2021年6月27日日曜日

コーテッド粉末(顆粒)とはどんなものか

 Cold Metal Fusion や Solbent Jetting で使われるコーテッド粉末(バインダーをコーティングした粉末や顆粒granule)とはどんなものなのか少し調べた。*1

《製造方法》①溶融バインダーと粉末を混合 ②乾燥・固化 ③粉砕 ④ふるい分け・分級 《パウダーベッド》レイヤー1層の厚さ50μm~200μm

【珈琲ブレイ句】Solbent Jettingの場合、体積約10pLの溶媒液滴でコーティングを溶かす。Cold Metal Fusionであればレーザーでコーティングのみ溶かす。レイヤー層が厚めなのは、顆粒が主体だからでしょうか。顆粒のメリットは不定形粉末や超微細粉末でも「おにぎいの様にまとめて球体化できる」ので、粉末流動性を高くできる可能性がありますね。ただ課題もありそうです。それは、「顆粒の嵩密度はどのくらい上げられるのか」です。つまり「粒子間距離をいかに短くできるか」ということです。それは、「焼結密度に大きく左右する」からです。謎が解けたらまた報告します。

*1 リコーさんのコーティング粉末は、上記のものとは別物です。コーティングの厚さも0.1μmと薄く、複写機メーカーお得意の電子写真(ゼログラフィー)技術を使っているそうです。目的は2つ、粉末発火防止と濡れ性・浸透性の改善です。目的から判断すれば、コーティング剤はバインダー(結合剤)ではなく、界面活性剤だと思われます。

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2021年6月26日土曜日

なぜBASFはプレアロイ材を足し算したのか

 カルボニル鉄粉(CIP)を発明したBASFだからこそ、マスター合金をCIPで希釈するフィードストックは差別化技術であった。しかし、最近、プレアロイ粉末(合金鋼のアトマイズ粉末)のフィードストック*1も商品に加えてきた。この足し算戦略について考えてみる。材質は8620(≒SNCM220、炭素0.2%の浸炭焼入れ鋼)・・・なぜBASFはプレアロイ材8620を足し算したのか・・・

仮説1:8620材では、マスター合金希釈鋼よりプレアロイ鋼の方が機械的性質が高かったため。→部品の薄肉化(計量化)→世界の潮流SDGsに合致

仮説2:カルボニル粉の生産は他社に依存させる。C国製CIPの方が安価で品質も同等?→自社ではこれ以上増産しない(新規に製造プラントを造るの大変)。

仮説3:プレアロイのアトマイズ粉末の品質、価格、納期が向上している。日本製水アトマイズ粉末がQCDで優れている? C国製ガス・水ハイブリッド・アトマイズ粉末(独特許)がQCDで優れている?

【珈琲ブレイ句】カルボニル鉄粉CIPは微細粉末なので、昔から大好きで、合金を造る基材として重宝しています。これからもなくなることは無いでしょう。でもBASFさんが積極的にプレアロイ粉末製フィードストックを商品ラインナップに加えるのですから、それなりの理由があるはずです。

*1従来のマスターアロイ+CIP品:Catamold 8620 プレアロイ品:Catamold motion 8620


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2021年6月25日金曜日

溶媒ジェットとバインダージェットの違い

AMの溶媒ジェット*1(Solbent Jetting)方式とバインダージェット(Binder Jetting)方式の機構は殆ど同じである、ただ2つの違いを除いて。その違いとは、プリンターヘッドから噴射される「液体」とパウダーベットに一層分敷かれる「粉末」が異なっている。その具体的な違いとは・・・

《噴射する液体の違い》Binder Jettingは「バインダー」を使う。バインダーとは結合剤であり数種類の成分を含んでいる。結合強度を確保するためにポリマーを含み粘度は相対的に高い。一方、Solbent Jettingは「溶媒」だけを噴射する。粘度は相対的に大変低い。

