2020年7月31日金曜日

POM系バインダーの悪臭について

実験でPOM系バインダーをつくるのが、少し苦手である。悪臭がして目が痛くなる。この原因は高温でホルムアルデヒドが発生するからである。加水分解が引き金なので吸水率も関係ある。
【教訓】温度を200℃以上にしない。POMは乾燥させて使う。

ジュラコンの資料に、こんなものを発見した。シリンダー温度と滞留時間の関係。適正樹脂温度の範囲内で滞留時間に制限がある。

  樹脂温度(℃)  許容滞留時間(分)
   200         60  
   210         30 
   230         10

適正樹脂温度 190~210℃(融点165℃)
予備乾燥 80~90℃ 3~4時間 

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2020年7月24日金曜日

充填最高密度を考える

 もしMIMフィードストックを1種類の球体粉末でつくると、充填最大密度(臨界粉末密度)は74vol%になる。バインダー量が26vol%である。次に、2種類の球状粉末の場合、その半径比が0.64のとき、充填最大密度は、少し増加し74.8vol%%になる。さらに、2種類の半径比を極端に大きくしても(0.29以上)74vol%を超えることができる。
 しかし、MIMで使用する粉末には「分布」が存在するので、こんなに単純ではない。種類をランダムにすると数値が下がり。ランダム最密充填で約64%になるそうだ。
 実際にMIM粉末にSAを添加して臨界粉末密度を測定した結果、73vol%の結果が得られた。ランダム最密充填64vol%より高くなっている、しかも充填最大密度の74vol%級に迫っている。しかし、残念ながら、市販のPOM系MIM用バインダーで同じ実験をすると65vol%にピークが下がる。それにしても、この粉末は、レベル高いですね!たぶん、この辺の設計思想と信念がしっかりしているのでしょう。 

粉末:SUS316L(アトミックス製水アトマイズ球状粉末、D50=6.05μm、比表面積0.216m2/g、タップ密度4.51g/cm3)添加:ステアリン酸


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2020年7月23日木曜日

MIM材に予備乾燥は必要か

 大学で学生さんの実検を手伝った(MIMと無関係)。おもしろい経験をさせてもらった。PAに無機フィラーを混ぜ込んだ材料で射出成形実験したところ、射出圧を開放してもノズルから材料が泉の様にあふれ出してきた。
 材料投入口の蓋に水滴が付いていたので、犯人は水分であろう。シリンダーの中のPAからでた水蒸気が(体積膨張1200倍)、シリンダー内圧を高め、材料を押し出したと考えられる。対策は、材料を80℃で一晩乾燥させることになった。

 MIM材にも樹脂が60VOL%程度使われているので、予備乾燥が必要かもしれない。少し調べてみた。

 《材質》    《吸水率のめやす》
  PP        0.02%
  PE        0.04%
  PS        0.08%
  POM       0.22%
  PMMA       0.30%

  PA        3.5%

 結論:POMを多量に使う触媒脱脂法フィードストックでは、予備乾燥を検討した方がよさそうですね。実際どうなんでしょうか? *1
 また、配合量は少ないが、3-STD法フィードストック(POM系、PMMA系)も、場合によっては必要であろう。

 予想される問題:加水分解すると分子量が低下し粘度が下がる。成形体内部に水蒸気気泡が残る、気泡が潰れ微小ウエルド、その部分は焼結で拡散接合しないので強度低下。

*1  BASFの技術情報に記載されていた。
 乾燥条件は、乾燥空気で100℃*2H または 真空化80℃*1H ただし、水分の付着がひどい場合は完全に戻らない場合がある。バージン材の保存期間は2年間。封を開けたら密閉管理をすること。

【珈琲ブレイク句】
 そういえば、臨界粉末量を求めるトルク実験で、数年前にサンプルでもらったPOM系バインダーを使ったとき、計測中の短時間で混錬トルクがどんどん低下していく経験がある。この原因について、仮説がひとつ増えた。あらたな仮説:保管の密閉が悪くPOM系バインダーが吸湿していたため、混錬で分子量が急激に低下した。ちなみにもう一つの仮説は、樹脂のラジカル連鎖による分子量低下。結局同じかも??


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