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バインダーの役割
バインダーは、粉末を金型に射出成形し、焼結の開始まで粒子をその形状に保持するための一時的な媒体である。バインダーは成形材料の最終組成を決定するものではないが、成功に大きな影響を及ぼす。 PIM処理 バインダー組成および脱脂技術は、さまざまなPIM工法の違いを生んでいる。
それはPIMプロセスに関する多くの特許の請求項の違いである。最初のものは1932年にさかのぼる。このような発明の明細について読者が学べるように、バインダー組成に焦点を当てた特許のリストを第12章に記載する。
バインダーを粉末と混合して成形用のフィードストックは造られる。 それはPIMのあらゆる面に影響を与える。 残念ながら、完璧なバインダーは存在しないため、適切なバインダーの選択は状況によって異なる。ほとんどのバインダーは主成分を含む多成分系である。それは特定のアプリケーションに合う様に数種類の樹脂を添加して仕様が決定される。その重要な役割は、ターゲット形状を成形するのに必要な流れを提供することである。
成形後、粒子が初期焼結温度に加熱されている間、バインダーは粒子を所定の位置に保持する。最後に、残留物を残すことなくバインダーを除去する。これは熱可塑性バインダーに基づく古典的な方法を記載しているが、同様の方法が熱硬化性樹脂、重合モノマー、ゲル化システム、凍結法、その他のバインダーでも同じ概念である。
バインダーの具備すべき属性
表4.1に、理想的なバインダーの属性を示す。
これらの属性は、流動特性、粉体との相互作用、脱脂特性、および製造属性に基づいてカテゴリで分類されている。 バインダーの主な要件は、粒子が金型キャビティ内に流れ込むことが可能であること。
混合および成形を助けるために、バインダーが粉末表面を濡らすことが必須であるため、濡れ挙動を変える様々な化学物質が広く用いられている。 界面活性剤はこの役割において有効であることが証明されている。
これらはチタネート、シラン、ホスフェート、およびステアレートを含む。 最も効果的な界面活性剤は、粉末とバインダーとの間に界面架橋を形成することによって混合物の粘度を低下させて混合物の粉末量を増加させる。
バインダー - 粉末混合物が、欠陥なしに混合および成形を可能にする様々な流動学的基準を満たすことが重要である。
混錬粘度のノミナル値が、20から200Pa・sの範囲内であることが射出成形できる条件である。
低粘度の粉末 - バインダー混合物は、低粘度のバインダーを必要とする。言い換えると、これは、典型的なワックスをベースとした低分子量バインダーのことである。表4.2に、いくつかの一般的なバインダー成分の粘度特性をまとめる。 任意の所望温度で粘度を計算するために必要なパラメータと共に粘度方程式が与えられる。
高い粉末量で低い粘度を与えることに加えて、バインダーは粉末の分離または凝集も抑制しなければならない。
一般に、純粋なワックスはこの点に関して不適切であることが証明されており、そしてポリマー成分を含めることによって改質されている。 従って、大部分の系は異なる化学構造を有する少なくとも2つの成分を含有する。
流動特性に関しては、部品の形状を保持するために冷却時に粘度の大幅な増加が必要とされる。 それにもかかわらず、成形温度では、温度による粘度の大きな変化はプロセス制御にとって有害であり、欠陥の原因となる可能性がある。
粘度が低すぎると、成形時に剪断力が大きくなるため、バインダーと粉末は別々になる。 より短い分子鎖長の熱可塑性ポリマー(オリゴマーoligomers)は一般に良好な成形性を示す。 これらの分子は成形品の鎖配向を減少させるので、等方性に重要である。
バインダーおよび脱脂工程は、欠陥を減らしそして迅速なバインダー除去を可能にするように選択される。脱脂の第一段階で、ひとつバインダー成分が優先的に除去されて気孔が造られる。脱脂のこの第一段階は、溶媒抽出、ウイッキング、蒸発、昇華、触媒反応、または熱分解によって達成することができる。残りのバインダーは、粉末粒子を所定の位置に保持し、この脱脂段階の間に部品形状を保持する。続いて、第二段階の加熱中に、バインダーの残りの成分が、開いた気孔を通して気化する。ここで、焼結割れの原因である内部蒸気圧の発生をさせないことに注意が必要である。この二段階のステップは直接加熱よりも遅いが、自立型部品を可能にし、単一成分バインダーで必要とされる取扱いを減らす。
