2018年12月28日金曜日

ポリマーアロイ、樹脂の合金?

MIMのバインダーは通常、3種類以上の樹脂やワックスを混ぜて作られている。機能としては「結合材」「潤滑剤」「可塑剤」の3つ。それから、脱脂・焼結割れを防ぐために、熱分解で揮散する温度域、その反応速度を制御するためである。また二次的には成形性や脱脂・焼結変形が少ないこともテーマになる。バインダー設計の腕の見せ所になる。

 私は鋳造も経験していたので、バインダーの混合に対して誤解があった。それは、合金にすれば(混ぜれば)融点も下がるし、新しい性質が生まれると思っていた。しかし、高分子同士混ざらないものが多いらしい。無理やり混ぜるためには「相溶化剤」なる鼻薬を添加する(個別的で万能薬は無い)。さらに、樹脂メーカーが初めから混ぜたものを販売している、それが「ポリマーアロイ」というものらしい。調べたら1950年が第一世代で今は第三世代とのことだ。

結論:樹脂同士は混ざらないが、相溶化剤という仲人を介せば混ざる。ただし、すべての樹脂が混ざる薬はなく個別開発が必要。

 遅ればせながら、これはMIMのバインダーの改良開発に応用すべき技術だと感じる。金属粉末との濡れ性の改善。他のポリマーとの相溶性改善。混錬時間の短縮化。・・・・ POMはとくにポリオレフィンポリマー(PW,PE,PP)との均質性が悪く、成形時に粉末が分離しやすい。

2018年12月22日土曜日

日本が発明したアトマイズ法「CFJA法」はすばらしい

青森県八戸の中小企業「ハード工業(有)」と東北大学、岩手大学が発明した世界初の技術だ。
アトマイズとは溶融金属を粉末化することである。一般的には高圧・高速の水やガスの壁に溶融金属を接触させて分断・粉末化させる。設備が高価であること、接触媒体(水・ガス)が低温であるので、相対的に溶融金属を高温にする必要があった。
この発明CFJA法は「超高速の燃焼炎を使ったアトマイズ」ということである。従来の水やガスの代わりに「マッハを超える超高速の炎(1600℃)」を使っている。さらに冷却がものすごく早くできるので「アモルファス合金」ができるらしい。それも微細で完全球状だ。「THE MADE in JAPAN」 すばらしい。ちなみに燃料は灯油だそうだ。

2018年12月11日火曜日

チタンのMIMを考える

活性金属のチタンをMIM化するための課題は・・
「バインダー完全除去問題」大量のバインダーからの汚染をどうするのか
・「工程中、工程間の空気汚染問題」
・「炉内汚染問題」高真空度10-3Paレベル 酸素、炭素の除去
・「セッターからの汚染問題」

《論文から読み取った方法》
  「粉体および粉末冶金20065310815-820 三浦ら」
黒鉛ヒーター・黒鉛タイトボックス仕様の油拡散ポンプ付焼結炉での事例が
お見事なので紹介します。材質は「αβのTi-6Al-4V」 
 ◆工程の特徴
・粉末混錬:アルゴン置換の容器でミキシングして加圧密閉混錬
・脱脂:溶剤脱脂 乾燥は空気と遮断
・加熱脱脂+焼結 1炉の中で連続して脱脂焼結 
 ◆焼結での工夫、
Mo製箱をタイトボックスの中に置き【浮遊炭素を遮断】、
セッターはジルコニア(要空焼き)あるいはイットリア【セッターとの反応対策】
スポンジチタンを細かくして箱の中に点在させる【酸素のゲッター】
焼結後そのまま炉内冷却 【冷却中の汚染対策】
結果:相対密度98% 引張強度910MPa 伸び14% Ti-6Al-4V                     
(比較:溶製材JIS60 TS=890MPa Elong.10%)
(比較2:JPMA S 01:2014 MIM-Ti-6Al-4V TS=800MPa Elong.5%)
溶製材JIS規格を満足させることができています。すごいです。
特に伸び14%は完璧です!!!

でも量産するのは大変そう!
→完全メタル仕様の焼結炉で真空能力を強化すれば、
二重箱やスポンジチタンは省略できそうですね!


《日曜MIM知るINDEX》
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2018年12月10日月曜日

100年続く老舗は青色

伝統は「同じ品質を継続すること」が重要である。江戸時代から続いていれば、それだけで希少性があり価値が高くなる。しかし、工業の世界ではどうであろうか。「古い豊田織機を使った柔らかい高級タオル」のような高付加価値高級工業製品を除けば、《工業の技術は常に更新していくことが重要》である。

ではMIMの世界ではどうであろうか?
金属粉末は異形粉末から球状微細粉末が安価にできるようになった。
粒径の異なる粉末を混合させる方法論がある。 
・脱脂法に係わるMIM特許はすべてオープンになった。
脱脂と焼結を連続してできる焼結炉が確立された。
超臨界やプラズマを応用する技術が発表された。

