2022年1月28日金曜日

純国産MEXで世界を目指す「Kinki-One」がんばれ

「 Kinki-One」とは、私が勝手に作った応援句だ。応援しているのは、「純国産MEX完全ワンテーブル化」を目指す「近畿の産学共同実用化研究」である。近畿だけ(ワンテーブル)で、MEXの金属AMの全工程を完結できる。このメンバーは、フィードストックが第一セラモ、FPF装置がエス・ラボ、脱脂焼結が島津産機システムズ、そして中心が近畿大学(京極先生)である。

【珈琲ブレイ句】実は第一セラモさん島津さんを紹介した小さなお節介屋が私なので、本格的なプロジェクト発表には感激しました。少し後発の日本国がやるべき挽回戦略は、このコンソーシアムなのです。京極先生はMIMの泰斗なので安心です。世界のお客様を近畿に呼んでじっくりMetal-MEXを体験させ、帰りに京都を観光してもらうツアーができる日が来る。

「MEXで近畿へ行こう。 in Kinki One Table絶賛応援中。とにかく期待でいっぱいです。

◆第一セラモ(滋賀):CIM、MIMフィードストックメーカー。PMMA系3STD材。◆エス・ラボ(京都):ペレットを使ったMEX、FPF装置製造メーカー。◆島津産機システムズ(滋賀):真空脱脂焼結炉メーカー。3STDフィードストックを使えば、一次脱脂工程を省略し1炉で脱脂と焼結を行う装置。ニュフェイス:小型VHS-CUBE。

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2022年1月27日木曜日

MEX材料押出し法のせん断速度は速い!

 イメージでMEXのノズルから出る材料の速度は小さいと思っていた。しかし、次の前提条件で計算すると、MEXのせん断速度が非常に大きいので驚いている。

《前提条件》ビルトレート=16(cm^3/h)

     ノズル径=Φ0.4mm

     n=0.3 (MIM同等材料と考える)

《計算》Q=16×1000/(60×60)=4.4(mm^3/s)

    せん断速度=32Q/(3.14×0.2^3)=5,605(1/s)

    ラビノビッチ補正=(3n+1)/4n=1.583

   補正後のせん断速度=8,873(1/s)

   LOG(補正後のせん断速度)=3.9(1/s)

【珈琲ブレイク】ビルトレート(最大吐出量100%)を射出率Qとして計算しています。最大せん断速度がLOGで3.9という事は、高速射出成形の世界です。驚きました。

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2022年1月24日月曜日

Metal AMとMIMの両方対応できるVHS-CUBEは凄い

 MIM創世期から、MIM専用の脱脂焼結炉を継続して造り続けている島津産機システムズから、小型真空脱脂焼結炉VHS-CUBEが発表されている。この脱脂焼結炉は、MIMだけでなく、Metal AMのMIM-Like AM(MEX,FFF,FPF,FDMおよびBJTなどの脱脂焼結するもの)に使用することができる。なにが凄いのか、MEXのバンドルで付属する焼結炉と大きく違うところは4つ。

①量産炉VHSで蓄積された技術展開による設計。②安価(本格量産炉の5分の1)③脱脂能力が高い。④真空能力が高い。油拡散ポンプをオプションで装備すれば活性金属も焼結可能。

【珈琲ブレイ句】一番注目している「脱脂能力が高い」理由は、しっかりしたワックストラップが付属しているからです。ワックスだけを処理して回収率90%以上というプレゼン報告をしていました。こんな実験をするって!その意気込に感心するのです。もしワックストラップが無かったら、すぐにロータリーポンプの機能が低下して、炭素残渣が増えたり、還元も不足していきます。ワックストラップは神なのです。この神様のお陰で、MIM-Like AMだけでなく、バインダーが多いMIMにも使えるのです。さらに、一次脱脂と二次脱脂および焼結まで、1炉で完結させることもできるのです(3STD系*フィードストックに対応)。2022/1/26-28のTCT展で実物が展示されるようですが、オミクロン&マンボウのため不本意ながら今回は見学にいきません。でも自習はできます。webのカタログで・・ ”VHS-CUBE” で検索!

