2022年3月26日土曜日

日本製水アトマイズ粉末の進化について

 MIM創世期には、10μm以下の微細な球状粉末は2種の製法しかなかった。それは、カルボニル法とガスアトマイズ法である。残念ながら当時は、水アトマイズ法の粉末は、不定形状で比表面積も大きく、結果としてタップ密度が低かった。そのため、バインダーを多量に添加する必要があり、結果、収縮率が大きくなり寸法精度が低く、焼結密度も低いため強度も低かった。しかし、2000年代から水アトマイズ粉末の技術開発が進み、品質が向上する。そして、現在、とくに国内2社の製品がすばらしいので注目している。その2社とは、先陣を切っていた青森県のE社と、追いつきトップを競う福島県のM社である。

【珈琲ブレイ句】国内製水アトマイズ粉末の優れているところは、完全球状、サテライト無し、高タップ密度、微細粉末化、高収率・低コスト化です。改善・開発されたところは次の技術だと推察しています。①溶湯温度の最適化(低温化) ②タンデッシュからの溶湯の流れ形状の最適化制御 ③超高圧水ジェット利用(スギノマシン?)  これらにより、後加工で機械的に球状化させる必要がなくなったのです。コツコツと技術開発を継続する力、東北魂がすばらしく凄いのです。

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2022年3月18日金曜日

第4回次世代3Dプリンタ展を見学2021/03/16

 ◆Slab 国内MEXチーム、近畿大学と3社連携で造ったお魚とプレートの展示。もっと派手に展示してほしかった。積層装置は200クラスの小さい装置だった。

◆日本電子 得意の電子ビームを使った3D積層装置。A社と比較して売りは何ですか? 答え:カソードの寿命が1500Hで約5倍も長いところ。確かにカソードの交換は大工事なので現場は助かる。値段は破格?の約2億円。

◆エプソンテックフォルム (前)新興セルビック発明の超小型成形機がお洒落に着飾って展示されていた。発明者の竹内社長は勇退されているそうだ。

◆テックブラスト(不二製作所) gemini処理。粉体が流動する面に使えそう。梨地ブラスト面なのに微細粉末が付着しない不思議。

◆Markforged MetalXが展示(脱脂と焼結炉の展示なし)されていた。あまり目立たない。今回は別のカーボンファイバー積層を中心にプレゼンしていた。アルミの代替化はこのカーボンファイバー積層になる予感。 BASFの金属フィラメントも販売している。工具鋼や超合金はMetalXで、SUS系はBASFの役割分担なのかな?

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2022年3月15日火曜日

金型業界のエジソンが国内MEX機を支える

 金型業界のエジソンと呼ばれる竹内宏さんが発明した小型射出成形機C.MOBILE*1がある。そして、その技術を使ったMEX機(FPF)が国内から発表された。まだ試作機であるが自社内でバグをつぶしてから市販化する計画のようだ。

【珈琲ブレイ句】10数年程前、私が見本市でこの成形機と出会ったとき、個人的に一台購入したいと思うほど、可愛くて魅力的な作品でした。ユニークなところを3つ挙げると、可塑化らせん円板(フラットスクリュー)、ホットランナー標準装備、マイクロプローブです。また、「AM付加製造」という言葉が無い時代から、小型射出成形機をマシニングセンターに取り付けて、3D樹脂造形した後に機械加工を行う「RP:Rapid Prototyping」の提案「P-Process」も当時からされていました。竹内さんは新興セルビック(現在:エプソンテックフオルム)の社長をされていた方で、その間100件の特許出願をしています。そして、いまMetal AMのMEXでまた脚光を浴びることになりました。お洒落な発明品はやっぱり優れているのです。

