MIMメーカーの太盛工業さんが昨年導入したLMM方式のIncus社HAMMER LAB35について、技術情報を押さえておく。
方式:LMM(Lithography-based Metal Manufacturing)リソグラフによる積層、紫外線硬化
INCUS設立:2019年9月(2015年セラミックで開発成功、金属専門の会社として設立)
光投稿寸法・解像度:2560×1600ピクセル、解像度35μmピクセル
造形プラットフォーム寸法:L89.6×W56×H120mm
積層ピッチ:10~100μm
造形速度他:10mm/H(ピッチ25μm)、未硬化材料を除去する時間de-cake time 15分 de-cake材は100%再生可能
金属粉末:平均8μmまでのMIMグレード金属粉末が可能。SUS316L / 304L / 630 / 410L / 420J2 / Ti / Ti6Al4V / Cu / 洋白
粉末量:55~60VOL%
収縮率:16~20%(伸び尺1.19~1.25)
表面粗さ:Ra5(粉末径に依存する)
【珈琲ブレイク】Lithography方式の3Dプリンターは安価でホビーにも使えるものです。しかし、金属粉末を積層するのがかなり困難でした。セラミックでは成功しても金属で難しいことから推測される理由のひとつは、金属の密度が大きいことです。それを克服したINCUSのすばらしい発明は、「引上げ」ではなく「引下げ(投影機が上についている)」で積層していくところです。これにより密度の大きな材料を積層していくことが可能になりました。さらに、積層材料をペースト状*1にするため、粉末単体の粉体流動の課題を克服できます。その結果、粉体流動性の悪いMIMグレード粉末を使うことができるのです。だからBJTより微細な造形が可能です。さらに、造形プラットフォーム全体がサポートになるため造形中のグリーン変形もないのです。少し気になるのは紫外線硬化樹脂の残渣問題ですが、脱脂焼結技術で解決できるのかなと思っています。Meal AMとMIMの共存共栄の時代、MIMメーカーを新技術で先導する太盛工業さんによるLMMを使った公開事例を期待しています。
*1:ペーストの成分はわかりませんが、紫外線硬化樹脂と低融点の界面活性剤類が含まれている可能性があり、ペースト状態では流動性が高いと推察されます。
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