《粉末の違い》Binder Jettingに使う粉末は、ほぼMIMで使う粉末と同じもの(少し粗い?)である。一方、Solbent Jettingに使う粉末は「バインダーを粉末にコーティングしたもの」である。粉末単体にコーティングしたもの、おにぎりのような造粒粉がある。そして造形原理は、一時的に粉末表面のバインダーを溶剤で溶かして結合させる。

【珈琲ブレイ句】溶媒ジェットもバインダージェットと同じものだと理解していましたが、深く調べるとその違い*1 が見えてきました。その違いは差別化技術でもあるのですが、Solbent Jettingの優れた技術は「ノズルヘッドの信頼性を格段に向上させることができる」ことです。そもそも主流のバインダージェット方式には弱点があります。それは、ノズル詰まりとの闘いがあることです。ヘッドのクリーニング管理、詰まったヘッドを他のノズルが補完して印刷するなど気遣いが大変なのです。一方、溶媒ジェットなら目詰まりはありません。なぜなら「目詰まり洗浄剤を噴射しているようなもの」だからです。ジェッティングの信頼性が各段に向上することは想像に難くありません、補助ノズルも不要になるのでノズル設計がスリム化でき安価になるでしょう。さらに、粉末にコーティングさせるバインダーもコーティング性と脱バインダー性(残渣ゼロ)だけを考えて独立研究開発ができるので完成度を高くできるメリットがあります。

*1 ASTM F42のAM分類に当てはめると、「Solbent Jetting」は「Binder Jetting」の仲間ではなく「Cold Metal Fusion (Metal SLS)」の分類にはいると考えます。なぜならば、コーテッド粉末の表面バインダーを融解することは全く同じだからです。違うのは「溶かす原理」だけなのです。「レーザー(物理的融解)」か「溶媒・軟化(化学的融解)」かの違い。


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2021年6月24日木曜日

MIM-Like AM 製アルミ合金で焼結密度99%達成

 バインダージェットのExONEと連続炉メーカーABBOTTFURNACEとの共同開発(特許出願中)で、「アルミ合金A6061」製AM品の焼結密度99%を達成したと発表があった。凄いことなので少し考察してみる。

真空炉ではなく連続炉で達成できた:脱バインダー残渣問題とアルミナ酸化問題を考えると、連続炉による雰囲気脱脂焼結にメリットがあるということか?還元雰囲(ガス)制御?

MIMの場合、アルミは微細粉末になるほど焼結密度が高くなるが、AMパウダーベッドでは微細粉末が不得意なので微細粉末化ではないであろう。とすれば、粉末粒径を微細にする代わりに高密度化のための焼結助剤として銅Cu粉末を規格上限まで粉末配合させている?????特許公開まで詳細内容がわかりませんが・・・以上思考訓練完了(妄想です)

【珈琲ブレイ句】実際アルミ合金は軽量化目的でニーズ・市場は大きいのです。現に上記は自動車のフォードとコラボしているので、何らかの量産の軽量部品に展開されることでしょう。ただし、個人的にはアルミ合金であれば金型鋳造の方がメリットがあると今でも思っています。それでは引張強度TSを比較してみましょう。溶製材A6061:125MPa、溶製材A6061+T6:310MPa、ADC12:310MPa、AC4C+T6:285MPa 上記MIM-Like AM品の強度はわかりませんが溶製材より低いはずです。熱処理T6などが必要な感じですね。

《関連ブログ》

市販アルミ合金フィードストックの実力

アルミのMIMは存在しないのか?

バインダージェット3Dプリンター用アルミニウム粉末


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2021年6月22日火曜日

【速報】「AMからようこそMIMへ」用 VHS-CUBEとは

 島津産機システムズから、待ちに待ったカタログが送られてきました。小型真空脱脂焼結炉『VHS-CUBE』です。 名前がカッコイイ。 オフィスに設置できるデザインもカッコイイ。 「MIM-Like AM」だけでなく「超硬」や「MIM」の研究開発を目的にしている懐が広い焼結炉なのです。

