2023年1月31日火曜日

流動解析を使ったタグチメソッド・パラメータ設計事例

 実験規模L16(5因子4水準)の実験を流動解析シュミレーションを使って行った研究論文があったので概要を記録しておく。

《成形体モデル》歯列矯正ブレース、ピンポイントゲート

《成形材料)粉体(SUS、7.9g/cc、10μm、60VOL%)、結合剤(PP,0.91g/cc、40VOL%)

《特性値》粉体粒子濃度のバラツキ(望小特性)

《ソフト》Moldex3D-CAE

《因子と水準および結果(要因効果図、寄与率)》

充填時間(速度):0.15,0.2,0.25,0.3s(左肩上がり、42%)**

保圧:14,16,18,20MPa(下凸、12%)

溶融温度:200,210,220,230℃(右肩上がり、35%)**

型温度:30,40,50,60℃(緩い傾斜で左が高い、7%)

ゲートサイズ:0.2,0.25,0.3,0.35mm(緩い上凸、4%)

《確認実験》SN比がイニシャル-0.3455dbから0.1466dbに改善された。

文献:”Processing Optimization for Metal Injection Molding of Orthodontic Braces Considering Powder Concentration Distribution of Feedstock” , Chao-Ming Lin,Jhih-Jyun Wu, Chung-Ming Tan , Received: 21 October 2020; Accepted: 6 November 2020; Published: 10 November 2020

【珈琲ブレイ句】流動解析を使ったタグチメソッドによるパラメータ設計は素晴らしい研究です。特性値に「粉体粒子濃度」を採用しているところも驚きです。なぜなら通常実験なら成形体の平均密度(アルキメデス法)しか測定できません。本研究の結果は、充填時間と溶融温度の2因子が支配的であることが分かりました。これは、どちらも粘度を低下させる方向に最適解があると言う事です。粉体粒子濃度がばらつく現象は、粉末粒子と結合剤の相分離であり、これは過剰なせん断速度が原因です。粘度が下がれば流動壁面摩擦領域との境界で発生するせん断速度による粒子の回転が減少し相分離が減少するためです。この研究には気になるところがひとつあります。それは、バインダーがPPの一種類で、現実的なMIMフィードストックではないところです。これは実際のMIMフィードストックのキャピラリーフローとPVT曲線を測定してシミュレーションに学習(合わせこみ)させれば解決するでしょう。それにしても、シミュレーションを使ったパラメータ設計の可能性を示す素晴らしい研究論文です。

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2023年1月29日日曜日

Ti-6Al-4Vの焼結実験論文

 タグチメソッドを使った実験論文を記録する。規模は小さいが3水準の実験L9(3水準、4因子)である。

粉末:Ti-6Al-4V(平均粒径18μm)ドイツTLS Technik製、粉末量65Vol%

バインダー:パームステアリン60wt%、PE40wt%

一次脱脂:ヘプタン60℃×6時間  二次脱脂:550℃×4時間

焼結:真空9.5×10^-6 mbar(9.5×10^-2 Pa)

《特性値》引張強度(望大特性)、L67×t2.7の引張試験片

《因子と水準と結果(特性要因図)》

 焼結温度:1200、1250,1300 ℃(上凸、左肩上がり)

 保持時間:60,120,180 分(左肩上がり)

 昇温速度:3,4,5 ℃/分(下凸、右肩上がり)

 冷却時間:180,240,300 分(上凸、右肩上がり)

《結果、分散分析》F検定で有意なものは 焼結温度のみ。(本来、田口メソッドではF検定は行わない要因効果図だけでOK、ANOVAも不要!と田口博士本人がおっしゃっていました。)

《確認実験》すべての最適値、焼結温度1200℃、保持時間60分、昇温速度5℃/分、冷却時間240分における結果は、引張強度934.33MPa、密度4.36(97.75%)、収縮率12.27%、伸び12.14%、酸素0.00302%、炭素0.056%、窒素0.00004%

