2026年2月26日木曜日

Taguchi-MADMハイブリッド法を用いた3l6LステンレスMIMの最適化

タグチメソッド関係の論文を共有します。

3水準系 L27直行表を使い、グリーン体の3つの特性値(曲げ強度、外観品質、密度)、6つの制御因子(射出圧力、射出温度、粉末充填率、金型温度、保圧、射出速度)のパラメータ設計です。

表題にあるように、この論文の特徴は、MADM手法(多属性意思決定手法)により、3つの特性値を相関係数等を用いた評価により単一の「総合品質スコア(OQS)」に変換しているところです。変換法としてはSAW(Simple Additive Weighting)法が最も適していると判断されています。その結果、3つの特性値の重み付けは、曲げ強度35.7%、外観品質32.2%、密度32.1%とほぼ均等なっています。

【条件】MIMフィードストック:GA-SUS316L、ポリエチレングリコール73 wt%、ポリメタクリレート25 wt%、ステアリン酸2 wt%

【結果】制御因子の水準と最適値は次の通り。


    寄与率順に並べ替える


文献:「Optimization of the Metal Injection Molding Process with 3l6L Stainless Steel Powder and Influence Analysis of Process Parameters Using the Taguchi-MADM-Based Hybrid Method」、Ryong Hui Ri and Won-Chol Yang、ACS Omega 2025, 10, 985−994

【珈琲ブレイ句】近年(2025年)発表の意欲的な実験です。3つの特性値をひとつにするためにNADAMの5つ(SAW, WPM, TOPSIS, GRA, RSR)の中でどれが最適かを見つける研究が論文の半分以上を占めています。
 実験結果の考察をすると、気になるところがひとつあります。それは、粉末充填率は3水準64.5Vol%が一番良いので、さらにその先に最適値が存在するということです。さらに寄与率は4.91%なので、粉末充填率を大きくしても、総合品質に大きな影響は与えず、技術的に収縮率は小さくできるので寸法精度が向上することが期待できます。これは品質工学の転写性を使えば設計できますね。
 論文を読み進めるうちに、グリーン体から一歩進んだ「シルバー体」の世界はどうなっているのだろうと知的好奇心を強く刺激されました。未知の領域への期待を感じさせる素晴らしい論文でした。大変勉強になりました。

2026年2月24日火曜日

PIM専用POMコポリマーFF520は何が凄いのか

 一般的にPOMのコポリマー(ジュラコン)は、ホモ(デルリン)より成形性は良いのですが、PPやHDPEと比較すると相対的に成形性が良くありません。しかし、PIM専用のFF520はその成形性(流動性)の課題を解決しています。さらに、グリーン体強度とのバランスも考えて開発されていることがわかります。流動性と靭性の散布図を描いてみました。


【珈琲ブレイ句】PIMバインダーとして使用するPOMは、成形を容易にするために粘度は可能な限り低くしMFRを高め、焼結前の成形品の損傷を防ぐために靭性(シャルピー衝撃強度)は可能な限り高くする必要があります。FF520は、MIM結合材で使われるPPやHDPEより靭性と流動性が高いのです。

 POMの一次脱脂は触媒脱脂が主流ですが、カタログでは加熱脱脂(500℃,5℃/min,N2,残渣ゼロ)も可能と書いてあります。(注意:加熱脱脂では、実際のPIM脱脂焼結品での検証は必要だと感じています。)BASF系の触媒脱脂用MIMフィードストックであれば、どんどん展開できますね。

◆開発のポイントを推察する◆

①ギリギリまで低分子化:低分子にすれば流動性は向上します。一方強度は低下するので、PPとHDPEを目標ターゲットにして低分子量成分をギリギリまで増やしている。

②分子量分布のナロー化:さらに、全体の分子量分布をシャープ(ナロー)に制御することで、高い流動性を確保しつつ、強度を支える「絡み合い」に必要な最低限の分子鎖を維持している。  

③ホルムアルデヒド対策:流動性が高いので低温で混錬し熱の影響を最小化する。酸化防止剤で安定化させるが、高せん断による局所的高温部で発生するホルムアルデヒドは、捕捉剤(ホルムアルデヒド・スカベンジャー)で化学的に吸着させる。

推察が間違っていたらごめんなさい。

それにしても旭化成ケミカルズの開発力は凄いです!! 頑張れ日本!!

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2026年2月13日金曜日

田口メソッドを用いた金属射出成形プロセスのパラメータ最適化

近年のMIMに関するタグチメソッドの事例を共有します。

《表題》田口メソッドを用いた金属射出成形プロセスのパラメータ最適化

《実験仕様》

制御因子:4因子(射出温度A、金型温度B、射出圧力C、流量DTable

直交表 L81

特性値:2つ(成形体欠陥Table2、成形体密度)

バインダー:PEG,PMMA,SA

粉末、粉末量:水アトマイズSUS316L62Vol

《結果》

成形欠陥に対する最適条件は、射出温度:150℃、金型温度:70℃、射出圧力:550bar、流量:15cm³/sA1B2C0D1

成形密度に対する最適条件は、射出温度:160℃、金型温度:70℃、射出圧力:650bar、流量:10cm³/sA2B2C1D0

 文献:「Parametric Optimization of Metal Injection Moulding Process Using Taguchi Method」Tan Koon Tatt, Norhamidi Muhamad, Che Hassan Che Haron, Abu Bakar Sulong, INTERNATIONAL JOURNAL OF INTEGRATED ENGINEERING VOL. 12 NO. 4 (2020) 210-219

【珈琲ブレイ句】この事例はL81という巨大な直交表を使い、4つの因子のすべての交互作用を研究している意欲的な実験です。成形体の欠陥と密度を特性値として、各々の最適条件を示しています。 交互作用の影響を考慮して選んだと思われますが最適値の選定には疑問があり、私ならA3(射出温度160℃、B3(金型温度70℃)を選びます。

 興味深いのは、特性値とする成形体欠陥の重み付け「Score(表2)」です。この欠陥の重みの技術的根拠が知りたいところです。 

 また、表題に「 Using Taguchi Method」とありますが、この事例は実験計画法とタグチメソッド(品質工学)が混在しています(海外論文に多い傾向)。品質工学では交互作用の研究は行いません。 MIMの製造現場では、実用的で再現性のあるベターな最適条件が必要なので、タグチメソッド(品質工学)で開発された混合系直交表L18が広く使われています。

 いずれにしても、すばらしい論文で、たいへん勉強になりました。

関連BLOG:品質工学と実験計画法の違い

D2179

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