2022年5月30日月曜日

二色成形(ダブルモールド)をまとめた

 二色成形(Double mould、Double Injection moulding)といっても、いろんな種類があるので、ここにまとめておく。


【珈琲ブレイ句】MIMの業界でも研究が行われていますが、私が知る範囲で実用化されているものは、樹脂インサート成形とロータリープレート方式のツーショット成形です。私もMIM片をインサートとして一体成形した実験を行いました。完全に接合面が拡散接合しないので量産化を断念しました。それ以外では、10年ほど前の論文で、サンドイッチ成形を試行したものがありました。これは、コアがFEN2でスキン層をCr鋼形成させるもので、成形条件によりスキン層を0.5mmに制御する発表でした。ちなみに、ポイントは2種フィードストックの粘度比の設計で、コア材の方をほんの少し粘度を高くし、射出温度を制御因子として流動性をコントロールすることらしいです。まさに神業です。

関連BLG: 2C-MIM(Two-Component MIM 二成分粉末射出成形)の課題

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2022年5月29日日曜日

超小型射出成形機を比較してみた

 EPSONから縦型の超小型射出成形機が発表されたので、比較表を作った。20年前の名機であるMicrosystem50(Battenfeld社)を基準として比較する。


【珈琲ブレイ句】ザ・超小型射出成形機の名機、Microsystem50と比較すると、近年の超小型射出成形機の特徴は、すべてプリプラ方式、最大射出圧力はほぼ同じ、型締め力と射出速度が低く設定されている。確か、当時のMicrosystem50の射出はカム駆動方式なので速かった?(記憶が曖昧)。EPSONは、可塑化をディスクで行う方式なので、めちゃくちゃスリムで装置の巾が300mmです。昔は「速く大量に生産する」ことを主眼にしていましたが、今は「ラインの中に組み込んで合理的に付加価値を加えながら生産する」へ要求がシフトしていることがわかります。また、装置あるいは金型が竪型であれば、インサート成形やロボットによるハンドリングも容易になります。超小物MIMをやるならこの日本製の成形機、かなりいいかも。

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2022年5月25日水曜日

非可燃性水素混合ガスの要求と過信

MIM脱脂焼結で、水素ガスを使いたくなる要求は2つであろう。

①炭素Cを減少させたい。C+H→CxHy(炭化水素、メタン等)

②酸素Oを減少させたい。O+H→H2O(水)

【アルゴン・水素混合ガスを使った実験*1】方法:ワンステップバインダー(3STD系)による脱脂焼結炉からの排出ガスを質量分析した実験。結論:水素100%とAr100%の反応強度が同じ程度に高い。水素100%による脱脂焼結品のC%が0.006%に減少する。一方、Ar75%水素25%混合ガスを使った脱脂焼結品のC%は、0.64%であった。これは、Ar100%の脱脂焼結体C%が0.32%であるので、水素混合がC%減少目的であれば逆効果であることを示唆している。   

論文の表3をグラフ化した。焼結体の炭素量は水素100%が最小で少しでもアルゴンが混合されると炭素量が増加していく。理由は不明とされているが、質量分析の結果から、水素100%の時は、低温250~500でほとんど炭化水素に変換されるが、アルゴン混入量が増えると反応の山の高さが低く裾野が広くなり、さらに高温側にシフトしていく。アルゴン100%の時はCH4(メタン)が支配的になる。加熱脱脂完了後、1000℃近傍でCO反応が起こる。*1:PIM international誌、2010年1号Spring-P43

【珈琲ブレイ句】 水素は可燃性ガスなので、不活性ガス類と混ぜて非可燃性にして使うものがあります。その量は、窒素・水素混合ガスで、5.5%未満(計算値)、アルゴン・水素混合ガスで、3.1%(計算値)です。実験でもこの非可燃性水素混合ガスを使いますが、期待通りの効果が確認できないので使わなくなるのです。その理由は、上記論文が示す通り水素に不活性ガスが混入すると、炭素残留量は増加することが原因だと思われます。したがって、非可燃性ガスの数%の水素含有量では炭化水素化効果が期待できない可能性が高いのです(酸素は減少するけど)。炭素低減目的で、水素を使うなら「水素100%を使うという覚悟」が必要でしょう。また、最近のMIM Like AM(BJT、MEX)の焼結炉では非可燃性水素混合ガスが使われていますが、過信しない方がよいかもしれません。