文献:“Sintering Parameter Optimization of Ti-6Al-4V Metal Injection Molding for Highest Strength Using Palm Stearin Binder” ,N.H. Mohamad Nora , N. Muhamadb , A.K.A Mohd Ihsanb , K.R. Jamaludin,Malaysian International Tribology Conference 2013 (MITC2013)

【珈琲ブレイ句】この実験からの気づき。焼結温度が高すぎると引張強度が低下すること。さらに保持時間も長いと良くない。たぶんミクロ・マクロ組織の研究があれば考察できたでしょう。残念ながら二次脱脂と焼結の詳細な条件が不明でした、おそらく不活性ガスで二次脱脂、焼結は油拡散ポンプ仕様だと思われます。すばらしいことにASTM B348-02の規格をすべてクリアーしています。それと収縮率が12.27%というのは凄いですね。

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2023年1月28日土曜日

SUS316Lの焼結実験論文

 4因子3水準のL9直交実験論文があったので記録しておく。 

材質:水アトSUS316L(D50:7.157μm)、粉末重量?% 、

バインダー:PEG:73wt%、PMMA:25wt%。SA:2wt%、

脱脂:不明?(たぶん水脱脂)、焼結:真空、9.5×10^-6 mbar

《特性値》焼結体密度

《因子と水準、結果(特性要因図、*最良)》

 焼結温度:1340、1360*、1380℃ (真ん中上凸)

 保持時間:60、120、240*分 (右肩上がり)

 昇温速度:6*,8,10℃/分 (左肩上がり)

 冷却速度:6,8*,10℃/分 (真ん中上凸)

《結果(寄与率)》すべての因子で有意となった。実験の範囲内での最適値は、焼結温度1360℃(32%)、保持時間240分(11%)、昇温速度6℃/分(41%)、冷却速度8℃/分(11%)

《確認実験結果》密度98.52g/cm^3

文献:"SINTERING PARAMETER OPTIMISATION OF THE SS316L METAL INJECTION MOLDING (MIM) COMPACTS FOR FINAL DENSITY USING TAGUCHI METHOD"、K. R. Jamaludin, N. Muhamad, M. N. Ab. Rahman, S. Y. M. Amin, S. Ahmad, M.H.I. Ibrahim、Malaysia

【珈琲ブレイ句】L9直交配列実験です。田口メソッドと記載がありますが数理統計学の実験計画法でした。F検定と寄与率の計算まで行っています。学びは、一番寄与率の高い昇温速度が一番小さな水準の6℃/分が焼結密度を向上させる効果が大きいこと、次に焼結温度は、中間の水準である1360℃が焼結密度が高くなっていることです。焼結温度は高すぎても焼結密度を向上させることができないようです。3水準実験の要因効果が上凸の場合、中間水準近傍は「最適値」とみなすことができるのです。

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2023年1月25日水曜日

特許査定。BJT法に用いる積層造形用金属粉末

 金属粉末Metal-AM(MIM Like AM)のひとつであるBJT法において、その課題である粉末の流動性を上げ、パウダーベッドへのMIM用微細粉末の使用を可能とする発明です。特許査定認証日:2023年1月24日

特願2020-050106

発明の名称:バインダジェット法に用いる積層造形用金属粉末

この発明は、「有償譲渡」を考えております。また、近日関連メーカー数社へ(国内金属粉末メーカー、国内BJTメーカー等)へ入札を依頼する予定です。

ご提案は弊所まで→ 弊所のHPへリンク


【MIM指南書(増補・セルフ)】4.2 射出成形

 MIM指南書「金属粉末射出成形ガイドブック」の4.2 射出成形の誤記訂正です。下記4頁を印刷して対応するページ全体に貼り付けてください。

初期計量と射出量を明確化。

図4.3 の内容見直し訂正 および その解説文を見直しました。







異方性収縮と設計収縮率

MIMの金型キャビティ設計で一番重要な技術は、伸び尺(拡大率)の設計である。MIMの収縮率は、成形収縮率と脱脂・焼結の収縮率の合算(単純な足し算ではない)で決まる。そして厄介なのは「異方性収縮」があるので、伸び尺の設計標準は、推定、過去のデータおよび試作の情報の積み重ねでグレードアップしていくものである。これがノウハウであり、ノウハウを設計標準化することで技術になる。