 MIM業界は赤色になりつつあるのか、どうやって青色にするのか。高級タオル方式で希少性を前面に出すのか、最新技術で更新していくのか。改めて戦略をたてるときが来ている。

《日曜MIM知るINDEX》

2018年12月8日土曜日

MIM工場で爆発事故は発生するのか考えてみた

「危険予知」の観点から爆発の可能性を考えてみた。
私は今まで見聞したことはないのですべて空想である。
工程順に考えてみる。
【混錬工程】
・金属粉末の粉体発火、粉体爆発 《可能性あり》
 「ステンレス粉体の自然発火」神奈川県産業技術センター研究報告書 No.20/2014
・溶融加熱用の高圧蒸気の圧力による破裂、配管接合部から蒸気が噴射《可能性あり》
【脱脂工程】
・可燃性溶剤を使っていたらその溶剤の発火《大いに可能性あり》
・加圧していたら、その容器の破裂《可能性あり》
【焼結工程】
・水素ガスを使っていたら、空気と混ざったときに爆発《可能性あり》

「転ばぬ先の杖は徹底的に準備することが前提」であることは言うまでもありません。

2018年12月4日火曜日

アルミのMIMは存在しないのか(その2)

オーストリアのウィーン工科大学の研究チームはユニークな方法で「アルミMIM」を造っている。詳細は不明だが、方法の概要はこんな感じである。
①常識の逆で、酸素リッチの雰囲気で加熱。
(普通なら高真空にして還元させるがAl2O3は高温じゃないとダメ
 一方母材のアルミは低融点金属という板挟みということ)
②酸素雰囲気を窒素に置換し、さらに温度を上げる。
③マグネシウムの助けにより酸化アルミニウム層が破壊され還元する。
 (マグネシウムを添加??)
④結果 アルミが液相を生じて焼結が進む。
特許化している。特許化されると敷居が高くなる。

【追加】平均粒径を3μmにすると高密度化できる!
こんな論文を発見した。細かくすれば簡単にできる。 
(粉体および粉末冶金2004-51-7-p492-498 加藤ら)
条件:純アルミニウム、平均粒径3μm
   加熱脱脂(Ar雰囲気)(大気中だと強度・伸び激減)
   焼結温度650℃ 真空度10^-2Pa
結果:相対密度95% 引張強度120MPa 伸び19%

令和のMIM技術伝道士 ◆お問い合わせ◆



2018年12月3日月曜日

アルミのMIMは存在しないのか?

 この質問を受けると、研究レベルではアルミのMIMはありますが、量産はされていない。と答えている。アルミは活性な金属で、粉末にした時の表面酸化物Al2O3が、焼結を妨げるため、相対密度は80%程度が限界である。(粉末の周りがアルマイト処理されたようなものと考えると焼結しづらいことがイメージできる)
 しかし、シリコンSiを1% あるいは銅Cuを4%添加すると焼結密度が96%以上になるらしい。(産業技術総合研究所/加藤ら)理由はこうだ。SiやCuの低融点金属が低温で液相となりAl粉末の酸化被膜を破り焼結を進行させていく。「液相焼結法」と呼んでいた。この実験では純Alの粉末11μmの微細粉末で、溶製材 純度99%「A1100」に匹敵する強度がでる(伸びは若干劣る)。
 ただ、現実的に考えると、アルミなら「金型に直接射出成形できる」アルミダイカスト、金型低圧鋳造など、こちらの方が精度は確実に高いのでメリットが大きいと感じる。

◆こちらに、アルミのMIMに関するBLOGをまとめました◆

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2018年11月26日月曜日

BASFから3D積層用のフィラメント(MIM粉末)が登場

BASFから「Ultrafuse316LX」というフィラメント(巻き線)が販売されました。すごいことです。どのようになるかというと・・・
①安価な3Dプリンター(熱溶解積層法MEX,FFF,FDM)で、積層できる。
②MIMメーカーが積層装置とフィラメントを購入すれば、自社内で脱脂焼結ができる。
③積層モデルで試作を対応し、量産は正式にMIMで受注する。
というビジネスが簡単にできるようになる。

欠点は精度と機械的性質ですが、この試作品で合格になればMIM化への展開は楽勝です(MIMの方が高精度、高強度になるため)
(一方、積層品がNGのときMIMもNGとなる懸念があります。
 熱ものに懲りてなますを吹くになっちゃうネガティブ思考が心配・・)

MIMマガジン2018 Vol.12 No.3 P83  によれば
材質 SUS316L
収縮率 X,Y方向 16.5% Z方向 20.5%
引張強度 XY方向 498MPa Z方向 414MPa
     参考MIM 510MPa
伸び  XY方向 43% Z方向 19%
     参考MIM 50%

なぜ、強度がMIMより劣るのでしょうか
これは組織マクロ写真を観るとわかるのですが、やっぱり密度が低くスカスカ感が否めないのです
なぜそうなるのか(以前にも書きましたが)
3D積層は「グリーン体密度が上がらない」からです。
なぜ上がらないのか・・
それはMIM成形(一般成形も同じですが)での「保圧」を掛けられないためです。
「MIMの品質は保圧で決まる」といっても過言ではありません。

