2022年12月31日土曜日

MIMフィードストック設計事例

 複合HA/Ti6Al4VのMIMフィードストック設計とその混合パラメータの研究事例をここに記録しておく。

《粉末》Ti6Al4V/平均25μm、球形、ハイドロキシアバタイトHA/平均サイズ5μm、複合比率/Ti合金:HA=60:40wt% 、プレミックス30分間

《バインダー》パームステアリン(融点54℃)60wt%、ポリエチレン(融点125℃)40wt%

《臨界粉末量と最適粉末量》CSL(CPVP)=69.5vol% 、最適粉末量(補正後)=67vol%

《実験因子と結果》混錬速度(10,30rpm)、混錬温度(130、150℃)、結果:混錬速度30rpm、混錬温度150℃の時に混錬時間が55分間と最短となりフィードストックの密度が最大化した(2.54g/cm3)

資料:”Effect of mixing parameters on the mixing time and density of composite HA/Ti6Al4V feedstock for powder injection molding”Amir Arifin and Abu Bakar SulongMATEC Web of Conferences , 03003 (2017)

【珈琲ブレイ句】このMIMフィードストックは医療用ニーズ目的で造られています。この報告ではCSLが69.5vol%と大きく、たいへん優秀です。これはTi6Al4Vが25μmに対してHAが5μmと小さいため二峰分布になっているためだと推察できます(残念ながらタップ密度は不明)。

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2022年12月30日金曜日

バインダー量を決めるCSLとCPVPとは

 CSLとCPVPはともに「臨界粉末量(最大粉末量)」のことである。臨界粉末量は、粒子が外圧なしにできるだけ密に充填され、粒子間の全空間がバインダーで充填される組成である。ジャーマン先生の本では、CSL(critical solids loading)とある。後年の海外論文には、CPVP(critical powder volume percentage)と表記するものが散見される。CPVPの方が実感として分かりやすい。

新しくバインダー量を設計するときにはCSL,CPVPの測定が必要である。

【珈琲ブレイ句】CSL,CPVPの測定にはラボプラストミルという装置で粉末量を累積増加させながら混錬トルクを計測することで求めることができます。(逆にバインダーを累積増加させる方法があり、私はこちらが好きです。*1)また、CSLはタップ密度と強い相関があるのでこの線形式を使えば粉末のタップ密度からCSLをある程度推定することもできます。興味のある方はMIM指南書 3.3章 バインダー量設計の実際 式1 P74 を参照してください。しかし、プロフェッショナルの方は精密にバインダー設計をする必要があり、そのためにはCSL測定はマストです。CSL値はクリティカルなのでこの割合では成形できません。そこで少しバインダーを多めに設計します。その値はジャーマン先生の本で学べます。

*1MIM指南書とは

ジャーマン先生の本「第2章フィードストック」とは

◆どちらもAMAZONで購入できます◆

「MIM指南書」

MIMのバイブル座右の書「Injection Molding Metals and Ceramics」



2022年12月28日水曜日

MIM成形技術の最適化研究(品質工学)

 品質工学(タグチメソッド)を使った研究報告の概要を記録する。

《実験計画》直交表:L18、制御因子:混錬温度、バインダー割合、金型温度、射出速度、射出圧力、射出筒温度、焼結昇温速度、焼結温度、誤差因子:同一ロット間バラツキ、特性値1:成形体のヒケ(望小特性)、特性値2:引張強度(望大特性)

《コンパウンド仕様》金属粉末:SUS316L、平均10μm、<20μm、水アトマイズ粉末 バインダー:混合ワックス:PMMA=1:1、バインダー量:9,10,11wt%

《結果》特性値1ヒケ:バインダー量だけが有意で、バインダー量が一番少ないものがヒケが少ない。 特性値2引張強度:混錬温度、金型温度、昇温速度、焼結温度の効果が大きい。特に焼結温度が高い程引張強度が高い。(脱脂:ウイッキング大気400℃、焼結:真空1250~1350℃)

