてもよいかもしれませんが、長期間稼働の危険予知としてまとめておきました。

一方、アルミナ粉末を大量に使用されている場合は、粉末浮遊対策を考慮した方が無難です。


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2026年7月1日水曜日

射出圧力および流量が成形体特性に及ぼす影響について

「射出圧力および流量が成形体特性に及ぼす影響」という大変優れた論文について、いくつかの発展的な疑問点とその原因について考察いたしました。

参考論文:"Influences of Injection Pressure and Flow Rate to the Green Properties", International Journal of Engineering & Technology, 8 (1.12) (2019) 51-54 

論文の目的:射出圧力と流量が、グリーン体(成形体)の表面欠陥、密度、および強度に及ぼす影響を明らかにする。


実験条件と結果(平均成形体密度)

要因効果図

《疑問点》 流量と成形体密度の要因効果図(Fig,3)において、中間圧力の650barのデータだけが、他の2水準と大きく傾向が異なっている。

《原因の仮説》 実験に使用した射出成形機には「油圧式の流量補償機能」が備わっていると推測されます。この機能により設定流量が保証されますが、一方、実際の射出圧力は設定値から乖離している可能性があります。 具体的には、流量を維持するために成形機側で圧力を制御した結果、一部の条件でいわゆる「圧力飽和状態」に陥っているのではないかと疑っています。これは、実際の圧力波形を観察・比較することで検証可能です。

《対策案》 MIMフィードストックは擬塑性流体であり、流量(せん断速度)を変化させると、見かけ粘度は対数スケールで大きく変動します。 そのため、一律の設定ではなく、各流量水準ごとに「実際の圧力が飽和しない適切な射出圧力(大・中・小)」を個別に割り当てるような「水準組み合わせの最適化」を行うことで、傾向の乱れを解決できると考えます。実験計画にあたっては、事前に多少の予備実験も必要です。

【珈琲ブレイ句】本論文に関する私見ですが、そもそも油圧サーボ射出成形機においては、実験因子として「流量」のみを考慮すれば十分であり、「射出圧力」の設定は不要ではないかと思います。むしろ、他の主要な成形条件(金型温度、樹脂温度、保圧など)の影響について、研究のリソースを割いた方がより有意義であると感じました。

また、本実験は二元配置実験の構成なので数理統計学に基づく分散分析を試みました。その結果、F検定において射出圧力および流量のいずれも有意差は確認されませんでした。したがって、要因効果図にみられる傾向は、統計的には誤差範囲にすぎない可能性が高いと考えられます。



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