2019年9月29日日曜日

驚き粉末を少し掘り下げた

前報の驚いた粉末を深堀する。
理想的な粉末の定義10のいくつかと比較してみる。

①0.5~20μm、D50=4~8μm であること。
 <20μm 98.9% D50=6.05μm  
②非常に狭い粒度分布で 比表面積Cw=2(単位がわからん)
 非常に狭い粒度分布  比表面積Cs=1.2(m2/cm3)
③理論上50%を超えるタップ密度
 56% (真密度7.98g/cm3として)

このA社のSUS316L粉末は、かなり理想に近いことがわかる。
水アトマイズでここまで来るとは「あっ晴れ!!」

臨界粉末量を測定して驚いたこと

大学の先生と、臨界粉末量の測定を始めた。
臨界粉末量「Critical Solids Loading」の定義は「粒子が外圧なしでできるだけ密に充填され、粒子間の全空間がバインダ―で充填される組成である状態」の金属粉末量である。
最初の実験で衝撃的なことがわかった
A社の最新水アトマイズ粉末(D50=6μm)の臨界粉末量を、ラボプラストミルを使った混錬トルク法で調べた結果、私の予想を大きく裏切ってくれた(良い方向に)。
私の予想(推定値)より臨界粉末量が10%も多い結果となった。あまりにも予測から乖離しているので確認実験を行なった。結果は再現した、この粉末の実力で間違いない、凄い。
測定に使用したバインダをステアリン酸単体としたので実際のバインダではないが、もしこの組成でMIMフィードストックを製作し、成形できれば「収縮率最少化」が実現でき確実に焼結精度は向上する。



2019年9月25日水曜日

タッピング測定とヤンセンの式

MIM粉末のタッピング密度測定で、いくつか疑問を抱えモヤモヤしていた。先日図書館で、とうとうその疑問を解決してくれる理論に巡り合った。

【モヤモヤ疑問】
・タッピング密度を向上させる目的で、上面に重りを載せてタッピングしたが結果が変らなかった。
・プラスティック製の容器を使うと、一回の測定で容器内面が「曇りガラス」の様になってしまった。

【理論】
「ヤンセンの式」サイロの設計に使われている古典理論。
理論①「サイロの底の圧力は、高さに比例せず、ある高さ以上になると圧力は増えない。」理論②壁との摩擦力が大きく関係する 理論③水平方向に大きな圧力が発生する。

理論式は難しいので図やグラフを載せる。
水は深さ(高さ)hが高くなると鉛直圧力は直線的に増加するが、粉体は比例しない。
粉体の密度は底面で高く、上面では低い状態。密度が傾斜している。
(参考:構造計画研究所・設計者向けCAE/解析 情報Webサイト)

【どうすれば良いのか】
①タッピング容器は、同じ体積なら直径を大きく、高さを低くし、単位体積当たりの側面摩擦力(摩擦が作用する面積)を小さくするべし。
②容器内面の摩擦係数は少ない方がよい(表面あらさは小さい方がよい)。また、硬質なものを選ぶべし。 もし金属で作るなら、調質をして内面を鏡面にする。

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2019年9月24日火曜日

「テンパーカラー」は「MIM設備保全の警告信号」

高温の鋼は空気中で酸化し綺麗な色の酸化被膜を作る。これをテンパーカラーという。第一鉱業のHP「熱処理用語の解説」で、貴重な色見本があったので入手した。(元ネタは日立金属のカタログからの引用とのことである。)

MIM製品もこのような色が付くことがある。発生原因はふたつ。
ひとつ:焼結完了後、炉冷200℃まで待てず、途中で空気を入れて扉を開けたとき。ふたつ:真空焼結炉がリークしていて空気が侵入したとき。こちらは早くリークを修繕しないと炉内カーボン部品が摩滅しボロボロになる。テンパーカラーは設備保全を促す警告信号だ。



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2019年9月18日水曜日

アトミックスのアトマイズ技術を掘り下げる

今では、トップを独走する感のあるアトミックスの水アトマイズ粉末。
自ら語る「世界をリードするアトミックス独自の技術」とはどんなものなのか。特許明細書を調べてみた。

出願2002年
①タンデッシュから落下する溶湯をガス流で分裂させる②その液滴を高圧水をノズルから噴射し作った水の逆円錐にぶつける第二分裂③直下の圧力を上げ水蒸気を液化させる。
【ポイント】水アトマイズされる前に、第一分裂で液滴になるので球状化でき、収率も上がる。また、アトマイズ直下の圧力を上げることで(水の蒸気圧の関係で)水蒸気を水に変え、粉末の酸化を低く抑えることができる。

水アトマイズの前に、液滴化する方法は、以前紹介したガスアトマイズを第一分裂に使う方法と目的は同じだ。ガスアトマイズと水アトマイズのハイブリッド。

出願2011年2月8日
タンデッシュの下にもう一つタンデッシュを設ける。この下のタンデッシュの壁部内に誘導加熱コイルを内蔵させる。
【ポイント】溶湯の温度を正確に管理できるので大気からの酸素侵入を最少化できる。また、溶湯は磁界で対流撹拌されるので金属粉末組成が安定する。 311後、再稼働した粉末工場を見学させていただいた。大きな四角いタンデッシュに電極のようなものが付いていた。たぶん、これですね。

