【珈琲ブレイク】先日、都立大学の研究室を訪問した際、興味深い話を耳にしました。最近のPOM(ポリアセタール)を使ったMIMフィードストックの混練作業では、以前のように目が痛くならないそうです。5年前に涙目になりながら混練研究をしていた頃から、POMはかなり進化しているようです。何が改善されたのか調べてみました。
涙目の原因:まず、POMの混練で目が痛くなる原因は、加熱中にPOMからホルムアルデヒドが発生するためでした。これが、かつての涙目の犯人です。
改善の鍵:では、何が改善されたのでしょうか。おそらく、その鍵は「アミン処理」にあると考えられます。海外の論文によると、POMにあらかじめ少量のプロピルアミンを混ぜておくことで、POMが加熱されてホルムアルデヒドが発生した際に、このアミンが「scavenger(捕捉剤)」として働くとのことです。アミンがホルムアルデヒドと化学的に反応し、別の安定した物質に変化することで、ホルムアルデヒドの発生が抑えられるという仕組みです。
現在市販されているMIM用のPOMには、このようなアミンが配合されている可能性が高いと考えられます。この技術によって、作業環境が大きく改善されたのです。
参考文献:On amine treated polyoxymethylene (POM) blends with low formaldehyde emission for metal injection moulding (MIM) August 2022Journal of Materials Science 57(2):1-11