2020年3月16日月曜日

AMのためになる?特許内容を先行公開【パートナー募集中】


【パートナー募集中】
特開2021-139035  
特許になりました!
2023年1月24日 特許査定


AMからようこそMIMへ」。 MIMの発展のためにはAMの発展は追い風になる。そう考えるので、AMのためになる?特許を出願しました。
 粉末流動化剤としてメラミンシアヌレートを使用するアイデアです。粉末冶金では類似の特許出願はありますが、本件はAMのバインダジェットに限定し、ピンポイントの請求項にしています。

期待する効果(目的)は2つ。
①積層焼結体の内部品質の均質化(そのためにはパウダーベッドの粉末嵩密度が高く均質であることが必要)
②内部空洞部分の粉末の除去性能を上げ残存させない(そのためには粉末の高流動性が必要)

《先行公開特許抜粋》
【出願番号】特願2020-50106
【出願日】令和2年3月3日
【発明の名称】バインダジェット法に用いる積層造形用金属粉末材料
【請求項1】
パウダーベッド上に、均等厚さ50μm以下を保って敷かれた一層分の金属粉末層の上面に、バインダをジェット印刷することを繰り返し積層するバインダジェット法に用いる積層造形用金属粉末材料であって、平均粒径3~15μm、タップ密度4.5g/cc以上(真密度7.98g/ccのとき)の金属粉末中に、流動化剤として平均粒径2μm以下、嵩密度0.3g/cc以上のメラミンシアヌレートが、金属粉末のタップ密度を金属粉末の真密度で除して求められる空隙率以下の割合で添加されていることを特徴とするバインダジェット法に用いる積層造形用金属粉末材料。

【要約】
【課題】微細な金属粉末に流動性を改善し成形を容易にするために流動化剤を添加し、さらに最終焼結製品内部に流動化剤を残存させないバインダジェット法に用いる積層造形用金属粉末材料の提供を目的とする。
【解決手段】バインダジェット法に用いる積層造形用金属粉末材料であって、平均粒径3~15μmの金属粉末中に、平均粒径0.1~2μmのメラミンシアヌレートを金属粉末のタップ密度を金属粉末の真密度で除して求められる空隙率以下の割合で添加することで流動性を向上させることができる。さらに、最終焼結工程において、メラミンシアヌレートを300℃で揮散させ積層体内から外へ排気し、最終焼結製品内に流動化剤が残存することがない。
 【技術分野】
【0001】本発明は、バインダジェット法に用いる金属粉末材料において、微細な金属粉末に流動化剤を添加し積層を容易とさせ、さらに最終焼結製品に流動化剤を残存させない積層造形用金属粉末材料に関する。
【背景技術】
【0002】三次元物体の積層造形法として、粉末冶金用の粗い金属粉末をパウダーベッド上に積層しながら、一層を積層するごとにレーザーや電子ビームを一層分の粉末に選択的に照射し溶融させ三次元形状の積層体を得る選択溶融法が開発されている。また、MIM(金属粉末射出成形)で使用される、さらに微細な金属粉末を使うバインダジェット法による焼結体の製造方法が開発され、実用化されている。【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-157217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】バインダジェット法の原料粉末は、パウダーベッド上に均質な状態でかつ高い嵩密度で敷かれる必要がある。しかし、微細な金属粉末は、平均粒径が10μm程度と微細なため付着性が高く流動性が低い問題がある。これを解決するために上記文献の微細なシリカ粉末やアルミナ粉末等を流動化剤として微量添加する発明があった。しかし、この流動化剤はセラミックであるため、最終工程の1000℃を超える高温焼結でも不燃であり、結果として最終焼結製品の積層体内部に微量元素として残存し、高機能製品では要求品質仕様を満足できない課題があった。
【0005】本発明は、微細な金属粉末の流動性を改善し成形を容易にするために流動化剤を添加し、さらに最終焼結製品の積層体内部に流動化剤を残存させない積層造形用金属粉末材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】本発明は、微細な金属粉末を用いながら、流動性を確保させるために、メラミンシアヌレート粉末を流動化剤として添加することにより、バインダジェット法において原料粉末をパウダーベッド上に積層する際の粉末の動的特性を大幅に改善させること、さらに、流動化剤を最終焼結製品の積層体に残存させない方法を見出した。
【0007】本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、本発明の積層造形用金属粉末材料は、平均粒径3~15μmの主原料金属粉末中に、流動化剤として平均粒径が0.1~2μmのメラミンシアヌレートを金属粉末のタップ密度と金属粉末の真密度から求められる空隙率以下の割合で添加する。
【0008】バインダジェット法の付加製造工程は、積層、脱脂、焼結の3工程で行われる。積層体内のメラミンシアヌレートは、最終工程の焼結工程において、300℃で揮散し不活性ガスとなる、次にバインダが500~600℃で揮散する。これら順番に発生する揮散ガスは金属粉末粒子間の隙間を通り積層体内から外へ移動し、さらに焼結炉外へ排気される。その後、SUS316Lの場合、1350℃まで昇温させることで粉末同士が固相拡散接合し焼結密度96%以上の積層体が得られる。
【発明の効果】
【0009】本発明は二つの効果を有する。流動性が悪い微細な金属粉末を用いながら流動性を確保させるために、メラミンシアヌレート粉末を流動化剤として添加することにより、バインダジェット法において原料金属粉末をパウダーベッド上に積層する際の粉末の動的特性を大幅に改善させる。さらに、流動化剤を焼結工程内で完全消失させるので、微量元素として最終焼結製品内部に残存させず、成分規格を満たし十分な機械的性質を備えた高品質なものとなる。
【実施例】
【0011】
焼結温度1350℃で焼結密度96%以上が確保できるSUS316Lの微細粉末(平均粒径10μm、タップ密度4.5g/cm3、真密度7.98g/cm3)を用い、流動性を確保させるために、メラミンシアヌレート粉末(平均粒径2μm、嵩密度0.3g/cm3)を流動化剤として、金属粉末4.469gに対してメラミンシアヌレートを最大0.132gの割合で添加する。
流動化剤の添加量は次の式で求める。この値以上に添加することは粉体の流動性を向上させるが、焼結途中の変形収縮が増大するため最終焼結体の精度を低下させるため逆効果である。
    
