2020年2月25日火曜日

バインダージェットDIGITAL METAL DM P2500 を観てきた

 先週、心のメンター「めざしの土光敏夫さん」が社長をされていたIHI(石川島播磨重工業)に伺うチャンスがあった。そこに設置されているDM P2500の見学会があったからだ。残念ながら、装置は突然のエラーで動いていなかった。その代わり、時間を持て余すわけにもいかず、ヘガネスジャパンの大活躍で、質疑応答が充実していた。装置の動きは、後からYouTubeで確認できた。

◇やっぱり凄いところ◇
・機械的性質が、三次元どの方向から切り出しても、同じ数値をたたき出す。
・その目標をMIMの国際規格とし、実際にクリアーしている。
・やはり百戦錬磨、多数の量産実績から裏打ちされた品質の高さ。
・ノズル洗浄ステーションが充実、乾燥機能付きウォシュレット方式。
・ノズル位置制御は、リニアモーター駆動、リニアスケールフィードバックで、迅速で高精度。
・ノズルの原点補正は、カメラでやっている・・ようだ?(未確認)

◆すごいけど迷惑?なところ◆
・装置はIoTになっている。インターネットでDIGITAL METAL社とつながっており、適切なトラブルシューティングが可能。最新情報アップデート。
・このIoTはお客様側主導でON-OFFできるが、どうなんでしょうか?
・具体的な数字は言えないが、材料費が高い(粉末、バインダ)。

◆苦手なところ◆
・曲がりくねったトンネル形状(粉末が除去できない)
・限界最小肉厚、最小穴径、最小隙間 すべて0.2mm(MIM相当)
・L/Dの大きな造形物(粉末除去工程のエアーブローで折れる)

【珈琲ブレイ句】
いろいろ気づきがありました。本物は動いていなくとも、たくさんの事を語ってくれます。とにかくMIMに肉薄する機械的性質の均質性に惚れこみました。勉強になります。反面教師は、材料費がものすご~く高いことです。話は変わりますが、家にある白黒レーザープリンターは1万円と安価です。でもトナーがものすごく高い。すると安価な代替品が出てきました。これが世の流れですね。熱は熱いところから冷たいところに流れ、決して逆流しない、熱力学第二法則。

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2020年2月9日日曜日

中子を利用するMIMの特許を調べた

アンダーカット形状を形成させられる「中子利用MIM」の国内特許を調べてみた。すべての特許を抽出できていないと思われるが、ザクっと表1にまとめた。よくよく調べると公開だけで特許になっていないものが多い。いったい誰が老舗なのか? 海外で有名なのは「MEGAMET SOLID Metals,Inc.(米国)のDissolving Core Technology」「AMTの特許 In-Coring

ちなみに下から3番目の特許は、私が発明者で「動圧軸受けを形成させることが請求項」、一番下のキャステムさんは、「ロストワックスで使うソリブルワックス中子(PEG,PVA+無機フィラー)のMIM展開」で特許になっています。


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2020年2月7日金曜日

これぞ「AMからようこそMIMへ」という記述を見つけた


Powder Injection Moulding International Vol. 12 No. 4 December 2018  P71

Dr Petzoldt pointed to the potential for MIM companies to use extrusion of MIM feedstock and also how MIM and metal Additive Manufacturing could complement each other in the future. Extrusion uses less complex tools than those for injection moulding and, with suitable adaptation, MIM feedstock could be used in a continuous process with a high degree of automation to produce, for example, thin-walled tubular structures with functional cooling channels. MIM and AM complement each other through the use of common feedstock material, he stated. MIM-like materials are used in the Fused Filament Fabrication and Binder Jetting AM processes to produce complex shapes in small series to high density (> 99%), and at a much higher production rate than, for example, Laser Beam Powder Bed Fusion. He sees a converging of the gap between AM for small series complex-shaped parts production and MIM parts in large series, as can be seen in Fig. 9