*3STD法:三段階順次加熱脱脂法(Three-step sequential thermal debinding)。一次脱脂と二次脱脂および焼結までを1炉で完結させる。一般にPOM系フィードストックと呼ばれているものであるが,PMMA系のフィードストックも市販されているので,総称として3STD法とする。

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2022年1月21日金曜日

MIMの基本、レオロジーを掘り下げる

 MIMフィードストックのレオロジーを理解することは、成形条件の最適化および材料開発を行うために必要である。ポイントは4つ、 

1.MIM成形材料(フィードストック)は、非ニュートン流体の擬塑性流体である。これはせん断速度の増加により粘度が減少する(Share thinning)こと。

2.せん断速度と粘度は、LOGの世界で線形の関係である(下図)。粘度=K・せん断速度^(n-1) より、LOG粘度=(n-1)LOGせん断速度+Log(K)

3.そのべき乗指数nは、n<1であり、小さい方が射出成形に適している(下図の①の方が②より良い) グラフの傾きが(n-1)に相当する。

4.MIMプロセスで許容できる最大粘度は、1000 Pa・sである。


【珈琲ブレイ句】せん断速度が小さい時に粘度が高くても、高速域でずり流動化挙動が高い(シェアシンニング性が高い、nが小さい)材料の方が射出成形には有利だとされています。ちなみに、キャピラリーフローが公開されているMIMフィードストックのべき乗指数nを計算すると、平均して0.3程度です。異端児であるBASFさんの材料のn値を読み取ると、それより大きなn値(約0.5)になりました。やはり、相対的に成形が難しいことがわかります。でも、普通の射出成形機で成形する場合、速度10%で、難なく10^3.78(1/s)のせん断速度が出せるので、どんなMIMフィードストックでも安全条件地帯で成形することができます。

単位: 1 Pa・s = 10 Poise =10 P= 10 g/cm・s

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2022年1月16日日曜日

MIMバインダーの特徴・熱分解機構マトリックス

 更新:2022/08/05 EVAは側鎖分解とランダム分解の区別が曖昧なこと、VA濃度で熱分解温度が異なる事を表に表現しました。

【MIM指南書(増補・セルフ)】MIMバインダー設計の参考資料として、MIMバインダーに使われている樹脂類の特徴、熱分解機構、熱分解温度、混錬の相溶性、熱強度を俯瞰できるようにマトリックスにまとめた。 MIM指南書のP58と59の間に挟み込み貼り付ける。画像をエクセルにコピペし80%で印刷。




【珈琲ブレイ句】ワックス類を溶媒脱脂(一次脱脂)する場合は、二次脱脂は結合剤(側鎖分解除く)だけを考えれば良いのです。一次脱脂と二次脱脂をすべて加熱で設計するのは結構大変ですね。

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2022年1月14日金曜日

AMとMIMの架け橋『addifab社』フリーフォーム射出成形法

 AMで樹脂金型をつくり、その金型で試作成形するMIMのデモ(Castem社)を展示会でみたことがある。一方、今回掘り下げる『addifab社』が提案す方法は、使い捨て樹脂型(犠牲型)を使うフリーフォーム射出成形システムである。CAD・STL出力から24時間で成形体(製品)を作ることができる(MIMであれば後工程の脱脂焼結が追加される)。工程は、①使い捨て樹脂型を3Dプリンター(UV硬化アクリル樹脂)で造形する。②洗浄して未硬化樹脂を取り除く(アルコール洗浄)。③仕上げ硬化UV照射3分間。④使い捨て樹脂型を本型にセットして射出成形。④使い捨て樹脂型のみをアルカリ溶剤35℃で溶かす。⑤以降MIM工程(脱脂・焼結)

《3Dプリンター造形精度》XY解像度:10~50μm、Z層:10~200μm

《MIM/CIM実績》:Good良好:POM系バインダー(BASF系、3STD?)、Fairまあまあ:PEG系バインダー、Poorダメ:PA-WAX系バインダー

【珈琲ブレイ句】MEXとMIMの相性は抜群ですが、玉に疵なのはMEXの表面粗度が良くないことです。でも、上記の方法であれば、キャビティ型となる樹脂型の積層解像度やピッチを10μmオーダーで造形できるので表面粗度の課題をクリアーできます(光造形なので造形時間は短く1層約18秒とすると、部品10mm厚さを最小10μm層で積層する時間は5時間と計算できます。)さらに、金型では形成できない複雑な3D形状をMIMで製作することができます。昔諦めたあの部品をこの方法を使えば実現できたのにな~と空想しているのです。あの部品とは航空機の燃料関係に使う超複雑な部品です。

 使う前に確認は必要です。それは、樹脂型を溶かすのにアルカリ溶媒を使っているため、すべてのMIMバインダーに対応できないことです。また、アルカリに弱いチタン合金は、バインダーに関係なくNGかもしれませんね。でもすばらしい技術です、試作や生産数の少ない超複雑部品には展開されていくと思われます。

