2020年4月17日金曜日

なぜSS系バインダーは、1工程が可能なのか


SS系バインダーは、なぜ1工程で脱脂・焼結ができるのか。

理由は、熱分解温度が異なる(100℃以上離れている)3つのワックス・バインダーグループで構成されているからである。クラスごとにキッチリ順番を守って駅の改札を抜ける幼稚園児の遠足のような感じである。バインダーの組合せに何を選ぶのか、POMPMMAPPPEなど、POMは変形に強いが相溶性が悪い、PEは相溶性が良いが強度が劣る。どこかで妥協が必要である。また、残念ながら、成形体の厚さが5mmを超えてくると、バインダーが残存して炭素として残る傾向があるので炭素鋼には注意が必要である。そのためか、SS系バインダーであるが脱脂工程を分けているところもあるようだ*1。こうなるともう「シングル」ではない。

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【珈琲ブレイ句】
*1 脱脂時間を長くすれば1工程は可能です。ただし、高価なSHIMADZU炉を24時間サイクルで稼働させたいので、泣く泣く脱脂工程の前半を安価な脱脂炉に分担させる策だと考えられます。本当に小さなものは、12時間サイクルで脱脂焼結する構想(1電源2炉)もありました。恐るべし。

SS系バインダーの呼び名を次の様に改名します。2020/06/24
三段階順次熱脱脂法(Three-step sequential thermal debinding)

略称名:3-STD法


2020年4月5日日曜日

MIMのレオロジー(流体力学)を嗜む

MIM成形材料(Feedstock)の射出成形に必要な知識としてレオロジーを復習する。水は「ニュートン流体」、MIMフィードストックは「非ニュートン流体」である。

非ニュートン流体5つのキーワード
①ビンガム流体(塑性流体)【バター】圧力を加えると粘度が下がる(降伏値あり)
②擬塑性流体【ケチャップ】圧力を加えると粘度が下がる(降伏値なし)
③ダイラタント流体【水に溶かした澱粉】圧力を加えると粘度が上がる
④チキソトロピー【ペンキ】圧力を加えると粘度が下がり、徐々に粘度が上がる
⑤レオペクシー【?】圧力を加えると粘度が下がるが、振動を与えると粘度があがる

MIMフィードストック(溶融状態)は、非ニュートン流体②の擬塑性流体である。圧力を加える(せん断力、射出速度を高くする)と、粘度が下がるので流動性が高くなる。

【粘度を下げる(流動性を上げる)制御方法】
◆射出条件◆
 1.射出温度を上げる
 2.射出圧力を上げる(→射出速度が上がる)
 3.射出速度を上げる
◆MIMフィードストックの変更・改良◆
 1.配合レシピの見直し(プロに任せる)
 2.滑剤(流動性向上剤)、可塑剤の添加

【珈琲ブレイク】
 実験用手動成形機では、速度・圧力が不足するので成形体品質が悪い。フローラインが残りやすく、脱脂焼結変形も完治できません。そのため、先日、MIMフィードストックの配合レシピを見直しました。可塑剤添加も考えましたが、実験室にあったHDPEを、PETTYバインダーのPPに置き換えたところ粘度がかなり向上しました。混錬材が糸状に伸びるので驚きました。ただし、副作用として強度は低下しています。


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