2023年10月20日金曜日

LMM方式Incus Hammer の表面あらさが向上している!?

【珈琲ブレイ句】最近のIncus Hammerシリーズ*1のカタログ値では、表面あらさがRa2となっています。さらにポリシング(光沢バレル?、磁器バレル??)を追加すればRa0.07とのことです。以前は、表面がザラザラでRa5と発表されていたので凄い改善努力です。焼結密度も99.8%(材質不明?)と高くなっています。造形分解能は変わっていないと思われるので、表面あらさを向上させた技術は「微細粉末配合研究、高タップ密度化、CSL研究の成果」だと推察します。(微細粉末が得意な国内MIMメーカーによる技術指導の結果かも?)

実績のある材質は、316L 64チタン*2 真鍮 タングステン 超硬合金 ダイヤモンド とあります。でも、タングステンやダイヤモンドは謎ですね。焼結はどうするのか?つなぎの金属が混ざっているということかな?

*1 ISO/ASTM分類:バット光重合プロセスvat photopolymerization process (VPP)

*2 64Ti:粉末量55Vol%、3点曲≒13MPa、Ra2μm

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2023年10月19日木曜日

MIMの最短リードタイムを考える

MIM(lot500、as sintered)で最短リードタイムは3日間である。

成形8H+溶媒脱脂8H(1日)+二次脱脂・焼結23H(1日)+仕上・検査・出荷3H(1日)=3日間

 《ことば》

タクトタイム(ピッチタイム)=稼働時間÷必要生産数

サイクルタイム=稼働時間÷実際の生産数  (理想:タクトタイム=サイクルタイム)

リードタイム(生産リードタイム)=製造手配から出荷までのすべての工程に掛かる期間


【珈琲ブレイ句】リードタイム3日間を成立させるために必要な条件があります。それは、製造ロット500個、成形作業と同時並行でゲート類仕上げ・外観検査して脱脂トレイに並べる(工程間仕掛ゼロ)、脱脂は多種混在処理、2次脱脂焼結は同材質混在処理です。一次脱脂工程省略法を選べば、さらに半日リードタイムを短縮することが可能です。

多品種少量生産には、セル生産方式(屋台方式)が有効です。一番魅力的なのは「短納期」を実現できること。さらに、作業者の責任感と士気が向上する効果が期待できます。MIM生産の場合は、脱脂と焼結がバッチ生産になるのですが、多ロット混在処理ができれば、工程間仕掛在庫を最少化できるはずです。

一方、大量生産のメリットは、ロボット化が容易、段取り替えの最少化、工程外注化によるコスト低減などがありますが、デメリットとして工程間仕掛在庫が、膨大になる傾向があります。当然納期が数か月掛かります。

多品種少量の国内製MIMは、海外との差別化として、リピート納期は(3日間は無理として)数週間であってほしいものです。

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2023年10月8日日曜日

メタルジャパン2023「あれ」を求めて

 【珈琲ブレイ句】2023年10月4日~6日メタルジャパン「高機能金属展」 "あれ”を観るために幕張メッセまで足を運びました。。

”あれ”とは、C.Mobile技術を使ったMEX装置(FPF)の実用機です。しかし、残念ながら展示はありませんでした。

ただし、成形サンプル品の中にC.Mobile技術を使ったMIM成形品があったのは収穫でした。どこかのMIMメーカーに導入されているとのことでした。サンプルは引張試験片で、おそらくサイドゲートなのでランナーが必要になります。

C.Mobileを使ったMEX装置(FPF)の開発は着実に進んでいると信じていますよ。頑張れエプソンテックフォルム㈱!! 

《ことば》C.Mobile:逆回転臼方式の可塑化円盤とプリプラ式射出ユニットおよびホットランナーで構成された超小型射出成型機。金型界のエジソン竹内宏博士の発明。現在の名称は「AE-M3、AE-M10」。

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2023年10月3日火曜日

MIM製Ti-6Al-4Vの疲労強度と支配因子

第43回研究進歩賞(2018年度)の論文(九州大学)を表にまとめる。


引用文献:工藤健太郎、品川一成、三浦秀志、”金属粉末射出成形Ti-6Al-4Vの高疲労強度とその支配因子の解明”、「粉体および粉末冶金」第70巻第7号(2023)319-325

「ことば」水素化・脱水素化処理(HDH、Hydride-Dehydride):チタン合金を水素雰囲気中で加熱し水素を吸収させ、その後脱水素焼鈍によって水素を除去する熱処理。この処理でチタン合金の組織を微細化することができる。

【珈琲ブレイ句】この論文は原料粉末、合金組成、焼結手法、熱処理の組合せにより高疲労強度を目指したものです。その支配因子ごとの効果を疲労強度順に表としてまとめました。いろんな因子がありますが、64チタン合金の疲労強度を向上させる共通するポイントは2つです。それは、①組織を微細化させること。②高密度化処理をおこなうことです。高密度化(HIP)処理を行うと組織が少し大きくなるのですが、気孔を潰すことによる疲労強度向上のプラス効果がより大きいのです。

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2023年10月1日日曜日

MIM混錬の手順はあるのか

MIM用フィードストックは、金属粉末や高・低分子樹脂バインダー、可塑剤、潤滑剤などを加熱混錬して造られる。混錬物は粉砕あるいは造粒されて成形材料となる。そのときの材料投入手順はどうすればよいのか?

《結論》加圧混錬機に材料を投入する順番はいろいろである。

方法A:①高融点バインダーから低融点バインダーを順次投入 ②金属粉末を徐々に投入していく ③すべての金属粉末投入後に低融点添加物や可塑剤などを添加する

方法B:①加圧混錬機を予熱する ②金属粉末を投入し予熱温度まで加熱する ③バインダーを少しづつ投入する ④揮発性の可塑剤等は混錬最後に投入する

方法C:①すべての材料をミキサーに掛けて予備混合する ②加圧混錬機に全量投入する

《参考文献》方法A:渡辺、岩橋、下平、”金属射出成形活用ハンドブック”、P21、㈱ユーテス   方法B:斎藤ら、”金属粉体の射出成形技術”、P74、㈱総合技術センター

【珈琲ブレイ句】専門家によって順番がかなり違うので面白いですね。自分の経験では、溶けづらい樹脂(例えばPOM)がレシピに入っていたら「方法A」を選んでいました。PPやPEが主体ならどれでもOKで、「方法C」で量産を行っているところもあります。結局、自社のバインダーレシピに最適な投入方法は自分で調べるしかないようです。

共通するポイントはあります。それは、揮発性があり低粘性(あるいは液体)の可塑剤類は最後に添加するというところでしょう。

混錬物の品質の良し悪しは、表面性状の電子顕微鏡観察、ペレット密度のバラツキを特性値とし、管理項目は投入手順、混錬時間や混錬トルクになると思われます。

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