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2022年5月11日水曜日

MIMの品質は成形工程で80%決まる

 80%とは20年間のMIM製造から体得した肌感覚の数字なので数理統計学的根拠はない。ただ、『MIMの品質は成形工程でほとんど決まる』ことは事実である。寸法は成形密度に依存することは当然であるが、一番厄介なのは「内部不良による市場での破損」である。過去に、工具部品で全数X線検査を行い数十%の出荷検査不良を出し続けたことがある。応急対策として成形体に全数温間CIP処理*1を行なった。CIP成形体の全数X線検査および焼結体の全数X線検査の検証の結果、温間CIPの不良改善効果は絶大であったが、しばらくして温間CIP処理はやめた。やめた理由は、成形条件を改善したからである。それは成形条件を温間CIP風にしたのである。

【珈琲ブレイ句】こんな経験をしてから、現場に深く入り込み、射出成形技術を勉強しなおしました。そして、成形作業者のキーマンと仲良くなり次のような現場判断をやらないように説明し、守れる管理標準・帳票も作りました。困った現場判断作業とは『寸法を小さくするために成形重量を小さめにする。スプールが抜けないので成形を軽く打つ。バリが発生するので射出重量(PV切替点)を小さくする。生産数を上げるために成形サイクル時間を短くする』など。優秀な作業者であればあるほど小さな改善(改悪?)を行います。そのときの説得コピーが表題の「MIMの品質は成形工程で80%決まるんだから、勝手に条件(標準条件)を変えないでね」だったのです。初期流動期間が終わり、安定した量産条件を変更(改善)するときは、安定品質が確認できるまで全数X線検査(検証)を行う覚悟が必要なのです。

蛇足:寸法が大きいのは金型寸法やフィードストックの問題? スプールが抜けないのはブッシュの表面粗さが悪い? バリが出るのは金型の摩耗? 金型管理が重要ですね。

*1 関連ブログ 温間CIP

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2022年5月9日月曜日

【お知らせ】ぷらすとす5月号の「抜き刷り」プレゼント

在庫が無くなり終了しました。

解説「Metal AMとMIMの共存共栄の時代」5頁

日本塑性加工学会誌「ぷらすとす」2020年5月号

私が担当した解説の抜き刷りを希望者に無料で郵送しています。弊所HPのアドレスへ「抜き刷り希望」と申し込んでください。

2022年5月4日水曜日

2C-MIMの課題をまとめる

 2C-MIM(Two-Component MIM 二成分粉末射出成形)の課題をここにまとめておく。

《バインダーシステム》2成分のバインダーシステムは同じであること。理由:バインダーシステムが異なると熱膨張または熱分解挙動が異なり、金型内の成形冷却段階中や脱バインダー中に部品の欠損が発生するため。

《マテリアルロック》外コアと内コアのCoinjection構造の場合、外側が内側より若干大きな収縮率を与えることで、材料界面に圧縮強度を付加できる。しかし、その差が多きすぎると亀裂が発生する。

《2種材料の組合せ2つの課題》①材料の熱膨張係数の最適な選択が必要であり、焼結後の冷却中に材料界面に応力が発生し界面亀裂が発生する可能性がある。②焼結中の2成分界面の合金元素拡散が起こるため材料特性を劣化させる可能性がある。固相焼結、液相焼結、科学的に不適合であるか等事前に検討する必要がある。

関連BLOG

【珈琲ブレイ句】この2C-MIM技術は、かなりニッチな世界ですね。2部品を接合するなら、溶接、圧接、拡散接合、ロウ接、焼嵌め、鋳込み等が技術的に確立しています。したがって2C-MIMが差別化技術として活躍できる世界は、これら従来技術が使えない、寸法的に小さい部品、局所的に異材にしたい、3D的に複雑な形状などでしょうか。部品としての活用分野は、関連BLOGにある通りですが、付け加えると「高熱伝導率を局所的に向上させる」ものも考えられます。ケーススタディ:SUS316L+17-4PH(非磁性/磁性)、SUS316Lマスターアロイwith Fe+Fe(非磁性/磁性)、SUS316L+ステライト(タフ/ハード)、ポーラスMIM+通常MIM

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