でも「3D積層で成形密度を完璧にする方法」はないのでしょうか。
技術的には存在します。そのアイデアは・・
ラバーでコーティングしてCIPを掛ける方法です。
コストとリードタイムが増えるので高機能部品に限定されるでしょう
航空機の部品とか・・

その他に 焼結体にHIPを掛ける方法もありますね。
こちらの方がお手軽化もしれません。
ただし、焼結密度が低すぎてポーラスが閉じていないと
(空孔が独立していないと)HIPが掛からない、
この時は、密閉容器にセラミック粉末と一緒にいれて
等方圧加圧することになり大変です。
【追加】
・仮加熱脱脂でラバーコーティング+CIPという論文もありました。
・実験でちょっと試したいときは、油圧ポンプの出力に圧力容器をつなぐだけで
 「なんちゃってCIP」ができます。注意:温度はワックス軟化点以上が理想。

◆BASFに行って教えてもらおうと思ったら◆20190817(mimsen83)
このフィラメントの販売は別会社でした。BASF 3D Printing Solutions 株式会社。それぞれ別々に営業をやっており詳細聞けませんでした。「AMからようこそMIMへ」への道は遠いことを痛感した次第です。もう少し営業の守備範囲を広げればいいのに・・・鉄道だって相互乗り入れが当たり前の時代に・・・大変残念でした。

2018年11月25日日曜日

MIM業界の先駆者「Parmatech社」依然として強い

MIMインターナショナル・マガジン 2010年Vol.4No.2
MIMの元祖パーマテック社の記事を読んだ(英文)
「Parmatech:The MIM industry's first commercial producer, and still going strong」

1973年4人の起業家で創業(カルフォルニア州)、(一人は「ウイテック法」のウイッキーさん)。パーマテック法の基本は溶剤(溶媒)脱脂である。特許(米国第4,197,118号)の概要:①溶剤蒸気は未焼結体にゆっくりと入り込み、結合剤の膨張により過度の応力が掛からないように結合剤を溶解する。②溶媒の中に置き溶剤を結合剤の流動点より高い温度に維持して残りのバインダーを抜く。③水素中で約1150℃まで予備焼結した後 ④真空炉を用いて1300℃以上で焼結する。
・気相中で溶剤脱脂
・続けて溶剤中で脱脂
・水素中で予備焼結(還元反応させるため?)
・真空炉で本焼結
徹底的にバインダーを取り除く基本中の基本ですね。
故意にバインダーを残して焼結体の炭素をコントロールする方法がありますが。個人的には、上記のバインダーは完全に除去する方法を支持しています。なぜかというと
量産設備の能力が安定しないため
《環境温度湿度ばらつき、排気能力の低下(真空ポンプ能力低下、配管つまり)、炉内汚染など》バインダーの残量を管理することは量産現場では相当難しいと思います。

2018年10月16日火曜日

MIMの接合について考える

複雑な部品で、金型で成形できない形状(アンダーカット)でも
MIMであれば形成することができる。
その方法は、「MIM部品の接合である」*1
2部品以上の脱脂体(成形体)を仮結合して
焼結することで「拡散接合」させる方法である。

この方法の量産品はほとんど「同じ材質」であるが
「違う材料で接合はできるのか」と聞かれたことがある。

答えは 「異種材料でも接合はできる」

1997年の三浦先生の論文(粉体および粉末冶金1997-44-5)で
カルボニルFeとSUS304Lの接合実験が報告されている。
ここでは次の課題を上げている。
◆二種類の金属の収縮速度が異なるため、接合面が完全に接合できない。

他にも考えられる課題をあげると・・・
◆二種類の最適な焼結温度が必ずしも一致しないであろう。
 片方が焼結不足になったり、オーバーヒートになったりする問題。
◆収縮速度の差だけでなく、そもそも収縮率を一致させる必要がある。
 これは焼結温度に依存するので上記とセットで研究する必要がある。

《まとめ》
MIMによる2部品以上の接合は、同一材質(準同一材質)の時に
量産可能。
他材質の場合は、収縮速度の差や収縮率を一致させる課題を
クリアできれば量産化できる。ただし、最適な焼結温度は材質により異なるので
片方は中途半端な密度になる。

*1 アンダーカットの形成方法にはもう一つ実用化技術がある。
それは 樹脂中子を使う方法である。

2018年9月1日土曜日

MIMのStandard規格を調べた

・世界には 3種類のMIM材料標準・規格がある②
 1993年MPIF Standard35 が発行されてISO規格2012年ができるまで約10年を要す
 →MIM30年間の歴史から考えれば最近だ 
・インプラント用にコバルト合金とチタンの規格が作られている③④⑤

