【珈琲ブレイ句】MIM成形において、黒っぽいフローマークやゲート周辺の変色縞が見られることがあります。これらは、粉末濃度の分布差に起因する不良です。この現象について、シミュレーションソフトの解析から考察してみましょう。
不良発生のメカニズム
主要な原因は『せん断率(Shear Rate、せん断勾配、せん断速度)』が金型キャビティの場所によって変動することです。
なぜ、せん断率が変動するのか:ランナを流れてきた材料の流動速度は、流動している場所の断面積で変化します。たとえばゲートの断面積はランナー断面積より相対的に小さいので流動速度(せん断率)は高速化します。
なぜ、せん断率が変動するとフローマークやゲート周辺の変色縞が発生するのか:MIMフィードストックは擬塑性流体です。せん断率(速度、圧力)が高くなると指数関数的に粘度が下がります。つまり流動性が向上します。また、キャビティ内の狭い部分(製品の薄肉部位)ではせん断率が上昇するだけでなくバインダー分離(偏析)が発生し粉末濃度が上昇します。その濃度が局所的にCSLを超えた部位ではダイラタント流体の様な性質が発生し流動が瞬間的に停止すると考えています。また、フローフロントのせん断率が上のいろんな波動の影響を受けます。これらの粉末濃度の差が線状痕として残るのです。
//シミュレーション解析によるアプローチ//
これらの現象をシミュレーションで解析する際の代表的な特性値は、粉末濃度とせん断率の2つです。制御因子は、方案設計(ゲート方式、ゲート位置、ゲートサイズなど)と成形条件(射出温度、金型温度、射出速度、射出時間など)が挙げられます。
注意:ある解析事例では、射出時間を長くすることで粉末濃度差が小さくなりフローマークが低減できることがわかりました。でも、射出時間を長くすること、つまりせん断率を下げることは流動性が悪くなることです。流動性が悪いと他の成形品質の低下を引き起こす可能性があるので、交互作用の研究が必要になります。木を見て森を見ずという研究は避けたいものです。
シミュレーションで森を見る:シミュレーション解析を用いることで、事前に方案と成形条件の最適化が可能となる時代になりました。さらに、田口メソッドのパラメータ設計(2 列間の交互作用が特定の列に現れない混合系直交表L18)を使えば、現場で安定して使える最適条件を設計することができるという確信が強まりました。
おまけ:私が知るMIMで実用化されているシミュレーションソフトは2つ、「SIGMASOFT」と「Moldec3D-PIM」です。