出願2013年
第一分裂の改良版:タンデッシュの下に筒を設け、筒の下端面には複数の穴がある。その穴を通る溶湯が丸い液滴となる。

特許明細内容が量産技術に展開されている保証はない。しかし、このように技術開発を継続していることに「世界をリードする独自技術」を自負する根拠がある。

過去の技術(特許時効)は展開されている可能性はある。例えば、高圧旋回水ジェットによる球状化(発明者:福田金属、菊川)。

ウォータージェットのスギノマシンのHPに水アトマイズの解説が載っている。水圧は高い方が微細化、球状化できるので。この本家技術とのコラボもおこなっているかも?

2019年9月14日土曜日

だれでもMIM化時代のお試しセット

・溶媒脱脂用バインダーセット、PETTYの販売をやめました

 その代わり・・・
・3STD法のMIMフィードストックのメーカーを紹介します。
・3STD法のMIMフィードストックによる試作成形体は、1炉で脱脂焼結する真空脱脂焼結炉を使います。営業担当者を紹介します。


〇レシピ販売開始 2023〇 PETTY(溶媒脱脂バインダー)の「レシピ(文字情報)」だけ販売します。費用はシャトルレポートの20倍です。レシピ:バインダー仕様、国内メーカー、配合比、MIMフィードストック製造事例(SUS316L、高精度フィードストック製造のためのQC工程表)すべて国産原料にしています。シャトルレポート費用

2019年9月13日金曜日

粉塵爆発について学んだあらたな3つのこと

先日の粉末冶金講習会(PMMIMの二部構成)で、PMの先生から学んだ。

①自分で燃焼テストを行って判断することができるらしい
 小型ガス炎着火試験(30°に傾ける)で、10秒以内に着火しなければ、普通倉庫での保管ができる。
②粉塵爆発しやすい金属
 危ないグループ順:「ZrMgAlZn」「TiSiFe
③一番危険な発火源は、「集塵機」で、特に、その「バグフィルター(bag filter)」で発火する。爆発が起こると爆風が配管をとおり、連鎖爆発が発生する。

MIM工場を想定すると、一番危険なのは、やはり「混錬工程」である。

設備管理、日常点検が重要。「安全がすべてに優先する」◆


日本粉体工業技術協会規格APS002-1991『粉じん爆発性試験方法』

2019年9月3日火曜日

理想的なMIM粉末の10の定義

ジャーマン先生の本から学ぶ。理想的なMIM粉末が具備すべき10の特徴は表3.1のとおり。

《表3.1誤記訂正》誤:比表面積Sw 正:正規分布勾配パラメータSw

【本文和訳抜粋】このリストは、いくつかの粉末および粉末特性の組み合わせの研究に基づいた複合的結果で、多くの場合、要件は矛盾している。球形粒子は成形が容易で、固形物の充填量が多いことが好まれるが、不定形粒子は脱バインダーのゆがみを軽減する。したがって、PIMパウダーを選択するにはバランスが必要である。Ref:  Injection Molding of Metals and Ceramics by R.M.German & A.Bose (1997) P57

【珈琲ブレイ句】
この表が1997年に発表されていることに驚きを覚える。当時はカルボニル粉とガスアトマイズ粉末が選ばれていたことが想像できる。一方、不定形の水アトマイズ粉末は、日本メーカーの技術開発により、理想的な粉末が登場するまで、ここから15年近くかかる。さらに研鑽は継続され、いまでは、収率を上げ低価格量産品を造りまた、微細側に粒度分布をシフトさせ収率を上げ、安価なマイクロMIM用の粉末ができるようになった。日本の技術力が頼もしい。

2019年9月1日日曜日

MIMハンドブックを買ってみた

今年2019年の7月に、MIMハンドブックが出版されていた。
タイトルは、Handbook of Metal Injection Molding / Second Edition  /  Edited by Donald F. Heaney

 来年自主出版する本と、タイトルがほぼ同じなので、敵陣視察のため「たいへん高価」であったが購入した。

《内容》
頁数636 25章 著者36人の編集本、読み応えがある。すべて英語。
始めに、ジャーマン先生が登場し、知らない先生達の中、三浦先生が25頁執筆されている。もう一人の日本人、近大の西藪先生はマイクロポーラスを担当されている。

【自主出版本の編集方針】
 自主出版本の狙いが、上記の本と被らないので安心しました。
 自主出版本の編集方針は・・・・・・
 ・体験から得たノウハウ(KnowHow)と理論(KnowWhy)の融合で構成する。 
 ・MIM不良対策とMIM製品設計に軸足を置く。
 ・具体的な、生々しい材料開発、製造条件と不良原因との書内リンク構造。
「MIM金属粉末射出成形指南書 Handbook of Metal Powder Injection Molding for Engineer」2020年11月01日 出版予定!!