実験規模L16(5因子4水準)の実験を流動解析シュミレーションを使って行った研究論文があったので概要を記録しておく。
《成形体モデル》歯列矯正ブレース、ピンポイントゲート
《成形材料)粉体(SUS、7.9g/cc、10μm、60VOL%)、結合剤(PP,0.91g/cc、40VOL%)
《特性値》粉体粒子濃度のバラツキ(望小特性)
《ソフト》Moldex3D-CAE
《因子と水準および結果(要因効果図、寄与率)》
充填時間(速度):0.15,0.2,0.25,0.3s(左肩上がり、42%)**
保圧:14,16,18,20MPa(下凸、12%)
溶融温度:200,210,220,230℃(右肩上がり、35%)**
型温度:30,40,50,60℃(緩い傾斜で左が高い、7%)
ゲートサイズ:0.2,0.25,0.3,0.35mm(緩い上凸、4%)
《確認実験》SN比がイニシャルの-0.3455dbから0.1466dbに改善された。
文献:”Processing Optimization for Metal Injection Molding of Orthodontic Braces Considering Powder Concentration Distribution of Feedstock” , Chao-Ming Lin,Jhih-Jyun Wu, Chung-Ming Tan , Received: 21 October 2020; Accepted: 6 November 2020; Published: 10 November 2020
【珈琲ブレイ句】流動解析を使ったタグチメソッドによるパラメータ設計は素晴らしい研究です。特性値に「粉体粒子濃度」を採用しているところも驚きです。なぜなら通常実験なら成形体の平均密度(アルキメデス法)しか測定できません。本研究の結果は、充填時間と溶融温度の2因子が支配的であることが分かりました。これは、どちらも粘度を低下させる方向に最適解があると言う事です。粉体粒子濃度がばらつく現象は、粉末粒子と結合剤の相分離であり、これは過剰なせん断速度が原因です。粘度が下がれば流動壁面摩擦領域との境界で発生するせん断速度による粒子の回転が減少し相分離が減少するためです。この研究には気になるところがひとつあります。それは、バインダーがPPの一種類で、現実的なMIMフィードストックではないところです。これは実際のMIMフィードストックのキャピラリーフローとPVT曲線を測定してシミュレーションに学習(合わせこみ)させれば解決するでしょう。それにしても、シミュレーションを使ったパラメータ設計の可能性を示す素晴らしい研究論文です。
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