・超合金718は 中温タービン翼用?だと思われる⑥
・MIM規格のJIS化はまだ実現していない

世界のMIMStandard
①用語: MPIF Standard 64
MIM一般材料:3種類
  MPIF Standard 35(1993) /  ASTM B883-15(1997) /   ISO 22068(2012)
③純チタン:ASTM F2989-13(1997) (外科用インプラント)
Ti-6Al-4VASTM F2885-11(1997) (外科用インプラント)
Co-28Cr-6MoASTM F2885-10(1997) (外科用インプラント)
⑥超合金718:SAE AMS-5917 (HIP処理と溶体化および時効処理)

⑦日本の標準
 JPMA G 021996 MIM用語
 JPMA S 01-2014 金属粉末射出成形材料-仕様
  《追記》 JISがやっとできました。JIS Z 2551(2021)金属粉末射出成形材料-仕様


2018年8月30日木曜日

MIMの誕生と日本のMIMメーカー

 

1972年にDr. Raymond E. Wiech Jr.MIMを発明し、共同設立者(4名)としてカルフォルニアに『パーマテック社』を立ち上げ(1973年頃)、MIM量産技術を確立する。後に脱脂を加熱に変えた「ウイテック法(加熱脱脂)」を考えて独立(1981)する。(結局、創業者4名はライセンス分野を分け合って友好的に別々の道を歩み始める)
日本国内では・・・遅れること10年・・・
国内メーカーは独自でMIMの研究開発を開始する、そこに「パテント黒船襲来」ウイテックからの特許抵触のアナウンスに恐れ、かなりの国内企業がウイテック法に傾倒すると、ウイテックジャパンを設立する。そこで一手にフィードストックを販売していく。しかしその中で特許に抵触しない製法を持つ企業も存在する。さらに元祖であるパーマテック法を採用した日本企業も2社『M社(現在休眠中)J社』あった。この3つ流れが今も続いている。 追加20190911:N社のAMAX法を忘れていました。溶剤脱脂でパーマテック法の亜流です。


 というわけでこの3つの流れの中で日本MIMメーカーはどのように発展したのか


    元祖パーマテック法を採用した企業は、独自にフィードストックを開発
     溶媒脱脂であるため大物ができるようになる


    ウイテック法を採用した企業は、標準カタログのフィードストックを購入
     加熱脱脂であるため小物中心で、企業間の品質の差がほとんど無い


    独自製法の企業(国内最大メーカー)は、独自のフィードストックを開発
   (いろいろ発明あれど加熱脱脂が主流)トップを独走、業界を牽引していく

    


19801990年 (第一世代)鎖国的研究開発時代 各社独自に研究開発                     (今の3Dプリンターのようなインパクトがあったようだ)
        1988年~大学等の研究論文も発表され始める

19912000年  (第二世代)開国成長期 自力・他力でとにかく量産開始
        パーマテック、ウイテックの基本特許・技術契約切れる

        全く新しい工法出現。BASF法(触媒脱脂)など
                また、国内フィードストックメーカーも出現する
        一方、後半には、MIM廃業する企業が出始める
        1997年 MIM関係論文数ピーク22

2001
年~    (第三世代)自然淘汰・進化時代
        設備の老朽化と担当技術者定年に合わせるように撤退・統合
        技術的(Q,C,D)に優位性のある企業がさらに発展する
        スーパーアロイ(超合金)のMIM論文が発表される
 


2018年8月14日火曜日

PADSというMIM製法を勉強した

2011年の論文を読んだ。PADSは知らなかった。
Plasma Assisted Debinding and Sintering」
直訳すると「プラズマ・アシスト脱脂焼結法」
ブラジルのサンタカタリーナ連邦大学機械工学部の論文である。

とにかくすばらしい画期的な技術開発だ! 
感動したことをまとめると・・・

    2つの電極の間に生成するDC放電によるプラズマ環境の中でブラウンパーツを脱脂させること。画期的なことは脱脂したバインダをガスに変身させるところ。
   さらに連続して焼結まで行い その時間7時間。

    理屈は、プラズマ放電により炉内にパージさせた水素が水素原子になり、ブラウンパーツの高分子CxHyを低分子に分解し、CHの化学反応で、なんとメタン、エタン、プロパンのような低分子量のガスが生成されるそうだ。

    したがって、炉体内部および真空排気系が脱バインダーのドロドロで汚染されることが無い。

すごい技術である。 

この論文から7年すぎているが本技術を国内で見たことが無い。どうも特許出願しているようなので後8年間は待つ必要がありそうだ。  追加:1997年の開発 なので特許失効まで5年弱

ブラウンパーツとは、グリーンパーツ(成形体)を溶媒脱脂して低分子樹脂を抜いたもの。ちなみに焼結体はシルバーパーツ。

ノリタケの20年

  ノリタケが米国に受け入れられる白磁ディナーセットを完成させるまで20年を要した。白い生地を作るのに10年。形状のばらつきやゆがみのない皿を作るのに10年。それは「技能」から「技術」へ昇華させるために必要な期間だった。時は1914年、100年前だ。