バインダーの最終生成物は予備焼結サイクルの一部として生じるので、バインダー分解の生成物が焼結炉を汚染しないものでなければならない。
明らかな理由から、無毒の分解生成物が必要である。 残念なことに、加熱が速すぎると、分解中に成分がバインダーによって汚染される可能性がある。 最後に、バインダー分解温度は成形温度および混錬温度より高い必要がある。なぜなら成形中に発生する蒸気によって欠陥を発生させないためである。
バインダーに望まれる製造上の属性には、低コスト、高入手性、低変動性、および高貯蔵寿命が含まれる。経時的な特性変化を防ぐために、バインダーは周囲環境との反応を避けるように管理し、水分吸収や揮発性成分の吸収を防止させる。また、バインダーが光、熱、酸素、窒素、湿気、またはバクテリアによって分解されるならば、経時的な特性変化から保護するために添加剤が必要である。さらに、水バインダー系であれば、水分蒸発も問題である。 PIM製造コストの好ましい側面は、ゲート、ランナー、およびスプルーの再利用が関係する。従って、バインダーは周期的加熱に対して比較的不活性であるべきである。経験上、多くのシステムで、測定可能な原料の劣化なしに、最大3回のリサイクル使用が可能であることがわかっている。ほとんどのバインダーは界面活性剤またはステアリン酸のような潤滑剤のいずれかを含み、金型の摩耗を減らし成形体の突き出しを助ける。望ましい特性は、バインダーが普通の溶媒に可溶であることである。大きな部品の成形には、熱を分散させるために高い熱伝導率が必要である。これは熱応力から生じる欠陥を回避するためである。 また、低い熱膨張係数は冷却中の欠陥を減らす効果がある。しかし、バインダーの狭い融点温度幅は、特に脱脂中に、プロセス制御においてかなりの困難さをもたらす。溶融挙動を変えるために様々な溶媒および可塑剤が利用可能である。実際、一部のバインダーシステムにはオイルが含まれている。オイルは冷却中に固まることがないので成形応力に対応できる。
バインダーに対する要求に基づいて、簡単なバインダー設計哲学が浮かび上がる。 バインダーは通常3つの成分
①強度を与える主鎖ポリマー ②脱結合の第一段階で容易に抽出される充填剤相 ③バインダーと粉末の間を架橋する界面活性剤 を有する。 界面活性剤は成形体突き出しを助ける潤滑剤の役割が多い。 いくつかの特徴をもつバインダーは、これらの原則に基づいて設計されており、その中には食品グレードのポリマーと水を組み合わせたものもある。
これらのバインダーはとても安全で、有害な生物学的反応なしに摂取することができ、これらのいくつかは、キャンディー、スナック、ファーストフードに使用されている。
工業用PIMには多種のバインダーシステムが使用されている。 この差は、粉体特性と脱脂技術の微妙な違いによる。一般分類では、PIMで使用される少なくとも5種類のバインダーが示されているが、そのほとんどはポリマーである。
これらは以下のように分類される。
1)熱可塑性コンパウンド
2)熱硬化性コンパウンド
3)水系システム
4)ゲル化システム
5)無機物
多くのゲル化システムは水を含んでいるので、カテゴリ3と4のさまざまな組み合わせが可能である。 ポリマーには、一般的な熱可塑性および熱硬化性化合物、そして最近安全で無毒であることが証明されているいくつかの食品ポリマーが含まれている。
無機物系コンパウンドは、結晶化塩(NaClから硝酸鉄までの範囲のイオン性金属化合物)などのいくつかの系で、そしてケイ酸ナトリウム反応で使用される。 水は、粉末と水のスラリーが金型内で凍結される凍結焼成サイクルで使用される。
これらのバインダーは少量の湿潤剤も含有する。 単純凍結バインダーは、石鹸と水、またはデンプンと水で構成されている。 水を蒸発させた後、残りの石鹸またはデンプンが粉末粒子を固定し形状を保持する。
ポリマーは、炭素を主鎖とし、共有結合する様々な側基を有する長鎖分子である。 ポリマーの繰り返し単位は、アルキル(CH3,C2H5,C3H7あるいはCNH2N+1)、アリール(COOH),エステル(COOR)アミン(NH2)、などの様々な側基および官能基を含んでもよい。 PIMでは、ポリマーの大部分は炭化水素系である。図4.1に示すように、構造はさまざまな側基を持つ単純な炭素鎖で構成されている。
