2018年11月26日月曜日

BASFから3D積層用のフィラメント(MIM粉末)が登場

BASFから「Ultrafuse316LX」というフィラメント(巻き線)が販売されました。すごいことです。どのようになるかというと・・・
①安価な3Dプリンター(熱溶解積層法MEX,FFF,FDM)で、積層できる。
②MIMメーカーが積層装置とフィラメントを購入すれば、自社内で脱脂焼結ができる。
③積層モデルで試作を対応し、量産は正式にMIMで受注する。
というビジネスが簡単にできるようになる。

欠点は精度と機械的性質ですが、この試作品で合格になればMIM化への展開は楽勝です(MIMの方が高精度、高強度になるため)
(一方、積層品がNGのときMIMもNGとなる懸念があります。
 熱ものに懲りてなますを吹くになっちゃうネガティブ思考が心配・・)

MIMマガジン2018 Vol.12 No.3 P83  によれば
材質 SUS316L
収縮率 X,Y方向 16.5% Z方向 20.5%
引張強度 XY方向 498MPa Z方向 414MPa
     参考MIM 510MPa
伸び  XY方向 43% Z方向 19%
     参考MIM 50%

なぜ、強度がMIMより劣るのでしょうか
これは組織マクロ写真を観るとわかるのですが、やっぱり密度が低くスカスカ感が否めないのです
なぜそうなるのか(以前にも書きましたが)
3D積層は「グリーン体密度が上がらない」からです。
なぜ上がらないのか・・
それはMIM成形(一般成形も同じですが)での「保圧」を掛けられないためです。
「MIMの品質は保圧で決まる」といっても過言ではありません。

でも「3D積層で成形密度を完璧にする方法」はないのでしょうか。
技術的には存在します。そのアイデアは・・
ラバーでコーティングしてCIPを掛ける方法です。
コストとリードタイムが増えるので高機能部品に限定されるでしょう
航空機の部品とか・・

その他に 焼結体にHIPを掛ける方法もありますね。
こちらの方がお手軽化もしれません。
ただし、焼結密度が低すぎてポーラスが閉じていないと
(空孔が独立していないと)HIPが掛からない、
この時は、密閉容器にセラミック粉末と一緒にいれて
等方圧加圧することになり大変です。
【追加】
・仮加熱脱脂でラバーコーティング+CIPという論文もありました。
・実験でちょっと試したいときは、油圧ポンプの出力に圧力容器をつなぐだけで
 「なんちゃってCIP」ができます。注意:温度はワックス軟化点以上が理想。

◆BASFに行って教えてもらおうと思ったら◆20190817(mimsen83)
このフィラメントの販売は別会社でした。BASF 3D Printing Solutions 株式会社。それぞれ別々に営業をやっており詳細聞けませんでした。「AMからようこそMIMへ」への道は遠いことを痛感した次第です。もう少し営業の守備範囲を広げればいいのに・・・鉄道だって相互乗り入れが当たり前の時代に・・・大変残念でした。

2018年11月25日日曜日

MIM業界の先駆者「Parmatech社」依然として強い

MIMインターナショナル・マガジン 2010年Vol.4No.2
MIMの元祖パーマテック社の記事を読んだ(英文)
「Parmatech:The MIM industry's first commercial producer, and still going strong」

1973年4人の起業家で創業(カルフォルニア州)、(一人は「ウイテック法」のウイッキーさん)。パーマテック法の基本は溶剤(溶媒)脱脂である。特許(米国第4,197,118号)の概要:①溶剤蒸気は未焼結体にゆっくりと入り込み、結合剤の膨張により過度の応力が掛からないように結合剤を溶解する。②溶媒の中に置き溶剤を結合剤の流動点より高い温度に維持して残りのバインダーを抜く。③水素中で約1150℃まで予備焼結した後 ④真空炉を用いて1300℃以上で焼結する。
・気相中で溶剤脱脂
・続けて溶剤中で脱脂
・水素中で予備焼結(還元反応させるため?)
・真空炉で本焼結
徹底的にバインダーを取り除く基本中の基本ですね。
故意にバインダーを残して焼結体の炭素をコントロールする方法がありますが。個人的には、上記のバインダーは完全に除去する方法を支持しています。なぜかというと
量産設備の能力が安定しないため
《環境温度湿度ばらつき、排気能力の低下(真空ポンプ能力低下、配管つまり)、炉内汚染など》バインダーの残量を管理することは量産現場では相当難しいと思います。