2026年1月7日水曜日

L9直交表実験を使った論文からの学び

L9直交表を使ったMIMフィードストックの粘度を特性値にした論文を読んでみました。 かなり「?」な部分が多く、それが逆に学びになりました。

 参照文献:「田口実験計画法を用いた金属射出成形(MIM)のための高品質原料調製」「Quality Feedstock Preparation for Metal Injection Molding Using Taguchi Design of Experiment」  Nurun Nahar, Altab Hossain, Imtiaz Ahmed Choudhury, Azuddin Bin Mamat


《実験概要》 

特性値:粘度viscosity (pa・s)  (望小特性)

因子:粉末配合量PC(58,62,66VOL%)、混錬温度TM(120,130,140℃)、混錬速度Ns(35,43,51rpm)

組成:純度99.80%、粒子径19.82µm、相対密度2.699g/cm3のアルミニウム粉末、HDPE/PW/SA=50/46/4の比率

粘度測定方法:Physica alpha分析レオメーターMCR 301(Antom Paar GmbH)

結果:


【珈琲ブレイ句】「はてな?」な部分を考察してみました。

①粘度が望小特性に疑問あり。

②粉末配合量PCは、wt%ではなくてVol%の間違いだと思う。

③3水準系L9の3列には1列と2列の交互作用が現れるけど大丈夫かな? 

④そもそも田口玄一先生の実験計画法と品質工学を混同しているように感じる。

⑤粘度が低すぎる。一桁小さいのはなぜ?

《考察》

◆粘度を望小特性にしたら、粉末配合量が少ないほど必ず良くなる。MIMコンパウンドの粘度は、低すぎても高すぎても良くない。 グリーン体を焼結したシルバー体が最終品質であることを十分考慮した実験を行いたい。

◆実験計画法としてL9の分散分析とF検定をしてみました。



1列(PC:粉末配合量)と2列(TM混錬温度)の交互作用が現れる3列(Ns混錬速度)は誤差レベルで交互作用はありません。そこで誤差にプーリングして分散分析表を作り直した結果は、粉末配合量だけが高度に有意になり、寄与率は93.5%でした。粘度が特性値なので、当然の結果ですね。論文では、粉末配合量PCが一番小さい58Vol%が最適としていますが、この結論は?です。

◆なんで粘度が低すぎるのか、仮説を3つ考えてみました。

①粘度の測定器が、振動式の粘度計のため振幅は非常に小さく粉末同士が噛み合う構造粘性を十分に捉えきれず、サラサラした液体部分(バインダー)の挙動を強く拾ってしったのではないかと思われます。

②MIMフィードストックのように固形分が多い材料(60 vol%など)を振動させると、センサーの表面と粉末の間にバインダーだけの薄い層ができてしまい、 センサーはこの滑りやすい層の抵抗を測ってしまうため、実際のフィードストック全体の粘度よりも、一桁低い数値が出てしまった。

③振動によるチキソトロピーの誘発:MIM材料は、刺激を与えると一時的に粘度が下がる性質(チキソトロピー)を持っているので、連続的な振動を与えることで、粉末のネットワークが壊れ、本来の成形時よりも不自然に流動性が高まった状態を測定している可能性がある。

MIMの粘度測定は、キャピラリー粘度計を使うべきでした。

いろいろ勉強できて、ありがたい論文でした。