 MIMの製造技術は、陶磁器のそれと酷似していると感じることがある。だからこそ「こんな場面」に遭遇すると負の感情が湧いてくる。それは、量産をしているMIM企業でも、「ノウハウだけで製造しているの?と悲しくなる現場」があるのだ。(具体的に申し上げられません・・)Know How」はもちろん重要だ。レシピ通りに作れば品質の高いものは作れる。しかし、応用が利かない、発展がない。ではどうすればよいのか・・・
理想は「Know Why」を獲得することだ。 ライト兄弟だけでは飛行機は発展しなかった、後の航空力学が確立されてジェット旅客機が誕生したのだ。

 「Know Why」は工学であり工業に必要なこだわりだ。 ただ、MIM業界に開示された「ノウホワイ」がほとんどない*1、「ノウハウ」も同様だ。微力ながらこの問題を解決すべく一肌を脱ぐつもりだ。東京オリンピックまでには何とかしましょう。
*1 Know Why は研究論文として開示されていますが、現場の人たちにとってわかりづらい、体系化されていないという意味です。


2018年8月2日木曜日

3Dプリンタの生かし方と可能性

3Dプリンタの生かし方と可能性
萩原先生(東京工業大学)の宮城県工業技術センターでの講演資料を読む
Feb.24.2015
【課題】
1.安価(40万円以下)な機械は精度が低い。使える機械は高価(数千万~1億円)。
2.CADスキルが必要
3.著作権、PL問題
【誰もが容易に部品を任意の材料で造れるようになるのか】
答え: ならない
・材料は限定的・精度が悪い・使えるものは機械が高価
【ものづくり産業の基盤に変化はあるか】
答え: 変化しない
・従来の高品質で安価・大量生産の分野には変化は起こらない
・個人活動を中心とした表現・デザイン・ファッションの分野に展開される
【私見】同感です
パーソナルな二次元プリンターが登場してたいへん便利になった。
しかし、写真をプリントしたり名刺を作っても 「品質はやっぱり良くない」。
結局プロショップに依頼している。 
それが 三次元になったということです。

2018年7月2日月曜日

MIM成形材を使った3D積層装置を考える

金属粉末を使った積層装置はいろいろあるが「粉体」ではなく、
練った材料フィードストック(MIM成形材料)を使ったものは現在2種ある。
それは、「Desktop Metal」と「The Metal X」だ。 
売りは2つ
①安価 Arcamが1億円なので これらはたぶん10分の1
②ユーザーは粉体を使わないので環境面・安全面で優位

どちらも根っこは同じで商品開発段階で分裂したようだ。
どちらも、棒状(フィラメント)のMIM成形材料をFDM(熱溶解積層)法で積み上げ
MIM工法と同様に、脱脂+焼結を行う方式である。

しいて違いをみつければ、、「Desktop Metal」のフィラメントは、20cm程度の線香状(かなり太い)の束を使うのに対して、「The Metal X」のフィラメントは、長い巻き線になっている。(聞いた話で観ていませんが、MIMフィラメントは、曲げると折れるので巻き線にするには、軟化点温度で恒温保持が必要になるはず・・いまいちな構造かも?)

私も遊びで「MIMでフィラメントを作って」市販の安価な積層装置に挿入して実験したことがある。しかし、フィラメントを送る機構がギヤのため、フィラメントが削られて材料が正確に押し出せないことと、ノズルから出た材料が積層される前に固化して細い麺ができるだけでした。余熱や保温などが必要であることがわかりましたが、研究資金も無く断念しました、あきらめないで続けていれば・・・・・なんて考えながら、これら新商品の動向を観ています。

見本市で積層サンプル「Desktop Metal」を見ました。密度が甘そうですが、すばらしい造形能力です。MIMでできない造形美、さすが3D積層技術!!

ちなみに「The Metal X」は、 山形県が購入しており(国内初)、5月より試動開始したらしい。落ち着いたら山形大学へ見に行こうと思ってます。

2018年6月29日金曜日

MIMの変形について考える(2/2)

【問題】MIMの変形を考えた場合、金属粉末は、球形が良いのか、異形の方が良いのか。

「形状を保持するためには異形の方が変形が少ない」と主張する方がいる。
なぜかと問うと、石積効果(お城の石積の石は丸いと崩れる)のためだ。

しかし 私の考えは違う。
 「確かに異形の方が石積効果はある」*1
しかし「球形の方が総合力で勝つ」だ。*2

その理由は
①球形の方が比表面積が小さい(最小)
②粉末のタッピング密度を高くできる
③その結果バインダ量を最小化できる
④その結果 収縮率を最小化できる
⑤形状の保持は粉末間のネッキングを最大化させる
 表面還元、微細粉末配合

【まとめ】
コンパウンドの「成形性をよくすること」と「変形を小さくすること」は反比例の関係にある。最大公約数では「球形、小径、高TD」が良い。機械的強度も考えればこの選択は間違いない。

*1  粒子間摩擦力σ=C/(δD^2) C:定数 δ:粒子間距離 D粒子径 不定形粉はCが球形粉より大きい 具体的数値わかりません
*2  古い論文にこんなものがあった 【金属粉末射出成形の動向 中村秀樹 鉄と鋼 第76年(1990) 第5号 P662】抜粋 「MIM用の原料粉末としては、焼結性からは高充てん密度が得られ、微粒で不規則形状の比表面積が大きい粉末が要求され、一方成形性からはむしろ逆の傾向の粉末が望まれる。最大公約数的には微粒の球状粉末がもっとも適している。」 2018/09/31追記

