「なぜLÖMI 溶媒脱脂装置は、溶媒にノルマルヘキサンを選んだのか」をテーマにその理由を考えてみました(私見です)。
塩化メチレン、パークロロエチレン、ノルマルヘキサンで比較しています。
《理由1:バインダー構造との相性(HSP値の適合性)》
MIMバインダーの溶解性は、単一の鉱物油や脂溶性汚れに対する攻撃力の強さである「Kb値」だけで決めるのではなく、溶かす樹脂(バインダー)の極性に近い「溶解度パラメータ(HSP値)」が決定打となります。ノルマルヘキサンのKb値は塩化メチレンに及びませんが、バインダー成分としてEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)を使っている場合、ヘキサンだけが、EVAとの相性が非常に良く、成形体の保形性を維持しながら、バインダー成分を効率的に抽出・脱脂することができます。
《理由2:抽出速度(拡散性)の向上》
ノルマルヘキサンのKb値は塩化メチレンに及びませんが、沸点が高いため、40℃〜50℃程度に加温して処理を行うことで、溶媒の拡散性が高まり脱脂速度は飛躍的に向上します。
仮にEVAを配合しないMIMバインダーであれば、処理温度を90℃まで上げられるパークロロエチレンの溶解性が最も良く、次いで塩化メチレン、ノルマルヘキサンの順になります。しかし、下記の総合評価によってノルマルヘキサンが選ばれています。
《理由3:資源の100%内製リサイクル(経済性と品質の安定)》
ノルマルヘキサンは蒸留再生が容易で、装置の構造もシンプルにできます。蒸留すれば約90%のヘキサンを新品同様のクリーンな液として回収・再利用が可能です。
装置内で手軽に蒸留再生ができれば、常に新鮮なヘキサンを脱脂槽に供給できるため、脱脂プロセスの時間や仕上がり品質をに一定に保つことができます。
《理由4:安全性の克服(防爆技術の確立)》
ノルマルヘキサン最大の欠点は、引火点が極めて低い(約 -22℃)点です。しかし、LOMI装置は、欧州の厳格な防爆規格である「ATEX認証」をクリアし、「溶媒脱脂・乾燥・溶媒再生」を密閉一体化させた革新的な安全システムを開発・提供することで、このリスクを完全に克服しています。
《理由5:環境・人体への毒性リスクの低減》
塩化メチレンは、高い発がん性リスクや環境負荷、厳しい法規制が大きな課題となります。急性毒性(致死量)のモノサシで比べても、ノルマルヘキサンは塩化メチレンに対して約12倍〜15倍安全(毒性が低い)であり、現場の作業環境改善の観点からも極めて有利です。
【珈琲ブレイ句】私が勤めていた会社では、自社で溶媒脱脂・蒸留再生装置を作っていました。また、独立して都立大学でお手伝いをした時も、自分で蒸留装置を作ってヘキサンを蒸留再生していました。大学の実験装置レベルで、溶媒脱脂・蒸留再生ができるのです。この「扱いのシンプルさ(プロセス管理のしやすさ)」こそが、工業生産においてヘキサンが選ばれる隠れた最大の理由なのかもしれません。