異方性収縮の原因は5つ:①成形流れ方向と冷却速度 ②ポリマー配向 ③金型拘束 ④内部応力 ⑤圧力勾配 である。さらに、これらはキャビティ方案に左右される。例えば、⑥肉厚の差、⑦流動流れ方向の長さや幅、⑧ゲートの位置との関係など 

理論通りに収縮しない理由:《成形》成形材料が弾性体であるため射出圧(保圧)により成形収縮が異なる(PVT曲線)。狭いキャビティ空間では粉末とバインダーが分離するため局所的にバインダー量が変動する。《焼結》炉内温度バラツキ、重力、摩擦力など

設計標準化のアイデア:①転写性(品質工学)研究から標準収縮率を決定する。そして②異方性収縮は形状係数として設計段階で補正できるように独立させて標準化する。さらに、これらを③成形収縮(バインダー別)と焼結収縮(材質別)を独立させて標準化すれば、初めての材種に対しても計算で収縮率を推定することができる。

文献:MIM指南書、金属射出成形ガイドブック 2.3.1設計標準としての収縮率 P32-38

【珈琲ブレイ句】この標準化のためのデータ収集は、試作されたMIM焼結体が完璧に成形され、バラツキなく焼結されていることが前提です。しかし実際の現場では次のようなミスが発生します。成形重量が軽かった(保圧不足、離型を確保するため)、成形材の再生材配合比が間違っていた。そもそも金型寸法がズレていた(時間がないので受け入れ検査を省略した)などなど。現場で起こる不適合による品質変動は千差万別です。それを考慮しながら、異常値を捨て有益な情報だけで標準化できる技術者がカッコいいのです。



2023年1月24日火曜日

MIM用の射出成形機を選ぶポイントとは

MIM用の射出成型機のポイントをいくつか箇条書きにしておく。

・耐摩耗仕様が望ましい。シリンダー(バレル)、スクリュー、スクリュー先端ユニット(逆止機構)は耐摩耗仕様がよい。チェックリングは特に摩耗が大きいので定期的に交換する。

・スクリューの圧縮比(体積)は、1.7~2.2を選ぶ。MIM材料は樹脂と異なり圧縮性が著しく低いので、せん断加熱と圧縮が大きくなりすぎないように小さめにする。

・成形機は成形するショットサイズから計算され次の関係であること。

ショットサイズ=バレル容量×(20~80%)

これを実現させる方法は2つ。ひとつは成形体と比較してより大きなランナーシステムにする。(再生材が多くなる)。もう一つは、バレル容量が小さい射出成形機を選ぶ。

【珈琲ブレイ句】福島ハイテクプラザと共同でマイクロMIMの研究を行ったことがあります。そのときに使ったのがMicrosystem50でした。基本構造はプリプラ方式で可塑化と射出は別々に構成されています。今では国産でもマイクロ射出成形機が登場しています。奇抜なプリプラ方式(プランジャ径Φ5mm、可塑化は螺旋円板)です。これを使えば再生材比率を大幅に下げることができるし、高精度に射出成形することができるでしょう。さらに竪型にすれば省スペースなので、私が現役ならバリ取り・外観検査と成形を直列につないで兼業作業をしていただくという暴挙?にでるかも。

《関連BLOG》超小型射出成形機を比較してみた

参考:Handbook of metal injection molding、Second Edition, 6章、P105-126

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2023年1月14日土曜日

一次脱脂法の比較

【珈琲ブレイ句】スウェーデン ルーレオー大学のマリーさんの修士論文はMIM技術をすべて包含し、とても分かりやすい論文です。彼女の目から見たMIMの世界を知りたくて紐解いてみました。やはり新しい気づきがありました。その論文の中から「一次脱脂法の比較表」を載せておきます。新しい気づきのひとつは "Permeation controlled thermal debinding 透過制御熱脱脂" です。始めてみた名称です。連続脱脂焼結炉の一次脱脂工程だけを切り取った雰囲気炉でしょうか?短所の特徴は合致しているような気がしますが・・・謎?。



