2026年10月29日木曜日

Catamold 17-4PHの焼結雰囲気に関する研究

2024年の論文を共有します。17-4PHの研究で、コストダウンを目的に、BASF推奨の「水素」より安価な「窒素」と「0.2%水蒸気+窒素」の雰囲気で焼結を行って実用上問題がないかを検証しています。

参考文献:Corrosion behavior of 17 - 4PH steel, produced by the MIM process, sintered in different atmospheres、 Otávio Real Cappellaro, Jorge Luis Braz Medeiros 他、 Matéria (Rio de Janeiro), Vol. 29, No. 3 (2024), e20240120

フィードストック:BASF Catamold 17-4PH

脱脂:触媒脱脂(硝酸125℃)

焼結:サンプル1:窒素、1350℃  サンプル2:0.2%水蒸気+窒素、1350℃

結果:

・マルテンサイト系母材と均一に分散した金属間化合物で構成されている

・窒素と水蒸気で焼結されたサンプルの方が気孔率が高い

・硬度と強度は、窒素で焼結されたサンプルの方が高い

・窒素で焼結されたサンプルの電気移動抵抗は、窒素と水蒸気で焼結されたサンプルより高い(=錆びにくい)

結論:コスト削減などのために窒素(や水蒸気)で焼結する試みを行ったが、耐食性を最優先する現場においては、やはり従来通りの『水素還元雰囲気での焼結』こそが、現在確立されている最も優れた技術(最高水準の標準手法)である。


【珈琲ブレイ句】17-4PHの焼結には、やはりBASFが推奨する水素での焼結が良いという結論です。でも、論文中に、その優れているBASFのデータが記載されていません。仕方が無いので、探したのですが研究値に対応するすべてのデータは見つかりませんでした。

補足:私が現役だった頃、SUS630製の一般的な機械部品を窒素雰囲気中で焼結していました。上表の通り、機械的特性は、水素焼結品と比べて大差はありません。ただし、耐食性が懸念される場合には、水素雰囲気焼結の選択は考える必要があるかもしれません。

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2026年10月27日火曜日

超音速ガスアトマイズ法について

超音速のガスを使ったガスアトマイズ法を図にまとめました。


 【珈琲ブレイ句】「超音速不足膨張噴流(Underexpanded Supersonic Jet)」という聞き慣れない言葉が出てきました。高圧のガスがノズル内で圧縮され、ノズルを出ることで急激に膨張するため、その超音速噴流には複雑な力が発生します。

例えば、超音速「マッハ」で飛行するジェット機の衝撃波と同じような樽状衝撃波(バレルショック)が発生しています。

従来のガスアトマイズ粉末より、奇麗な球体で、分布も微細方向に製造できるようです。この製法によるステライト6粉末(平均粒径:8.36 µm、タップ密度が 4.90 g/cm^3)を使った高精度MIMの開発事例*1)があります。なんと、粉末量を66.9 vol%という限界近傍まで高めたフィードストックにチャレンジしたものです。鋳造品・鍛造品より機械的性質が優秀です。(MIM-Stellite 6:焼結温度1250℃、相対密度98%、引張強度1225MPa、伸び14%)(Stellite 6:密度8.79g/cm^3、融点1290℃)

一方、粉末の内部構造を直接観察できるようになり*2)、いろいろ課題が見つかっています。粉末内部の残留気泡の増減には衝撃波が影響している可能性があるようです。 

参考1:金属射出成形プロセスにより作製したステライト6合金の組織および機械的性質に及ぼす焼結条件の影響、遠藤 栄治1))、中山 英樹1)、坂村 勝2)、1 キャステム株式会社 、2 広島県立総合技術研究所 

参考2:ガスアトマイズ金属粉末粒子内部の気孔形態の直接観察と形成過程の解明、東北大学金属材料研究所・吉年規治

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2026年10月25日日曜日

MIM相当の精密積層部品(PureForm™)

近年、米国Greene Group Industries(GGI)は、従来のMIM/CIMに独自の高精度金属AMを加え、高精度部品の受託製造で米国市場をリードするサプライヤーになっています。

その高精度金属AMとは、2024年に買収したHolo社の高精度金属3Dプリント技術(PureForm™テクノロジー)です。この技術について概要を共有します。 

《方式》DLP方式、液槽内の金属粉末(MIM用の微粉末)と光硬化性樹脂バインダー(フォトポリマー)を混合したスラリーに対して、下面光源により層ごとに露光して立体形状(グリーン体)を高速造形する方式。その後、通常のMIMと同じ焼結炉で脱脂・焼結する。

ことば:DLP(Direct Light Processing / Digital Light Processing)、VPP(Vat Photopolymerization)



参考: PIM International 2024夏号 Vol.18 No.2 P106 図24より

 

《最小分解能》0.1mm  《造形精度》±0.05mm  

《表面粗さ》:Ra1.5μm  《収縮率》18~20%  

《粉末配合量》55~60vol%

 【珈琲ブレイ句】GGIではPureForm™を、MIM相当の精密積層部品(Precision MIM-like parts)と呼んでいます。その通り、精度・表面粗さはMIMのレベルに達しています。スラリーの粉末配合量55~60vol%という数字が、それを裏付けています。 液槽光重合方式の金属AM(Sinter based Metal AM)の中で、精度はトップクラスで間違いないですね。