2018年4月3日火曜日

MIMの内部欠陥はどこで発生するのか

ロストワックス精密鋳造の内部不良の筆頭は「引け巣」である。この対策として鋳造シミュレーション凝固解析で方案設計を最適化できるようになった。一方MIM金属粉末射出成形で実用できるシミュレーションにまだ出会っていない。*1  したがって内部欠陥の対策は経験と試行で解決するしかない。

MIMの内部欠陥(ウエルド、線状欠陥)の発生場所は「成形工程」である。
成形工程でウエルド(充填された樹脂同士が接触していない空隙面)が残れば
後工程で絶対に改善しない。接触していなければ焼結を行っても拡散しないからである。
(空隙が表面に開放していなければHIP処理を行うと完治できるが・・・処理費が高価)

ではどうすればよいのか
それは成形条件を上げることである(樹脂温度、金型温度、射出圧力・保圧)

これが現場で、なかなかできない。
離型性が悪くなる、スプルーが抜けない、バリが発生するなどなど・・・・
成形体のX線写真を見せれば納得してもらえるのであるが・・

*1.MIMでCAEを活用しているメーカーありました。太盛工業㈱ 「流動解析」「変形解析」「温度解析」「保圧解析」をやっているそうです。自称「研究開発型町工場」恐るべし。2018/5/9

ロストワックスとMIMの違いを簡単に説明すると

《ロストワックスとMIMの違い①》
「ロストワックス精密鋳造:以下LW」   LWは「鋳造」
 金属を溶かして鋳型に流して凝固させる
「MIM金属粉末射出成形:以下MIM」  MIMは「粉末冶金」
 金属粉末を型内で固めて焼結する

《ロストワックスとMIMの違い②》
LWは、どんな金属でも鋳造できる/アルミ合金、銅合金、鋼、超合金、チタン等
MIMも、ほとんどの金属で製造可能であるが、量産メーカーでアルミ合金は、ほとんど無い(MMI製アルミ合金に関する情報のまとめ

《ロストワックスとMIMの違い③》
LWは大きなものができる 数g~数十キロ
MIMは大きなものができない 数g ~数百g

《ロストワックスとMIMの違い④》
LWよりMIMの方が精度が高い
目安 LW±1%  MIM±0.5%

《ロストワックスとMIMの違い⑤》
LWよりMIMの方が表面あらさがよい
目安 LW=Rmax24 *1 MIM=Rmax8

《ロストワックスとMIMの違い⑥》
LWよりMIMの方が材料費が高い
粉末にする費用が高いため
しかし精度や表面あらさが良いので完成品まで考えると
MIMが優位になる場合がある

《ロストワックスとMIMの違い⑦》
LWの内部不良は『引け巣』『ガス残留』『カミ物』
MIMの内部不良は『ウエルド』『ガス残留』

*1  先日、日本鋳造協会で・・
LWの表面あらさRmax2を実現している分野があることを知りました。
航空機などのブレード部品です。特殊な分野ですね。一般部品はRmax24程度です。
2018/5/10

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