参考文献:”Effects of Binder Systems for Metal Injection Moulding”, Marie-Aude Porter,Luleå University of Technology、MSc Programmes in Engineering, Department of Applied Physics and Mechanical Engineering, Division of Engineering Materials、2003:266 CIV - ISSN: 1402-1617 - ISRN: LTU-EX--03/266--S

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2023年1月10日火曜日

MIMフィードストックの流動性を掘り下げる②

 【珈琲ブレイ句】各種あるMIMフィードストックの性格に対してどのように付き合っていけばよいのでしょうか? 中学数学の知識で理解してみましょう。

MIMフィードストックは擬塑性流体です。これは次の流れの式のべき乗指数nが1より小さいものです。(n:Flow Behavior Index 流動挙動指数, Shear Sensitivity せん断感度)

η=Kγ^n-1 、η:見掛け粘度(poise)、γ:せん断速度(1/s)

これを対数の世界に直すと

logη=(n-1)logγ+logK  となり

これは中学2年で習う y=ax+b の形なので

(n-1)が「傾き」、logKが「切片」ということです。

ここで、nが1より小さいということは 傾き(n-1)がマイナスになるので右下がりの直線であることが分かります。nが相対的に小さくなると傾きが大きくなるので、せん断速度に対する粘度依存性が高くなります。また、粉末が細かくなるほどnは小さくなる傾向*1があり、粉末と結合剤が分離しやすく、スリップフローが発生しやすいと言われています。成形材料としてはnは大きい方がよいとされており、量産実績のあるMIMフィードストックのnは0.3~0.5程度でした。

一方切片であるlogKは、全体的な粘度の傾向を示しています。これは温度に依存し成形温度を高くすればLogKは下がり、全体の粘度も下がっていきます(成形が容易になる)。

*1参考文献:RHEOLOGICAL PROPERTIES OF SS316L MIM FEEDSTOCK PREPARED WITH DIFFERENT PARTICLE SIZES AND POWDER LOADINGS、Sri Yulis M. Amin , Khairur Rijal Jamaludin, and Norhamidi Muhamad、Journal - The Institution of Engineers, Malaysia (Vol. 71, No.2, June 2009)

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2023年1月9日月曜日

市販MIMフィードストックの流動性を掘り下げる

 市販されている各種のMIMフィードストックのキャピラリーフローのカタログ値をひとつのグラフにまとめた。ワックスポリマー系から触媒POM系まで含めた。さらにべき乗指数nを計算しその代表値を記載した。


【珈琲ブレイク】当然ですがすべてn<1の擬塑性流体です。このn値は、ワックスポリマー系で0.3~0.4程度、ポリマーが主成分の触媒POM系でも0.5程度でした。そのすべてがせん断速度100(1/sec)で、成形限界粘度10000poiseをクリアーしていることを確認できました。量産実績のある材料はやっぱりよく研究されていますね。

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2023年1月8日日曜日

MIM用射出成形シミュレーションについて

 10年ほど前にMIMで使える射出成形シミュレーションが存在していた。それは、SIGMASOFTの3D射出成形シミュレーションである。これは、従来の樹脂成形の射出成形シミュレーションで使うCross WLFモデルではなく、Herschel-Bulkleyで拡張させたSIGMASOFT独自のCross WLFモデルを採用している。このポイントは、せん断速度が低速2(1/s)以下で大きく粘度が高くなる二つのせん断粘度直線の傾きをモデルにしているところである。”Sigma Soft”

【珈琲ブレイ句】一般に射出成形ではせん断速度は高速であり、低速2(1/s)以下になることはありません。しかし、射出成形された金型キャビティの流れの中には低速になる部位があるのです。この部位で正確にシミュレーションすることがポイントなのです。逆に、ゲート領域ではせん断速度勾配が大きくなるので体積当たりの粒子濃度(粉末濃度)が増加します(シワが発生する)。すでに世界では実用化されているソフトですね。国内ではTS工業さんが別のソフト(MoldeX 3D)で2014年頃から実用化研究を始めているという発表があります。すばらしいです。これを使えば金型方案設計の確認を半日で完了させることができます。