熱可塑性および熱硬化性化合物(コンパウンド)は、PIMで最も一般的に使用されているポリマーである。 熱硬化性ポリマーは加熱すると架橋を形成し永久的に硬くなる。 それらは再加熱で軟化しないが高温で分解する。
それらは最初の加熱で柔らかくなり変形可能である。 一旦加熱されると(「サーモ」)、それらは硬くなる(「硬化」)。 フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂は一般的な熱硬化性化合物(コンパウンド)である。
一方、熱可塑性樹脂は本質的に熱可逆性である。 それらは、サイクル数に関係なく、加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まる。 例えば、ろうそくのワックスは熱可塑性である。
多くのバインダーが可能ではあるが、生産ベースでは, 熱可塑性樹脂が最も広く使用されている。 これらは、一般的な市販のポリマー - ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびワックスなど多岐にわたる。
図4.1にPIMで使われている一般的なポリマーの構造を示す。ポイントは、
主要な熱可塑性成分に加えて、バインダーには、潤滑剤、粘度調整剤、濡れ剤、および脱脂用の添加剤を含有してもよい。 これらは表4.1に示した要件を満たすために必要である。
ワックスは、他のどの成分よりも多く、PIMバインダーに日常的に使用されている。
ワックスとしては、パラフィン、ミツロウ、およびカルナバワックス、ならびにいくつかのワックスに近い低分子のオリゴマーまたはポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリマーが挙げられる。
それらは、低融点、良好な湿潤性、短い分子鎖長、低粘度を有し、そして他のポリマーよりも小さい体積変化で分解する。 低分子量のワックスは、揮発性が高く、脱脂に有利に働く。
しかしワックス単体では脱脂は非常に困難である。脱脂、ウイッキング、または時間を掛けた昇温加熱が必要である、これは溶融温度範囲が狭いためで、一般的に、ワックスは他のポリマーと混合し多成分バインダー構造の滑剤として使われる。
PIMバインダーの配合性成分の種類は多い。 成分は一般的な食用油から水までの範囲にわたり、樟脳、ナフタリン、食器用石鹸、そして魚油さえ含む。
すべての成分をリスト化しても意味がないが、バインダーの配合には固有のパターンがある。 典型的には、それらは少なくとも2つの主成分:異なる分子量、化学構造、または融解温度のために互いに部分的にしか混ざらないポリマーまたはワックスで構成され、その結果1つの成分は脱脂中に選択的に脱脂できる。
第二成分は、その後、予備焼結温度に加熱する間の熱分解によって脱脂(脱脂)される。
バインダー中の2つの成分が、ほぼ等しい割合で存在するものが多い。 これにより、各々が粒子間の細孔構造全体にわたって相互連結が可能になる。
バインダーの相互連結性は、わずか20〜30体積%のいずれかの成分で維持することができる。 したがって、成功したバインダー配合物は80〜20体積%の主成分を含有する。
この混合物に他の成分を添加して、粉末の濡れ、金型の潤滑性、混合物の粘度、残留応力、または脱脂の挙動を調整する。 粉末の濡れを改善する界面活性剤は非常に有効である。
低分子量溶媒を添加して粘度を下げることができる。 多くの場合、添加剤は粉末を被覆するために優先的に使用され、それによって粉末と主要バインダー成分との間に化学的架橋を形成させる。
これは粘性を低下させるか、またはバインダー中の粉末量を増加させる効果がある。 図4.2は、カルボニル鉄粉にステアリン酸を添加した粘度変化を示す。
ステアリン酸は、粉末加工で広く使用されている低コストの極性分子添加剤である。 ステアリン酸は、分子構造CH3(CH2)16COOH、密度0.85g / cm3、および、純度に応じて、溶融温度65から75℃(149から167°F)である。
それはバインダーと粉末界面との表面エネルギーを低下させ接触角を減少させることができる。 従って、粒子の表面積が増加するにつれてその有用性は向上する。
