MIM指南書、第5章 MIM不良の原因と対策の25番目として185頁と186頁間に追加します。
5.25 バインダー分離による不良
Powder-binder separation
金属射出成形 (MIM) における「バインダー分離(偏析)」とは、射出成形プロセス中にバインダー材料が金属粉末から分離すること。その結果、原料内でバインダーが不均一に分散され、密度の不一致や潜在的な弱い領域により、最終的な焼結部品に欠陥を生じさせる可能性がある。
【現象】
1 収縮の不均一
部品の様々な領域でバインダー量が不均一になるため、焼結収縮率がそれらの領域で異なる。そのため、最終部品の反りや歪も加わり寸法が不正確になる。
2 焼結密度不均一
バインダーが少ない領域の多孔性が高くなり、部品の強度と機械的特性を低下させる。また、薄肉部分にバインダーが独立した微少片となり、焼結後ピンホールや凹み不良となる。
【原因】
バインダー分離は、粉末とバインダーの不適切な混合、原料の流動性(レオロジー)の悪さ、射出時のせん断速度の高さ、粉末粒子サイズのばらつき、金型設計の問題などの要因によって発生する。
【対策】
1 原料配合の最適化:適切なレオロジーと粒子サイズ分布を持つ適切なバインダーシステムを選択する。
2 混合プロセス制御:金属粉末とバインダーを完全に混合して、均一な混合物を実現する。
3 金型設計の考慮事項:射出時のせん断力を最小限に抑えるために、適切なゲート位置とフロー パスを使用して金型を設計する。
4 成形射出条件:射出圧力と流量を調整して、原料の均一な分配を確保する。
【珈琲ブレイ句】バインダーの分離による不良として体験したことがあるのは、薄肉部分の収縮率が大きくなることによる寸法マイナスNGだけです。しかし、昨日、あるMIM講習会で発表された改善事例では、1mm厚部分に独立したバインダーの微少片が見つかり(CTスキャン)、焼結後にピンホールや凹み不良となるものでした。フィードストックの品質には問題が無く、射出成形で分離バインダーの微少片が発生するという事例に初めて会いました。この事例の対策は、バインダーの配合設計から見直したそうです。
◆バインダー分離の評価方法について◆ ①ジャーマン先生の本のP152 Fig.6.17 にジグザグ金型の試験は、成形性と粉末結合剤分離の両方を測定できる有益な方法だと紹介されています。(ジャーマン先生の本) ②こちらもジャーマン先生が絡んでいる論文ですが、キャピラリーフローを測定すれば判定できるというもので、バインダー分離が発生するフィードストックは、せん断速度を1000(1/s)以上大きくしていくと見掛け粘度が下がらないで逆に上昇していくので評価できます。(”The effects of material attributes on powder–binder separation phenomena in powder injection molding” Tirumani S. Shivashanka, Ravi K. Enneti , Seong-Jin Park , Randall M. German , Sundar V. Atre)