2023年6月27日火曜日

金属MEXについて掘り下げる

 Sinter based Metal AM(MIM like AM)のMEX(FFF、FPF、FDM等)の3つの方式の成形材料、特徴をまとめておく。

①フィラメント・ベース(FB-MEX)(FFF,FDM):Markforged MetaL X等。最も一般的、市販デスクトップMEX-3Dプリンター装置も使える。フィラメント状材料。市販材料BASF-Ultrafuse 316L、 Filamet 、Anycubic 等。フィラメント折れ対策:Ultrafuse→約60μmポリーマースキン、Filamet 、Anycubic →低SL(バインダー量が多い→収縮率大→低精度)。予熱(アニーリング、フィラーウォーマー)が必要なものがある。

SL:(Solid Loding、粉末負荷量)

②プランジャー・ベース(PB-MEX):Desktop Metal(BMD)等。円形棒状材料。 フィラメントにする必要が無いので高SL(高精度)を実現できる。

③スクリュー・ベース(SB-MEX)(FPF):AIM3D、PolenAM等。最も汎用性が高い。ペレット状材料。SL(Solid Loding)を最大化できる(高精度化)。スクリュー回転により射出すると同時に連続可塑化。材料も連続供給。再生材(粉砕して)利用可能。

【珈琲ブレイ句】個人的には、MIM Like AMではBJTよりMEXの方を推しています。理由は、安価な市販3Dプリンターですぐに試作品を製造でき技術ノウハウを獲得し実力がついてきたら量産機を買えばよいからです。形状精度は悪いですがMIM化を前提とする試作に最適なのです。日本国内で馴染があるのは①と②ですが、実は③が一番優れているのです。高SLのペレット(MIM材料相当)が使え、射出精度が高いからです。近い将来③が上陸してくるでしょう。もしかすると国内の射出成形機メーカーで開発中かもしれません。さらに射出もスクリューの回転方式だけでなく、②+③を併せ持つプリプラ方式の3Dプリンターが海外では試行されています。Made in Japan 期待しています!  

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2023年6月19日月曜日

粉体粉末冶金協会春季大会2023のMIM Like AM

 粉体粉末冶金協会春季大会2023 202367日 早稲田大学井深大記念ホール

Sinter based Metal AMMIM like AM)に関する4つの発表のみメモっておく。

 1-18焼結型 FFF 方式金属 AM 技術の進展と造形用フィラメント開発の現状、(東京電機大学)○清水透

◆MEXであるFFF方式の廉価な3Dプリンタを使って金属AMを実現できるが、MIM材は脆いので柔軟なフィラメントが必要である。実用化フィラメントは、米国Virtual Foundry、仏国Nanoe,独国MIMtechnik AM-Extrusion PT+A, などが存在する。国内では,ペレットが第一セラモより発表され,また,AM-Zone でもFFF 法による金属積層造形を検討している。◆研究テーマ「FFF 方式3Dプリンタでの造形が可能な金属コンパウンドフィラメント開発」の試み。◆会場に持参した試作フィラメント(銅)は大変柔軟性があるように見えた。ただしバインダ50VOL%は過剰ではないか?

 1-19バインダジェツト金属3Dプリンタによる水アトマイズ粉末の造形、(東京都立大学)○長田稔子、小林訓史 他

◆ExOne製のバインダジェット金属3Dプリンタを用いた造形。利点:FDM方式と比較するとサポート材やその除去作業が不要,造形が速い,粉末コストが低い,得られる金属組織が等方的で残留応力が無い。欠点:粉末の除去が必要,脱脂および焼結が必要,寸法精度,表面精度が低い。◆研究テーマ「国産水アトマイズ粉末を使って粒度分布および焼結条件の違いがグリーン体の密度,焼結体の密度,組織および機械的特性に及ぼす影響について」◆ガスアトマイズ粉末ではなく国産水アトマイズ粉末は充分利用できる。◆課題:グリーン体内の粉末密度分布バラツキが寸法精度に影響する。SUS316LGA93.1%、WA92.4%、Saturation65

1-20 BJT式金属3D造形における粉末リコート条件が、水アトマイズ粉末を用いた成形体および焼結体の密度に及ぼす影響(株式会社パシフイツクソーワ、東京都立大学)○高橋夊(東京都立大学)小林訓史、長田稔子、

研究テーマ「水アトマイズ粉末にナノシリカを添加することで積層体の品質を向上させる。粉末リコート条件の研究」平均粒径4.1μmSUS316LEPSON)+ナノシリカ50100重量ppm添加。ローラー2種(シングル、ダブル)焼結HIPERBJ200GR1350℃×3H。結果:ナノシリカ50ppm、ダブルロールに成形体見掛け密度に効果が見られたが、焼結体では確認できない。ナノシリカの撥水性が課題?親水性へ。

1-21 バインダジェット金属3Dプリンタにおける高強度熱硬化バインダを用いたグリーン体の造形および焼結体の特性、(ASKケミカルズジャパン,東京都立大学)○猿田潤、(東京都立大学)長田稔子、小林訓史