先日、2種類のMIMの脱脂焼結実験(by都立大学)をしていただきました。水アトマイズ粉末SUS316L(10μ)で焼結密度7.70(R=0.08)g/cm3 を達成しています。イイ感じです。 メールいただければメーカー担当を紹介します(右上 Contact Usから)。 がんばれMade in Japan  

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MIM用微細粉末利用MIM-Like AMの6種類とは(更新)

 AM技術を分類する「ASTM F42の7分類」には「Screen Printing」に相当する分類がないため、「勝手に8分類」にした。さらに、『MIM-Like AM』を6種類に分類した。2021/06/28更新




【珈琲ブレイ句】金属粉末のAM積層で機械的性質がダントツに優れているのは「電子ビーム利用のアーカム」だと思っています。でも本BLOGでは取り扱いません。MIM製法を踏襲(MIM用微細粉末を使い脱脂焼結するAM)する「MIM-Like AM」だけを対象にしていきます。この「MIM-Like AM」が、私の守備範囲であり、コストパフォーマンスが高く一般化しやすいと考えているからです。 上の表にはありませんが、「MIMフィードストックのブロックを機械加工で削り出す方法、あるいはAMのブランク品に機械加工を追加する方法」も考えられますが、機械加工は除去加工であり、AM付加製造とは全く逆の大義なので、今回はAMの仲間「MIM-Like AM」にいれませんでした。

更新2021/06/28 Solbent Jetting を追加しMIM-Like AMを6種にしました。

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2021年6月21日月曜日

MIM-Like AMの第5の柱「3Dスクリーン印刷」

 工業技術として確立しているスクリーン印刷を利用して3Dモデルを造るAM技術が提案されている。スクリーン印刷とは、孔版印刷の一種で、シルクのようなメッシュ状の版に図柄の孔をあけ、孔の部分にだけインクを落として印刷するもので、年賀状印刷でお世話になったプリントゴッコも同じ原理である。積層インクは、金属粉末とバインダーを混ぜた泥状フィードストックを使う。積層ピッチはスクリーンの厚さに支配され60μm程度である。下記のFraunhoferIFAMDDのYouTubeが勉強になる。

FraunhoferIFAMDD 3D Screen Printing  YouTube

【珈琲ブレイ句】このアイデアを、ASTM F42の7分類に無理やり当てはめると「シートラミネート」が一番近いが、材料が固体ではないので、7分類外の新しい独創的な技術である。そして微細金属粉末を利用する「MIM-Like」の第5の柱で間違いない。3Dのためには多種の版を造る必要があるので3D設計の自由度は多少落ちるが、アスペクト比が大きな微細形状にはたいへん有益な工法である。2.5D微小微細部品の中量産向きと思われる。

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2021年6月19日土曜日

金属は蒸発するはなし

金属は、真空度を上げると低い温度で蒸発する。MIM材として使われている代表的な金属はCr、Ni、Cuなどで、これを含有する合金では注意が必要である。 例えば、 Crだと10^-2Paのとき1000℃台で蒸発する。だから「MIMの焼結条件で特定の金属が蒸発する可能性がある」 もちろん技術的に対策はできる、水素や不活性ガスによる圧コン環境での焼結がその例だ。

【珈琲ブレイク】実社会で金属が蒸発することを体感できませんが、MIMの真空焼結炉で経験することができるのです。今は廃業しているMIMメーカーを見学したとき、焼結炉の中の黒鉛部品(棚板)が、銀色にコーティングされているのに驚いたことがあります。そこは、すべてステンレス鋼の部品を製造していたので、Crが蒸着したものだと推察しました。回数を重ねると奇麗にコーティングされるんだな~と感心しました。真空の世界は怖くて面白いのです。蒸発しないはずのセラミックも少しずつ消えてなくなっていきます*1。さらに、セラミックセッターも金属蒸発物で変色します。紫色や赤色が部品の形状に残ることがあるのです。アルミナにCrを微量加えると赤色になるのは宝石のルビーと同じではないかと、先日、大学の先生に言われました。

*1 アルミナ

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2021年6月9日水曜日

【広告】型技術誌でMIM入門連載開始

 月刊誌「型技術」にて、MIM入門の連載を始めました。

連載第1回 8月号 発売は7月16日です。 

難易度を「MIM入門講座」と「MIM指南書」の中間レベルにして執筆しています。 さらに「AMからようこそMIMへ」を裏テーマに、金型屋さんや射出成形メーカーさんにMIMを始めてもらためのトリガーも仕込んでいきます。

広告掲載期間 ~2022/08

日刊工業新聞社から購入する



2021年6月7日月曜日

MIMの元祖と世界の頭脳のタッグが最強?