*1 最新機2024:「横型射出成形機AE-M3/M10」byエプソンテックフオルム

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2022年3月13日日曜日

MIM技術者の座右の書

 MIM(CIM)に関係するすべての技術者の座右の書は、間違いなくジャーマン先生の本である。

『Injection Molding of Metals and Ceramics』by Randall M.Geramn & Animesh Bose

AMAZONから購入できる

【珈琲ブレイ句】この本は、1997年に出版されたものですが、全く内容は古くありません(注:水アトマイズ粉末の記述を除く)。むしろ読み返すと新たな気づきを発見することができます。また、金属3DプリンターであるBJTやMEXは、MIM技術を利用して脱脂焼結するので、この分野の方の必読書でもあります。注:現在、国内の水アトマイズ粉末は技術開発により高品質になっています。完全球状、サテライト無し、高タップ密度、微細粉末化、低コスト化

この本は和訳(意訳含む)していますので、本(図・表・写真)と下記Blogを観ながら学習することができます。よかったらどうぞ。

2022年3月9日水曜日

頑張れ!DesktopMetal社の大量生産機の実力を考える

DesktopMetal社のP-50について、その凄さを分析してみた(推定・推測を多く含むので実際と乖離している可能性があることを理解される方のみ読み進んでいただきたい)。

《カタログ情報》BJTバインダージェット。SPJ(Single Pass Jetting:往復で積層できる独自技術)。ビルトボックス体積=490*380*260mm。レイヤー厚:30~200μm。最大積層速度:12000cc/h。積層体の公差巾:0.2mmあるいは±1%。

《YouTubeで公開されている情報》部品:ステアリングジョイント(推定30g)。単価:$2.69。1チャージ造形個数:2600個(130か所×表裏重ね×10段)。1チャージの推定造形時間:レイヤー30μmのとき20~25H

【珈琲ブレイ句】私は、DesktopMetal社のミニ株主のひとりなので、厳しい視点で応援しています。CEOのリック・フロップは、SPJは大量生産できるBJTなんだと言い切っていました。確かに、こうやってざっくり計算してみると、1日で2600個のグリーン体を造るのですから、確かに凄い生産能力です。コストも$2.69という事なのでMIMに勝てる可能性があります。ただし、速すぎる感じもします。この機械はSinterBasedAMなので、後工程で脱脂焼結を行う必要があります。この生産数でフル稼働すると、後工程は2~3セットの脱脂装置と真空脱脂焼結炉が必要になるでしょう。生産能力のネックは真空脱脂焼結炉の能力に支配されるので、この半分以下の生産量で良いと思うのです(SPJが安価で稼働率を考慮しなくて良いのであれば問題ありませんが)・・。Cコスト VS Q品質 のバランスが重要です。BJTで大量生産の戦略は正しいのか、精度も表面粗さもMIMに劣るのに。最大の売りである初期費用ゼロがメリットになりません。生産量が多いということは、D納期は長期戦問題(金型償却期間が長くなる)になります。つまり、MIM金型を高めに200万円として厳しく1年償却で計算すると、金型初期投資は200万円÷200日/年÷2600個/日=3.8円/個なんですけど・・だいじょうぶでしょうか? BJT大量生産戦略は正しいのか? それより「超多種生産」のキャッチコピーの方がよいかもしれません。がんばれリック様!ただただ暖かく見守るだけです。

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2022年3月7日月曜日

MIM用脱脂焼結炉の概念図 改訂

 【MIM指南書(増補・セルフ)】

島津産機システムズより指摘があったので改訂します。

P128 下から1行 「真空排気をすべて経路①に」→改訂「真空排気をすべて経路③に」 経路①を③に修正願います。

P129 図4.23 を下図に差し替えてください。(画像をエクセルにコピペして45%で印刷して図を切り出し糊付けしてください)

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2022年3月6日日曜日

MEXシステムに新顔登場

ついにMEXシステムに、触媒脱脂タイプが登場した。《MEXシステムの例:国内上陸順》Metal X(溶媒脱脂)、DeskTopMetal(溶媒脱脂、3STD)そして、Raise 3D(触媒脱脂) 