MIMの変形について考える(1/2)

工程別に考えてみる
【成形工程】
成形品の部位別成形密度の差(密度が低い方向に曲がる)
 ・成形速度、圧力など 金型表面あらさ   ガス逃げの有無
成形品の内部空隙残存

【脱脂】
重力による変形
 ・加熱による軟化強度(骨材の種類 POM,PP,PE・・・) 

【焼結】
重力による変形
 ・金属粉末形状、金属密度(バインダ%)、粒径、表面酸化物
収縮摩擦変形
 ・収縮率(バインダ%)、セラミック表面あらさ
 ・熱伝導(輻射、伝熱、ガス対流)

【二次加工】
熱処理変形(変態、残留応力)
加工熱による変形
加工抵抗による変形
クランプ変形

2018年6月19日火曜日

MIMの溶媒脱脂について考える

MIMの溶媒(溶剤)脱脂法を考えてみる

①どんな溶媒があるのか
 ・ヘキサン
 ・ヘプタン
 ・塩化メチレン
 ・パークロエチレン
②どのように溶かすのか
 ・溶剤に浸漬する
 ・気相させて蒸し器の中で溶かし出す
③汚染される溶剤の管理
 ・汚れるまで循環し定期的に交換
 ・汚れたものは排出し新液と置換
④汚染溶剤の再生をどうするか
 ・専門業者へ委託
 ・蒸留再生させる
⑤安全問題からの選択
 引火性、毒性
⑥使用しているバインダーの溶解性、溶解能力問題
⑦使用しているバインダーの膨潤問題(副作用)
⑧溶剤条件の最適化(1)
 特性値:溶解量  因子:溶剤種類、抽出方法、温度、時間
⑨溶剤条件の最適化(2)
 特性値:脱脂体変形量  因子:溶剤種類、抽出方法、温度、時間
⑩そもそもバインダの内訳をどうするか
  結合材、滑材、可塑剤

いろいろ変数があるので大変ですね
0.マトリックス表で だいたいの方向性を決める
1.一因子の精密実験で特性値の効果傾向と因子の巾を把握
2.多因子の直行配列実験(田口メソッド)で最適化

《日曜MIM知るINDEX》

溶媒脱脂は嫌われているのか

MIM指南書 金属粉末射出成形ガイドブック
『人間は失敗しないと学べない、体得したノウハウをすべて書きました。』
下記サイトで購入いただけます。   





2018年6月15日金曜日

MIMの金型材料について


【MIMでよく使う金型材料】
 ①プリハードン鋼:大同特殊鋼 材質硬度NAK80  HRC38
 ②SKD11相当:大同特殊鋼 品種PD613 焼入れ焼き戻し硬度HRC60
 ③SUS系:ウッディホルム 品種 STAVAX 焼入れ焼き戻し硬度 HRC52
【金型寿命向上策としての表面処理】
 ①窒化処理 (変形はほとんど無い)
 ②ニフグリップ(耐摩耗性と滑り性、カジリ防止に効果あり)
 ③金型磨き ヤマシタワークス・エアロラップ(日本スピードショア)◆微細形状でも磨け、離形性改善効果あり◆

 警告!(商品を推奨するものではありません、効果を保障するものでもありません)


《日曜MIM知るINDEX》

2018年6月13日水曜日

MIMの材料規格 MPIF35

MIM金属粉末射出成形の材料規格

まだ、JISになっていませんが、日本粉末冶金工業会によるJPMA-S-01(2005)
の関連記事はこちら。 いくつかの材質で機械的特性を確認できます
http://sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201310nakamura.pdf#search=%27MIM+++JIS%E8%A6%8F%E6%A0%BC%27

【こちらは無料でダウンロードできる】
MPIF Standard 35 「Materials Standards for Metal Injection Molded Parts」
単位の変換必要です(1psi = 6894.757Pa)
http://www.mimaweb.org/Std35MIM_indiv.pdf#search=%27Material+Standards+for+Metal+Injection+Molded+Parts++MPIF%27

   2018/9/1  残念!! 無料公開無くなっていました  有料$50
   https://www.techstreet.com/standards/mpif-standard-35-metal-injection-molded-parts?product_id=1915476

2018年5月18日金曜日

PMの密度測定

MIMの密度測定の前提条件は、「内部空隙・気泡が独立して表面に開口していないこと」でしたが、空隙だらけのPM一般焼結品はどうやって密度を測定しているのか。    その一般的な方法は    同じアルキメデス法で測定しています。ひとつコツがあります。それは、「焼結体にワックスを含侵させ空隙をふさぐ」ことを行います。そうすると水が空隙・空孔から侵入しなくなります。これはアルキメデス法の計算因子である「水の密度」と、「ワックスの密度」がなんとほぼ一緒だということを利用しているのです。「水1g/cc、ワックス0.99g/cc」多少の誤差あれど「数十グラム」で計測すれば精度的には問題ないと思われます。頭がいいですね。