流動化剤添加量 ≦ 空隙率×嵩密度
空隙率=1-粉末体積率
=1-粉末タップ密度÷粉末真密度
   
《計算例》
粉末体積率=4.5(g/cm3)÷7.98(g/cm3)=0.56
空隙率=1-粉末体積率=1-0.56=0.44

1cc当たり
粉末量=0.56×7.98=4.469g
流動化剤添加量≦0.44×0.3=0.132g

金属粉末4.469gに対してメラミンシアヌレートを最大0.132g添加する。
    
粉末のタップ密度は、JIS2512「金属粉-タップ密度測定方法」により測定する。メラミンシアヌレートは、日産化学株式会社製MC-6000相当を使用する。

【図面の簡単な説明】
金属粉末のタップ密度(最大嵩密度)状態でできる最小空隙内を微細な流動化剤が分散する積層造形用金属粉末材料のクリティカル状態を図1に示す。
【図1】金属粉末に流動化剤を添加した模式図である。  
【符号の説明】
  1 金属粉末
  2 金属粉末間の空隙とその中のメラミンシアヌレート
  3 メラミンシアヌレート

【珈琲ブレイ句】
◆実験をすると理論最大添加量の10%で十分機能します◆
しっとりご飯で、ぱらぱらチャーハンが作れる感じです。
メラミンシアヌレートは、日産化学様より無料サンプルをいただきました(日産化学様ありがとうございました!)。
「ぱらぱらチャーハン化」のもう1つのコツは、粉末を150~200℃でベーキングすることです。恒温炉+RP真空の炉冷がBETTER。

   


2020年3月14日土曜日

溶媒脱脂とVOC排出抑制制度

溶媒脱脂に「揮発性有機化合物VOC」を使っている場合、大気汚染防止法改正(2004)によるVOC排出規制(2006.04~)に引っ掛かる可能性がある

私が使っていた溶媒脱脂装置は、自己蒸留リユース装置付きの完全密閉式であるが、よく考えると『脱脂体から溶媒を抜く工程』があるのでVOCガスが大気に拡散する可能性があった。

その基準値は、次である(たぶん)。
『送風機の送風能力が3000立方m/時間以上のとき、600ppmC』(ppmC:炭素換算の容積比百分率)捕集バッグに20分間分を集めて測定依頼するようだ。

【珈琲ブレイ句】
 採集した気体容積比の炭素換算量を計るので、多量に空気や窒素などを混ぜて排出すれば単純に濃度が下がるような気がしますが、この基準に合格すれば一応OKということのようです。20分間集めるってどんだけ大きなバッグなんでしょうか??
 《 追伸:気づき》溶媒脱脂直後のブラウン体を容器に密閉し、気化するヘキサン排気を蒸留すればかなり回収できる。さらに、この機能のコンデンサをたくさん直列接続すれば、VOC量は最小化できるはず。
《日曜MIM知るINDEX》


脱脂の意味を正確に理解しよう

MIMの要である「脱脂」について掘り下げる。MIMの工程は3つで成形、脱脂、焼結と説明されることが多いが、実はこの「脱脂」は2工程を包含している。

その2工程とは「DE-WAXING工程」と「DE-BINDING工程」である。その違いは文字通り、前者がワックス(滑剤)、後者がバインダー(結合材)を除去する工程である。

MIM製法の違いと脱脂装置】
《溶媒脱脂》
 De-WAX : 溶剤脱脂装置
 De-Binder: MIM用脱脂焼結炉
《加熱脱脂1》
 De-WAX : 加熱脱脂装置
 De-Binder: MIM用脱脂焼結炉
《加熱脱脂2》
 De-WAXDe-BinderMIM用脱脂焼結連続炉
《3-STD加熱脱脂(POM系、PMMA系、SS系)》
 De-WAXDe-BinderMIM用脱脂焼結炉(SHIMADZU炉)
《触媒脱脂BASF法》
 De- Binder1 : 触媒脱脂装置
 De-Binder2: MIM用脱脂焼結炉 

【珈琲ブレイク】
ひとつだけみんなと違うものがあります。それは一番下の触媒脱脂。触媒脱脂は、2工程ですがどちらも「De-Binder」なのです。構成材がほぼ結合材だけなので脱脂変形が少なく精度が高いのが最大のメリットです。BASFの独創的アイデアが際立って見えます。ただし、滑剤が微量なので成形が難しいのが玉に瑕なのです。上級者向きですね。補足:①MIM用脱脂焼結炉を、加熱脱脂と焼結の2工程に分割することも行われています。②DeWAXを一次脱脂、DeBinderを二次脱脂と表現する場合があります。