表4.3にPIM用に開発されたバインダーの例を示す。これらの多様な成分は同様に多様な脱脂法を生み出している。脱脂は通常、加熱脱脂(バインダー9、14、および24に用いる)または溶媒抽出(バインダー5、7、および8に用いる)のいずれかである。これに対して、バインダー1は溶剤とワックスの混合物であり、バインダー6は熱硬化性成分を含んでいる。バインダー11は凍結するように設計されており、一方バインダー7はバインダーが冷えるときの収縮を減らすために大量の落花生油(peanut oil)を含んでいる。バインダー12はセルロースゲルをベースとしている。バインダー13はプラスチックの混合物である。いくつかのバインダーは、ゲル反応を開始させるために金型内で冷間成形および加熱される。バインダー14は逆の挙動を示すゲル系であり、その粘度は冷却と共に増加する。射出成形、高性能セラミックには多くの関心がある。そのため、窒化ケイ素や他の新しいセラミック用に多くの新しいバインダーが特に配合されている。バインダー15、16、および23は、この用途のための低分子量水溶性ポリエチレングリコールを含有する熱可塑性バインダーの例である。あるいは、バインダー17、18、および19は同じ目的を果たすが熱脱脂に基づくものである。バインダー20は触媒脱脂に基づいており、一方バインダー21は成形後にシリケートゲルを形成する。最後に、バインダー22および23は水除去用に設計されている。これらのバインダーにはステアリン酸が多用されていることが分かる。
分子量は、基本的なポリマー化学の重要な属性である。これは、同じ化学物質であっても分子量の差は、バインダー配合にかなりの許容範囲があることを意味する。
特に望ましい場合を除き、実際には、成形時の残留応力を低減し、等方性の粉末充填および収縮を確実にするために、より短い分子(より低い分子量)が要求される。
図4.3に示すように、ポリマーの融解温度は分子量によって異なる。
鎖の絡み合いは分子量および鎖の分岐によって変化するため、引張強度も変化する。 そのため、鎖の長さ、鎖の絡み合い、鎖上の側鎖など、いくつかの要因によってポリマーの特性が決まる。
同じ化学的性質でも、熱可塑性樹脂の特性は非常に変わる。
ポリマーの機械的性質は試験条件に依存する。 低温ではポリマーは脆い。 高温では柔軟である。
表4.4に、一般的なバインダー成分の室温特性をまとめる。 例えば、ポリエチレンの密度は、結晶化度に応じて、0.90〜0.96g
/ cm 1の間で変動し得る。 同様に、軟化温度は85〜120℃(185〜248°F)の間の変動を示し、引張強度は鎖長の変化と共に3倍変動する。 表4.4に、一般的なポリマー間の基本特性に存在する違いを示す。
短鎖分子がPIMに最も望ましい。 ワックスおよびステアリン酸は、それらの小さい分子サイズ、熱可塑性、および低い融解温度のために理想的であることが証明されている。
例えば、ミツロウは、45〜60個の炭素原子範囲の分子を有するいくつかの化合物の混合物であり、60〜80℃(140〜176 * F)の融解温度を有する。 石油から精製されたパラフィンワックスは、分子サイズが広く、一般的には18〜32個の炭素原子を有する。 マイクロクリスタリンワックスは溶剤によって原油から精製される。
それらは他のワックスより結晶性が低いが、より強い構造を有する。 その硬度のために、カルナウバワックス(ブラジルのヤシの葉に形成された天然ワックス)は、PIMバインダーのもう一つの一般的な成分である。 カルナウバワックスの融解温度は、80〜87°Cまたは176〜188°Fである。
熱硬化反応は通常、高温でのポリマー架橋とほぼ関連している。架橋後、ポリマーは付加または縮合反応のいずれかによって三次元ネットワークになるので、ポリマーは硬いままである。 PIMの場合、通常は付加反応のみが重要である。 1つの新しい方法は、重合中にダイキャビティ内で縮合反応を用いてアルコールから水を形成し、副生成物として容易に抽出される水との熱硬化性結合を生成する。重合反応架橋度によって測定されるように、反応が高レベルの変換率まで行われるにつれてゲルが形成される。ゲル化点は、ゲル化の開始時に急激な粘度増加の点に対応する。熱硬化反応は一般に遅いので、形状を形成するのに必要な時間は熱可塑性樹脂のそれと比較して長い。さらに、硬化反応を誘発するのに必要とされる液体触媒は混合問題を引き起こす。熱硬化性構造体の利点は架橋によるより高い強度である。 1つの妥協点は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を1つのバインダーに組み合わせることである。熱可塑性樹脂は初期の成分強度を与え、それに続く加熱は熱硬化性樹脂を反応させる。これは、脱バインダー中に形状を維持するのに役立つ。しかしながら、熱硬化性化合物を用いた全体的な脱バインダー時間は熱可塑性樹脂を用いた場合より相当長いので、このアプローチは現実的ではない。さらに、原料の再利用の麺から熱硬化性バインダーでは推奨できない。熱硬化性化合物が焼結に必要なグラファイト(炭化ケイ素など)を提供する場合を除き、熱硬化性バインダーの使用は成功していない。
