2018年12月28日金曜日

ポリマーアロイ、樹脂の合金?

MIMのバインダーは通常、3種類以上の樹脂やワックスを混ぜて作られている。機能としては「結合材」「潤滑剤」「可塑剤」の3つ。それから、脱脂・焼結割れを防ぐために、熱分解で揮散する温度域、その反応速度を制御するためである。また二次的には成形性や脱脂・焼結変形が少ないこともテーマになる。バインダー設計の腕の見せ所になる。

 私は鋳造も経験していたので、バインダーの混合に対して誤解があった。それは、合金にすれば(混ぜれば)融点も下がるし、新しい性質が生まれると思っていた。しかし、高分子同士混ざらないものが多いらしい。無理やり混ぜるためには「相溶化剤」なる鼻薬を添加する(個別的で万能薬は無い)。さらに、樹脂メーカーが初めから混ぜたものを販売している、それが「ポリマーアロイ」というものらしい。調べたら1950年が第一世代で今は第三世代とのことだ。

結論:樹脂同士は混ざらないが、相溶化剤という仲人を介せば混ざる。ただし、すべての樹脂が混ざる薬はなく個別開発が必要。

 遅ればせながら、これはMIMのバインダーの改良開発に応用すべき技術だと感じる。金属粉末との濡れ性の改善。他のポリマーとの相溶性改善。混錬時間の短縮化。・・・・ POMはとくにポリオレフィンポリマー(PW,PE,PP)との均質性が悪く、成形時に粉末が分離しやすい。

2018年12月22日土曜日

日本が発明したアトマイズ法「CFJA法」はすばらしい

青森県八戸の中小企業「ハード工業(有)」と東北大学、岩手大学が発明した世界初の技術だ。
アトマイズとは溶融金属を粉末化することである。一般的には高圧・高速の水やガスの壁に溶融金属を接触させて分断・粉末化させる。設備が高価であること、接触媒体(水・ガス)が低温であるので、相対的に溶融金属を高温にする必要があった。
この発明CFJA法は「超高速の燃焼炎を使ったアトマイズ」ということである。従来の水やガスの代わりに「マッハを超える超高速の炎(1600℃)」を使っている。さらに冷却がものすごく早くできるので「アモルファス合金」ができるらしい。それも微細で完全球状だ。「THE MADE in JAPAN」 すばらしい。ちなみに燃料は灯油だそうだ。

2018年12月11日火曜日

チタンのMIMを考える

活性金属のチタンをMIM化するための課題は・・
「バインダー完全除去問題」大量のバインダーからの汚染をどうするのか
・「工程中、工程間の空気汚染問題」
・「炉内汚染問題」高真空度10-3Paレベル 酸素、炭素の除去
・「セッターからの汚染問題」

《論文から読み取った方法》
  「粉体および粉末冶金20065310815-820 三浦ら」
黒鉛ヒーター・黒鉛タイトボックス仕様の油拡散ポンプ付焼結炉での事例が
お見事なので紹介します。材質は「αβのTi-6Al-4V」 
 ◆工程の特徴
・粉末混錬:アルゴン置換の容器でミキシングして加圧密閉混錬
・脱脂:溶剤脱脂 乾燥は空気と遮断
・加熱脱脂+焼結 1炉の中で連続して脱脂焼結 
 ◆焼結での工夫、
Mo製箱をタイトボックスの中に置き【浮遊炭素を遮断】、
セッターはジルコニア(要空焼き)あるいはイットリア【セッターとの反応対策】
スポンジチタンを細かくして箱の中に点在させる【酸素のゲッター】
焼結後そのまま炉内冷却 【冷却中の汚染対策】
結果:相対密度98% 引張強度910MPa 伸び14% Ti-6Al-4V                     
(比較:溶製材JIS60 TS=890MPa Elong.10%)
(比較2:JPMA S 01:2014 MIM-Ti-6Al-4V TS=800MPa Elong.5%)
溶製材JIS規格を満足させることができています。すごいです。
特に伸び14%は完璧です!!!

でも量産するのは大変そう!
→完全メタル仕様の焼結炉で真空能力を強化すれば、
二重箱やスポンジチタンは省略できそうですね!


