混錬前にアセトンでエマルジョン化させたPMMAを使った実験の結果を共有化します。
《実験仕様》
バインダー:PEG73%+PMMA25%+SA2%、バインダー量=35VOL%
粉末:SUS316L(ANVAL)TD=4.09,CSL=69%
PMMAエマルジョン:PMMA1gに対してアセトン4mlを加えてエマルジョン化
《結果》
①混錬物が粒状(アセトンは蒸発して無くなる)
②PMMAエマルジョンは、粉末バインダーマトリックス中のPMMAの存在を助け、均質性向上、粘度を低下させる。
③温度と圧力に対する感受性を低下させる(ロバスト性向上)。
④PMMAのバックボーンバインダー(金属粉末保持)としての機能を向上させる。
【珈琲ブレイ句】PMMAを事前にアセトンでエマルジョン化すると大きなメリットがあることがわかります。高精度化のためにバインダー量の最少化を狙うのであれば方策のひとつとして検討してもよさそうです。論文では混錬物をそのまま射出成形機に使えると書いてあります。つまり粉砕工程が省略できる可能性があることもメリットですね。一方、アセトンが混錬中に完全蒸発するので安全対策は必要です。
安全対策としては、アセトンは空気より重いので床からの局所排気と作業環境の喚起を十分行い、環境中のアセトン濃度を定期的に管理する。火気厳禁遵守。設備を防爆構造にし、静電気のアースをとる等が考えられます。
《蛇足》混錬に苦労するPOMにもこのアイデアが展開できると素敵なのですが、残念ながらPOMは高い結晶性を持つ耐薬品性のエンジニアリングプラスチックなのでエマルジョン化することはほぼ不可能です。
参考論文:”METAL INJECTION MOLDING (MIM) FEEDSTOCK PREPARATION WITH DRY AND WET MIXING: A RHEOLOGICAL BEHAVIOUR ” Khairur Rijal Jamaludin ,Norhamidi Muhamad ,Sri Yulis