2022年5月11日水曜日

MIMの品質は成形工程で80%決まる

 80%とは20年間のMIM製造から体得した肌感覚の数字なので数理統計学的根拠はない。ただ、『MIMの品質は成形工程でほとんど決まる』ことは事実である。寸法は成形密度に依存することは当然であるが、一番厄介なのは「内部不良による市場での破損」である。過去に、工具部品で全数X線検査を行い数十%の出荷検査不良を出し続けたことがある。応急対策として成形体に全数温間CIP処理*1を行なった。CIP成形体の全数X線検査および焼結体の全数X線検査の検証の結果、温間CIPの不良改善効果は絶大であったが、しばらくして温間CIP処理はやめた。やめた理由は、成形条件を改善したからである。それは成形条件を温間CIP風にしたのである。

【珈琲ブレイ句】こんな経験をしてから、現場に深く入り込み、射出成形技術を勉強しなおしました。そして、成形作業者のキーマンと仲良くなり次のような現場判断をやらないように説明し、守れる管理標準・帳票も作りました。困った現場判断作業とは『寸法を小さくするために成形重量を小さめにする。スプールが抜けないので成形を軽く打つ。バリが発生するので射出重量(PV切替点)を小さくする。生産数を上げるために成形サイクル時間を短くする』など。優秀な作業者であればあるほど小さな改善(改悪?)を行います。そのときの説得コピーが表題の「MIMの品質は成形工程で80%決まるんだから、勝手に条件(標準条件)を変えないでね」だったのです。初期流動期間が終わり、安定した量産条件を変更(改善)するときは、安定品質が確認できるまで全数X線検査(検証)を行う覚悟が必要なのです。

蛇足:寸法が大きいのは金型寸法やフィードストックの問題? スプールが抜けないのはブッシュの表面粗さが悪い? バリが出るのは金型の摩耗? 金型管理が重要ですね。

*1 関連ブログ 温間CIP

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