品質工学(タグチメソッド)を使った研究報告の概要を記録する。
《実験計画》直交表:L18、制御因子:混錬温度、バインダー割合、金型温度、射出速度、射出圧力、射出筒温度、焼結昇温速度、焼結温度、誤差因子:同一ロット間バラツキ、特性値1:成形体のヒケ(望小特性)、特性値2:引張強度(望大特性)
《コンパウンド仕様》金属粉末:SUS316L、平均10μm、<20μm、水アトマイズ粉末 バインダー:混合ワックス:PMMA=1:1、バインダー量:9,10,11wt%
《結果》特性値1ヒケ:バインダー量だけが有意で、バインダー量が一番少ないものがヒケが少ない。 特性値2引張強度:混錬温度、金型温度、昇温速度、焼結温度の効果が大きい。特に焼結温度が高い程引張強度が高い。(脱脂:ウイッキング大気400℃、焼結:真空1250~1350℃)
《確認実験》最適条件(焼結温度1350℃、昇温速度10℃/h等)の結果、ヒケ18μm、引張強度408MPa
文献:鹿児島県工業技術センター研究報告No.13(1999)、岩本竜一、森田春美、南晃
【珈琲ブレイ句】実験はCIM用の混合ワックス(セルナNE119)とアクリル樹脂PMMA(ダイナールBR105)を140~150℃で脱気しながら攪拌溶解してから金属粉末を3回に分けて混錬しています。一般的なMIMのバインダー量よりかなり多めなのが気になりますが、ヒケに対してバインダー量が少ない方がよいという結論は納得できます。引張強度では焼結温度の一番高い1350℃で最大値を示しています。面白い結果としては、昇温速度5,10,15℃/hの中では中間の10℃/hで引張強度が最大化しているところです。