 熱硬化性バインダ(N-ビニルピロリドンとメタクリ酸-2-ヒドロキシプロピルのラジカル共重合体+水+有機溶剤)をバインダとして用いた場合のグリーン体強度および焼結体の特性研究。EX-ONE inovent+R 、ガスアトマイズ粉末(平均粒径10μmのSUS316L-22μmSandvik製)、Saturation55, 65, 75%の3水準。造形ボックスごと200℃で6h熱硬化後にグリーン体の3点曲げ試験実施。およびグリーン体強度の経時変化測定。◆高強度熱硬化バインダにより造形体の強度は高く、経時変化は少なくなる。焼結体の相対密度95%以上が得られた。続報:三菱製鋼製水アトマイズ粉末の結果、SUS316L、脱脂700℃、焼結1400℃、焼結体98%、引張強度480MPaC0.003%、O0.15%(粉末0.3%) ◆熱硬化系樹脂であるが残渣(炭化)問題は発生していない。

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2023年6月13日火曜日

POLYMIM社を深堀して感じる戦略

2005 年に設立された Polymer-Chemie GmbH の金属粉末コンパウンド部門から、2010 8 月に独立した PolyMIM GmbH を深堀することで、この後発参入MIMフィードストックメーカーの戦略を想像してみる。

 ◆ターゲットは2つ、MIMメーカーとMetal AMMEX)を利用するメーカー。MEX用材料は、(たぶん)ペレットでフィラメントではない。◆バインダーシステムは、2種類に集約。水脱脂バインダー(PolyMIM)と触媒POMバインダー(PolyPOM)。◆材種は、PolyMIM32種、PolyPOM32種と同じであるが中身は若干異なる(PolyPOMには、銅、超硬合金F75が無い)。また収縮率違いが追加で存在する。【伸び尺】Low Alloy1.16691.2160SUS1.15151.1669MA)、WC1.300Cu1.1570 等

 【珈琲ブレイ句】勉強熱心なドイツ人の企業戦略は参考になるはずです。◆材種は、RYER社の700種を揃えるロングテール戦略とは対照的に64種+αに絞っています。◆さらにMIMシステムも二種類に絞っています。それは、水脱脂と触媒脱脂です。一次脱脂を加熱脱脂にしないことは残渣問題の点から納得できます。また、溶媒脱脂ではなく水脱脂とした理由は、環境に優しく低設備投資なので始めやすいシンプル工法であるところでしょう。水脱脂なら自作もできますからね。◆そして上級者や大量生産指向の方には、触媒脱脂の連続プラントへ移行させるという戦略でしょう。ただし、酸に反応する材料には使えないので、それは水脱脂で対応させる手段も用意しています。◆気になるMetal AM用材料ですが、対象はMEXFPF)だけです。それは水溶性MIM材料を転用する作戦で、フィラメントではないようです。つまり、ペレットを使ったMEX方式の市場だけをターゲットにするということです。確かにフィラメントだと必要な機能(焼結体品質)以外の要求(柔軟性・湾曲率等)が積層体の機械的性質の足かせになっていると感じていたので、この戦略は納得できます。

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2023年6月5日月曜日

焼結密度バラツキを減らす方法について

 焼結密度のバラツキを最小化する方法についてまとめる。

《設備Machine》

・焼結炉の処理ボックス内の温度バラツキが無いこと。±5℃で管理できれば素晴らしい。ヒーターの分割制御、設備管理(定期的ヒーター交換、炉体冷却能力管理、断熱材補修・交換等)

・焼結時に流すガス(ガス流熱伝達)によるバラツキ。Cr蒸発を阻止できる最小量のガスを流す。ガス流路の工夫(ガスを予熱させる導入路、直接ブラウン体にガスを当てない等)。

《材料Material》ロバスト性の高い材料開発

・ピン止め効果:炭化性の高い元素を微量添加させる。例えばNb、Ta。欠点はJISの化学成分から外れるので客先の承認が必要。また機械的性質も押さえる必要がある。

・焼結特性の異なる金属粉末の調合設計:MA粉末+CIP、焼結特性の異なるPA粉末の調合による最適化パラメータ設計

MA:マスターアロイ、CIP:カルボニル鉄粉、PA:プレアロイ・合金粉末

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2023年6月2日金曜日

MIMに適した粉末特性とは?を考える

《 MIMの粉末サイズ》微細粉末である必要がある。PM(圧粉焼結)用粉末サイズより一桁以上細かいことが必要である。しかし、最適な粉末サイズについては専門家により意見が多少分かれる。例えば、45μmは十分使用可能である、対して45μmはカットすべきである、なぜなら45μm を超えるサイズの粉末を使用すると、本質的に焼結活性が欠如する。また、別の視点からMIMのブラウン強度を高めるために平均粒径を8μm未満に保つ必要がある。ジャーマン先生もMIM プロセスに最適な平均粒子サイズは 2µm 8µm であることに同意している。次に欠点。微粉末を使用する場合の欠点は、取り扱いが難しいこと。 たとえば、混合中の粉末の吸入を防ぐために追加の安全対策を講じる必要がある。脱脂工程では微細粉末になればなるほど時間が掛かる。

《粉末の形状》ジャーマン先生は、射出成形プロセスで達成できる高い充填密度のため、MIM では球状粉末が広く好まれていると説明している。 また、粒子間の摩擦も減少し、不規則な形状の粒子と比較して原料の流動特性が向上する。

【珈琲ブレイク】上記内容は1990年から1998年の技術文献・海外論文の意見です。だから今は発展的に違う可能性があります。その違いを発見出来たら差別化できますね。日本製水アトマイズ粉末の進歩にそのヒントがあるかも。

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