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2022年1月13日木曜日

FFF用のフィラメントを自作し失敗した話

 MIM-Like AM(MEX)のFFF用フィラメントを自作したときの失敗談とその推定原因をお話します。2019年にMIM材料を使って線香の様なフィラメントを金型で造り、県の技術センターのFFF装置を借りて積層実験をしたことがあります。結果は失敗でした。課題は3つ。1つ目、ノズルから出た材料がすぐに固化して積層できない。2つ目、フィラメント送り機構(ギヤ)でフィラメントが削られる。3つ目、フィラメントを巻線にできない。線香形状で実験を行ったが、靭性(弾力性)がなく折れやすい。同時期に県へ申請した研究予算が取れずこの企画は不本意ながら消滅しました。

《失敗の学び》積層する空間環境の温度管理(固化を遅らせる温度)が必要であること。フィラメントの送り機構の改善が必要であること。フィラメントを巻線で供給するためには、WAX類を減らし中粘度・中分子化合物を多く配合させるバインダー配合設計が必要であること。

【珈琲ブレイ句】それにしてもBASF社のFFF用フィラメントは、高分子の硬いPOMが主体であるにもかかわらず、巻き線フィラメントなので凄い技術力だと感心しています。先行して発表されたMetal Xも巻線フィラメントです。一方、Desktop MetalのFFFの材料は鉛筆状のフィラメントなので弾力性が低くても大丈夫です。さらにSlabのペレットを使うFPFであれば、MIM材料そのものを積層することができます。要するに、材料に合わせて機械を作るのか、機械に合わせて材料を作るのかの勝負です。でも、どの方法も長所短所があり甲乙つけがたいのです。

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2022年1月8日土曜日

射出成形中のせん断速度を計算する

実際のMIM射出成形がどのくらいのせん断速度になるか計算してみた。 MIMフィードストックのキャピラリーフロー検査データとの妥当性を検討するため。( 改訂2022/01/21 )



【珈琲ブレイ句】普通の40トン射出成形機のMIM成形条件でせん断速度(1/s)を計算すると、射出速度10%で、せん断速度が10^3.78にも達します。この値は、キャピラリーフローの測定速度の最大値に近い値です。いまさらですが、高速域で射出成形をしていたことをがわかりました。

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プラスチックの固化時間を比較する

プラスチックの種類別に固化する時間を計算してみた。


【珈琲ブレイ句】固化する時間に比例する値として「Ts」を勝手に作りました。Tsが小さければ早く固化するという値です。POMのTsは7.39で中間の値になりました。今回の比較ではPA6とHDPEが速く固化することがわかりました。逆に固化しづらいものはPPで、POMの2倍の時間が掛かるということがわかります。

実際のMIMフィードストックは、これら数種類のプラスチックを混ぜて作られるので単純には比較できませんが、おそらくPOM系(3STD)フィードストックより溶媒脱脂系(PP系)フィードストックの方が固化が遅いと推察されます。これはゲートシール時間が長くなるということなので、初心者には溶媒脱脂系(PP系)の方が、成形しやすいとも言えそうです。

成分不明ですがMIMフィードストックの事例も表に加えています。なんとTsは小さく、プラスチックより4~12倍速く固化します。金属粉末が大量に入っているためですね。


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2022年1月4日火曜日

BASFフィラメントの機械的性質がMIMを超える

 最新のBASFのMEX(FFF)フィラメントのテクニカルデータをみると、機械的性質がMIMに肉薄していることがわかる。

Ultrafuse SUS316L

引張強度 XY方向:561MPa ZX方向:521MPa 

伸び  XY方向:53%  ZX方向:36%

比較 MIM(MPIF Standars 35,SUS316L)

引張強度 Minimum:450MPa Typical:514MPa 

伸び  Minimum:40% Typical:50%


【珈琲ブレイク】2年前のBASF発表データでは、引張強度がXY498MPa、ZX414Mpa、伸びがXY43%、ZX19%だったので凄い進歩です。何が変わったのでしょうか? 考えられるものは3つ。粉末の変更、積層条件の最適化、脱脂焼結条件の最適化です。XY方向とZX方向の差が小さくなっているので、ひとつは、積層条件の改善によるものだと推察できます。材料レシピの変更はないでしょう。脱脂焼結はMIM技術の100%展開が可能なので還元を強化した可能性があります。MEXがMIMに一番近い工法なので期待していたのですが、ついにMIMに追いつきました。すばらしい。

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