2021年6月19日土曜日

金属は蒸発するはなし

金属は、真空度を上げると低い温度で蒸発する。MIM材として使われている代表的な金属はCr、Ni、Cuなどで、これを含有する合金では注意が必要である。 例えば、 Crだと10^-2Paのとき1000℃台で蒸発する。だから「MIMの焼結条件で特定の金属が蒸発する可能性がある」 もちろん技術的に対策はできる、水素や不活性ガスによる圧コン環境での焼結がその例だ。

【珈琲ブレイク】実社会で金属が蒸発することを体感できませんが、MIMの真空焼結炉で経験することができるのです。今は廃業しているMIMメーカーを見学したとき、焼結炉の中の黒鉛部品(棚板)が、銀色にコーティングされているのに驚いたことがあります。そこは、すべてステンレス鋼の部品を製造していたので、Crが蒸着したものだと推察しました。回数を重ねると奇麗にコーティングされるんだな~と感心しました。真空の世界は怖くて面白いのです。蒸発しないはずのセラミックも少しずつ消えてなくなっていきます*1。さらに、セラミックセッターも金属蒸発物で変色します。紫色や赤色が部品の形状に残ることがあるのです。アルミナにCrを微量加えると赤色になるのは宝石のルビーと同じではないかと、先日、大学の先生に言われました。

*1 アルミナ

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