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2023年1月4日水曜日

新AM技術「MoldJet」を深堀する

概要:Mold Jet という新しいMIM Like AM技術

《造形手順》step1:型造形、ワックス積層(25~200μm)にて型を造形  Step2:成形、金属ペースト(セラミックペースト)を型キャビティに充填  Step3:乾燥、水溶性バインダーを乾燥させる  Step4:硬化、グリーン体を硬化させる(真空) Step5:検査、光学検査を行い基準未達の場合は、その層を削り取り造形をやり直す

《後工程》ビルドプレート全体をオーブンでワックス(型に相当)を溶かす(120℃×2~5時間)。残ったグリーン体を溶媒脱脂溶媒再循環タンク内で溶媒脱脂(MAX3時間)する。オーブンで30分間乾燥させる。MIM脱脂焼結炉で焼結する。

《造形寸法》Dominant機:400*240*120mm、Dim機:220*120*90mm 

《材種》ステンレス4種、工具鋼2種、低炭素鋼2種、超合金、Ti64、銅、セラミック2種

《コンパウンド設計》Powder load paste:60-63%、グリーン体強度:20MPa、最小厚さ:200-250μm、印刷精度:150-300μm

《焼結体品質》相対密度:95%以上、収縮率:11-15%、表面粗さ:1.5-3.5Ra

【珈琲ブレイ句】Tritone社のMoldJetで造られた焼結体の品質(相対密度、収縮率、表面粗さ)は、ほぼMIMですね。これはペースト状のフィードストックを使っているところに優位性があると思われます。一般的なMIMでは不可能な肉厚200-250μmが造形できる。ペーストは流動性が大変良いのでBJTより微細な粉末が使える、そのため焼結密度も高くでき精度も高い。MEXと比較するとフィードストック設計の自由度が相対的に高い、つまりフィラメントにする必要がないので粉末量を高く(60-63%)でき、しかも柔軟性を考慮した樹脂バインダー設計も不要になるのです。

ところで、乾燥工程の「真空」が気になります。具体的な情報がないのですが、もし積層工程も真空中であれば気泡が混入しないので積層体の品質は最強ですね。今後の調査テーマにします。

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2023年1月1日日曜日

MIMフィードストック設計事例2

複合HA/Ti6Al4Vにパウダースペースホルダーとして塩NaClを使った研究の結果を記録する(とても高いCSLの事例)。

《粉末》Ti6Al4V(19.6μm、4.43g/cm3)、Hydroxyapatite(5.3μm、3.13g/cm3)、NaCl(381.4μm、2.17g/cm3)

《粉末配合比》Ti6Al4V:HA=9:1 with 20%スペースホルダー(NaCl)

《バインダー》パームステアリン(融点54℃)60wt%、ポリエチレン(融点125℃)40wt%

《臨界粉末量》CSLCPVP)=82vol%

資料:”Determination of Critical Powder Loading of Titanium-Hydroxyapatite with Powder Space Holder for Powder Injection Molding Feedstocks” Mohd Yusuf Zakaria Abu Bakar Sulong Mohd Ikram RamliJournal of Mechanical Engineering Vol. SI 3 (1), 11-21, 2017

【珈琲ブレイ句】この実験報告では臨界粉末量CSL82vol%を叩き出しています。信じられません。これは、配合比が三峰分布になっているためだと考えられます。粉末配合比 Ti6Al4V:HA:NaCl=72:8:20Vol%のときです。ただしグリーン体の顕微鏡写真を観るとスペースホルダーの塩が破砕している?ように見えるので混錬条件の管理が必要になるでしょう。

ところで、多孔質の複合チタン合金を造ることを目的としている研究ですが、スペースホルダーの塩(NaCl)をどのように除去(脱脂?)するのでしょうか? 考えられる方法は2つですね。ひとつはブラウン体の塩を融点801℃でウイッキング等により抜く方法。ふたつめはグリーン体の塩を水中で溶かす方法(シャチハタスタンプ方式)。

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