2026年7月23日木曜日

市販MIM用フィードストックによるMEX事例(相対密度98%)

 市販のMIM用フィードストックを使ったMEX方式による積層技術の研究を共有化します。


MEX装置:独AIM3D 社製「ExAM 255」CEM方式(スクリュー押出式) 3D プリンター


材料:独polyMIM GmbH 社製、市販フィードストック「polyMIM® 8740」の再生顆粒リサイクル品

実験の特性値:積層体の表面あらさ(非接触レーザー走査顕微鏡)、積層体の密度(アルキメデス法)

積層最適条件:押出倍率 107.6%、押出温度 180 ℃、ノズル速度 20 mm/s、積層厚み 0.050 mm 

一次脱脂条件:一次脱脂(溶媒脱脂)60℃の水中(2Vol%防錆剤Inhibitor 4000)48時間

二次脱脂・焼結条件:乾燥大気中105℃で2時間、3.5 K/min、1.3 K/min、0.5 K/min、0.2 K/minの昇温速度で、200℃、300℃、440℃、450℃まで加熱。450℃で3時間保持後、0.5 K/minの昇温速度で600℃まで昇温し1時間保持。3.3 K/minの昇温速度で1280℃まで昇温2.5時間焼結。冷却1280℃から800℃までは炉冷、800℃から室温までは8.5 K/minの冷却速度で冷却。

結果:積層体(グリーン体)の相対密度>98% 、 表面粗さRa = (2.3 ± 0.1) μm 、焼結体の密度>98%

参考文献:「Optimization of composite extrusion modeling process parameters for 3D printing of low-alloy steel AISI 8740 using metal injection moulding feedstock」 Abdullah Riaz , Philip Töllner , Alexander Ahrend , Armin Springer , Benjamin Milkereit , Hermann Seitz ,Materials & Design Date: July 2022 Article: 110814 Volume: Volume 219


【珈琲ブレイ句】2022年の貴重な研究です。積層体の密度を優先させると表面粗さが悪くなるため、結論の最適条件は、密度と表面粗さを両立させた中間的な条件になっています。個人的には、密度を優先させたボイドの無い積層条件を採用するかもしれません。

使用した市販MIMフィードストックPolyMIM8740(NiCrMo鋼)は2種類ありますが、この研究で使ったものは、拡大率1.2160の方だと思われます。本研究結果を追記すると、平均粒子径は2.39 µm、バインダー量9.2wt%で、結構バインダー多いですね。

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2026年7月14日火曜日

産業用CTスキャンで何ができるのか?とその先を考える

 【珈琲ブレイ句】キャステムさんからCTスキャン受託サービスの案内メールが来たので、この機会に、素形材産業における産業用CTスキャンの利用技術について少し深堀したので共有します。

キーワードは「デジタルツイン技術」

 MIM製品では、検査で内部欠陥を極限まで排除するために製品設計、金型方案設計、成形条件を最適化することが基本です。しかし、金属3Dプリンター(Metal AM)による造形物において、欠陥のない完璧な製品を作ることは技術的に極めて難しく、Fコストの上昇を招いていました。

 そこで注目されているのが、『欠陥を前提としたデジタルツイン技術』です。従来は微細なボイドの検出だけで廃棄されていた部品を、産業用CTスキャンで得た「個体ごとのボイド位置や形状」を含むCAEモデルをそのままインポートします。

そのままデジタルの双子(デジタルツイン)

 そして、「この欠陥であれば実使用時の応力集中は許容値内であり、製品強度に問題ない」とデジタル空間でシミュレーションして合否判定を行う技術です。

 高価な一品一様の部品を無駄にせずQCDを最適化するこの手法は、自動車や航空宇宙業界で実用化されているようです。


 MIM-Like AMとMIMの共存共栄モデル(図5)の中の「実体機能試験」が、CAEでシミュレーション化されるということです。すばらしいです。

参考文献:ぷらすとす(日本塑性加工学会会報誌) 第5巻 第53号(2022-5)《ことば》本文中の「MIM-Like AM」は、「Sinter-based Metal AM」と同義です。


CTスキャン利用技術のその先

3D静止状態だけでなく熱や圧力などの負荷、時間経過による内部挙動を捉える4D技術(3D+時間)」も登場しており、CAE解析を補完するリアルタイム測定へ広がっています。



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2026年7月13日月曜日

熱履歴センサーTempTABを掘り下げる

熱処理炉の温度を測定する熱履歴センサーとして「TempTAB Orton社」があります。焼結後の寸法を測定することで、焼結温度を測る物差しです。

MIM焼結での採用実績があるというので調べてみました。

MIMの代表的な焼結温度である 1,250℃〜1,400℃ の 「TempTAB 650」 によるデータは次の通りです。条件は、大気雰囲気、昇温5℃/min" 、ピーク温度保持時間120分の標準マスターデータの一例です。センサーの製造ロット毎に専用換算表が付属しています。

ここで、MIMの焼結条件(Ar,N2,H2など)に変えた場合の換算表は、Orton社から提供されません。この大気雰囲気のデータを補正して使います。その補正量(ズレ量)を次の通りです。



N2窒素雰囲気は、大気雰囲気の換算表がそのまま使えて、アルゴン雰囲気では、マイナス2℃、水素100%雰囲気では、マイナス16℃の補正が必要であることがわかります。

但し注意が必要です。TempTABが受ける熱履歴によって、焼結寸法は変化します。ピーク温度までの上昇速度、ピーク温度、ピーク温度保持時間、ガス対流、熱輻射、熱伝導を十分考慮する必要があります。したがって、1325℃におけるズレ量を、そのまま単純に基本換算表全体のシフト補正値として使うことは危険だと感じます。


【珈琲ブレイ句】昔、熱履歴センサーの「リファサーモ」を使って、MIM焼結条件における実力を調べたことがあります。予想通り、付属の換算表はそのまま使えませんでした。また、単純な一次関数ではありませんでした。

関連BLOG: リファサーモはMIMに使えるか?

《提案》実際にMIM焼結で熱履歴センサーを使う場合は、信頼性が確保された焼結炉を使って実験データを集め、散布図から多項式を求めることをお勧めします。最高温度保持時間、導入ガス流量を標示因子として現状のMIM焼結条件に合わせる必要があります。


《ことば》「熱履歴センサー」とMIM指南書P152の「相対温度計」は同じものです。「相対温度計」は、管理図に使うことを目的として、焼結ロット毎の温度の変化を相対的に把握するための温度計という意味です。また、熱履歴センサーというのは、Process Temperature Indicatorの意訳です。 また、MIM指南書P153 図4.35に Qサーモによる管理図を使った改善例を載せています。

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