Petzoldt氏は、MIM企業がMIM原料の押出成形(extrusion:溶融積層FDMのこと?)を使用する可能性と、MIMと金属AMが将来互いに補完する可能性が高いと指摘しました。 押出成形では、射出成形用の金型(tools)よりも複雑なツールを使用せず、適切に適合させることで、MIM原料を高度な自動化により連続プロセスで使用して、たとえば機能的な冷却チャネルを備えた薄壁の管状構造を製造できます。 MIMAMは、一般的な原料を使用することで互いに補完し合う、と述べました。 MIMのような材料は、溶融フィラメント製造およびバインダージェットAMプロセスで使用され、小さなシリーズから高密度(> 99%)の複雑な形状を、たとえばレーザービームパウダーベッドフュージョンよりもはるかに高い生産性で造り上げます。 同氏は、図9のように、小さなシリーズの複雑な形状の部品製造のAMと大きなシリーズのMIM部品との間のギャップが収束していくと考えています。

2020年2月2日日曜日

AMからようこそMIMへの棲み分けについて

TCT JAPAN2020の展示会場には、AMだけではない興味深い出展も散見できた。それは「表面品位を向上させる二次加工設備」である。
①乾式電解研磨装置「Drylyte」振動バレルと電解研磨の複合
②「MMP:Micro Machining Process」装置の詳細不明であるが、シャープエッジを保ちながら表面を改質し、ヘアーライン仕上げから磨きまで可能。キャパΦ450×H250 でチャージ数十万円。

これらを使えば、AMの欠点「表面あらさを改善できる」。重工用タービンの試作には絶対活用される。AMと二人三脚で、これから花形になる技術だ。

このことを踏まえ、本テーマの「AMとMIMの棲み分け」を考える。

AM(MIM粉末使用金属積層技術)の採用ポイント
・小ロット(1個から)
・開発初期の設計仕様が曖昧な段階で、パラメータ変数ごとの試作品を一度に造り並行して実装評価できる。
・少量であれば量産品として使える。
・AMでしかできない部品が作れる(複雑、アンダーカット形状)
・表面あらさは、上記の様な表面改質技術で解決できる。
 ただし、コストが相当掛かる AM単品でMIMと同じコストでも、表面仕上げ費用を合算すれば数倍高くなる。

MIMの採用ポイント
 条件:金型の投資が回収できる生産量であれば
・MIMの方が表面あらさがよく安価で、機械的性質も安定。
・複雑でアンダーカット形状も、消失中子を使えば可能。
・材質が豊富。ニッケル基合金などの実績も多い。

【珈琲ブレイ句】
AMでしかできない形状は存在します、特殊航空機の燃料混合ノズルなどはまさにその例で、このような分野では、AMの独壇場になるはずです。それ以外では、生産量が多くなったら、MIMにバトンが渡されると思います。要するに両方必要なのです。「AMからようこそMIMへ」


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2020年2月1日土曜日

3Dプリンティング&AM技術の総合展(TCT Japan 2020)に行ってきた

TCTとは「Time Compression Technology」の略で、直訳すると「時間圧縮技術」である。それを実現する手段がAM技術であり、そのひとつが、3D金属積層技術である。100社を超える企業が参加、3Dプリンターだらけであった。

【面白かったもの】
ExOne バインダージェット Innovent
・ヘガネス バインダージェット(DIGITAL METAL DM P2500 会場プレゼン)
・DesktopMetal(溶融積層)
BASF 溶融積層用MIMフィラメント(3月から国内販売らしい)
・高温樹脂用 溶融積層装置 FUNMAT HT (装置内の環境温度を高くできそうでBASF-MIMフィラメントに対応できるのかも?)


【珈琲ブレイ句】バインダージェット方式では、ExOneも素晴らしいけど、やっぱり老舗ヘガネスの技術は一日の長があります。展示品の「鎖帷子(くさりかたびら)」は繊細でしなやかで感激しました、このレベルはまさに宝飾品そのものです。2015年から造形サービスを始め、現在その数50万点。実践で鍛えた百戦錬磨の技術力はピカ一です。会場隅でヘガネスが行ったプレゼンの中でMIMとの比較がありました。『この装置で造形した製品の相対密度は96%ですが、さらにHIP処理を行うとMIM相当の密度になります。』 つまり、「MIMの方が、品質が上」ということを公言し認めているのです。やはり「AMからようこそMIMへ」の流れは、技術的にもある、と再認識できたのです。