2018年12月3日月曜日

アルミのMIMは存在しないのか?

 この質問を受けると、研究レベルではアルミのMIMはありますが、量産はされていない。と答えている。アルミは活性な金属で、粉末にした時の表面酸化物Al2O3が、焼結を妨げるため、相対密度は80%程度が限界である。(粉末の周りがアルマイト処理されたようなものと考えると焼結しづらいことがイメージできる)
 しかし、シリコンSiを1% あるいは銅Cuを4%添加すると焼結密度が96%以上になる。理由は、SiやCuがAl粉末の酸化被膜を破り焼結を進行させていく「液相焼結法」と呼ばれるものらしい。この実験では純Alの粉末11μmの微細粉末で、溶製材 純度99%「A1100」に匹敵する強度がでる(伸びは若干劣る)。
 ただ、現実的に考えると、アルミなら「金型に直接射出成形できる」アルミダイカスト、金型低圧鋳造など、こちらの方が精度は確実に高いのでメリットが大きいと感じる。

参考文献:MIM‐Alの焼結特性に及ぼす元素粉末添加の効果、産業技術総合研究所 加藤清隆、朝比奈他 概要:MIMアルミニウム成形体の焼結性を改善するために、元素粉末を添加して液相焼結を試みた。1質量%Siまたは4質量%Cu粉末と純Al粉末(平均粒径:35μm、20μm、11μm)からなる混合粉末を出発物質とした。次に、焼結Al-1SiおよびAl-4Cu成形体をMIMで作製した。得られた成形体の密度、微細組織および室温での引張特性を調査した。得られた結果は以下のようにまとめられた。(1)Al粉末のサイズに関係なく、これらの元素粉末を添加すると焼結Al成形体の密度が大幅に向上した。最も粗い35μmのAl粉末を使用した場合、純Al成形体の相対密度はわずか66%であったのに対し、Al-1SiおよびAl-4Cu成形体は両方とも89%まで上昇した。 11μmのAl粉末を用いた場合、Al-1SiおよびAl-4Cu成形体はいずれも相対密度が95%以上であった。(2) Al-1Si成形体の引張特性は、焼鈍処理した鍛造純Alの引張特性に近い値を示した。Al-4Cu成形体はAl-1Si成形体よりも伸びは低かったが、引張強度は高かった。