2018年5月14日月曜日

MIMの密度を測定する

MIMは粉末冶金なので、焼結密度の管理は重要です。
普通は「アルキメデス法」を使って測定します。
液体中の物体は、その物体が排除した液体の重さに等しい力を
垂直上向きに受ける。これを浮力と呼ぶ。

細かい方法は省略して 正確にはかるコツを紹介します
①水中にMIMを入れる前に、アルコールで脱脂し、濡れ性をあげる
  これは小さな気泡がMIMの表面に付かないコツです
②MIMを水中につるす糸(板)はできるだけ細くする
  この糸(板)の浮力も誤差になるため
③測定する個数を多くする(重量を多くする)
 1個の測定誤差をσとすると 2個一緒に測定すると誤差は√2分の1になります。
3個なら√3分の1。

でも ものすごく小さいMIMを測定するには次の装置が必要になるようです
「ヘリウムガス式密度計」 原理はアルキメデス法ですが、二番目に軽いヘリウムを
使うところが味噌だと思われます。ヘリウムはリーク検査に使うほど微小空隙を透過しますので
微細な形状でも正確に測れるのだと理解しました。
*******
投稿から一夜明け、この装置の注意すべきことに気がつきました。もしMIMの密度が不完全で「内部と表面の空隙・空孔がつながっていた場合」このヘリウムガス式密度計だと「逆に密度は高く表示される」と思われます。内部にヘリウムガスが進入するためです。MIMの密度測定の前提は、「内部空隙が独立していること」が必要です。 2018/5/15

2018年5月10日木曜日

MIM用CAE流動解析ソフト

MIMでCAE流動解析シミュレーションソフトが実用化されていることがわかったので調べた。

ソフト名: Moldex3D 
メーカー:Core Tech System Co.,Ltd 台湾・

太盛工業㈱が10年前から開発に協力して実用化したようです。

金型方案設計の最適化ができるので失敗を最少化できる。


《日曜MIM知るINDEX》

2018年4月3日火曜日

MIMの内部欠陥はどこで発生するのか

ロストワックス精密鋳造の内部不良の筆頭は「引け巣」である。この対策として鋳造シミュレーション凝固解析で方案設計を最適化できるようになった。一方MIM金属粉末射出成形で実用できるシミュレーションにまだ出会っていない。*1  したがって内部欠陥の対策は経験と試行で解決するしかない。

MIMの内部欠陥(ウエルド、線状欠陥)の発生場所は「成形工程」である。
成形工程でウエルド(充填された樹脂同士が接触していない空隙面)が残れば
後工程で絶対に改善しない。接触していなければ焼結を行っても拡散しないからである。
(空隙が表面に開放していなければHIP処理を行うと完治できるが・・・処理費が高価)

ではどうすればよいのか
それは成形条件を上げることである(樹脂温度、金型温度、射出圧力・保圧)

これが現場で、なかなかできない。
離型性が悪くなる、スプルーが抜けない、バリが発生するなどなど・・・・
成形体のX線写真を見せれば納得してもらえるのであるが・・

*1.MIMでCAEを活用しているメーカーありました。太盛工業㈱ 「流動解析」「変形解析」「温度解析」「保圧解析」をやっているそうです。自称「研究開発型町工場」恐るべし。2018/5/9

ロストワックスとMIMの違いを簡単に説明すると

《ロストワックスとMIMの違い①》
「ロストワックス精密鋳造:以下LW」   LWは「鋳造」
 金属を溶かして鋳型に流して凝固させる
「MIM金属粉末射出成形:以下MIM」  MIMは「粉末冶金」
 金属粉末を型内で固めて焼結する

《ロストワックスとMIMの違い②》
LWは、どんな金属でも鋳造できる/アルミ合金、銅合金、鋼、超合金、チタン等
MIMも、ほとんどの金属で製造可能であるが、量産メーカーでアルミ合金は、ほとんど無い(MMI製アルミ合金に関する情報のまとめ

《ロストワックスとMIMの違い③》
LWは大きなものができる 数g~数十キロ
MIMは大きなものができない 数g ~数百g

《ロストワックスとMIMの違い④》
LWよりMIMの方が精度が高い
目安 LW±1%  MIM±0.5%

《ロストワックスとMIMの違い⑤》
LWよりMIMの方が表面あらさがよい
目安 LW=Rmax24 *1 MIM=Rmax8

《ロストワックスとMIMの違い⑥》
LWよりMIMの方が材料費が高い
粉末にする費用が高いため
しかし精度や表面あらさが良いので完成品まで考えると
MIMが優位になる場合がある

《ロストワックスとMIMの違い⑦》
LWの内部不良は『引け巣』『ガス残留』『カミ物』
MIMの内部不良は『ウエルド』『ガス残留』

*1  先日、日本鋳造協会で・・
LWの表面あらさRmax2を実現している分野があることを知りました。
航空機などのブレード部品です。特殊な分野ですね。一般部品はRmax24程度です。
2018/5/10

