近年、MIMのトップ集団に仲間入りしたIndo-MIM社が、2019年にBJT*1を導入している。その実績から、BJTとMIMの境界線について論文*2を発表している。私は「MIMとMetal AMの共存共栄の時代*3」を発表するタイミングだったので興味深く読むことができた。概要を以下に箇条書きする。*1:DeskTopMetalとExOne *2:PIM Vol-16-No-1 P61-68 *3:日本塑性加工学会誌・ぶらすとす 2022 Vol.5 No.053 20(280)
《論文概要》
・境界線は50gで、50gより大きなものはMIMよりBJTの方にコストメリットがある。
・BJTの材料(316L,17-4PH,M2,4140)は少ないが近年増える。
・BJTの機械的特性はMIM規格(MPIF-35)を満たしている。
・粉末除去はやはり大変だが、自動化設備開発を依頼しているのですぐに解決する。
・MIM用微細粉末に少し粗い粉末を添加して、流動性を高めているが、焼結中の形状保持に難がある。
・BJT精度は±2%、MIM精度は±0.5%。表面粗さは、BJTが4-6Raで、MIMはRa1.5とMIMに及ばないが、機械加工とのセットで考えている。ハイブリッドオプション戦略。逆に機械加工屋からのコラボニーズも今後期待できる。
・BJTのメリットは、レーザービームPBF-LBより30-70倍速い造形速度。金型不要で設計の自由度が高い。リードタイムは最短2日で、通常10日でサンプルを提供できる。
【珈琲ブレイ句】自称「新しもの好き」のIndo-MIMには優秀な技術者がいるだけでなく、行動が速いところがイイですね。Indo-MIMのBJT展開の実体験からの論文なので説得力があり、とても貴重な情報です。ただ、ひとつ疑問なのは、BJTとMIMの境界線が50gというところです(理論計算の比較にすぎないと但し書きがありますが・・・)。焼結炉のキャパシティは共通なので、金型償却費用の差か、BJTはバインダーが少量なので脱脂工程費用の差でしょうか。あるいは、BJT粉末は少し粗い部分を使うので粉末単価の差かもしれません。私の推測・個人的意見では、重量が大きくなっても、金型で形成できる形状であれば、BJTよりMIMの方が、生産数が1000を超えれば、コストは安価になると思っています。コストに差が出るのは重量ではなく、生産数量の方が高度に有意です。 最後に気になること。Indo-MIMはMEXを導入していない可能性があるので、ここが後攻で挽回するための入り口かもしれませんね。機械加工とのハイブリッド戦略というならばMEXの方が、よりMIMに近くてイイと思うのですが・・私だけでしょうか?