ゲルの他の形態、すなわちヒドロゲルはバインダーに利用できる。特定の多糖、ポリアミノ酸、および合成ポリマーは、水素結合またはコロンビン相互作用を介して水分子と相互作用してゲルを形成する。ゲル化は、試料全体に広がる単一の大きな分子の形成を伴う。この巨大な三次元網目構造は、デザートゼラチンのように、流れに抵抗するのに十分な粘度を示す。水は大きな網目分子内に閉じ込められることがあるので、ゲルはバインダーのごく一部しか含まないことがある。 PIMの一形態では。ヒドロゲル化は、可塑剤としての水またはグリセリンとのセルロース型バインダーに基づく。図4.4は、単純なセルロース構造図で、ユニットが酸素結合によってどのように結合されているかを示している。加熱するとセルロースから水が回収され、ゲルネットワークが形成されるにつれて粘度が増加する。他のゲルは、果物、豆、種子、および海藻から形成された水和多糖類のガムに基づいている。これらのうちのいくつかは、消化可能な食品用ポリマーとして入手可能であり、それらは水溶性であり、水中に溶解することによって抽出することができる。
脱バインダー中に、熱可塑性バインダーは軟化し、それによって脱脂体に歪みおよびバインダーの移動が生じる可能性がある。対照的に、いくつかのゲル化反応は、ゲルが分解する温度に加熱されたときに硬化を増大させる。他の系は熱可塑性樹脂と同様の挙動を示す。高温では低粘度であり、冷却時には高粘度である。水やアルコールのような低融点の液体はゲル内に閉じ込められる。これらは低温で乾燥することによって除去することができ、続いて分解するゲルを蒸発させるために開いた孔を残す。水中の低濃度の寒天はこの形の相互作用を示し、耐水性の射出成形材料(さびにくい材料)に使用される。水をベースとするバインダーは凍結過程で使用される。バインダーは、脱バインダー温度の範囲を広げるためにワックスまたはプラスチックを含有してもよい。これらのバインダーは、歪みを避けるために凍結乾燥(昇華)によって最もよく抽出される。
1つの選択肢は、溶液中に高濃度のケイ酸ナトリウムまたはケイ酸エチルを含めることである。これらの無機ケイ酸塩ガラスゲルは、溶液を凍結温度、二酸化炭素、または有機エステル(グリセロールジアセテート)にさらすことによって開始する。これらの強いガラス構造は、構成要素に優れた取扱い特性を与え、急速乾燥にかけることができる。残念なことに、シリカ(SiO
2)が部品内に残ることを留意する必要がある。
全てのバインダーは成形温度による粘度変化を起こす。
望ましい粉末量は実質的な粘度増加をもたらすので、バインダーの粘度は低くなければならない。 バインダーの望まれる低粘度を実現するには、低分子の使用が最も一般的である。
時折、これらのバインダーは冷却時に部分的に溶融したままである。 表4.3の仕様のように、全てのバインダーは種々のポリマー、ワックス、および他の粘性材料の混合物である。
熱硬化系を除いて、バインダーは成形温度で粘性流体である。 従って、バインダー粘度に関していくつかの考察が必要である。 一定の温度とせん断速度で化学反応を起こさない系では、純粋な熱可塑性バインダーの粘度は、対数加法則を使って近似できる。
ここで,ηi は成分粘度、Wiは成分の重量分率、nは成分の数である。式4.1は、バインダー混合物の粘度が単に各成分の重量分率と粘度に依存することを示している。明らかに、組成物は混合粘度を決定するのに、特に広範囲に変化する成分粘度を有する系に対しては重要な役割を果たす。バインダー成分の分子量の増加は粘度とガラス転移温度の両方を増加させる。注目すべきは、粘度は分子量のべき乗関数として変化することである。第一の推定として、バインダー混合物は成形温度で約10Pa*s未満の粘度を有するべきである。ニュートン流動または擬塑性流動は純粋なバインダーの流れであるが、粉末を添加すると粘度は、はるかに高くなる。表面活性剤は界面活性剤として知られており、混合物の粘度を下げるのに非常に効果的である。界面活性剤の選択は粉末とバインダーの両方の化学的性質に依存する。表4.5は、より一般的ないくつかの界面活性剤の一覧である。それらの多くは、PIMフィードストックに独自の添加剤として使用されている。
