2019年1月31日木曜日

HP Metal Jet を掘り下げる

HP Metal Jetは MIM粉末を使った3D積層装置つまり、AM(付加加工)装置のニューウエーブのひとつである。米国の頭脳HP社とMIMの元祖パーマテック社との最強2社コラボ作品。2018年9月発表

脱脂工程を省略できるという情報を得て、YouTubeでのプレゼン発表を発見した。英語スピーチなのでYouTube翻訳あれど、意訳・誤訳を駆使してまとめた。
(信頼度83%)

《まとめ》
方式:パウダーベット方式で、6つのノズルユニットからバインダーを噴射
(ひとつのノズルユニットには無数の噴射穴が空いています)
粉末:21μm (たぶん<21μm) 
バインダ量:たぶん1% (この量であれば脱脂は省略できる)
価格:約4000万円~   焼結炉は別途必要 3D造形機のみの価格
部品コスト:MIM品と同等価格  レーザー溶融積層品の10分の1
機械的特性:良いらしい(データ表示あれど金属名不明なので無視する)
表面粗さ:Rz25~40
展開事例:VW自動車のキー部品とシフトレバーの握り部分
    ポンプの小型水車(インペラー)
《感想》MIMの元祖パーマテック社が絡んでいるのでMIMフィードストックを使う方式かと思いきや、インクジェット+パウダーベット方式なのが意外であったが、最大の利点は「バインダーを1%程度にしているので焼結収縮がものすごく少なmimい*2」。→収縮が少なければ当然寸法精度*1が高くなる。でも表面粗さがRz25~40(MIMはRz8)と悪いのが気になる。材料名付の機械的性質データを観てみたい。今後注目の技術だ。

*1 ただし精度が高いとは焼結収縮精度だけ、積層精度XY方向+Z方向、積層厚さによる階段形状の課題は残る。
*2 収縮率は小さいと思っていたが、実際はMIM相当・以上であった。(2021年10月)




2019年1月27日日曜日

国内におけるMIM開発材料のトップは?

1988~2018年(31年間)のMIM材料開発論文146報を調べた結果・・
(粉体および粉末冶金、日本機械学会、その他の公開論文)
チタン・チタン合金がトップでした(ちょっと意外でした)。
続いて機械構造用鋼(SC、SCM、Fe-Ni、4100、4600)
やはりステンレスはオーステナイト系(SUS316L,304L)が一番多い。
近年の注目は、航空機狙い?のNi基超合金やTi-Al合金、医療用のTi合金でしょうか。

《パレート分析結果》
材料分類 件数 累計 累計%
チタン、チタン合金 37 37 25%
機械構造用鋼 30 67 46%
オーステナイト系SUS 26 93 64%
工具鋼 11 104 71%
磁性材料 8 112 77%
マルテンサイト系SUS 7 119 82%
析出硬化系SUS 5 124 85%
二元系金属間化合物 5 129 88%
3 132 90%
Ni基超合金 3 135 92%
その他 11 146 100%
146

2019年1月15日火曜日

『最適化』とはなにか

論文を読んでいると「最適条件」という概念が出てきます。
これは世の中で一番という意味ではありません。
実験の範囲内で「Best」あるいは「Better」という意味です。
すべての条件の組み合わせを実験で行っていない場合は「Better」です。

私が知る最適条件を見つける方法を紹介します。
それは「品質工学・タグチメソッド」です。
その中の「パラメータ設計」が、最適解が求められる手法だと考えています。

富士山が日本一高い。これは三次元空間の話です。
もし 実験条件が2個であれば三次元空間の山の頂上が最適解です。
では 実験条件が3個なら? 4個なら? 
L18直行表を使ったパラメータ設計であれば、
条件(因子)が8個の9次元空間の頂上を教えてくれます。
さらに秀逸なのは、誤差因子を故意に割り付けて
環境バラツキに強い条件を見出すロバスト設計であるところ。
なので、実験の範囲外でも一番になる可能性があるのです。
田口玄一という本物の稀有なる大天才が考えた方法です。
(若い時に田口先生に直接指導を受けたことがあります。
自分の実験計画案でしたが、先生の質問自体を解読できず、
石の様に固まると、若い先生が翻訳し助けてくれました。
大先生は発想がぶっ飛んでいるので畏敬の存在でした。)

先日MIMバインダーの特許公開の話をしましたが、
同じ銘柄の高分子樹脂でも分子量が異なれば性質も変化します。
最適解世界一を目指す道のりは奥が深いのです。

2019年1月14日月曜日

溶媒脱脂と加熱脱脂両方に使えるバインダー

すばらしいバインダー仕様が
ひと昔前(2002年)に発表されていました。
Thanks!to 静岡県浜松工業技術センター(伊藤、針幸、佐藤)

樹脂・ワックスそれぞれの熱分解温度を3つにグループ化して
その組み合わせの中で最適化したものです
温度と重量減少の関係が緩やかな3段階の坂道で進むので
脱脂中のバインダー揮散ガスによるフクレや割れがありません。

溶媒脱脂はヘキサンとMEK(2-ブタン)で使えるそうです。
特許申請を出されていて、新規性あるのかな?と思いましたが
調べてみたら 残念ながら拒絶されていました(2007.6)。
となれば 無料でパクってもいいわけです。AZAS!!
特開2003-286503
目標と思想をもってバインダー開発をしっかりされています。
教科書としても使える明細書です。

2019年1月7日月曜日

超臨界流体を使った脱脂とは

超臨界流体の特徴(無害で高い抽出能力)を使ってMIMの脱脂を行う方法である。

 室内に置いたドライアイス(固体)は、液体にならず(昇華)気体の二酸化炭素になる。さらに温度を上げ圧力を上げると液体になり、さらに高圧にすると液体と気体の中間の状態「超臨界流体」になる。その条件は、圧力7.38MPa以上、温度31℃以上。

 報告では 25MPa 65℃でMIM脱脂時間6時間 (活性炭を吸着剤として使用)→微妙な能力」だ。→通常の溶媒脱脂とほぼ同じではないか?

 1986年に住友重機械工業が特許化。1996年に機械技術研究所と宇都宮大学の研究報告がある。結構古い技術である。しかしMIM業界で採用している企業を私は知らない。ヒットしない理由を3つ想像した。
1)圧力容器が高価、加圧容器の安全管理・保全問題
2)  二酸化炭素を大量に使用する(ただし、溶媒自体の安全性は高い)
3)   溶解能力が飛躍的に高くない

《日曜MIM知るINDEX》