《日曜MIM知るINDEX》
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2018年12月10日月曜日

100年続く老舗は青色

伝統は「同じ品質を継続すること」が重要である。江戸時代から続いていれば、それだけで希少性があり価値が高くなる。しかし、工業の世界ではどうであろうか。「古い豊田織機を使った柔らかい高級タオル」のような高付加価値高級工業製品を除けば、《工業の技術は常に更新していくことが重要》である。

ではMIMの世界ではどうであろうか?
金属粉末は異形粉末から球状微細粉末が安価にできるようになった。
粒径の異なる粉末を混合させる方法論がある。 
・脱脂法に係わるMIM特許はすべてオープンになった。
脱脂と焼結を連続してできる焼結炉が確立された。
超臨界やプラズマを応用する技術が発表された。

 MIM業界は赤色になりつつあるのか、どうやって青色にするのか。高級タオル方式で希少性を前面に出すのか、最新技術で更新していくのか。改めて戦略をたてるときが来ている。

《日曜MIM知るINDEX》

2018年12月8日土曜日

MIM工場で爆発事故は発生するのか考えてみた

「危険予知」の観点から爆発の可能性を考えてみた。
私は今まで見聞したことはないのですべて空想である。
工程順に考えてみる。
【混錬工程】
・金属粉末の粉体発火、粉体爆発 《可能性あり》
 「ステンレス粉体の自然発火」神奈川県産業技術センター研究報告書 No.20/2014
・溶融加熱用の高圧蒸気の圧力による破裂、配管接合部から蒸気が噴射《可能性あり》
【脱脂工程】
・可燃性溶剤を使っていたらその溶剤の発火《大いに可能性あり》
・加圧していたら、その容器の破裂《可能性あり》
【焼結工程】
・水素ガスを使っていたら、空気と混ざったときに爆発《可能性あり》

「転ばぬ先の杖は徹底的に準備することが前提」であることは言うまでもありません。

2018年12月4日火曜日

アルミのMIMは存在しないのか(その2)

オーストリアのウィーン工科大学の研究チームはユニークな方法で「アルミMIM」を造っている。詳細は不明だが、方法の概要はこんな感じである。
①常識の逆で、酸素リッチの雰囲気で加熱。
(普通なら高真空にして還元させるがAl2O3は高温じゃないとダメ
 一方母材のアルミは低融点金属という板挟みということ)
②酸素雰囲気を窒素に置換し、さらに温度を上げる。
③マグネシウムの助けにより酸化アルミニウム層が破壊され還元する。
 (マグネシウムを添加??)
④結果 アルミが液相を生じて焼結が進む。
特許化している。特許化されると敷居が高くなる。

【追加】平均粒径を3μmにすると高密度化できる!
こんな論文を発見した。細かくすれば簡単にできる。 
(粉体および粉末冶金2004-51-7-p492-498 加藤ら)
条件:純アルミニウム、平均粒径3μm
   加熱脱脂(Ar雰囲気)(大気中だと強度・伸び激減)
   焼結温度650℃ 真空度10^-2Pa
結果:相対密度95% 引張強度120MPa 伸び19%

令和のMIM技術伝道士 ◆お問い合わせ◆



2018年12月3日月曜日

アルミのMIMは存在しないのか?

 この質問を受けると、研究レベルではアルミのMIMはありますが、量産はされていない。と答えている。アルミは活性な金属で、粉末にした時の表面酸化物Al2O3が、焼結を妨げるため、相対密度は80%程度が限界である。(粉末の周りがアルマイト処理されたようなものと考えると焼結しづらいことがイメージできる)
 しかし、シリコンSiを1% あるいは銅Cuを4%添加すると焼結密度が96%以上になるらしい。(産業技術総合研究所/加藤ら)理由はこうだ。SiやCuの低融点金属が低温で液相となりAl粉末の酸化被膜を破り焼結を進行させていく。「液相焼結法」と呼んでいた。この実験では純Alの粉末11μmの微細粉末で、溶製材 純度99%「A1100」に匹敵する強度がでる(伸びは若干劣る)。
 ただ、現実的に考えると、アルミなら「金型に直接射出成形できる」アルミダイカスト、金型低圧鋳造など、こちらの方が精度は確実に高いのでメリットが大きいと感じる。

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