2019年8月30日金曜日

粉塵爆発の3つの要因

MIMの金属粉末は、消防法の第二類可燃性固体になるものがある。
500Kg以上保管するときには消防の認可が必要になる。
理由は「粉塵爆発」が発生する可能性があるから。

粉塵爆発は3つの要因が揃ったとき発生する。 
①粉塵濃度 ②酸素濃度 ③着火源

したがって、MIM粉末(特にカルボニルFe)の管理には次が必要になる。
・換気を十分にして、粉塵濃度、酸素濃度が上がらないようにする
・火気を避ける(タバコ厳禁、電気設備は防爆仕様にする)
・静電気を貯めない、アースできるようにする(入退室時にアースを触る)
・粉塵を扱う装置類には、不活性ガス(窒素)を封入する
・粉塵が堆積しない様にする(こまめに清掃、こぼれた粉末は捨てる)

【珈琲ブレイ句】
  私は、上記とは無縁であった。粉末は数十キロ単位で購入してすぐに混錬すれば問題ない。生産量の1か月分しか在庫しないと決めていた。少しでもトヨタ生産方式を勉強すると在庫が無駄に見えてくる。国内調達の利点であるはずなのに・・・国内の粉末屋さんからは嫌われた。
 もちろん、MIM材料をフィードストック屋さんから購入する場合は、粉塵爆発は関係ない。ちなみに、除外粉末はNi粉末と銅粉末、目開きが 53μmの網ふるいを通過するものが 50 パーセ ント未満の粗い粉末。


2019年8月25日日曜日

技術士事務所を立ち上げました

MIM専門の技術士事務所を正式に始めました。執筆活動と大学でのMIM研究のお手伝いに専念しようと思っていましたが、いろいろお誘いが来るようになり、計画より1年前倒しで、技術事務所を立ち上げることになりました。生まれて初めて税務署へ書類を出してきました。ありがたいことです。

屋号: 八賀技術士事務所
◆日本初のMIM技術伝道士◆


MIM指南書 *直販*




2019年8月18日日曜日

新日本橋のBASFでCATAMOLDの話を聞いてきた

さすが大企業。戦略がすばらしいと感じました。
そのスローガンは・・
『トータル・ソリューション・プロバイダ』
つまり、こんなビジネスモデルです。

『MIMに関する問題課題は、すべてを私たちが解決させていただきます』
 BASFに相談すれば、初心者でもMIMを始めることができる。
 「MIMの窓口」戦略だ。

具体的には次の4Mすべてを提供する戦略

◆人Man◆人材育成
上海テクニカルセンター 二泊三日のトレーニング指導

◆方法Method◆技術ノウハウ開示・指導
技術資料の開示(Data sheet,Technical Information ,Product Specification
流動解析による方案設計アドバイス

◆設備Machine◆設備ノウハウ開示・指導
  試作用設備を揃えている(成形機、脱脂炉、焼結炉)
量産設備選定のアドバイス (中国製、ドイツ製、米国製、国内製)

◆材料Material◆
  フィードストックのカタログ販売


【珈琲ブレイ句】
国内で、この4Mすべてそろったフィードストックメーカーを私は知りません。加熱脱脂・溶媒脱脂グループは戦略で負けていると感じます。良い戦略はすぐパクって挽回してほしいものです。競争ではなく競走で。
アジア戦略:2012年 中国上海にテクニカルサービスラボ新設。2013年下期 台湾の観音にプラント(年5000トン)を新設。





2019年8月16日金曜日

脱脂の不良と発生原因

ジャーマン先生の本より「脱脂の不良一覧表」を和訳しました。

 【座右の書ジャーマン先生の本】AMAZONで購入する

英語版 | Randall M. German、 Animesh Bose | 1997/6/1

脱脂不良の発生原因として、「脱脂条件の不適切」 だけでなく「バインダー、ポリマーの設計問題」「フィードストック設計問題」さらに「製品設計」まで論じられていることに驚き、そりゃそうだと納得するのです。



【珈琲ブレイ句】
Coring を「穴明き」と訳しました。 
コア(穴)が発生するということだと考えました。「肉盗み」という意味もあります。
Slumping は「崩れ」と訳しました・  
ドクター・スランプのスランプですが、崖崩れという意味があるようなのでこの概念をいただきました。

2019年8月15日木曜日

MIM業界をメタ認知してみた

無責任ついでに「国内のMIM業界」をメタ認知してみた。
・・・「もしも自分がMIMメーカーだったら」基準・・・

Custmer マクロ】
2016年を底に国内MIM市場は回復している(年5億円規模)
・「良いものは良い」やはりMIMは素晴らしい。再認識の兆し。
・金属三次元造形(3Dプリンター)ブームで、MIM技術が必要。追い風。
・試作から量産ニーズ 「AMからようこそMIMへ」の時代が来る
Custmer ミクロ】
・開発設計者がMIMを知らない。→潜在市場が限りなく大きい。
Competitor
・国内統廃合、強者が残る。
・フィードストックのカタログ販売(誰でもMIM化時代)。
・プラスチック成形メーカーの新規参入が増加する。
・金属3Dプリンターとのセットで差別化
Company
・差別化技術があるか(VS 国内、海外メーカー)
・差別化営業モデルの構築(創造性、オンリーワン、スピード、おもてなし品質)
・金属3Dプリンターとの共存共栄戦術