本質的に、粘度は温度とともに変化する。この挙動は、温度が高くなるにつれて粘度が低下する熱的に活性化された事象として最もよく扱われる。ポリマーの体積膨張があるので、低い粘度が生じる。図4.5に示すように、ポリマーの体積変化は溶融時に大きくなる可能性があるため、バインダーの過剰量によって低粘度が保証される。分子流を誘導するためにはエネルギーが必要であり、それは熱または剪断によって提供される。したがって、温度が上昇すると、流動に必要なせん断エネルギーが少なくなるため、高温での粘度は低下する。粒子が剪断に抵抗する凝集塊または部分的に秩序だった領域を形成する場合、供給原料は降伏強度を示す。剪断速度が増大するにつれて、それらが互いを越えて滑るにつれて粒子が膨張し(体積の増大)、それによってエネルギーを消費しそして粘度を増大させる。これは粘度を剪断速度と共に変化させる。
60%を超える固形分では、約10〜100s −1の低い剪断速度でも剪断膨張が起こる。同様に、平均粒径が増大するにつれて、所与の粉末量で粘度が低下する。したがって、バインダー粘度それ自体は低いが、多くの場合、フィードストックとしての粘度予測は難しい。
まとめ
表4.3に引用されているバインダーシステムは、PIM原料中の一事例に過ぎないが必要な成分の概要を示している。複数の成分からなるいくつかの異なる製剤が使用されている。バインダーは粒子を最密充填物にする目的がある。その一時的な役割にもかかわらず、バインダーはPIM処理の最も重要な側面の1つである。
PIM業界で必要とされている要件の1つは、安全で、加工が容易で、成形上の欠陥を回避する、いくつかのバインダーシステムを標準化することである。同様に、寒天ガム - 水、パラフィンワックス - ポリプロピレン、落花生油 - ポリエチレン、ポリエチレングリコール - ポリメチルメタクリレート、およびワックス - ポリエチレングリコールの混合物を含む、いくつかの新しい系がバインダーとして配合されている。既存の定式化を研究することから、いくつかの単純な原則が生まれる。多成分バインダーは、逐次抽出サイクルによる除去を可能にするのに有益である。バインダーは粉末を湿潤させそして高い粉末量で低い粘度を与えなければならない。したがって、低分子量ポリマーまたはワックスは、バインダーの通常のベースである。短鎖長分子は、結合除去において混合および除去がより容易である。バインダーも粉末も他のものと反応しないようにバインダーを選択すべきである。バインダーへの添加剤は、湿潤性および粘度を調整するために主に使用されている。これらの主な関心事を超えて、毒性、貯蔵寿命、強度、潤滑性、生物学的安定性、および劣化することなく数回リサイクルができることなど、バインダーを選択する際にいくつかの二次的な考慮事項がある。これは大規模な研究分野ですが、経験的検証によれば、いくつかの基本原則が多くのバインダーシステムに共通している。出発バインダー配合物を探している人にとって、ワックス - ポリマー混合物(3分の2がワックス)は、金属、セラミック、炭化物、金属間化合物、さらには非晶質材料にも広く適用できる頑健(ロバスト)なシステムである。
- Chapter One Introduction はじめに P11~24
- Chapter Two Feedstock 成形材料・流動学 P25~54
- Chapter Three Powder 粉末 P55~82
- Chapter Four Binder バインダー P83~98
- Chapter Five Tooling 金型 P99~132
- Chapter Six Molding 成形 P133~174
- Chapter Seven Debinding 脱脂 P175~218
- Chapter Eight Sintering 焼結 P219~264
- Chapter Nine Fina
- Chapter Ten Design Guide 設計の心得 P281~303
- l Processing 最終仕上 P265~280