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2018年3月8日木曜日

「バスフ」のMIM(カタモールド)を掘り下げてみる

「バスフ:BASF」のMIMは、一般的なバインダーシステムとは異なる。
大きな違いは二つ
《ひとつは成形温度の違い》
 一般的なバインダーは、高分子とワックスを使ったもので150℃程度で溶融する。射出成形温度160℃程度で金型温度は40~50℃程度である。
一方「バスフ」のバインダーは、2種類?の高分子からなり(一方はPOMポリアセタール)*1  成形温度は170~190℃と高く、金型温度も140℃まで上げることがあるらしい。
《二つめは、脱脂方法の違い》
 一般的な脱脂は「加熱脱脂」「溶媒脱脂」である。
一方「バスフ」は、硝酸と窒素を使う触媒気相分解で固体から直接ガス化する独創的な方法で脱脂する。 ガス化される樹脂はPOMだけで、耐酸性の樹脂は(約10wt%)は、脱脂されず形状は保持される。

長所短所をまとめてみる
長所
①POMが主体の高分子なので脱脂変形が少ない
②触媒気相分解で外周から内部へ脱脂が進行するため肉厚が可能
③ワックスなどの蒸発する成分が少なくリターン材を使っても収縮率が安定している*2
短所
①成形温度が高温(100℃超え)のため成形体の手扱いが難しい(ロボット化)
   金型の温調に水は使えないオイルになる
②脱脂装置が特殊で、発生するガスは「ホルムアルデヒド」であり毒性が高い
   排気を燃焼させて無害化できるらしい

追加20190527
*1 もう一種類はPE樹脂:ジャーマン先生の本にも書いてあった。
*2 POM系バインダーはリターン可能回数が少ないため、スプール・ランナが発生しない究極のホットランナーを薦めている。
多品種少量生産には向いていない、量産向き製法ですね。

2018年2月27日火曜日

MIM用の射出成形機はあるのか

MIM用の射出成形機について掘り下げてみる

MIM用の射出成形機は無い(MIM専用として開発されたものは無いの意味)したがって、一般プラスティック成形機と同じものを使っている(耐磨耗仕様にすることが多い)

方式の違い/それぞれの長所・短所
◇射出成形方式は2種
インライン方式(ほとんどのMIMメーカーで採用されている)
プリプラ方式(Sodick製の成形機が有名)

インライン/長所:扱いやすい、慣れている 短所:逆止弁による射出量誤差
プリプラ/長所:可塑化と計量・射出が独立、射出量が正確 短所:射出シリンダ背部から材料流出

◇金型クランプ方向は2種

横型/長所:扱いやすい、慣れている 短所:二重成形が難しい
縦型/長所:二重成形が容易、多数金型も可能 短所:部屋の天井を高くする、スクリュウの交換が大変

◇ランナー形式(金型含む)
一般スプールランナー/長所:扱いやすい 短所:スプール、ランナーが発生する
ホットランナー/長所:スプール、ランナーが無い 短所:高価、段取り替えが大変

最新3D金属造形技術はMIMと競合するのか

MIMの代替技術になりうる3D金属造形技術を掘り下げてみる。

金属粉末を供給する方式は4種類
A)パウダーベッド方式   
B)デポジション方式(溶射方式)   
C)液体ジェット方式    
D)MIMフィラメント積層方式

金属粉末を金属の塊にする方式は4種類
①レーザーあるいは電子ビーム溶融・焼結
②レーザー溶射
③液体ナノ金属融合
④MIM脱脂焼結法


これらの組み合わせ16種類が考えられるが
実際はかなり少なく現在6種類の装置が各社から発表されている

その事例・・・・
Aと① レーザーなら「3DSystems LASERTEC30」
     電子ビームならやはり「Arcam」 東北大学にある(機械的特性も優れている)
Bと② LASERTEC65 ・Sodick-OPM350 (曲がった冷却穴を形成できる金型製造用)
Cと③ Xjet 金属粉末がナノの大きさだとかなり低温(300℃)で焼結できるらしい、信じられない!
Aと④ ヘガネス- Digital Metal ・ExOne-Sand Printing Process 《MIM代替になりうる》
D&④ The Metal X ・Desktop Metal 《MIM代替になりうる》

これらの造形物とMIMと比較してみる
【強度】MIMが良いか同等(ただしArcamのチタン合金強度はMIMより勝る)
【精度】MIMが良いか同等
【表面あらさ】MIMがたいへん良い(積層の弱点は表面あらさ)
【コスト】MIMの方が安い (大きなものは逆転する、溶接機利用のものには負ける)
【納期】3D積層のほうが短い

MIMは総合的に優位であるが、金型が必要なため納期で負ける。

結論:試作段階では「MIMフィラメントを使った3D造形技術」を使い、量産は「MIM」を使う。
最新3D金属造形技術は共存共栄すべきMIMの相棒であることがわかった。

《日曜MIM知るINDEX》

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