世界初のMIMメーカーはPermatech社(溶媒脱脂)である。このMIMの元祖とコンピューター・電子機器の大手メーカーHPHewlett-Packard)がタッグを組んで造り上げた金属粉末3Dプリンター(バインダージェット方式)がある。AM業界への参入はかなり後発であるが、この強者2社がタッグを組んでいれば最強かもしれない?

さらに、Permatech社の発表しているビジネスモデルが、かなり秀逸である。日本に上陸されたらヤバイ。その戦略の4本柱とは・・・

①MIM:従来のMIMサービス

②FastMIM:2週間でMIMの試作品を提供する。6週間で少量生産へ移行。開発の垂直立ち上げに貢献。

③HD-MIM:従来MIMでは不可能な複雑形状、精度5倍

④3D-PM:HPをパートナーとする金属粉末利用3Dプリンターによる試作品の製造販売サービス

【珈琲ブレイ句】MIMの元祖もゆったりと構えていません、事業改革を着実に進めているのです。驚くのは、2週間でMIMの試作品を提供することをキャッチコピーとする「FastMIM」です、日本のお家芸危うし。さらに戦略の全体を俯瞰すると、やはり「AMからようこそMIMへ」を志向していることがわかりますね。ところで「HD-MIM」とは何の略でしょうか?High Dimensionかな? Microlution Solution を使う技術と説明があるが?? もしかするとMIMに5軸加工を追加するサービスかもしれません。徹底的に付加価値を付ける戦略かな?よくわからないけど凄そう。

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2021年6月6日日曜日

ついに老舗から金属3Dプリンタ用脱脂焼結炉が登場

 2021年度春季大会(オンライン)で、MIM用脱脂焼結炉の老舗である島津産機システムズから(旧島津メクテム)AM用の脱脂焼結炉の開発報告があった。

◆装置外寸:1400×850×H1700(mm)◆インナーマッフル内寸:200×200×200(mm)◆炉内温度バラツキ:±2℃ ◆炉内にサンプルが無い状態で水冷ジャケットにより1200℃から150℃まで冷却時間が約4時間◆ワックストラップ標準装備、オプションでDP可。

【珈琲ブレイ句】春季大会の報告では、無謀にも200gのバインダーの脱脂実験を報告しているそうです。普通のAM用脱脂焼結炉は、ワックストラップが付いていないものが主流です。これだとバインダージェット方式の積層体なら良いですが、FDM(FFF)ではバインダーが多いのですぐにRPが悲鳴をあげることになるでしょう。一方、この島津炉は基本通りワックストラップを付けているのです。だからMIMの脱脂焼結もできるのです。私が唱える『AMからようこそMIMへ』を知ってか知らずか・・「AMで実力を付けた技術者はMIMも始める」ことをわかっているのです。やはり島津は凄い、恐るべし!


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2021年6月5日土曜日

MIM指南書の部屋

MIM指南書購入者様
「誤記訂正」と「新しい情報の増補」をまとめています。
ご足労を掛けますが、ご自身でMIM指南書を訂正・増補ねがいます。

【MIM指南書(増補・セルフ)】

2021年6月4日金曜日

【御礼】MIM指南書ホームステイキャンペーン

キャンペーン無事終了いたしました。

誠にありがとうございました。ご購入していただいた方には「ミニミニ一問一答コンサル券」を付けさせていただきました。今後とも、ともに切磋琢磨、継続研鑽していきましょう。

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