MEXシステム:MEX積層装置、脱脂装置、焼結装置の3セットで造形から焼結まで完結できるシステム+スライスソフト

【珈琲ブレイ句】「だれでもMEX」の火付け役、BASFからMEXフィラメントUltlafuse316Lが登場しました。この市販品で自前の3Dプリンターでだれでも積層できるようになりました。しかし残念なところがあります。それは、自分で積層したグリーン体の脱脂焼結をeコマース等で外注する必要があるのです。外注は海外になり数週間かかります。それから、社外秘の部品は外注に依頼するのがかなり困難です。それを解消してくれるのがMEXシステムです。そして、新たに登場したのがRaise3Dシステムです。他社と違う重要なポイントは、フィラメントに市販品のUltlafuse316Lを採用していることです。後発だからこそできる秀逸な戦略です。 Metal AM多様性の時代、選択肢が増えました。どこでも・だれでも開発の初期段階から、自社内で秘密裏に短納期で、金属積層部品を試作することができるようになりました。うまくできたら量産試作からはMIMへシフト!

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2022年3月4日金曜日

RYERのロングテール戦略の脅威と小さな隙間

 米国にある世界最大のPIM(MIM、CIM)フィードストックメーカーRYER社を観て感じたこと。

RYERのロングテール戦略について過去BLOG

世の中に存在するPIM用フィードストックのすべてを揃えているRYERの徹底的なロングテール戦略には、付録までついている。それは、「custom scale-up factors available service」お客様の好みで作り替えますよ!というサービスである。現在カタログにあるMIMフィードストイックは752種存在するが、それ以外にもカスタムオーダーを受け付けている戦略には、ただただその「徹底ぶり」に感服するのである。

【珈琲ブレイ句】ただパクるだけでなく改良改善をしているのが凄いところです。例えば、触媒脱脂だと金型温度65℃(オリジナルは90℃)で成形できるものを揃えています。一方、国内フィードストックメーカーはどうでしょうか? 老舗の優良専門店なので安心なのですが、大型スーパーマーケットが隣接したら、お客様を取られ、すぐに斜陽化することでしょう。日本のおもてなしはcustom scale-up factors available serviceそのものだと思うのですが、けっこうのんびりやさんが多いのです。

 タイトルに記したRYERの隙間とは、確証はありませんが、日本発祥の3STD法(POM系、PMMA系、シングル系)フィードストックは取り扱っていない可能性があることです。国内MIMを3STD法で固めちゃえば、黒船は上陸できないというわけです。

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2022年3月2日水曜日

Metal AMの多様性と付き合っていくこと

 Directの3D積層装置であるPBFやDEDは素晴らしく、特に電子ビームによるスーパーアロイの積層体の機械的特性が、真空鋳造品より平均値で優っていた。また、自由形状の3D造形物や複雑なトンネルを張り巡らせることをやらせたら鬼に金棒である。さらに、傾斜材も自由に創造できるので完璧である。しかし少し欠点もある。それは、工具鋼の積層は苦手だ。俗にいう「溶接割れ」が発生しやすいからである。

一方、Indirectの「Sinter based MetalAM、MIM-Like AM」であれば、積層造形中に割れることはない。後は、成熟したMIM技術でgreen積層体を脱脂焼結すれば工具鋼でも実現できる。

【珈琲ブレイ句】Metal AMの仲間は、30種以上も存在します。どの技術が生き残っていくのか、あるいは淘汰されいくのか考えたくなります。しかし、テレビジョンが登場してもラジオは残っているし、電子図書が流行っても、紙の本は残っているのです。多少の凸凹はあっても、このようにMetal AMも「多様化しただけ」なのです。後は、どこに何をチョイスするのか、選択の課題が残るだけです。私のチョイスは、MEXとMIMのセットで、いかにコーディネートするかです。

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