2025年7月4日金曜日

金属3Dプリンター(BJT)研究発表からの学び

 第33回品質工学研究発表大会RQES2025Sより、Sinter Based Metal  AM(MIM Like AM)であるバインダージェットBJT方式の精度向上・安定化に向けた試行検証の発表から技術的ポイントをまとめておく。

《基本機能》信号:CADデータ(STL) 出力:テストピース(角ブロックの45度回転3階建構造)の形状寸法 の転写性(動特性)

《結果1》8種類の誤差因子によるL18実験より、ローラー使用回数と粉末使用回数の2つで寄与率83%を占めている。

《結果2》制御因子としてローラー表面処理6水準を含めた7因子のL18実験より、SN比(精度)の寄与率の高いものは、ローラー回転数(27%)、使用粉末(22%)、ローラー表面処理(17%)、ローラー移動速度(14%)である。

第33回RQES2025S発表番号8「金属3Dプリンタの精度向上・安定化に向けた試行検証」安井太一ら、YKK株式会社 発表日2027/7/3

【珈琲ブレイ句】精度に大きく寄与する因子グループは、「金属粉末(種類、使用回数)」と「リコート(ローラー表面品位、接触速度ベクトル)」が重要であることがわかります。金属粉末では、SN比(精度)が高いものは感度(収縮率)も高い関係があるので、おそらく高タップ密度でかつ流動性が高い球状粉末が有利だと思われます。さらに粉末を繰り返し使用すると造形品質が悪くなっています。また、リコート工程では、ローラーの表面品位と粉末との接触速度ベクトル系が大きく造形精度に影響することがわかります。従って、ローラーの表面をTiN等のPVDコーティングで耐摩耗性を上げて高寿命化し、表面の粗さを超仕上げでサブミクロンにするのが理想的なのかもしれません。すばらしい研究報告でたいへん勉強になりました。