2019年8月14日水曜日

もしも自分がMIMメーカーだったら


もしも自分が国内のMIMメーカーだったら
「これからどうやって成長するべきか」
 無責任に空想してみた。

【自分の力】
・独自性のMIM技術を持っているのか
・差別化技術は何だろう
 マイクロを狙うのか、巨大を狙うのか
 高精度化、高機械的特性、超合金、ターゲットを絞り・継続
・小回りの利く、敷居の低い提案営業で差別化
 ワンテーブル営業、工場ショールーム化 
・自社の技術の幅を広げる  ワンストップビジネス化、
(フィードストック内製化、金型内製化、二次加工複合化)
【売り手:粉末材料】
・粉末のQCDが優位であること(良い、安い、早い)
 高タップ密度、球状化、微細粉末~、短納期
・常に開発している、業界のトップランナー
【買い手:お客様】
・自分のお客様を絞る(決める)
 マクドナルドのお客様か、モスバーガーのお客様か
  ほどほど品質で安価なものがほしいお客様
  リーズナブル価格で高品質がほしいお客様
・開発仕様変更に臨機応変に対応してほしい
・先行試作から対応してほしい
【新規参入同業者】
・人件費の安い海外でのMIM製造参入
 その傾向:小物、少品種多量生産、市販フィードストック使用
MIM技術のオープン化(すべての基本特許が切れている)
・専門コンサルタントの出現「誰でもMIM化時代」
【代替工法】
・金属3Dプリンターの出現
 「MIMの相棒として考える」
 「金属3D-AMからようこそMIMへの時代が始まる」



2019年8月11日日曜日

パージ剤を混錬機に使ってみた

小さな実験用混錬機の洗浄にパージ剤を使ってみた。
パージ剤(ペレット)が溶解していく様を、実際に目視観察したのは初めてである。
混錬機でパージ剤を使うのも初めて・・・

《気づき》
・溶けてもべとべとせず、混錬機内部・翼表面に付着することがない
・溶けると発泡するので内圧が上がり掻き出し力が増強される
・混錬回転を逆転すると、サザエの身が抜けるように、するっとパージ剤がとれる
・パージ剤のまとまりが強いので、混錬機内部の残留が少ない


パージ剤とは、射出成型機の材料替えのために、シリンダー内部を洗浄するもの。化学的(界面活性剤)&物理的(フィラー含有もある、発泡するものもある)に掃除をしてくれる。

【珈琲ブレイ句】
先日、無機フィラー入りのバージ剤を試してみた。無機フィラーとはたぶんアルミナ粉末だろう。この研磨剤で汚れを磨きとってくれるようだが、パサパサな感じで一体感が少なかった。混錬機内部の隅にパージ剤が残るので、最後に従来のパージ剤(フィラーなし)で仕上げた。すると逆回転でスルッと取れた。このパージ剤の一体感が気持ちいい。

2019年8月9日金曜日

タッピング測定器改良した結果がすごかった

体感的に失敗したと反省し改良した。
改良前:メスシリンダー25cc
改良後:メスシリンダー100cc(太い容器に変更)

結果 
タップ密度が向上した。同じ粉末なのに・・・
改良前で測定すると タップ密度3.61g/cc(測定重量m=78.97g)が
100cc容器での結果 タップ密度3.91g/cc(m=193.35g) となった。

タップ高さ:18mm  タップ速度:120BPM

なぜ、タップ密度が向上したのか(仮説)
①測定重量を大きくできるので運動エネルギーが大きくなった
②メスシリンダーの内径が4~5倍大きくなったので
 粉末のの移動できる自由度が増した
③メスシリンダー内面と粉末との摩擦が作用する単位重量当たりの面積が減った

◆大問題・課題◆
このようにタッピング密度の測定は、測定方法で平均値が大きくずれる。MIMの最適なバインダー量(臨界粉末量)を設計するために必須なので、MIM業界での規格化は必要ですね。また、タッピング密度ではなく「臨界粉末密度 Critical Powder Density」と改名し、タッピング法以外の粉末密度最大化手法も検討すべきだと問題提起しておきます。

◆増補◆この装置で測定した結果と、粉末メーカー報告値  との比較例
SUS316L 水アトマイズ粉末
A社の粉末 メーカー報告タップ密度=4.51g/cm3
   自作改良装置の測定値=4.48g/cm3 (メーカー比99%)
D社の粉末  メーカー報告タップ密度=3.71g/cm3
   自作改良装置の測定値=3.91g/cm3 (メーカー比105%)
メーカー測定値に肉薄する結果になりました。
2019/08/15

【珈琲ブレイ句】
なぜA社のタップ密度がこんなに高いのか? 問い合わせたら腑に落ちた。
①タッピング高さが高かった。40mm
②測定粉末は100g程度と同じであるが、タッピングの時は1.5~2倍の粉末を入れている。タッピング後、重量測定の時に、下部の測定用筒を正確に分離する方式である。すばらしいです。タッピングの欠点は、粉体密度が傾斜する。下の方が上より密度が高い。この欠点を逆手に取った、画期的な方法である。20190830
 ただし、この密度傾斜もある高さ以上では関係がなくなるそうだ。粉体重量と側面との摩擦力とのバランス問題で、ヤンセンの式を勉強する必要がある。20190914