《確認実験》最適条件(焼結温度1350℃、昇温速度10℃/h等)の結果、ヒケ18μm、引張強度408MPa

文献:鹿児島県工業技術センター研究報告No.13(1999)、岩本竜一、森田春美、南晃

【珈琲ブレイ句】実験はCIM用の混合ワックス(セルナNE119)とアクリル樹脂PMMA(ダイナールBR105)を140~150℃で脱気しながら攪拌溶解してから金属粉末を3回に分けて混錬しています。一般的なMIMのバインダー量よりかなり多めなのが気になりますが、ヒケに対してバインダー量が少ない方がよいという結論は納得できます。引張強度では焼結温度の一番高い1350℃で最大値を示しています。面白い結果としては、昇温速度5,10,15℃/hの中では中間の10℃/hで引張強度が最大化しているところです。

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2022年12月21日水曜日

PAとEVAのブレンド研究

MIMフィードストックに多用されているPA(パラフィンワックス)とEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)のブレンドに関する論文を掘り下げ結論だけ記録する。製造されたMIMフィードストック組成は、PA,EVA、SA1wt%、結合剤(内容不明)、SUS316L粉末D50-8μm、SL:53VOL%。実験変数:PAとEVAの配合%

《結果》◆PAとEVAのブレンド品だけの曲げ弾性率(ヤング率)は、EVA=35wt%のときに最大(165MPa)になる。ちなみにPW100%とEVA100%のヤング率はどちらも約90MPa。◆MIMフィードストック(EVA35wt%)のヤング率は1635MPa ◆金型温度が高い方が、MIM成形体のヤング率が高くなる。型温度-ヤング率:20℃-1378MPa、30℃-1454MPa、40℃-1623MPa

文献:The Crystallization Behavior and Machanical Properties of Poly and Parafin Wax Blend , Jim Kon and Byoung-Kee Kim,粉体粉末冶金第46巻第8号(1999年8月)P823-829

【珈琲ブレイク】不思議ですね。PA、EVA単体だとヤング率がともに60MPa程度なのにブレンドするとEVA35wt%のとき最大化してヤング率が約2.7倍になるという報告です。個人的にEVAを使うMIMフィードストックが好きなので「やっぱりな!」という感想です。ヤング率が高いと言う事は成形体が固く曲げ変形に強いということです。ほかにも、EVAがホットメルト接着剤に使われていることからも分かるようにEVAの結合力は信頼性が高いのです。でも欠点もあります。それは加熱脱脂で残渣が残りやすいことです。・・でも一次脱脂を溶媒脱脂(沸点が高い溶媒厳守、塩化メチレンはNG)にして完全にEVAを除去すれば問題は回避できます。

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2022年12月10日土曜日

MIM Like AM MEXの改善すべき課題を妄想する

 MIMとほぼ同じ構成(微細粉末+バインダー)の積層材料を使うMEX(FFF、FPF、FDM)には共通する課題がある。それは、積層方向の引張強度の差、積層体の密度の確保が難しい(保圧が効かないため)等である。さらに、新たな潜在的課題に気が付いたのでここに備忘録として記録しておく。

その課題とは、積層材料とくにフィラメント自体の緻密性が確保されていること。つまり、微細な気泡が内在せず、理論フィードストック密度であること。現在市販されているMEX積層装置には、積層材料をノズル直前で圧縮混錬する機能が付いていないため脱気されない。材料内の気泡(ガス)がそのまま積層されてしまうのである。

【珈琲ブレイ句】現在市販されているフィラメントがどのように造られているのかわかりませんが、圧縮混錬で脱気された後にフィラメント化されていてほしいと願うばかりです。つまり高圧縮比をもつスクリューで、完全脱気しながらフィラメントを造る装置であることが理想です。あるいは、将来こんなMEXが登場するかもしれません? ミニ射出成形機(高圧縮スクリュー内蔵)をノズルににした積層装置です。価格は高くなりますが上記課題は解決できるはずです。

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2022年12月6日火曜日

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【オンデマンド:tdo2020121101】金属粉末射出成形(MIM)の基礎と製品設計の勘所