2026年5月14日木曜日

MIMの密度は望目特性ではなく望小特性と考える理由

 【珈琲ブレイ句】MIMの成形体密度および焼結体密度をタグチメソッドの特性値として扱う際、私は「望目特性」や「望大特性」ではなく、あえて「望小特性」として捉えるべきだと考えています。その論理的背景について、あくまでも個人的な意見として共有します。

《理由1》品質工学の観点

一般的には、密度は高いほど良いと考えられるため、「望大特性」として扱いたくなります。しかし私は、理論密度から実測密度を差し引いた“密度差”を特性値とし、それを「望小特性」として評価すべきだと考えています。

その理由は、「望大特性」のSN比には、ばらつき評価において平均値の寄与が過度に反映されやすい傾向があるためです。すなわち、平均値が高い条件では、ばらつきの影響が相対的に見えにくくなる場合があります。

一方、「理論値−測定値」という偏差を用いて「望小特性」として扱えば、理論密度への到達度と安定性の双方を、より直接的に評価しやすくなると考えています。

《理由2》MIM技術の観点

また、「望目特性」を選択することには、平均値そのものを調整・管理する意図(いわゆるチューニング)が含まれます。しかし、MIM技術において、特に焼結密度を意図的にコントロールする運用については、私は否定的な経験しか持っていません。

実際に、焼結体寸法を調整する目的で焼結温度を下げるチューニングが行われている現場を見たことがあります。しかし当然ながら、そのような条件ではMIM焼結体の品質は低下し、表面品位だけでなく機械的強度も悪化していました。

私は、MIM焼結体の寸法調整は、焼結条件によって密度を犠牲にして行うべきではなく、バインダー量の微調整によって対応すべきだと考えています。

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2026年5月12日火曜日

あるL27直交表を使った実験の残念なところ

参考文献:Green density optimization of stainless steel powder via metal injection molding by Taguchi method  ,AM Amin1, MHI Ibrahim1, MY Hashim3, OMF Marwah2, MH Othman3, Muhammad Akmal 

 「田口メソッドによる金属射出成形を用いたステンレス鋼粉末のグリーン密度最適化(2017)」と題する研究論文を読んでみました。すばらしい実験なのですが、残念なことが2つあります。

ひとつは、L27直交表の交互作用列に因子が割り付けられているので交互作用と割り付け因子の効果が交絡して評価できないのです。

ふたつめは、特性値である成形体密度が望目特性として分析されています。個人的には成形体密度は理論値に近ければ良いと考えています。そこで、特性値として成形体密度と理論値との差を望小特性として解析してみました。理論値は不明なので、実験内の最大値に+0.004を加えた「5.13g/cm3」としました。

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単独に評価できる因子は、1列A,2列Bと5列Eの3つだけです。Eは誤差としてプーリングしたのでAとBだけの要因効果図を描きました。

A射出温度は第2水準と第3水準の間が良いと判断されます。温度をさらに上げても成形体密度の向上はわずかであることがわかります。むしろ熱劣化の可能性があるので温度を上げすぎない方がよいでしょう。

B射出圧力は、水準2が最適条件です。実験範囲内で射出圧力に上限(最適値)があるということは注目すべき結果です。分散分析で寄与率が28%と一番高く、F検定でも有意であることがわかります。


【珈琲ブレイ句】L27直交表には単独に3因子しか割り付けできません。各列の成分が示す交互作用を研究する直交表です。(余談ですが、どうしても残りの4因子をL27に割り付けたければ3群の交互作用成分の多い列を選ん方が良いと思います。9,10,12,13列)そして確認実験をして再現性を確認する必要があります。

一方、タグチメソッド用のL18直交表であれば、18行の実験で8因子を割り付けることができます(2水準1因子+3水準7因子=8因子)。



2026年5月7日木曜日

これから、直交表を使った実験を始める方にアドバイス

交互作用を全列に交絡させたL18直交表(18回の実験で8因子)を使うことをお勧めします。 タグチメソッドは交互作用の研究は行いません。また、分散分析も不要です。要因効果図を描いて最大値の水準を選び確認実験を行って再現性があればOKです。

昔、TM研(タグチメソッド研究会、計量管理協会)で学んでいたとき、田口先生が来られて「分散分析など難しいことを教えるから現場が使わないんだ」と仰っていました。実験計画法上下(丸善)の著者でもある田口先生ですが、「やっぱり天才は、発想と言動が、ぶっ飛んでいるな~!」と思いました。

その真意は、たぶんこんな感じではないかと推察しています。

『実験計画法は「Why」の追求、タグチメソッド(品質工学)は「How」の追求。 現場で早く最適なパラメータを見つけて早く展開する。現場の改善が先で、なぜそうなるのかは後でも良い。現場に使ってもらうことを優先せよ。』

田口先生は、交互作用を全列に交絡させたL18直交表を使うだけでなく、さらに外側に調合誤差を割り付けて、誤差による影響を積極的に実験に取り入れる方法を提案されました。これにより外乱・環境誤差等に影響を受けない頑健な条件を見つけることができます。これがタグチメソッド(品質工学)です。

関連BLOG:品質工学と実験計画法の違い


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